2024年12月和歌山県議会 奥村規子 一般質問 概要記録
 
  録画中継
20241211

1.国民保護共同訓練の実施について
2.万博会場の安全対策について
3.行政DXの推進について
4.選択的夫婦別姓制度の早期実現について
5.太陽光発電所の建設について(要望)
6.物価高騰等における地域の医療機関への支援について(要望)


《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。

 はじめに、今、国民生活や地域をめぐって様々な変化が生じています。質問にあたり、特に4つの点について感じていることを述べます。

 1つ目は、地域の平和が2015年の安保法制により脅かされていることです。日本全土が再び戦場になりかねないような事態になりつつあるように感じざるを得ません。基地の再編が沖縄・九州を中心としつつ、全国に広がっているように思います。政府の安全保障に関しては、自治を踏みにじってもいいと言わんばかりの姿勢が問題です。地域で暮らし続けるためには平和が大前提であり、この大前提が崩れかねないという危機感を持っています。

 2つ目は、雇用破壊、実質賃金の低下が続いていることです。企業の人件費削減、それを後押しした新自由主義的な政策が、安定した雇用を崩し、先進国の中で唯一、賃金が低下している状況を作り出しました。個人消費の回復なしに地域経済の活性化はあり得ません。生活が安定しない状況では、少子化対策の成果が限定されます。非正規雇用の多くは女性であり、このことが日本のジェンダー平等を妨げている大きな要因です。
 3つ目は、行政が福祉、教育施策の縮小を続けていることです。コロナ禍の中で、医療体制の脆弱さが浮き彫りになりました。相変わらず、公立・公的病院の統廃合を進めています。後期高齢者が増えているにもかかわらず、介護保険制度を後退させています。学校、幼稚園、保育所の統廃合も進めており、子育て環境が悪化していることです。
 4つ目は、経済対策の切り札としての情報化をさらに進めようとしていることです。昨年10月には、デジタル庁、デジタル田園都市国家構想など、4つの部門を束ねる改革の指令塔というべき行財政改革会議が設置されました。デジタル化の焦点は地域にあり、利便性向上を進めるなどと宣伝しています。行政のデジタル化、標準化、アウトソーシングをすすめています。こういったことが、自治体にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。デジタル化によって、自治体の情報システムの統一・標準化、ガバメントクラウドへのシステム移行などが進められ、各自治体で進めてきた独自施策が削減されないか、また、政府の権限・関与の強化が進み、他方では自治体業務の外部化、公共施策の縮小、自治体職員の削減・非正規化が進み、憲法で保障された自治が縮小されるのではないか大変危惧しています。
 このような中において、県が小中学校の給食費無償化支援に努力されていることには、改めて敬意を表するところです。ますます、地域の安全と地域の将来を守る自治体の役目が大きくなっていると思います。県においては政府が進める政策に対して、県民生活を守る立場から政府の政策を改めるように働きかけつつ、自治の縮小につながるような施策は改め、団体自治・住民自治の拡充を求めることに関連して以下お聞きします。

1.国民保護共同訓練の実施について
 まず、最初に国民保護共同訓練の実施についてお尋ねします。
 県が11月18日、国際情勢を踏まえ、弾道ミサイルが県内に着弾した場合における、国・市町村及び関係機関による連携要領について確認、習熟を図ることを目的とした訓練を実施したと報道されました。内閣官房、総務省消防庁、陸上自衛隊第37普通科連隊・自衛隊和歌山地方協力本部など14機関の参加のもとで共同訓練が行われました。国から複数発の弾道ミサイルが発射され、その内1発が田辺市内(田辺市役所旧本庁舎)に着弾したとの想定でした。2004年6月に成立した国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)のもとに共同訓練をされたことと思います。
 国において、武器輸出三原則が撤廃されるなどのなかで「戦争に巻き込まれていくのではないか」という不安を、いっそうかきたてるものになるのではないでしょうか。これまでも訓練は行われてきましたが、今回なぜ、ミサイル着弾を想定した訓練を行ったのでしょうか。知事にお聞きします。

《答弁》 岸本知事
 奥村議員の質問にお答えいたします。先ほど議員からご指摘をいただきました国民保護共同訓練、今回行いました。
 これは、最近、北朝鮮からの度重なる弾道ミサイルの発射をはじめ、それこそシリアのアサド政権の崩壊をはじめ、本当に不透明な世界情勢に我々、今、直面している訳でございます。従いまして、何が起こるかわからないと、本当に一寸先は闇というような緊張した状況にあるかと思います。
 そのため、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」に基づきまして、国、市町村などと連携し、今回はミサイル着弾を想定した訓練として、初めて実施をさせていただきました。
 これは、決して県民の不安を煽るというものではなくて、むしろ、県民の安全・安心の確保に万全を期するために、他国からの武力攻撃事態に対する事態対処についての図上訓練を実施したものであります。想定外ということがあってはいけないということであります。また、こういった訓練は、本県のみならず、他の都道府県におきましても実施をされております。
 この訓練を行いました結果として、田辺市をはじめ、消防、警察等の関係機関と連携し、危機事象発生時における初期対応、住民避難に関する措置要領等について習熟、理解を深めることができました。
 また、たくさんの機関と訓練したものですから、事前の連絡等で本当に顔が見える関係もできたというふうに自負しております。このことが、今後の対応には、たいへん重要なものであると思います。
 今後とも自然災害を含め、あらゆる危機事象に対応するべく、関係機関と連携した訓練を通じまして、危機対処能力を向上させていきたいと、そのように考えておりますので、どうぞご理解を賜りたいと存じます。

《要望》奥村規子 県議
 2022年2月24日に、ロシア軍がウクライナに侵攻し、ロシア圏とウクライナ支援を表明したNATO諸国の陣営対立が激化し、核戦争の現実的な危機が広がったことで、タモリさんが「徹子の部屋」で「新しい戦前」といったことが現実感を増しました。
 バイデン米国大統領が前岸田首相に日米同盟のいっそうの強化迫る中で、岸田首相が敵基地攻撃能力を軸にした防衛力増強を「安保3文書」(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)の閣議決定によって公然と推進するようになったことが不安を増しています。非常時に地方自治体や住民、企業を緊急に動員するための法制が着々と準備されていることに、一層の不安を覚えます。
 今回の被団協のノーベル賞受賞や、沖縄県民の戦い、非核平和宣言自治体、世界連邦都市宣言自治体の力で、「新しい戦前」の動きを憲法遵守の立場で止める横断的連携を強めてゆくことが必要だと思います。友好都市との交流を活発にし、住民同士の交流を進めることが戦争を食い止め、平和を維持するための確たる礎となると考えます。


2.万博会場の安全対策について
《質問》奥村規子 県議
 11月22日、私ども日本共産党の国会議員団近畿ブロックの視察に同行し、建設中の万博会場に行ってまいりました。
 木製大屋根リングの上から建設現場を見渡しながら、メタンガスへの対策、災害時の避難計画などを経済産業省の担当者から説明を受けました。その後、観光外周道路から、メタンガス爆発事故現場と同じ、夢洲第1区にある交通ターミナルなどを車中から視察。このエリアには、高さ2.5mほどのガス抜き管が所々にむき出しで立っており、「火気厳禁」と明示されているものもありました。
 現場視察を終え、万博協会内で経済産業省の博覧会推進室長から聞き取りを行いました。これまでも安全対策について質してきましたが、さらにこの視察で大変気になったのは、飲料水などを提供する大型給水タンクの安全管理や、行き交う多くのトラックを目にして渋滞の問題、外来生物などに対する防疫体制など安全面への不安があります。
 県としての安全対策の取組状況をお聞きします。

《答弁》 知事室長
 万博会場の安全対策につきましては、議員と同様、大変重要な問題であると認識をしております。
 県といたしましては、これまでも災害時の対策などを示すよう博覧会協会に申し入れを行ってきたところであり、博覧会協会におきまして、9月に防災実施計画が公表され、大規模災害時における対応等が示されております。
 議員ご指摘の飲料水などの給水タンクの安全管理、渋滞対策、外来生物に係る防疫などにつきましても、引き続き申し入れを行うとともに迅速な対応を求めてまいります。
 今後も、こども達も含め、県民の皆様が万博会場を安全・安心に、そして快適に楽しめるよう、万博会場の安全対策も含め、様々な情報をホームページやメールマガジン、SNSなどを活用して提供してまいります。

《要望》奥村規子 県議
 パビリオン建設が遅れています。会場建設費もどれだけ膨張するかわかりません。
 夢洲では万博開催後の開業に向けた、カジノを中核とした統合型リゾートIRが建設されています。万博の名による公費の投入が、カジノのためのインフラ整備と深く結びついていると思います。国の担当者に「赤字になったらどうするのか」というと「考えていない、ならないようにする」と答えました。カジノと一体の大阪・関西万博の中止を再度求めるものです。
 何よりも、会場は現役の廃棄物処理場です。3月には爆発事故も起きています。国の補正予算で会場内の安全確保費が計上されていますが、万博をやめることこそ安全確保となります。


3.行政DXの推進について
《質問》奥村規子 県議
 行政にデジタル技術を生かすことで行政手続きの迅速簡便化が図られ、住民の選択肢が増えることはいいことだと思います。しかし、国のデジタル改革で、自治体への影響や、住民へのサービス低下につながらないか心配するところです。
 例えば、他県のある市では移動困難の方にタクシーを利用する補助制度があり、高齢者が多く利用していますが、デジタル化でマイナンバーカード利用しか認めないとしたり、コンビニで住民票発行が可能になったからと区民事務所が撤廃されたりと、全国ではいろいろな対面サービスを後退させる事例が起きているとお聞きします。
 そこでお尋ねします。県行政におけるDXの目的について、改めてお聞きします。

《答弁》 総務部長
 本県では、2022年4月に県庁DX推進本部を設置し、今後予想される少子化・人口減少の進行、大規模災害・感染症の発生、社会全体のデジタル化への対応の遅れという中長期的な変化・リスクに対応していくために、行政のあり方を「デジタルを前提としたもの」へと移行する行政DXを推進しております。
 行政DXの取組は、デジタル技術を利用して県民の利便性を高めるとともに、定型業務等の効率化を進めることで、人的資源を窓口業務や相談業務などの非定型業務にシフトすることにより、行政サービスの質の向上に繋げていくことを目的としております。
 議員が懸念されているような、「行政手続をオンライン化することで、窓口での手続きを廃止する」ということではなく、いままでの窓口での手続きに加えて、電子申請もできるようにすることであり、県民の選択肢を増やしていく取組でございます。
 県としましては、引き続き、デジタルの力を活用しながら業務改革を進めていくことで、組織資源の有効活用、働き方改革等を図るとともに、県民サービスの向上に取り組んでまいります。


4.選択的夫婦別姓制度の早期実現について
《質問》奥村規子 県議
 選択的夫婦別姓制度の早期実現についてお尋ねします。
 私自身、結婚によって姓が変わることに対して違和感を何となく感じ、何気なく夫となる方に「どっちの姓にする」と聞いたことを今も覚えています。夫の方は覚えていないようです。結局は社会的な流れのもとで、夫は長男であり、私には弟がいることもあって、あえて抵抗することもなく改姓をしました。その後、看護師の国家資格の届け出者名の変更手続きの際に、再び違和感が襲いました。その感覚は今も残っています。
 もっともっと、社会的に不利益を被っている方もいらっしゃいます。結婚による改姓に抵抗され、生きづらさを感じている人もいます。
 この10月、国連・女性差別撤廃委員会が日本政府に対し、選択的夫婦別姓の導入を求める4度目の勧告をしています。経団連も、夫婦別姓を認めない今の制度は、女性の活躍が広がる中で企業のビジネス上のリスクになりうるとして、政府に対し「選択的夫婦別姓」の導入に必要な法律の改正を早期に行うよう求めています。
 知事のお考えをお聞かせください。

《答弁》 岸本知事
 奥村議員のご質問にお答えしたいと思います。選択的夫婦別姓制度につきましては、1996年に法務大臣の諮問機関である法制審議会においてその導入が答申されております。それから既に30年近い月日が経ってしまいました。
 女性の社会進出や家族形態の多様化が進む中で、現在行なわれている夫婦同姓制度は、今、奥村議員がおっしゃいました改姓による職業生活上及び日常生活上の不便・不利益を生じさせ、望まない改姓による精神的な苦痛やアイデンティティの喪失感を与えるなどですね、女性の活躍・ジェンダー平等を阻害する要因の一つになっております。
 私事ですけれども、私の今の家内もですね、旧姓で仕事をしておりますけれども、社内の手続きとか、それから海外出張したときなんかは大変な不便であるというようなことを、いつも聞かされております。
 また、奥村議員ご指摘のとおり、国連女性差別撤廃委員会からは、4回にわたり是正を勧告されておりまして、経済界の代表である経団連からも早期の実現を求められているという喫緊の課題だと認識をしております。
 選択的夫婦別姓制度の導入につきましては、既に最高裁の判決も出ております。2015年及び2021年の決定にもあるとおりでありまして、国会で議論されるべきだと考えております。今回、選択的夫婦別姓制度の導入について前向きな石破総理大臣のりーダーシップのもと、国会での議論が進むことを期待しているところであります。
 私ということになりますと、私はこれまで多様性や、公平、包摂、いわゆるDEIといわれる哲学に基づいて県政を実施してまいりました。従いまして、この問題につきましては、社会に開かれた形で早く議論が進められてですね、1996年の法制審議会答申が一日も早く実現できることを願っております。従いまして、この議論が加速されますよう全国知事会などを通じまして、引き続き国に要望してまいりたいと考えております。

《要望》奥村規子 県議
 世界で夫婦同姓を義務付けている国は日本だけです。民法では、婚姻時に「夫または妻の氏を称す」と定めていますが、改姓するのは現在も95%が女性といわれています。姓を選択する権利が事実上否定され、改姓や旧姓の通称使用による不便や不利益の多くが女性に押し付けられています。
 氏名は個人の人格の象徴です。姓を変えることはアイデンティティーが奪われると感じるなど、個人の尊厳を脅かしています。そのため、夫婦同姓でなければ結婚できない現行制度は「法の下の平等に」「婚姻の自由」を謳う憲法に反すると考えます。多様な意見があるからこそ、選択できる必要があるのではないでしょうか。


5.太陽光発電所の建設について(要望)
《要望》奥村規子 県議
 和歌山市の鳴滝砕石場の跡地で計画されている太陽光発電事業について、付近の住民の方々から心配の声が出され、中には自治会の総会まで開き、反対の決議をあげています。災害発生の防止・自然環境・生活環境・景観の観点から、理解や納得できないという住民の意見がたくさん出されているにも関わらず、県と市はそれぞれの太陽光条例で認定したと聞いています。しかし、住民の不安は解消されていません。
 和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例の目的は「事業者と県・市町村・県民が太陽光発電事業について県民の理解と本県の環境との調和を確保し、もって本県の環境にふさわしい太陽光発電事業の普及を図る目的とする」となっています。条例上では住民意見をどのように出すことができ、その取扱いについてはどうなっているのか疑問を持ちます。そもそも住民の不安を解消するための条例と理解しています。より一層、住民意見を反映した審査を行っていただけますように強く要望いたします。


6.物価高騰等における地域の医療機関への支援について(要望)
《要望》奥村規子 県議
 コロナ禍を経て、物価が高騰するなか、今年の6月には診療報酬がマイナス改定され、地域医療を担う医療機関から悲鳴が上がっています。
 国は病床削減、病院統廃合、医師数の抑制によって、地域の医療体制を切り縮める政策を進めています。そのような中、コロナ危機の教訓を踏まえながら、地域医療を支える医療機関への公的支援の拡充と、診療報酬の増額・改善を求めるものです。
 「物価の高騰に見合うだけの診療報酬になっていない」「看護師・薬剤師不足などの人的確保が厳しい中、24改定の算定要件を満たすのが難しい状況。きわめて厳しい改定」など現場の声をよく聞き、臨時国会で審議されている、政府の総合経済対策における、物価高の克服、国民の安心・安全の確保のため、地域の医療機関を守るよう、強く働きかけていただきたく要望いたします。



                                                 岸本知事の答弁を聞く、奥村規子県議(右)

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