3.11後の津波対策 避難メールとタワー建設推進
                       和歌山県会議員 高田由一



 安政の南海地震の時、和歌山県広村の住民の命をすくった濱口梧陵の「いなむらの火」の逸話にちなんで津波対策の推進に関する法律11月5日が「津波防災の日」と制定されました。地元・和歌山県としてはこの記念日に恥じない取り組みを全国に先駆けて進めていかねばなりません。現在までの取り組みと今後の課題について報告します。




@どんな災害でも過去の経験や資料からしっかり学び、準備することが大切。

 9月初めの台風12号による歴史的な大水害が紀伊半島南部を襲いました。想像を絶する被害状況ですが、歴史的に振り返るとかつて同様の被害があったことがわかります。例えば今回の台風12号は、いまから120年も前に紀伊半島を襲った「十津川大災害」の時の台風と進路や速度がきわめて類似していました。この時も同じように深層崩壊や土砂ダム、河川の大氾濫が起きています。また、那智勝浦町では土石流による被害が大きかったのですが、現地で見ますと那智川流域の平地部分はほとんどがかつての土石流のあとに形成されたものであることがわかります。かつて地域でどのような災害があったかなどを事前に認識しておけば、対応もちがってきたと思います。
 津波被害についてもこのことは言えます。東海・東南海・南海の3連動巨大地震がもし起これば予想される津波の高さはこれまでの2倍を上回るのではないかという予想もでてきています。現在、国が3連動地震を想定して津波のシミュレーション見直しをしていますが、あくまでこれはコンピュータの予測です。東北の津波ではかえってこの浸水予想が避難の妨げになった事例も報告されています。私は6月県議会で過去の津波の痕跡を研究するよう求めましたが、県は国の予想待ちになっており、この点はたいへん遅れているといわざるをえません。

Aつぎに具体的な津波対策ですが、巨大地震はいつ起こってもおかしくありません。とにかく真っ先にやらなければならないのは、住民が自らの力でいかに避難できるようにするかです。
 そのためにはまず正確な情報伝達がかかせません。県や市町村ではこれまでも防災無線の整備をしてきましたが、室内にいては聞こえないとか、今回の水害では基地局自身が機能喪失するなど問題をかかえています。
 私は6月県議会で戸別受信機の設置を進めるよう県当局に求めました。これらの改善を進めるとともに、県では今回、携帯電話会社と提携して「エリアメール」という危険地域にいる方の携帯電話に強制的に避難情報を送りつけるシステムを導入しました。もちろんすべての携帯電話が対応している訳でなく、高齢者はどうするのかという課題も残りますが、障害者にとっても音声だけでなくデータとして配信される防災情報は大いに役立つにちがいありません。

B情報が届けば次は避難場所です。この点について県は、これまで地域の小学校や集会所など安易に指定されていた避難場所の総点検と見直しを開始しました。
 避難所の設置は第一義的には市町村の責任ですが、県もしっかり助言していく姿勢です。
 具体的には、津波の浸水予想地域ではあるが、緊急に避難する場合に有効なレベル1の避難場所、さらに安全性の高いレベル2、避難の時間に余裕があるならもっとも安全なレベル3などに分類して周知するなど他にはない取り組みをしています。その結果、現状ではレベル1の避難所は594か所、レベル2が410か所、レベル3が260か所となりました。今後、新たな指定やレベルの変更も含め常に見直しがおこなわれていく予定です。もちろんこれまで進めてきた近くに高い場所がない地域のための避難タワーの建設(現在10棟)や津波避難ビルの指定(現在145棟)も推進しています。
 また、「きのくに防災力パワーアップ補助金」として市町村が実施する事業に補助金(補助率2分の1、今年度予算1億5千万円)を出す比較的、自由度の高い補助制度をつくりました。
 また県が管理している土砂災害防止施設や高架道路への避難路の設置などについてもこれまで以上に予算をつけています。
 さらに浸水予想地域にある学校や福祉施設にはライフジャケットを常備するようにするようにしたことも特長的な取り組みです。


 ただしこうした具体的な改善とともに住民の避難に対する意識や避難所運営の問題も考えていかねばなりません。
 3月11日の東日本大震災時の大津波警報は当地方にも発令されましたが、具体的な避難行動をした方は少数にとどまりました。さらにいったん避難したものの当日の寒さやテレビなどの情報機器がないなどの理由で、早々に自宅に引き上げる避難者がほとんどでした。
 白浜町議会では日本共産党の広畑敏雄町議がこの問題を取り上げ、暖房、食料、テレビなどが整っていた避難所では夜中までみなが整然と避難を続けた事例を紹介し避難所運営の大切さを訴え、改善を求めました。

 以上、報告してきましたが、建物の耐震改修や避難所の運営、ライフラインの確保対策などまだまだ課題がありますが、字数の都合もありまたの機会に譲りたいと思います。



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