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【村岡キミ子議員の一般質問】

一 介護保険について
@ 保険料、利用料の減免制度を
村岡 来年四月の介護保険実施まで七月余りとなった。国民の関心も高まる中、不安と期待が交錯している。
 「少ない年金で、夫婦二人で二日で五百円の食事代で過ごしている。保険料、二人で最低でも一ヵ月三千円にもなるの、とても払えないよ、問題だ。利用料一割負担も払えない」と改善を求める切実な声が出されている。
 国は、来年高齢者医療費の自己負担増や年金給付の五%カットの方針を検討し始めている。低所得者の方の実態を知っているか。生きる権利を奪いかねない国の政策を見過ごすことはできない。住民税非課税の低所得者の保険料は無料にすることも含め、減免制度をすべての自治体で実施すべきだ。四十歳から六十四歳の人の場合、長引く不況の中、倒産、失業した人も多く、国保料を払いたくても払えないで苦しんで、自殺者もでている。私たちの調査でも、十一自治体で国保滞納者は、七千九百四十五世帯となっている。国保料の収納率も近年低下の一途をたどっている。介護保険がはじまれば上乗せされる保険料で、払えなくなる人は確実に増える。
 低所得者の保険料の減免制度の実施は絶対に必要だ。国に積極的に財政支援を働きかけることを願う。関係部長の意見を聞きたい。
 ■小西福祉保健部長
   低所得者に対する減免制度を拡充する場合、国の強い支援策がない限り、市町村の介護保険 運営に影響を与える。県としても低所得者にかかる減免等の配慮は、円滑な保険運営に必要不  可欠であり、要件の拡充、市町村負担の支援など、国に要望して参りたい。

A 要介護認定による自立要支援者の受け皿
村岡 私たちは、この夏、県下の自治体や特養ホーム、ディサービス施設などを訪問し、介護保険制度について、懇談をさせていただいた。特養施設では一割から一・五割の人が、ディサービスにくることによって、明るくなったり、機能が回復したり、友達と話ができるようになったなどの効果があるという話を聞いた。こうした人を守るためにも、国が四月一日から実施している在宅高齢者保健福祉推進支援事業を、実のあるように実施するよう県は積極的に支援、指導をするように望む。また一億四千七百万円の予算を組んで進めている在宅高齢者保険福祉推進支援事業、具体的にどのような事業なのか、聞きたい。
  ■小西福祉保健部長
  特養ホームの入所者が自立や要支援と認定された場合、五年間の経過措置を経た後、一人暮 らしが困難な高齢者に対する施設サービスとして、ケアハウスや高齢者生活福祉センター等の整 備促進を図ることとしている。また在宅の高齢者に対して、在宅高齢者保健福祉推進支援事業に より生活支援事業、生きがい対策事業等で、配食サービスや生きがい対応型ディサービスなどを  地域の実情に応じて市町村が取組めるよう、総合的に推進していく。

B 基盤整備、特養ホーム、ホームヘルパー
村岡 特養ホームは不足している。国に対し、用地費や建設費の補助率の引上げを強く求めよ。ホームヘルパーの目標達成率も、いま六十四・六%だ。問題は、都市部より山村地域におけるホームヘルパーの人材養成と研修である。どのような対策を持っているか。
  ■小西福祉保健部長
  昨年全国一斉に実施した在宅高齢者実態調査によると、本県で、特別養護老人ホームに入所  が必要と考えられる要介護状態にある待機者は、六百七人となっている。特別養護老人ホーム建 設の補助制度については、国の動向を見ながら対応して参りたい。ホームヘルパーの確保につい て、本県では三十一ヵ所で養成研修を行っており、特に、古座川町や大塔村などの山間地等にお いて、平成六年度より行っている。山間、へき地での養成研修について、国において検討している ので、その動向に注目していく。

C 市町村は、指定在宅サービス事業者になっているか、その数
村岡 本県で、これまで在宅サービス事業者に自治体はないか。この際、過疎地域の受講料に対する財政的支援を考えてみてはどうか。部長の所見を聞く。
 ■小西福祉保健部長
  在宅サービス事業者について、九月十日第一回目の指定を行い、訪問介護等十九事業者を数  えているところだ。市町村の事業者申請はない。ホームヘルプサービスは従来より市町村が社会 福祉協議会等に委託実施してきた経緯があり、今後とも民間事業者が中心になるものと考えてい る。

D ホームヘルパーの労働条件の実態調査を
村岡 ホームヘルパーの補助制度も変わり、ヘルパーの賃金も不安定になってきている。経験豊かな質の高いヘルパーを確保することと、身分を安定させ、専門職として働きがいを持って介護できるよう職業の確立を保障するために自治体は頑張らねばならない。県としてホームヘルパーの労働に関する実態調査をしてみてはどうか。部長の所見を求める。
 ■小西福祉保健部長
  今後、ホームヘルパーについて、介護保険制度の中で新しい状況が生じてくるものと予想される が、重要性は一層高まってくるものと考えられる。必要に応じて、実態調査を行うことも考えている 。

E 高齢者住宅改造、日常生活用具事業の拡充
村岡 本県は、高齢者福祉制度として、高齢者在宅改造補助事業や生活用具給付事業を進めてきた。所得制限の撤廃などの改善を行うことを求めたい。
 ■小西福祉保健部長
   介護保険制度の中で、住宅改造や福祉用具の支給サービスが位置付けられている。県の単  独事業の高齢者住宅改造補助事業や要援護老人生活補助用具給付事業を行っているが、介護  保険制度との整合性を図りながら、事業の存続も含めて検討する。

F 家族介護手当の創設を   
村岡 家族介護者に対する介護手当の創設だが、介護保険ではホームヘルパーの資格を義務付け、介護労働の半分はよその人の介護も義務付けるなど、現実にあわない制度である。介護手当ての創設を、ぜひ県単独の事業として検討願う。率直な意見を聞きたい。
  ■小西福祉保健部長
   過疎地域等においては、サービス基盤整備が進みにくいという実情から、国において、へき地 等に地域を限定して一定の条件のもと、家族の介護を保険給付の対象とすることについて検討を  行っている。こうした国の動向と介護保険制度の趣旨からみて、県単独の家族介護手当の実施に ついては困難であると考えている。

二 住友金属と県、市の環境保全協定について
@ 理念について
村岡 和歌山県、和歌山市と住友金属和歌山製鉄所との環境保全協定(公害防止協定)の改定が行われた。改定に当っての県の基本的な立場について尋ねる。新協定の前文はこうなっている。「この協定は、地域住民の健康を守り、快適な生活環境の保全を図るとともに環境への負荷をできる限り低減するため、和歌山県及び和歌山市(以下「甲」という)と住友金属工業株式会社(以下「乙」という)とは、乙の和歌山製鉄所に関し、環境保全のために最善の措置を講じ、地域住民の福祉の確保及び地球環境の保全に資することを本旨として、次のとおり締結する」。これでは県、市と住友金属が和歌山製鉄所の公害抑制のために連帯責任を負っているかのような内容になっている。行政の立場としてはおかしいのではないか。当局の見解を聞く。
  ■大井生活文化部長
  このたび締結した協定について、行政及び企業のそれぞれの責務、それぞれの関係が明確でな いということだが、県環境基本条例において、環境保全についての基本理念を定め、その中で県  の責務及び事業者の責務を明確に定義している。本協定にも当然適用されるものだ。

A 地元住民の意見も聞かず、説明もない、議会の審議を
村岡 住金公害をめぐって、地域住民の方からまだまだ深刻な状況にあることが訴えられ、県、市もまだ公害はあるという認識を示してきた。ところが今回の改定は、公害に苦しんでいる住民の意見を聞くこともなく説明すらされず、また議会にかけることもなく、締結後に報告されたのみだ。なぜ住民の意見を聞くこともなく、議会での議論もないままに行われたのか。納得できる理由を示せ。住民への説明会を開くべきだと思うがどうか。
 ■大井生活文化部長
  この度の協定の改定に当っては地元説明は行っていない。今回の協定見直しの契機となった和 歌山発電所に係る環境影響調査書については、平成九年一月六日から二月五日までの縦覧が  なされ、環境影響調査書の審査に関しては電源立地アドバイザーの助言も受け、審査結果を県議 会議員には事前に送付している。今回の改定に当っても住民の意見を踏まえながら、行政の責任 のもとで、和歌山市と連携し改定を行った。地元住民からの要請については和歌山市と協議して  参りたい。

B 大気汚染対策県下最大の排出、共同火力の脱硝装置
村岡 協定の改定内容の大気汚染に関して、硫黄酸化物については、住金が出した九七年四月の総合アセスメントで、現況が一時間当り四百四十六・七ノルマル立米で、将来も同じ値です。協定は、このアセスメントの排出量をそのまま規制値としていて、住金は、削減の責任を負わなくてよい内容になっている。住友金属は、いまなお、県下最大の公害発生源である。県は、この協定の改定に当って、どういう態度で臨んだのか聞きたい。
 ■大井生活文化部長
 今回の協定の基本的な考え方は、総合環境アセスメントの数値及び新規規制項目などを盛り込むことであった。協定の排出量は改善が必要なものであるが、数値については、県として地域総合シミュレーション調査を実施し、環境基準を上回らないことを確認し、地域の環境保全が図られるよう努めているところである。

C 降下ばいじんについてー窓を開けて生活できる環境を
村岡 住金が公害施設沖出し中止に際して住民に約束をした、窓を開けて生活できる環境は、まだ達成されていない。住金の平成九年度の実績は、排出量一時間当り百九十八・一s、周辺環境値県測定では年最高値月当り七・八d・`u、年平均値一ヵ月当り四・一d・`uである。現状の排出量より削減されなければ、住金の住民との約束は果たされない。が、協定値は排出量を一時間当り二百八十二s以下とし、周辺測定値でのばいじん量を年最高月当り八d・`u、年平均値月当り五d・`uとしている。現状を容認するものとなっている。県当局は、周辺地域の降下ばいじんの現状をどう考えているのか。住金が住民と約束した環境を実現することを保障しないような規制値を定めたのは、どういうことか。答弁を求める。
 ■大井生活文化部長
  今回の改定では、粉・ばいじん対策の強化などにより、新たに月間値の年平均値を五d、月間  値を八dとする目標値を定めたところである。

D 騒音、悪臭、振動について
村岡 悪臭について。これも平成九年度実績より大幅に緩い規制値となっている。騒音、振動は三ヵ月に一回、悪臭は二ヵ月に一回測定するとなっているが、一時的に極端な状況が発生することもあり、常時測定に改善すべきではないか。騒音、振動、悪臭などについて、住民が住金に苦情を訴えても解決されないときは、住民は県・市に訴え、県・市は解決に乗り出して、住金を指導することが必要だと、私は考える。どうか。
 ■大井生活文化部長
  公害苦情については、第一次的には市町村が責任を持って当ることとなっている。県への苦情に 対しては、誠意ある対応が図られるよう事業者を指導する。

E 地球環境問題と新しい法規制についてー温室効果ガス、ダイオキシン
村岡 「地球環境の保全」という点では、温室効果ガスに対する新たな規制が当然含まれるべきだと考える。それが一切規定されていないのはなぜか。住金の温室効果ガス排出の削減を協定してこそ地球環境の保全に資することになる。当局の考えを聞く。
 ダイオキシン特別対策法や大気汚染防止法改正などでダイオキシン発生源への法規制が行われ、これへの対応として、新協定では年一回の測定が加えられただけ。ダイオキシン発生の規制も当然協定されなくてはならない。当局はどう考えるか。
 ■大井生活文化部長
  温室効果ガスの排出抑制については、国全体で取組むべき課題であり、今後国の動向を見なが ら適切に対応して参りたい。また、ダイオキシンの測定義務及び測定の頻度については、大気染  防止法には定められていないが、今回の環境保全協定の改定において測定頻度及び報告義務を 定めたところである。

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