2.物価高騰による暮らしへの支援について
(1)県の景況について
(2)消費税減税について
(3)中小企業に対する賃上げ支援について
(4)米の生産不足への認識について
3.こどもまんなか社会について
(1)教育費負担の大幅軽減を
(2)子どもの医療費無料化を
4.熊野白浜リゾート空港について
(1)「特定利用空港」指定の撤回を
・防衛・軍事訓練を一切しない保証はあるか
・「特定利用空港」における訓練に米軍が参加しない保証はあるか
・自衛隊等による日常的訓練に伴う周辺への騒音や事故発生に対する住民不安への対応につい
て
・国家安全保障戦略に基づく施設が攻撃対象とされる可能性について
《質問》奥村規子
県議
議長のお許しを得ましたので、早速通告に従って4点について質問をさせていただきます。
その前に、知事にご挨拶とお願いを申し上げます。あらためて、突然の選挙戦大変お疲れ様でした。私どもも、日本共産党として公認候補を立て、「物価高騰から暮らしを助ける県政」をかかげ、戦かわせていただきました。知事は、今議会の開会日の就任挨拶においても「『笑顔あふれる和歌山』を実現していく」と述べられています。それは、すべての県民の願いでもあると思います。
しかし残念ながら、日本の貧困率や子どもの貧困率は、先進国でワーストレベルと言われ、県においても災害やコロナ禍を通じて、貧困と格差の拡大が深刻化しています。加えて、物価のすさまじい高騰は、県民の暮らしを一層苦しめることになっています。
かたや、一部の大資本・富裕層は資産を拡大し、大企業は史上最高の利益を上げていると聞きます。そのような中で「暮らしの砦」としての地方自治体の存在意義・役割が、あらためて問われているのではないでしょうか。知事においては「暮らしの中に憲法を生かす」という立場で県政のかじ取りをよろしくお願いいたします。
それでは質問に入らせていただきます。
1.新知事からの県民へのメッセージについて
大項目の1つ目は、新知事からの県民へのメッセージについて、あらためてお尋ねいたします。
この間、地域を訪問させていただき、私が特に気になることは、高齢者などの孤立死や子どもの自殺です。県の一般世帯に占める一人暮らしの老人世帯割合は16.4%で全国3位と高く、孤立死のリスクが高くなってくると思います。また、2024年中の小中高生の自殺は4人と聞いています。お一人お一人の理由はそれぞれ事情が違うと思いますが、孤立死ゼロ、自殺者ゼロの和歌山県になればと思います。そのためには「安全安心の政策」を充実させ、笑顔につなげなければなりません。私は、格差と貧困の解消をはじめ、ジェンダー平等のまちづくりや、医療にかかりやすいこと、何よりも命が大切にされ、誰もが安心して住めるまちづくりをすすめることだと思います。
知事選挙が終わって街中を歩いていると、「新知事さんってどのような方ですか」と聞かれることが多いです。そこであらためて、選挙戦で県内を回られ、さまざまな県民の生の声をお聞きになられたことと存じます。選挙を戦って、特に印象に残っていることやエピソードなどあれば、感想を交えてお聞かせいただければと思います。
《答弁》 宮﨑知事
奥村議員のご質問にお答えをしたいと思います。
選挙期間中、県内各地をくまなく回る中で、多くの県民の皆様とお会いできました。握手の際には、本当にたくさんの方々から応援の声と笑顔をいただきました。大変な選挙戦ではありましたが、とても嬉しく、元気が出る瞬間でもありました。
今は、たくさんの方々からご支援をいただいたという重みと、県政の舵取りをお任せいただいたという責任を感じています。
県内を訪問する中で、様々な方とお話ができました。道端で握手させていただいた方々をはじめ、畑で農作業をされていた方、企業で働かれている従業員の方や経営者の方、また元気いっぱいの学生の皆さんもいました。
可能なかぎり県内の隅々にまでお邪魔し、非常に短い期間ではありましたが、真剣にお話を伺いました。その中で、県民の皆様からは、農林水産業の後継者問題や、地域の人材不足、出産も含め安心して医療が受けられるかどうかに対する不安など、たくさんのお声をいただきました。
今後、県政を進めていくにあたり.県内で実際に生活する方々の声を直接お伺いできたことは非常に良かったと感じています。
私は、県民の皆様の声を聞くこと、そして現場にしっかり目を向け、ともに歩むことを県政の基本姿勢としています。引き続き、県民の皆様の声をしっかりお聞きすることで、より多くのご意見を県政に活かしてまいりたいと考えております。
《コメント》奥村規子 県議
丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。
私が思うのは、地方自治法に定められた「住民の福祉の増進」という地方自治体の役割を果たせるよう取り組むこと、国に対しては財政需要に見合った一般財源総額の確保と、地方交付税の財源を保障するよう、しっかり求めてほしいと思います。
2.物価高騰による暮らしへの支援について
(1)県の景況について
《質問》奥村規子
県議
次に、大項目の2つ目の「物価高騰による暮らしへの支援についてお尋ねします。
物価高からどうやって暮らしと営業を守るかが今、最も県政に求められている課題だと思います。
まず、現在の県の景況についてですが、私ども日本共産党は今、若者から高齢者まで一人暮らしの不安や、困りごとの解消のために、全国規模で要求アンケートを実施しています。党本部には100万通を超える回答が寄せられ、そのうち県民のみなさんから1万通余りの回答をいただいています。その内容は「不安が多くゆとりもない」という回答が約60%と最も多く、政治の課題では「税金の集め方、使い方」がトップです。「毎日、物価が上がり、消費税の支出も増え、年金が増えてもほんの僅か、節約も限界」、さらに米価高騰と米不足が追い打ちをかけ、年金・医療・介護など、あらゆる分野で事態の悪化が見られます。90年代後半以降、諸外国と比べても著しく伸び悩みを続け、租税、社会保険料負担の増加による実質賃金の低下が、県民生活を苦しめているという状況です。そこで、和歌山県の現在の景況についてお尋ねしておきたいと思います。
《答弁》 宮﨑知事
先頃発表された和歌山財務事務所の法人企業景気予測調査によると、2025年4月から6月期における前期と比較した景気の企業判断は、「下降」と回答した企業の構成比が、「上昇」と回答した構成比を上回る状況となっております。
県でも、今回の関税措置により大きく影響を受ける可能性のある業種を対象に、県内中小企業を直接訪問し、その現況や課題の聞き取りを実施しているところです。
米国の通商政策の影響により、景気の下振れリスクの高まりや、物価上昇の継続による消費者マインドの下振れ等を通じた個人消費への影響なども、景気を下押しするリスクとなっていることから、引き続き県内経済の状況を注視してまいりたいと考えております。
《コメント》奥村規子 県議
財務事務所によると、景気が下降としている企業判断の方が多いということでした。倒産件数も問題です。私の周りでは、自主閉店に追い込まれている事業所は少なくありません。コロナ禍の時からも、申し上げてきましたが、物価高騰による影響をもっときめ細かく実態をつかんでいただきたいと思います。
いま答弁の中でも県内中小企業を直接訪問し、実体聞き取りを実施しているとおっしゃってくださいました。ぜひ皆さんのご要望を生かした政策をよろしくお願いしたいと思います。緊急に支援策などを強める対策を講じるべきです。そのために、よろしくお願いします。
(2)消費税減税について
《質問》奥村規子
県議
次に、消費税の問題についてお聞きします。
消費税は、低所得者ほど負担が重い不公平な税制です。資料1をご覧ください。
日本共産党衆院議員の田村智子事務所が総務省の「家計調査」2023年をもとに勤労世帯、実収入に対する負担率を独自計算したグラフです。中間所得層も含め最も重い税金が赤の消費税です。
年収200万円以下では所得税の負担率0.6%、消費税は10倍以上の6.3%になります。
国において消費税導入以来の消費税収は539兆円となる一方で、法人3税は318兆円、所得税・住民税は295兆円の減収です。国会では議員質問に対して、首相は「法人税を下げたことが思ったような効果を上げなかった」と言わざるを得ない状況です。資料2をご覧ください。
国内生産やサービスなどの経済活動で生み出された税収は、どちらも全体で20.5%ですが、消費税は、1989年度0.9%から2025年度5.0%と約6倍に上昇。一方、国と地方を合わせた法人税は6.9%から4.2%に。個人所得課税(所得税・住民税)も7.0%から6.0%へ減少しています。社会保障財源である税収が、法人税から消費税へと置き換わったのは一目瞭然です。
このような中、県民の暮らしをささえる最も効果的なのが、緊急に消費税を5%に減額し、さらに廃止をめざすことだと考えます。
物価高騰はあらゆる商品、公共料金やサービスに及んでいます。消費税を5%に減額すれば、平均的な勤労者世帯で年間12万円の減税になります。所得税、住民税が非課税の方も、こどもからお年寄りまで、誰でも減税になります。食料品を非課税にした場合に比べても2倍の減税です。税率を一律5%にすれば、小規模事業者やフリーランスを苦しめているインボイス制度の口実もなくなります。緊急に5%に減税し、さらに廃止をめざすことだと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
《答弁》 宮﨑知事
消費税は、全世代共通の社会保障制度の基盤として、あらゆる世代で負担を分かち合うものであり、年金、医療、介護及び子育て支援といった諸施策を支える極めて重要な財源です。
消費税収の約4割が地方税財源であり、その減収は、本県の財政運営に大きな打撃を与え、これからのサービスの質と量を大きく低下させることが懸念されるため、将来世代に負担を残すことなく恒久的な財源を確保していくことが重要と考えております。
また、税率の変更は、価格表示の変更やシステム改修、買い控え、駆け込み需要とその反動など、現場に混乱をもたらす可能性があるため、これまでも事業者の負担や経済への影響に最大限配慮し、相当の準備期間を設けた上で準備を進められてきたものと認識をしております。
地方財政は、社会保障関係費の増大や物価高に対応しなければならない極めて厳しい状況にありますが、地方団体は、安定的に行政サービスを維持しつつ、様々な重要課題に対応していく必要があり、本県においても「こどもまんなか和歌山」の実現や、県民の命を守る防災・減災対策などの取組を推進していかなければなりません。
これらのことから、国において、様々な行政サービスを提供している地方への影響を十分に考慮し、丁寧な議論がなされることを期待しております。
《コメント》奥村規子 県議
先ほどの、勤労者世帯の年収別負担率の資料では、収入が200万円以下で消費税負担率が6.3%となっていますが、これは財務省も認めている表です。これからも、不公平税制であることが歴然としていると思いご紹介しました。
今、県や日本全体が直面している物価高に対して、消費税を減税することが最も効果的です。消費税は自治体の収入減として大事だと言われましたが、財源をどのようにつくっていくかは、国会で議論していただくことです。ただ、自治体の福祉向上や県民一人ひとりを笑顔にする施策に必要な財源をどこに求めるかについて、国にしっかりと求めていただき、税制を改革することが大事だと指摘しておきます。
(3)中小企業に対する賃上げ支援について
《質問》奥村規子
県議
もう一つは、中小企業が賃上げに取り組めるように支援することです。
暮らしの困難を打開するには、物価上昇を上回る賃上げが必要です。最低賃金を時給1,500円、手取り月額20万程度に速やかに引き上げ、地方格差をなくし、全国一律最賃制を確立する必要があると考えます。現に、岩手県・徳島県・奈良県・群馬県などで、中小企業への直接支援を実施しています。
直接支援策を国に求めるべきと考えますが、いかがですか。
《答弁》 宮﨑知事
物価上昇に負けない賃上げの実現のためには、賃上げの原資が持続的に確保されるよう、労務費の適切な価格転嫁や付加価値額の増加、生産性の向上による収益力強化が重要であると考えており、中小企業の収益力強化につながる施策の展開や支援機関による伴走支援の体制強化を図っているところです。
また、中小企業融資制度において「資金繰り安定資金賃上げ支援枠」を本年4月に新設し、賃上げに取り組む事業者への資金繰り支援を行っているところです。
議員のご指摘の中小企業に対する賃上げ支援については、その原資確保に資する各種補助金・助成金等の拡充を、全国知事会を通じて引き続き国に要望してまいります。
《コメント》奥村規子 県議
「全国知事会から要望していく」というのは、それが必要なことだと認識されていることが分かりました。中小業者のみなさんは、コロナ禍で受けた融資を返済していたら、今度は物価が上昇したことで、二重三重に困難な状況になっています。
関西広域連合の一員でもある徳島県が、県独自で「賃上げ応援サポート」として直接支援していることも参考にしていただき、温かい支援がみなさんに届いて「がんばろう」という思いになるようにお願いします。
(4)米の生産不足への認識について
《質問》奥村規子 県議
深刻な米不足が、米の価格高騰を引き起こしました。昨年6月までの1年間に供給された米の量は、需要量より44万トンも少なくなり、民間在庫が史上最低に落ち込みました。その結果、スーパーから米が消えるという米不足が顕在化したのではないかと考えます。買い付け競争が過熱し、価格が高騰していきました。
増産に切り替えることが必要ですが、どのように認識されていますか。
《答弁》 宮﨑知事
今回の米不足の状況については、政府により備蓄米が放出され、県内の小売店でも販売が始まったことから、一定の改善がみられていると考えています。
また、国が実施した本年4月末時点の水田作付意向調査によると、本年度の主食用米の生産量は、全国的に飼料用米や加工用米等から転換が進み、昨年度に比べ40万トンの増産が見込まれています。
一方、本県では主食用米以外の栽培面積は水田全体の0.4%であることに加え、小規模で不整形な水田が多く収益性が低いため、主食用米の早急な増産は難しいと考えております。
ただし、米の増産を目指す生産者に対しては、農地中間管理機構による農地の集積等により、規模拡大を支援しております。
なお昨日、林議員にも答弁したとおり、国においては水田政策の見直しを進めることとしているため、今後の動向を注視しながら適切に対応してまいりたいと考えております。
《コメント》奥村規子 県議
県民のみなさんに、米がスーパーの棚から消え、価格が高騰している今回の事態がどういう理由で起こったのか、根本的な原因を明確に発信していただきたいと思います。私は、供給量が圧倒的に足りないからだと思っています。
農民運動全国連合会の新聞に「昨年春から2023年産の米不足が顕在化し、コロナ禍での米需要の消滅から生まれた過剰在庫は、21年産米価の暴落を招いた。農協概算金等は7千円台にまで落ち込んだ。政府は過剰在庫の借り入れも拒否し、22年から23年の2年間で50万トン以上の減産を米農家に押し付け、3か月分の需要量に満たない過去最低の153万トンまで低下し、24年産米の奪い合いや価格高騰を招いた」ことが書かれています。
和歌山県は米輸入県で、自給率は6割程度とお聞きしていますが、将来的に安定供給できるように施策を講じるべきと申し上げます。
3.こどもまんなか社会について
(1)教育費負担の大幅軽減を
《質問》奥村規子
県議
次に、子育て世代における経済的負担の問題です。知事は「こどもまんなか社会の推進」をかかげられています。
教育の無償化は、国際人権規約に明記された基本的な人権であり、世界が目指すべき目標です。家庭の経済力に左右されず教育を受けられる社会こそ、こどもと若者の未来を支え、社会を豊かにします。
県では昨年度から、給食費無償化が実現しました。さらに、質の確保と向上につとめ、教材費・制服代・修学旅行費・通学費など、隠れ教育費といわれる負担の軽減に取り組むべきと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
《答弁》 宮﨑知事
学校で学ぶために必要な教育費には、授業料や給食費以外にも、教材費、制服代、通学費など様々な費用があることは、承知しております。
そこで県では、現在、家庭の経済的な事情で修学が困難な児童生徒を対象に、これらの費用に対する支援を実施しているところです。
しかしながら、社会情勢の変化によっては、家庭の経済的な状況に影響が生じることも考えられます。
今後、物価高騰が進み、家庭における教育費の負担が重くなる場合には、支援の内容を見直し、低所得世帯における教育費負担の軽減を図るなど、児童生徒の教育格差が広がらないように努めてまいります。
《コメント》奥村規子 県議
経済力に左右されないことが非常に大事だと思いますので、よろしくお願いします。
給食費無償化の実現に市町村はじめ、関係職員さんが事務作業などいろいろな面でご苦労されたのではないかと思いますので、あわせて感謝を申し上げます。
(2)子どもの医療費無料化を
《質問》奥村規子
県議
和歌山県の乳幼児等医療費助成制度は、県内の医療機関にかかる場合の保険診療自己負担分を助成する制度です。市町村では、対象年齢や所得制限の有無など、助成内容が上乗せされ、住むところによって異なります。
資料3は、こども医療費に対する助成実施状況調査の都道府県一覧表です。
和歌山県内では小中学生は全市町村、18歳までは29市町村が自己負担分を助成しています。
18歳未満への医療費助成を独自に行う自治体へのペナルティが、長年の住民運動や日本共産党の議会論戦などに押されて2024年4月から廃止されたことはよかったのですが、厚生労働省は、こども医療費無償化を問題視し、自治体に窓口負担復活を促す新たな通知(2024年6月26日)を出しています。
国の「こども未来戦略」の加速化プランでは、子育て世帯の医療費負担軽減を掲げ、地方自治体の取り組みを支援するため、無償化に伴うペナルティを廃止しました。厚労省が2024年7月3日の審議会に示された、こども医療費の窓口負担が健康状態に与える影響の研究でも、窓口負担がある自治体では受診抑制が起こる確率が高い傾向が見られるといわれています。
こどもの健やかな成長を願うなら、さらに県の助成を拡充すべきと考えますが、いかがでしょうか。
《答弁》 宮﨑知事
こどもが病気にかかった時、安心して医療機関を受診できることは大切だと考えております。
県では、抵抗力が弱く、病気にかかると重症化しやすい乳幼児が、早期に医療機関を受診できるように、乳幼児医療費助成制度として、小学校就学前の乳幼児を対象に、市町村に補助を行っております。
その一方で、市町村では、地域の実情に応じたそれぞれの考え方に基づく政策として、対象年齢を中学校や高校卒業までに拡大し、独自に医療費助成を行っております。
本来であれば、国の責任において、地域に関係なく、等しく医療費助成を受けられる制度とすべきであると考えております。
県としましては、全国一律の制度を創設するよう、全国知事会等を通じて、要望しているところであり、引き続き、国の動向を注視してまいります。
《コメント》奥村規子 県議
厚生労働省の姿勢は大変問題だと思います。通知を撤回するよう求めていただきたいと思います。
県は国に対する重点要望で、一番に「子育て世帯の経済的支援の拡充」として、こどもの医療費助成を出されているのは大変力強いと思っています。全国知事会でもよろしくお願いします。
4.熊野白浜リゾート空港について
(1)「特定利用空港」指定の撤回を
・防衛・軍事訓練を一切しない保証はあるか
・「特定利用空港」における訓練に米軍が参加しない保証はあるか
・自衛隊等による日常的訓練に伴う周辺への騒音や事故発生に対する住民不安への対応
について
・国家安全保障戦略に基づく施設が攻撃対象とされる可能性について
《質問》奥村規子 県議
最後の大項目4点目、熊野白浜リゾート空港についてお尋ねします。
2022年12月に閣議決定された「安保3文書」は、これまで「専守防衛」としてきた政府の安全保障戦略を大きく転換し、敵基地攻撃能力を保有し、相手国と戦争になった場合を想定した態勢づくりを具体化したものです。
安保3文書の「国家安全保障戦略」に基づき提起されたのが「特定利用空港・港湾」です。
基本的な考え方の第1に「安全保障環境を踏まえた対応を実効的に行うため、南西諸島その他の地域で自衛隊・海上保安庁が平素から空港・港湾を円滑に利用できるようインフラ管理者との間で枠組みを設ける」としています。
そのため、防衛省と国土交通省が空港・港湾管理者との間で、自衛隊や海上保安庁が「柔軟かつ迅速に施設を利用できるように努める」ことが確認されます。
和歌山県は今年1月、政府の依頼に応え、熊野白浜リゾート空港を「特定利用空港」に指定することを受け入れ、4月1日に空港としては本州で初めて指定されました。これにより、平時から自衛隊などが訓練できるようになりました。
政府のQ&Aでは「有事の利用を対象とするものではない」としながらも「武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態における空港・港湾の利用調整については、武力攻撃事態等における特定公共施設等利用法などに基づき行われる」としています。つまり、政府が有事とみなした際には同法に基づき軍事施設として利用されます。
和歌山県は「防災目的であり、防衛や軍事利用するものではない」と繰り返していますが、政府の「特定利用空港」に対する考え方や、有事とみなした際の利用などから、防災対策にとどまるものではないことが明らかです。防衛・軍事のための訓練を一切しない保証はどこにあるのでしょうか。
政府の説明では「米軍が本枠組みに参加することはない」としていますが、日米地位協定では「米軍の航空機や艦船は日本国の港または飛行場に出入りすることができる」となっています。2024年には、米軍機が日本の民間空港に着陸した回数が、14年以降最多となっています。その8割が「特定空港・港湾」の指定を中心に進める九州・沖縄に集中しており、日米軍事利用がさらに進む恐れがあると考えます。
2月議会の藤本議員の質問に、前知事は「米軍がこの枠組みに入らないことが反故された場合は最大限の抗議をし、滑走路に座り込みをしてでも阻止したい」旨のご答弁をされていましたが、意気込みではなく、米軍が利用しない法的な保証について、どのように考えているのかお伺いします。
また政府のいう「平素からの利用」とは、自衛隊等による日常的訓練であり、地元住民から、訓練に伴う騒音や事故発生の危険が心配されています。これらの対応をどう考えていますか。
さらに「国家安全保障戦略」に基づく訓練を日常的に行う施設は、相手国の攻撃対象とされる可能性が高くなると考えますが、県民の安全をどう担保するのでしょうか。
《答弁》 宮﨑知事
お答えいたします。熊野白浜リゾート空港は2025年4月1日に特定利用空港に指定されたところです。
この取組は、平素における空港の利用を対象としたもので、訓練の具体的な内容は自衛隊や海上保安庁において検討されています。県としては、災害訓練の実施を想定しているところですが、防衛に係る訓練利用の可能性がないとまでは言えません。
三栖議員、それから藤本議員からも質問をいただいたのですが、当空港における防衛訓練の要請があった場合、実施の是非について関係省庁とよく議論してまいりたいと考えています。
いずれにしても、住民の安全が守られるのは当然のことと考えております。必要があれば、議員の皆さんとも相談しながら、和歌山県の見解をしっかりと政府に伝えていきたいと考えております。
なお、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態における空港の利用調整については、従来どおり2004年に制定された武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律等に基づき行われます。
米軍の参加についてですが、特定利用空港の枠組みは、あくまで関係省庁とインフラ管理者との間で設けられるものです。国から、米軍はこの枠組みに参加することはないと聞いておりますが、県としてもこれを前提として指定を受け入れており、守られない場合には最大限の抗議を致してまいります。
議員は近隣への騒音や事故について心配されておりますが、自衛隊や海上保安庁は、従来より事前に訓練内容や実施日程を空港管理者や関係自治体へ説明するとともに、空港周辺の方々に及ぼす影響が最小限となるように努めています。
攻撃対象となる可能性が高まるのではないかという点についてですが、この取組は新たに自衛隊の基地や駐屯地を設置するといったことを目的とするものではありません。特定利用空港の指定後も空港の運用や利用に大きな変化はなく、現に熊野白浜リゾート空港は従前と変わらず運営しています。従って、指定されることで当該施設が攻撃対象となる可能性が高まるとは言えないと認識をしています。
この取組により、連絡調整体制が構築され、県の職員と自衛隊や海上保安庁の職員が顔の見える付き合いを行い、関係部局と円滑な調整ができること、また、空港の活用方法などを訓練等を通じて事前に確認することにより、発災時の災害派遣等が迅速に行われることが期待できます。
このように、県としては特定利用空港となることにより、大規模災害時の迅速な救助や物資の支援につながるため大きな意義があると考えており、関係市町と密に連携をとるとともに、県民の皆様に丁寧に説明をしてまいります。
《コメント》奥村規子 県議
米軍の使用を否定していますが、「防衛訓練の可能性がないとは言えない」とも答弁されました。
2014年の県主催の防災訓練には危険な米軍オスプレイも参加し、白浜空港を使用しました。白浜空港は米軍機の低空飛行訓練ルート「オレンジルート」の付近にあります。「特定利用空港」となると、米軍機の使用が始まるという懸念が高まるのは無理もありません。近隣への騒音や事故の心配の声も聞こえてきます。実際に騒音の測定などを行うべきではないでしょうか。
「『特定利用空港』に反対する田辺・西牟婁連絡会」の住民のみなさんから要請書が知事に提出されています。
私は、熊野白浜リゾート空港の「特定利用空港」指定は撤回すべきだと思いますが、まず住民の方に十分な説明をし、意見をしっかり聴いていただきたいと申し上げ、一般質問を終わります。