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鶴田至弘県議の質問(十二月十三日)
【1】来年度の予算編成方針等について
鶴田 平成十年度決算では年度内に四百八十三億円の補正がおこなわれ、土木事業が当初にくらべ三八%増と突出。他の部門とのアンバランスの問題やその財源のほとんそが起債でまかなわれ、当初の起債発行予定額六百六十三億円が最終的には四百二十七億円上乗せされ、千億円を超えた。このような結果になったのは、国の経済対策への協力ということで無制限に対応することは、県財政への破綻への基地を突き進むことになる。この議会でも県債八十億円の発行が予定されており、この時点での県債残高は約六千四百億円に達する。これまでの借金政策をいかに考えているのか。来年度の予算編成方針でも公共事業中心の経済対策が打ち出されているが、借金を道連れにした公共事業を中心とした景気対策は見直すべきと考えるがどうか。
 ■西口知事
  来年度の予算編成方針では、収支不均衡の段階的解消をはかりながらできるだけ景気浮  揚に努めることにした。経済の自律的回復に向けた民需の動向はまだ弱い。本格的な回復に 向けて一段の対策が求められる状況であり、県債の発行についても県民の理解は得られると 考える。
 ■稲山総務部長
  十年度の財政運営の総括について。経済対策を受けた補正予算の編成にともない、当初予 算に比して公共事業費のシェアが拡大し、県債依存度が高まった。わが国経済がデフレスパ イラルに陥らないようあらゆる手を尽くさなければならないとの危機感を共有し、最優先課題と して対策が講じられたものであり、やむを得なかった。

行政改革にともなう補助金カット、職員削減について
鶴田 行政改革の名で難病患者への補助金をカットしたり、長寿祝い金の支給を百歳にしたり、商工団体のイベント補助金をカットしたりする行政改革はやめるべき。また、職員の定数についても土木予算のわずかを削れば教員定数を大きく増やすことができる。定員管理は県民へのサービスの拡充の視点こそ大切ではないか。
 ■西口知事
  今後五年間で約百人の削減計画を策定した。行政サービスの向上については、常に住民福 祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を上げることを基本に取り組む。

【2】市町村合併問題について
鶴田 自治省は十二年度中の早い時期に県が市町村合併の要綱を策定し、合併の機運をはかれといっているが、県としてどのような姿勢でのぞむのか。小規模の自治体でも財源が保証されれば地方分権による新しい事務もできる。あえて合併がなければ分権や広域的取り組みができないというものではない。
和歌山県市町村財政調査委員会が住民におこなったアンケートでは賛成一七%、どちらかといえば賛成が二二・一%、合わせて三九・二%、また、反対が二二%、どちらかといえば反対一二・五%、合わせて三四・五%であり、小さな自治体ほど反対が多い。合併への機運が成熟しているとは考えられない。知事は合併の必要性をどこに見いだしているのか。同調査委員会の「市町村合併の進め方」アンケート(延べ五二九一の回答)では千を超える回答で住民投票で意見を聞くとか、住民の理解を得る、町づくり委員会の設置などが回答され、国や県が強力に推進というのは百四十五しかなかった。住民の意識こそ尊重されなければならない。国や県の主導する合併は厳に慎むべきだと考えるがいかがか。
 ■西口知事
  市町村の合併はあくまでも市町村並びに住民の自主的な取り組みが基本。少子高齢化の  進展、地方分権の推進な ど行政をとりまく情勢は大きく変化し、高度化、多様化する行政サ ービスへの対応、生活行動圏の拡大等を考えると、  市町村の将来のあり方について議論を 深めることは大変重要。市町村や住民の方々がみずから取り組みを進める際の 参考として  要綱の策定に当たっていく。

【3】中小企業対策について
鶴田 今回の中小企業基本法改正では、中小企業の重要性をうたっていた前文のほとんどが削除され、過当競争の防止、下請け取り引きの適正化、中小企業製品の輸出振興、地場産業を守るためのセーフガードの項目も削除され、ベンチャー企業の育成などに力点がおかれている。新しい企業の創出のための環境づくりも必要だが、現に操業し、県経済の担い手になっている中小企業に必要な支援策を講じることに最大の力点がおかれなければならないと考えるが、いかがか。
 ■上山商工労働部長
  新基本法においても、小規模企業への配慮、下請け取り引きの適正化、官公需増大等の経 営基盤の強化策もはか ることになっている。
  県では活力ある産業社会を築くためきのくにベンチャーランド構想にもとづき、産・学・官が連 携し、ベンチャー企業や新分野進出などを支援している。中小企業の重要性はいうまでもなく  十分認識しており、中小企業創造活動促進法や中小企業経営革新支援法等の各種支援策  により、新技術、新製品の開発、販路拡大、人材育成を基本に振興をはかっている。

鶴田  県下の中小企業の経営実態やそこで働く労働者の実態をできるだけ掌握すべきだ。東京・墨田区や東大阪市では中小業者の実態を悉皆調査によって把握し、中小業者の守り手として期待されている、県としてもぜひ考えるべきではないか。庁内に産業政策会議のような組織を継続的に構成し、中小企業の発展をはかる機能を発揮させるべきではないか。景気対策といえば土木というパターンが続いているが、仕事が回ってくる職種は限られている。福祉施策とも合わせて高齢者や障害者のための住宅改造など行政が支援しなければ成らない分野は幾らでもある。商工関係課がもっとイニシアチブを発揮すべきではないか。
 ■上山商工労働部長
  産業活性化ビジョンの策定にあたり、企業動向の調査を実施するとともに、経営者、学識経 験者、労働団体等から成 る委員会の意見を聞いた。定期的な実態調査では地場産業の景  気動向調査、県内中小企業賃金事情実態調査などを 実施するとともに、商工会、商工会議 所、中小企業団体中央会に配置されている経営指導員等の巡回指導等を通じて その実情  の把握に努めている。

【4】年末の金融対策について
鶴田  中小企業金融安定化特別保証制度が返済の時期になっているが、その猶予期間を一年間延長するなど金融に苦しむ中小企業を援助されたい。また、商工ローンの高利に悩む業者に対しても、県として低利の資金への借り換える相談を受けるようにしてはどうか。
 ■上山商工労働部長
  不況対策特別資金制度の継続を含め、県融資制度の新規融資枠を前年度に比べ約三二% 増の七百七十三億円確 保。返済期間の延長や商工ローンの借り換えは制度として創設する のは困難。

【5】住金のリストラに関連して
鶴田 労働者の削減と三〇%のコスト切り下げという今までにない厳しい内容だ。県はその影響を極力少なくするよう申し入れたが、住金は計画の見直しや手直しなど何らかの対応をおこなったのか。県経済に多大な影響があると判断されているが、具体的には下請け各社、そこで働く人々にどのような影響があるのか。調査していれば明らかにされたい。ある運輸業者は「今でも赤字で苦労している、今までも単価切り下げは幾度もあった。これ以上は何ともできない。三〇%ダウンの見積もりなどウソでも書きようがない」と言っている。関連企業の経営やそこで働く労働者の生活はどうなるのか。一年間に労働者の賃金や外注費で二百億円を浮かそうというのだから、生活や経営に生々しい影響が出てくるはず。マイナスの経済波及効果はそれをはるかに上回る、どのように調査、推計しているのか。
 大企業のリストラは、県財政や県民生活に多大の影響を与える。今回の住金のリストラ計画はその発表まで県当局も知らなかったようだが、住金の社会的責任の欠如と県の情報収集力の欠如は明らか。住金の自覚だけでなく、県も企業に対してその責任を果たさせる責務がある。今後一定の規模を持った大企業のリストラ等に対しては、県との間に事前に協議するシステムをつくるべきではないか。
 ■高瀬副知事
  知事から、また特定企業対策連絡協議会座長の私から、再三にわたり、地元企業への配慮 などについて要請をおこ なってきた。現在コスト削減については、住金と関連企業との間でワ ーキンググループを設置し、相互が納得できる方  法を協議していると聞いている。
 ■上山商工労働部長
  下請けへの影響の実態を正確に把握するのは難しい。関係企業で構成する組合などの状況 の把握に努めている。企 業の大規模な経営改革は従業員の雇用や地域経済に与える影響 が懸念されるが、経営を建て直す方策の一つであり 、経営内容まで県行政が立ち入ることは 難しく、特定企業対策連絡協議会を活用して対応していく。

【再質問】
○予算編成について
鶴田 膨大な借金が急速に増えていることに対して、やむ得ないということで莫大な県債を発行していくと、これは後々の県政にとって大変無責任な態度である。この際、県債については明確に抑制をするという方針を打ち出すことが県財政の正常化につなっがていくということをはっきり示すべきではないか。
 福祉や県民生活への投資をどう増やしていくか、これが従来型公共投資よりも大きなものを生み出していくということが統計的にも示されている。財政についての危機意識が欠けているのではないか。県民の福祉に関する項目については削減しないという方向を明確にすべきではないか。
 ■稲山総務部長
  国の財政支出の約七割を地方が受け持つ構造からいって、国と軌を一にした取り組みをする ことも地方の重要な役割 ではないかと。

○中小企業対策について
鶴田 金融については中小企業は喜んでいるが、産業政策面では非常に乏しい。県が市町村と協力しながら実態をつかまないとあかん。統計的に、抽象的につかむのではなく直接どれだけ実態を把握しているかが問題。
 ■上山労働部長
  定期的にはかなりの項目の調査をやっている。

○住金のリストラ問題について
鶴田 商工労働部は県下の中小企業者、大企業においては弱者の立場にたってどれだけ援助するか、これが大事。実態調査は把握が難しいということにとどまらないで、できるだけ詳細につかんで、とりわけ下請けの下請けやそこで働く労働者がどうなっていくのかまで細かくつかんで、迫力ある対応を県としてやっていただきたい。
事前協議の問題は、県経済にできるだけ影響が少なくなるように事前に対応していくことが非常に大事ではないか。
 ■上山商工労働部長
  株式投資など多方面への影響が大きく、大変注意を要するので、慎重に実施しなければな  らないと考える。
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