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【鶴田至弘議員一般質問】
一 西口知事の四年間をふりかえって
鶴田 概括的な総括
 百三十六の抱負を掲げてきた知事として、所期の目標との関係で見ていかなる四年間として総括しているのか。まず概括的な所信を聞きたい。
 ■西口知事
  きのくにホットラインの開設、女性百人委員会の設置、動く県庁などの開かれた県政を心が けるとともに、ふるさとに自信と誇りを持とうと訴えたことに、多くの県民の理解が得られたこと をうれしく思う。
  近畿自動車道紀勢線や京奈和自動車道をはじめとする基盤整備、県立医科大学の統合移 転整備完了や福祉のまちづくり条例の制定など医療福祉の充実、産業情報センターの整備  など産業の活性化、また和歌山ビッグホエールのオープンや県立橋本体育館の設置など文 化・スポーツの推進といった百三十六のプロジェクトをはじめとして、各分野で数々の成果を  得ることができた。

鶴田 電源立地をめぐって
 この期間に知事は、和歌山火力発電所、御坊第二火力と、二つの火力発電所の立地を認可した。和歌山火力については、住友の公害除去のための埋立地であったところへの新たな公害発生源の誘致として地元の人の大きな不安と怒りを呼んだところだ。知事は、西坊沖埋立地の転売、LNG火電の誘致の経過、結果を含めて今どう考えているか。
 御坊の第二火電についても、梅の育成不良と御坊火力の排気との関係が解明されていないという理由で、大きな反対運動あるいは認可を延期してほしいという要望が起きていた。知事は立地に向けて早々と許可をした。育成不良の原因解明より電源立地が優先された。その解明を待てないほど電源立地を急がねばならない理由はなかった。急いだからよかったという思いを今も持っているのか。
 ■西口知事
  和歌山発電所計画及び御坊第二発電所については、電源立地の基本的な考え方に基づ  いて地域振興の立場で対応してきた。両発電所計画については、埋立地利用計画の変更や 梅の育成不良の問題など、慎重に検討を重ねた結果、一昨年の電源開発調整審議会に際  して、総合的に判断し、電源開発基本計画に組み入れることへ同意の回答をしたものであり 、適正に対応してきたと考えている。

鶴田 和歌山下津港計画について
 雑賀崎埋め立て問題について聞く。この計画について、反対の立場から再三質問しているので、幾つか問い残している点を聞く。
 一つは、最初の計画が新聞に抜かれるまで、なぜ秘密裏に事が運ばれていたのか。そういう進め方が正しいやり方だったと今も考えているか。
 次に、計画の変更について。国の港湾審議会で意見が付された。それに基づいて、計画が変更された。住民からは十万人の署名を寄せて早くから反対意見が出ていた。その時点で計画の変更はなされないで、国からの指摘で初めて変更に傾いた。地元の声よりも国の声。おかしいとは思わないか。
 この際、今一度土木部長に聞いておく。雑賀崎の埋め立てを含めた港湾整備の事業費はいくらぐらいを予測しているのか。答弁を求める。
 ■西口知事
  私は就任以来、広く県民の意見を施策に反映するために開かれた県政を心がけてきた。和 歌山下津港計画の改訂については平成四年から関係市・町や学識経験者、県内関係団体  の意見を聞きながら、平成九年八月、九月の地方港湾審議会の審議を経るなど、一連の手 続きを踏んで策定された。
  平成九年十一月の国の港湾審議会での意見や広く県民からの賛否両論の意見を聞き、本 県のすばらしい自然や歴史・文化と基盤整備をいかに共存させていくのかを考え、議会にお  いても見直しについて柔軟に対応すると言明し、担当部局に指示して取り組んできたところだ 。具体的には、昨年より、景観検討委員会を設け、景観の保全に対する検討に入った。さま  ざまな機会を通じて意見をいただき、委員会や審議会の公開にも努めてまいった。
 ■大山土木部長
  事業費は約五百億と見込んで費用と便益を比較している。
  費用については現在価値に換算するため、社会的割引率四%を考慮して約三百五十億円 と見込んだ。これに対し便益は陸上輸送コストの削減効果、建設残土や浚渫土砂の輸送コ  ストの削減効果、土地の残存価値等の総和を現在価値に換算すると、約七百億円となる。

鶴田 同和行政
 同和事業の目的、水平ならしめるという目的は、基本的に達成されたと私は思っている。そういう段階での特別対策は、社会に人為的にいつまでも同和地区を残すということにつながりかねない。この四年間を振り返ってどういう所信を持っているか。
 ■西口知事
  同和行政について、これまで生活環境の改善をはじめ、各分野で大きな成果を収めてきた 。この間、地対財特法の一部改正や、人権教育のための国連十年国内行動計画の策定、人 権擁護施策推進法の制定がされた。このことは、同和問題の早期解決を図るための新たな  段階に対応したものである。県としては、同和地区に教育・啓発、産業・就労等になお課題が 残されていることから、一日も早い解決に向け取り組む。

鶴田 財政硬直化の進行
 この六月現在で、県債残高は、約六千四百億になってしまった。このうち二千億は、西口知事の時代になってつくられた借金だ。この四年間とりわけ目立ったものは、国の経済対策にこたえた公共事業、県単独事業の増加。公共事業を中心にした景気対策が、その波及効果において期待するほどには働かず、景気対策イコール公共事業と図式的に対応することなどは大いに反省すべき点ではなかったか。この四年間の財政運営等にいかなる所信を持っているか。
 ■西口知事
  累次の景気対策の結果、地方財政に硬直化が進んでいることは事実だが、景気対策の重 要性に鑑みれば、やむを得ないと考えている。中長期的観点から財政の健全性を確保するこ との重要性は十分に認識している。歳入動向や基金残高の状況を踏まえ、歳入動向の見直 しに取り組み、重点的・計画的な財源配分と効率的な行政運営に、より一層努めること等を  通じて、県勢の発展と県民福祉の向上に最善を尽くしてまいる所存である。

二 日の丸、君が代について
鶴田 教育への不当な権力の介入
 君が代の歌詞の解釈まで時の政府が定め、学校においてかく指導すべしとすることは、学校教育に対する時の権力の不当な介入ではないかという問題だ。戦前、戦後の経過からみると、君が代の歌の解釈は時の政治によって変わっている。詩歌の解釈は時の政権によって定められるというものか。君が代という三文字を日本語として到底無理な解釈、「象徴天皇をいただく我が国」と解釈させ、それを教育に持ち込むというのは、余りにも乱暴な政治の教育への介入ではないか。
 ■小関教育長
  国歌「君が代」の歌詞の意味については、「日本国の下において天皇を日本国及び日本国 民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」とする文部省見解に基づい て指導してきた。今回の法制化に際し国歌についてこうした解釈を踏まえた形で政府見解が 示されたところであり、今後ともこれを基本として指導していく。

鶴田 内心の自由について
 国民全体がそうであるように、教師にあっても、日の丸にどれだけの敬意を抱くか、君が代をどのように解釈し、その思想にどの程度共感し、あるいは共感しないかは、憲法第十九条に保障された個人の内心の自由の問題である。憲法で定められた思想・信条の自由が教育公務員なるがゆえをもって奪われる、児童生徒に対しては教育公務員からの起立斉唱に命は実質的強制であり、内心の自由が奪われる。
 質問はただ一つ。思想信条の自由を保障した憲法の存在にもかかわらず、教育公務員を現実的に拘束している指導要領の国旗・国歌の起立斉唱を命じる指導条項こそ教師、児童生徒の内心の自由を奪う大本になっている現実を教育長はどう考えているか。
 ■小関教育長
  教職員にあっては、学習指導要領等の関係法令に則って教育を行う責務があり、その職務 の執行にあたって、個人の思想・信条を持ち込むことは慎まねばならない。このことは個人の 思想・良心の自由を拘束することにはならない。また、児童生徒に対する指導においては、そ の内心にまで立ち入って強制するものではないと理解している。

鶴田 三番目の問題は、学校の儀式や行事をどのように行うかは全国一律のものではなく、校長を含めた全教職員の総意、児童生徒を含めた総意によって行われるべきではないかということだ。日の丸、君が代がその政治力によって強引な解釈と意義付けで学校行事に持ち込まれるならば、学校の儀式や行事が単なる儀式となり、教育的豊かさを喪失していくのではないかと憂える。学校の儀式や行事は学校の裁量に任されるべきだろうと思うがどうか。
 ■小関教育長
  入学式や卒業式等の学校行事を含めた教育課程については、学習指導要領に則り、教育 委員会の指導・助言のもと、地域や学校の実態及び生徒の特性等を考慮して学校長が編成 するものである。

三 緊急雇用対策について
鶴田 緊急雇用特別基金を確実な雇用につなぐために
 緊急雇用基金について聞く。緊急雇用特別基金として千二百五十人を六ヶ月の期限付きで雇用しようとするものだが、果たしてそれが有効に働くのかという懸念と、よりよく雇用問題の解決に役立ってほしいという思いから質問する。
 大半が民間委託ということもあって、その確実な遂行が保障されていないという問題がある。もともと基金の創設自体が新たな就業への中継ぎというものであるが、本来はそれが新たな雇用と連動することが望ましい。この制度の積極的な活用をどう考えているか。
 ■上山商工労働部長
  緊急地域雇用特別交付金は、六月に国の産業構造転換・雇用対策本部及び産業競争力  強化対策に基づき、国において補正予算措置されたもので、本県には十五億二千二百万円 が交付される予定。市町村事業を含め、平成十一年度から十三年度にかけて、四十二事業 を実施する計画を策定したところである。その雇用効果としては、事業実施による雇用・就業 と人材育成事業をあわせて二千五百人を見込んでおり、できるだけ多くの雇用・就業機会を  創出するよう、事業を委託する企業等に求めていくなど、新たな雇用就業の機会の創出に努 めてまいりたい。

鶴田 県独自の対策を
 この事業の市町村が扱う分野で、和歌山市が六事業、金額にして約一億円の申請をしていたが、採用されたのは三事業、約三千四百万円にしか過ぎない。他の市町村でも、求めたものの半分あるいは三分の一の採択だったそうだ。国の枠は決まっているが、現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、この制度、この種の制度の県独自の施策の拡大を求めたい。どうか。
 ■上山商工労働部長
  県独自の施策については、財政状況等から極めて厳しい。この交付金を最大限に活用して 事業効果を高める努力をしてまいりたい。
  今回実施する人材育成事業は、介護保険導入に向けたホームヘルパーの育成など、今後 、雇用・就業機会の拡大が見込める分野の人材を育成するものであり、新たな雇用・就業の 機会につながるものと期待している。

四 住友金属の経営プラン、その影響と対策
鶴田 住友金属全体で来年度、二百億円の黒字を見込みたいとして、和歌山製鉄所で二百億円のコスト削減を図りたい、そのため企業内の労働生産性を向上させること、発注形態のあり方を含めた外注政策を抜本的に改め、外注作業費、物流量を徹底的に切り下げていくという。それによる人員削減も全体で七百人に及ぶ。雇用を和歌山関連で四百人削減されるとしている。失業者が増加する可能性がある。さらに、外注政策の抜本的転換は、同社に関連した中小零細企業に大きな不安を与えている。外注費三十%ダウンというのは、下請け企業の息の根がとまるほどのものだ。大企業には社会的責任がある。住友への申し入れに対する回答、それは県民にとってどう評価されるか。当局として、住友金属に対して下請け企業の経営と労働者の生活を守る立場から適宜申し入れをするようにしてはどうか。
 ■上山商工労働部長
  知事は、住友金属の社長に、下請関連企業の経営安定への配慮について、強く要請した。 副知事を座長とする特定企業対策連絡協議会としても住友金属和歌山製鉄所に雇用面や  下請け企業の実情に対する配慮について要望した。
  今後、協議会として、関連企業等の動向を把握するなど情報の収集を図り、当面する問題 について、その都度対応していきたい。

五 新高卒者への求人の現状と対策
鶴田 大変な就職難だ。現在の状況と今後の展望をどのようにもち、いかなる努力をしようとしているのか。
 ■上山商工労働部長
  県としては、七月に三十人以上の企業約千百社に対し、求人依頼を行うとともに、八月に  は各職業安定所長に対し、新規学卒者対象の求人開拓の実施について指示を行い、各高  校の進路指導担当者と連携を取りながら所長を筆頭に積極的な求人開拓に努めているとこ  ろである。就職未内定生徒の就職支援策として、未充足求人企業の把握に努め、求人事業 所一覧表を作成し各高校を通じて提供するなど未就職者うを出さないよう努めてまいりたい。
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