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高田由一議員の質問(十二月九日)
【1】農業問題について
@ 梅枯れ問題
高田 十一月二日の読売新聞で西口知事は、梅枯れ問題について「原因究明の結論を今年度中に」と語っている。知事の強い決意であると思うが、農家のなかからは、根本的な原因がどういう方面にあるのかさえわからない現在の状況で、来年三月末までに結論など出せようがない。何か結論を強引に押しつけられるのではないかという不安が出ている。
「梅生育不良対策に関する試験研究成果」(現在までに得られた知見)では、「摘らいや切り返し剪定の着果制限で、徒長枝が増加し樹勢が回復」、「改植は適切な土壌改良と製枝剪定で九年目も再発しない」、「湿害園は排水対策と切り返し剪定で樹勢が回復」というふうに、これらの対策で樹勢は回復するように思える。しかし、事実はいろいろ試験研究をやったなかで一部にそういう事例もあった、ということにすぎない。例えば、県に研究用にと畑を貸しているある農家は、「県は衰弱症が発生しないといっているが、十年生の木に九〜十キロしか実がならないようにしている。これだと一反で三百キロ。せめて反に一トンくらいの収穫ができるようになってからものをいってほしい」といわれていた。
 うまくいかなかった試験園のことは何も書かず、うまくいったところだけ書く。こんな試験研究があるか。こういう現状とはあわないものをいくら出しても、ますます農家との溝は深まるばかりだ。知事としてこの「試験研究成果」の報告書にたいする感想をうかがいたい。三月までの結論はこういうものでいいのかどうか。
 ■西口知事
  個々の研究成果を示したもので、原因を特定したものではない。また、一日も早く原因究明をしてほしいという希望  的観測を申し上げたもの。

高田 みかん園芸課に「来年も県の梅対策研究会はつづけていくんでしょうね」と聞くと、「現在、検討中」。これだけ梅枯れが進んでいるのに来年も研究会を継続するかどうか検討するほうがおかしいではないか。当然、継続していくべきだ。県梅対策研究会の来年度からの活動についてどのように考えているのか。

 ■島本農林水産部長
  年度末を一つのメドに研究会としての一応のとりまとめをお願いしている。それを踏まえて、試験研究を一層推進す  るために専門家の指導・援助を得られる体制を考える。

高田 知事選のさなかに梅枯れ対策期成連盟から要望書がだされ、そのなかには私が六月議会で求めたばいじんの暴露実験も入っている、この検討状況はどうなっているのか。御坊火力発電所から排出されているばいじんを採取して農家にも渡してほしいという項目もあり、ばいじんを採取して提供するよう県から関西電力に要望されてはどうか。
 ■島本農林水産部長
  煤じんの直接暴露試験は科学的に評価しうる調査ではないが、農家の要望が強いことから、それに変わる方法とし  て、土壌と梅樹体内の成分比較などに取り組む。煤じんのサンプル提供については、県から申し出る考えはない。

高田 梅枯れ原因究明シンポジウム開催実行委員会より、梅農家の推薦する学者、県うめ対策研究会の学者、紀南農協と関電の「梅生育障害対策研究会」の学者が一堂に会して原因究明のための公開シンポジウムを開こうという提案がなされている。うめ対策研究会の学者あるいは県の研究者自身がこのシンポジウムに参加するようにしてはどうか。
 ■島本農林水産部長
  参加については難しい。

A ミカンの安値への対策について
高田 今年のミカンは極早生から安値がつづき、ある地方新聞は「みかん市況の泥沼悪化がつづく。このままで市況が回復しないと、みかん産地の有田地方は長引く深刻不況に加えて大きな打撃を受ける。みかん安値の非常事態。売り上げ推定二百億円がこのままでは三分の一の六十億円へガタ落ち」と報じている。
 大阪本場の和歌山産は、Lの十キロ箱の安値での比較ですが十月二十四日が五百七十五円、十一月七日が七百八十八円、十一月二十一日には少し持ち直して千五百七十五円、十二月五日では、七百三十五円。箱代や出荷経費で約六百円が必要であり、手取りがあるかないかというレベル。一昨年もたいへんな安値であり、県は、JAの緊急融資に対して利子補給制度をつくり、農家から喜ばれた。こうした対策を事前に準備しておくことが必要ではないか。
 県の主要農産物であるミカンや柿農家が安心して生産できるためには、生果の価格保障制度がどうしても必要だ。その検討を求める。
 ■島本農林水産部長
  低利の緊急融資について検討してまいりたい。
  価格保障については、新たな生果の価格保障制度については、現在のところ難しい。

B 農作物の鳥獣被害対策について
高田 西牟婁郡一円から、鳥獣被害対策を何とかしてほしいとの声があがっている。また、サルの被害では、海南市でこの夏、高津(たかづ)の桃が大きな被害を受けた。被害は和歌山市、海南市、貴志川町におよび、被害作物は、サツマイモ、かぼちゃ、トマト、トウモロコシ、タケノコ、桃、ミカン、栗、ビワ、柿、豆、稲に広がっている。専門家によると、大池遊園で飼育されていた台湾ザルが海南市の大旗山(おおはたやま)を囲む丘陵地を根城としています。離れ猿としては、遠くは紀南の方面に広がり、日本猿との混血が拡大しているという。一方で、日本の野生鳥獣のうちツキノワグマなど絶滅の危険にさらされている。
 「改正」鳥獣保護法では、知事は「著しく増加又は減少した鳥獣」がいるときは「特定鳥獣保護管理計画」を策定することができ、その際、国が定めた捕獲の禁止や制限、狩猟期間等の制限を緩和することができる。日本共産党の国会議員団はこれに反対した。法改正が鳥獣の保護より駆除に偏っており、鳥獣保護の体制が不十分な状況で、都道府県が充分な調査ができないまま保護管理計画を導入すれば、鳥獣の安易な駆除が横行する恐れがあるため。また、駆除が妥当な場合でも、駆除する鳥獣の個体数や生態、行動範囲などの調査を行っていないとどれだけ駆除するのが適当なのかわからない。科学的で綿密な調査のうえで保護管理計画を立てなくてはならない。現在、和歌山県ではツキノワグマのみに保護管理指針というものが策定されているが、今後、保護管理計画をどのような種に対し策定しようと考えているか。また、計画の策定作業はどういったスタッフがあたることになるのか。
 有害鳥獣に対して駆除の結論をだすまえに防護、つまり柵や網などで被害を未然に防ぐことが大切だが、国の補助はあっても地元の負担金が高くてなかなかすすまないという状況もある。その対策をさらに充実させるなどしてはどうか。
 ■大井生活文化部長
  対象として考えられる鳥獣はシカ、猿、イノシシがあり、絶滅の恐れがあるものとしてはツキノワグマ。計画の策定に あたっては、県、関係市町村、学識経験者、農林業団体等からなる検討会を設置する。

【2】交通安全施設の整備について
高田 県内の道路整備は高速道路、国道、県道の整備がすすんできた。熊野博を契機に国道三一一号線の整備が完了した。しかし反面、和歌山県内の交通事故は年々増加し、人口十万人あたりの死傷者数は、平成八年度で全国ワースト5位、平成九年度でワースト八位で常に上位の状態。とくに国道三一一号が通る町では交通事故の増加率が高く、平成元年と平成十年を比べると、県全体で一・二六倍の増加にたいして中辺路町では三・一一倍、本宮町では三倍。増加率が三倍をこえたのは県内でこの二つの町だけ。事故の増加の背景には、車のスピードを出しやすい新しい道路の開通にふさわしい交通安全施設の整備が遅れていること。また、交通量の増加にたいして、道路の補修や維持管理が追いついていないことなどが原因ではないか。和歌山県は県道の総延長に対する歩道の設置率が近畿二府四県では最も低く約一二%。また、県道のキロ当たりの維持管理費、これは県によって雪が多いか少ないかなど単純に比較できないが、近畿の多い県の5〜6割程度。こうした交通安全や道路の維持といった県民の命にかかわる予算はここ数年、減っているが、今後、増額していくべきではないか。
 国道であれ、県道であれ、県管理道路のトンネル内の照明が非常に暗く、危険だ。トンネル内の照明は、昼間、外が明るいときには特にトンネルの入り口部分を明るくして、急に見えにくくならないように工夫がされ、トンネル設計の段階で標準的な外部の明るさ、トンネルの長さ、交通量などを勘案してトンネル内の照明を設置する。外が明るいときにはトンネル内の全部の照明が点灯するというのが普通なのだが、国が直接管理する国道四二号線のトンネルは晴れた日の昼間、全部の照明が点灯していた。しかし、県管理の三ケタ国道と県道のトンネルは調べただけでも十三の県管理トンネルのうち全部点灯していたのはたった三つであり、これは明らかに基準違反、安全軽視。どうしてこういう状態になっているのか。
  ■大山土木部長
  交通事故の原因は、運転者や歩行者等、個々人の不注意に基づくもの。交通安全対策予算の確保を国に要望して いく。道路維持予算の効果的、効率的な執行に努める。
  トンネルの照明について。電球切れについては請負契約により随時に実施している。電球切れ以外については、原  因を究明し、緊急度の高い箇所から順次修理をおこなう。昨年度は滝尻トンネルを修理し、今年は鴨居トンネルを予定 している。特に長いトンネルは保守点検を業務委託しており、他の長いトンネルについても委託契約を進める。

【3】航空工学系大学について
高田 十二月六日に航空工学系大学基本計画検討委員会の最終報告書がだされ、白浜町の旧空港跡地に仮称和歌山工科大学の建設をする計画が知事に提出された。県内の高校をでた生徒が県内の大学に進学する率が八・四%、全国四十六位と低迷しているなか、和歌山市周辺以外でも高等教育機関を設置することについては基本的には県民の理解がえられるものと考えるが、今回の計画は、「公設民営」という具体的な方向がだされてきたのが、今年六月以降であり、県費負担約百五十億円のかかる事業計画だと明らかになってからまだ間がない。今後、十八才人口は、いまから十年後の平成二十一年で百二十万人と現在の七五%に減少するとされている。また、授業料も含めて学生が一年で納めるお金は百四十二万円もかかる計画だが、この不況のおり、学生が思ったように集まるのかどうか、大変心配。採算性の見通しにはどうか。
 ■安居企画部長
 検討の結果をいただいたところであり、今後、県として十分に検討していく。

【再質問】
○農業問題について
高田 今後の試験研究成果の公表では当然、失敗したり悪い方の試験結果も載せていくのか。
梅シンポジウムへの参加について、これまでの個々の研究はあるわけだから、それをもって参加すればいいではないか。なぜ参加できないのか不思議。研究の取りまとめが終わったら参加するのか。
農作物の鳥獣害については、いま本当に緊急な対策が求められている。いまどれだけしっかりした保護管理計画をつくるのかが問われている。梅枯れの問題では、いままで基礎的な研究がなかったことが、いま非常に苦い教訓になっている。鳥獣の問題でも、しっかりした基礎調査をすることが、被害対策を後手、後手に回らないようにするためにも大切であり、十分な予算措置をとるよう要望したい。
 ■島本農林水産部長
  意図的に作成したつもりはないが、今後は十分に配慮する。シンポジウムへの参加については、とりまとめの見込み が立った時点で考える。

○交通問題について
高田 事故の原因を結局、「個人の不注意」というのは納得できない。歩行者や自転車に不注意がおこっても、事故にならないようなハード面での整備が行政に求められている。
トンネルの照明は、調べたなかではまともに動いてない方が圧倒的に多い。トンネル内の見えにくさによって事故などおこったら、県行政の過失責任を問われかねない状況だ。定期的な点検をやってくれるのか。国管理トンネルはすべて月一回点検をしている。県管理のトンネルは約百カ所以上あるのに、三カ所しか定期点検やっていない。そのうちの一つが水上栃谷トンネルだが、これが今田辺・西牟婁郡で一番暗い。
 照明が暗いのはかなり意図的な操作というか故障のほったらかしがあるのではないか。@古いトンネルでも真新しいトンネルでも同じように暗い、A歩道が設置されたり人や自転車の通行が多いトンネルはきちんと作動して明るい、B歩道が設置されているトンネルでも歩行者用に蛍光灯などの補助照明がついているところではトンネル照明は暗い。こうした意図的な操作があるのかどうか。現在どういう状況にあるのか、いっせいの総点検を求める。
 ■大山土木部長
  照明設置基準にもとづいて設置しており減光しているのではない。故障の発見が迅速におこなわれるよう、パトロー  ルの強化につとめる。

○航空系大学について
高田 慎重に慎重を重ねて検討いただきたい。検討委員会の報告書のなかでは県有地十一ヘクタールを無償譲渡することになっているが、経営が破綻した場合、五十億円の価値があるといわれる県有地部分を学校法人の権限で勝手に処分したりする可能性はないか。こうしたことも含めて慎重に検討を要望する。

【再々質問】
○交通問題について
高田 今、県下全体がどういう状況になっているか、いっせい点検を求めたが、この点について再度の答弁を。
 ■大山土木部長
 特にいっせいという形では考えていない。
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