2001年10月  

                         日本共産党和歌山県委員会

はじめに

和歌山県で自治体の合併がおこなわれたのは、1964年の田辺市と旧牟婁町との合併が最後です。それ以後、7市36町7村の自治体構成で40年近くたちましたが、住民のなかから合併を求める声が大きくなったという状況にはありません。ところが政府や県はいま市町村合併の推進に躍起です。

政府は「行革大綱」(2000年12月)で現在の3000余りの自治体を1000に削減するとの「数値目標」をたて、人口の少ない町村(4000人以下)への地方交付税の削減(1998年度以降)を強行し、小泉政権になってからのいわゆる「骨太の方針」でも「自立しうる自治体」を標榜して、全庁あげた合併誘導・押しつけの姿勢を露骨に示しています。

県はことし1月、「和歌山県市町村合併推進要綱」(以下「要綱」)を策定しました。「要綱」は、「自主的な市町村の合併を推進し、市町村の行財政基盤を強化することが必要である」として、「市町村の合併について取り組みを行う際の参考や目安となるように」策定されたことになっています。しかし、「要綱」策定そのものが国の「合併誘導・押しつけ」策に沿ったものであり、その内容も市町村合併を強引に押しすすめる県の姿勢を示しています。「県民の友」7月号では特集「みんなで考える市町村合併」と題して、「今、なぜ市町村合併なの?」「市町村合併によって期待される効果」「市町村合併への不安については対応策があります」など、「要綱」の内容にそったテーマを設定して、合併推進の世論づくりをはかっています。

いま、県内各地で「学校が廃校になり、さびれるばかりだ」、「お医者さんが地域からいなくなって、健康が心配だ」、「農林業では生活できず、働く場がない」など、自民党政治がつくり出した過疎や暮らしの悪化が深刻です。また、多くの市町村が国・県からの公共事業の押しつけなどによる多額の借金(地方債残高)を抱え、国庫補助金のカットや地方交付税の削減などで、厳しい財政運営を強いられています。県下の首長のなかに“合併やむなし”の声がでるのも厳しい財政状況がその一因です。

国や県は、こうした深刻な過疎や苦しい県民生活、厳しい財政などを逆手にとり、“合併すればなんとかなる”かのような幻想、あるいは“合併しなければひどいことになる”という脅しにも似た手口で、市町村合併を押しすすめようとしています。しかし、市町村合併をやれば住民福祉の向上につながり、深刻な過疎を解消できるのでしょうか、財政の危機を打開できるのでしょうか。私たちは、「住民の福祉の増進をはかる」(地方自治法第2条)という地方自治体の仕事、“地域のことはそこに住む者が決める”という地方自治の理念等からみて、国や県がすすめようとしている今回の合併強制政策は重大な問題があると考え、この「見解」をまとめました。住民のみなさん、行政・議会の関係者の方々にお読みいただき、ご意見をお寄せくださることを期待します。

地方自治の理念をふみにじる強引な「合併誘導」措置

市町村の範囲、境界を確定するという「合併・分離」の課題は、そこに住む住民の自治権そのものであり、地方の自主性がもっとも尊重されなければなりません。地方自治法第2条2項は、国に対して、「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と規定しています。

全国町村会が2001年7月5日に開催した「町村自治確立全国大会」では、「市町村合併に関する特別決議」が採択されました。そこでは「市町村合併は、個性豊かな魅力ある地域社会を構築するため、地域住民と行政とが一体となって十分に議論を尽くした上、自主的に判断し実現すべきものである。この過程はまさに地方自治の理念にほかならないものであり、数値目標や期限の設定、地方交付税の段階補正等の見直しなどによる合併の誘導措置等は、かかる理念に反するものである。国および都道府県はいかなる形であれ市町村合併を強制してはならない」と述べています。これに先立ち、同会は3月19日に「市町村合併に関する緊急要望」を掲げ、そのなかでは、国の強引な合併強制政策を厳しく指摘しました。それは同日、総務省が全国の知事にあて「『市町村合併の推進についての要綱』を踏まえた今後の取組」を通知し、知事による合併協議会の設置勧告を打ち出していることにふれて「半ば強制的な手法による合併の推進が懸念される」との危惧を表明しています。

「合併誘導」策は、県や市町村への合併機運の醸成キャンペーンへの補助、合併推進行事への補助金、「合併特例債」による財政措置等、盛り沢山なものがあります。今年中に知事が「合併重点支援地域」指定し、合併をすすめる市町村を指定するという方法では、指定後1年以内に合併協議会が設置されない時には、知事が協議会の設置を勧告できることになっており、全国町村会が「半ば強制的な手法」と批判したのも当然です。

「平成の大合併」の効果とは本当でしょうか   

国や県はさかんに、合併すればバラ色の未来が広がるかのような宣伝をしていますが、本当でしょうか。「要綱」は、「日常生活圏の拡大、少子・高齢化の進展、地方分権の推進そして厳しい財政状況など、市町村行政を取り巻く諸情勢の変化に的確に対応するために、市町村の行政体制の整備・充実を図ることが緊急の課題となっており、市町村の合併はそのための有効な方策と考えられる」と合併の必要性を述べています。しかし、日常生活圏が拡大していることと、その範囲を一つの自治体に合併させるという必然性はまったくありません。また、少子高齢化や厳しい財政などの諸課題を解決するため、「行政体制の整備・充実」をはかることが必要だとしても、市町村合併につなげる必要があるのかどうか、合併すればそうした課題を解決する行政施策が実施されるのかどうか、その検証もなしに、「合併はそのための有効な方策」というのは、合併の結論を誘導するための議論ではないでしょうか。

「専門家を雇える」といいながら、職員の削減を「合併効果」という矛盾

「要綱」は、合併の効果を4項10点にわたって列挙しています。そのなかで、具体的な“効果”としてあげているのは、行政区域が大きくなれば「公共施設の利用対象が増える」とか、「専門職員の配置や増員が可能となる」といった程度です。保健婦などの専門職員を増やすことができるとの“宣伝”は、合併によって自治体職員を大幅に削減し、人件費を減らせることが、財政面での「合併効果」との宣伝とまったく矛盾しており、専門職員が増えるというのは一部の例外を除けばマユツバと言わざるを得ません。実際、今年の6月県議会で、日本共産党の高田由一県議が明らかにしたように、田辺圏域の10市町村で現在48人配置されている保健婦は、類似自治体では21人にしか配置されていません。

「合併」すれば地域のイメージがアップするのでしょうか

「要綱」は、合併すれば「地域のイメージアップ」になると主張しています。県の「合併パターン」のいうように、龍神村が「新田辺市」(仮称)の一部になったり、白浜町が「新田辺市」の一部になったりすれば、龍神温泉や白浜温泉のイメージがアップするというのでしょうか。「村」や「町」が、「市」の一部になればイメージアップするということを県行政が本気で考えているとは思えません。国も、「村」や「町」から市になれば「格」が上がると宣伝していますが、住居表示の名称で地域の値打ちが変わるというのは、何の根拠もありません。合併を推奨するための口実にすぎないのではないでしょうか。

大規模な公共事業の実施が「合併の効果」でしょうか

また「要綱」は、「財政規模の拡大によってそれまで個々の市町村ではできなかった大規模な投資を必要とするプロジェクトの実施が可能となる」とも述べています。大きなプロジェクトが住民のくらしや福祉の増進と直接結びつくものではないことは、今の自民党政治が証明していることです。

国は「合併協議会」の協議項目に「新市町村建設計画」を入れ、同計画にそった建設事業には「合併特例債」の発行を認めるなど様々な財政支援措置を打ち出しています。総務省のホームページでは、「合併特例債等の試算」コーナーまであらわれ、合併すれば建設事業の大盤振る舞いができると宣伝しています。そのコーナーで試算したのが、下記の表です。

合併特例債等の試算

(単位億円)

標準全体事業費  (ア)

借り入れ限度額                (イ)

普通交付税算入率  (ウ)

標準基金規模の上限(エ)

合併直後の臨時的経費にかかる財政措置 (オ)

合併特例債の上限(事業費ベース)(カ)=(ア)+(エ)

1999年の投資的経費(キ)

橋本市と伊都郡

502.0

476.9

333.8

40

12.4

542.0

172.8

那賀郡全体

546.4

519.1

363.4

40

13.0

586.4

108.3

海南市と海草郡

294.1

279.4

195.6

29

7.2

323.1

103.9

有田市と有田郡

469.9

446.4

312.5

40

10.9

509.9

111.1

御坊市と日高郡(竜南除く)

408.9

388.5

272.0

40

11.8

448.9

141.5

田辺市と西牟婁郡(串本除く)竜南

597.1

567.2

397.0

40

24.3

637.1

244.4

串本・古座・古座川3町

111.4

105.8

74.1

17

2.9

128.4

37.5

新宮市と東牟婁郡(古座・古座川除く)

302.5

287.4

201.2

36

8.5

338.5

83.6

合計(和歌山市除く)

3232.3

3070.7

2149.6

282

91.0

3,514.3

1,003.2

(ア) 合併市町村まちづくりのための建設事業費に対する財政措置・10年間の合算額  
(イ) 標準全体事業費の95% 
(ウ) 借り入れ限度額の70% 
(エ) 合併市町村振興のための基盤造成に対する財政措置  
(オ) 5年間合計額・通常の普通交付税に上乗せ

「要綱」の基本パターンにもとづく市町村の組み合わせで合併特例債等を試算すると、県全体の事業費(カ)は10年間で3514億円にも達します。その年間平均と1999年の投資的経費を比べると、那賀郡6町が合併した場合には、1999年の1.54倍の建設事業がおこなわれることになります。10年間にわたって、合併特需、あるいは合併バブルとでも言うべき、建設事業の大盤振る舞いが続くことになります。

そして、この「合併特需」の後には、地方交付税の削減が始まり、急激な財政縮小が始まります。そのとき地方交付税制度がどのような形になっているかはわかりませんが、国がいま約束している交付税措置が守られるという保証はありません。国も地方も財政破たん的状態にあるとき、合併した市町村には放漫財政を誘導する政府に追随していくのは、危険なカケではないでしょうか。

「合併への懸念」―現実はさらに深刻なものに  

「要綱」では、「合併に際して懸念される事項」とそれへの対応策を並べています。「役場が遠くなる」との懸念には、支所を残すとか情報通信手段が発達しているとか述べ、「住民の声が行政に届きにくくなる」との懸念には「地域審議会」を設置できると説明しています。「中心部と周辺部で地域間格差が生じる」には「新市町村全体の均衡ある発展が図られる」新市町村建設計画が作成される、などというものです。

しかし、県の構想する大型合併が実現し、龍神村の奥地から田辺市へ出ることや北山村から新宮市へ行くことを考えれば、いくら道路が発達してきたと言っても、「役場が遠くなる」ことは事実です。行政範囲が広大になり、議員1人あたりの人口が大きくなるのですから、住民の声は行政に届きにくくなります。これだけの広い「自治体」が「基礎的な地方公共団体」と言えるのでしょうか。さらに、合併の懸念は、そんな程度では済まないでしょう。いくつかの事例をみてみましょう。

広大な自治体は、住民と行政との関係を希薄にさせます

   現在の議員数と合併後の議員

数試

 

現在の定数

人 口

合併後

議員数

議員 1 人

あたり人口

海南市と海草郡

62

72,757

30

2,425

那賀郡全体

94

118,215

34

3,477

橋本市と伊都郡

94

102,847

34

3,025

有田市と有田郡

97

86,991

30

2,900

御坊市と日高郡(竜南除く)

106

72,982

30

2,433

田辺市と西牟婁郡(串本除く)竜南

148

141,527

34

4,163

串本・古座・古座川の3町

48

25,153

26

967

新宮市と東牟婁郡(古座・古座川除く)

84

62,866

30

2,096



市町村合併がおこなわれれば、地方自治法の規定によって議員数は大幅に減ります。各圏域の基本パターンTの合併が行われると、議員1人あたりの人口は、田辺広域圏の4163人を最高に、最低が「串本・古座・古座川」の967人となり、平均では2755人です。これは現在の議員1人あたり人口932人のほぼ3倍になります。最も身近な自治体と住民との接点である議員が現在の約3分の1に減ってしまいます。

 合併後には、旧市町村単位に選挙区を設置することもできますが、元の小さな町や村から議員が当選すること自体が困難になります。旧町村単位で議員1人あたりの人口に満たないところは、花園村、美山村、龍神村、中辺路町、大塔村、北山村。2人分に達しないところは、九度山町、高野町、美里町、清水町、中津村、南部川村、南部町、日置川町、すさみ町、太地町、熊野川町、本宮町。こうした“弱小”の旧町村が18町村にも達する一方で、旧の中心市(町)が半分以上を占めるケースが海南市と新宮市、3割以上が橋本市、岩出町、有田市、御坊市、田辺市です。合併によって、周辺部や山間部の過疎がいっそう進行し、中心部への投資が集中されるのではないかとの懸念が指摘される理由はここにあります。さらに、「要綱」は平成27年には、この傾向がますます強まると予測しています。このように、広大な地域の市町村合併は、住民自治と議会制民主主義にとって重大な支障、後退を招くのは間違いありません

地方交付税は県民1人あたりで、14万5千円から6万3千円に減ります

合併後の特別な財政支援措置がなくなると、財政はいっきょに縮小することになります。現行の「地方交付税制度」が維持されるとして、県全体(和歌山市を除く)でみれば、地方交付税は992億34百万円(平成9年度)が457億61百万円に、半分以下になるというのです。人口1人あたりにすると約14万5千円が6万3千円に4割程度に減らされてしまいます。いま、和歌山市以外の市町村全体では、歳入の約3分の1を地方交付税に頼っています。歳入の最大の柱である地方交付税が半分以下になってしまった合併後の自治体が、大幅な歳出削減をすすめなければやがて財政破たんを招くのは必至です。

「要綱」の合併パターンから、現在の那賀郡6町が一つの市となる「新那賀市」(仮称)を見てみます。人口は現在(平成12年国勢調査)の約11万8千人が14年後の平成27年には約18万人に増えると予測されています。ところが、地方交付税は112億48百万円から79億77百万円に、32億71百万円も減るというのです。「国・県支出金」は7億円の増額を予定していますが、差し引き25億71百万円の削減です。職員数も現在(この場合は平成9年)の990人から918人に逆に減少するモデルが示されています。

和歌山市を除く県全体で見てみると、14年後の人口はほぼ横ばいでありながら、市町村の職員は7951人から5489人へ、実に31%の削減です。歳出合計も現在(平成9年)の約3230億円が、合併後は2310億円に約28%も減少するというのです。“合併すれば財政力が強くなる”ということは、住民1人あたりにとってはありえません。しかも、国は2002年度には「地方交付税の1兆円削減」を強行しようとしています。国が合併によってねらっているのは、国の財政負担を減らし、住民と地方に犠牲を押しつけることだという正体が鮮明ではないでしょうか。

 

 

人 口

 

 

職 員 数

 

 

 

歳 出合

 

 

平成12年10・国勢調査

人口予測(平成27年)

伸び率予測(%)

平成9年

合併モデル

削減数

削減率(%)

9年度(ア)

合併モデル(イ)

(ア)−(イ)

減少率

和歌山市以外の49市町村合計

683,338

722,003

5.66

7,951

5,489

-2,462

-31.0

322,889

231,331

-91,558

-28.4

海南市と海草郡

72,757

62,772

-13.72

967

606

-361

-37.3

33,037

26,064

-6,973

-21.1

那賀郡全体

118,215

180,212

52.44

990

918

-72

-7.3

37,941

35,668

-2,273

-6.0

橋本市と伊都郡

102,847

120,903

17.56

1,153

827

-326

-28.3

44,408

33,197

-11,211

-25.2

有田市と有田郡

86,991

79,942

-8.10

1,053

702

-351

-33.3

44,830

29,130

-15,700

-35.0

御坊市と日高郡(竜南除く)

72,982

66,710

-8.59

1,030

592

-438

-42.5

43,242

27,692

-15,550

-36.0

田辺市と西牟婁郡(串本除く)竜南

141,527

139,742

-1.26

1,659

1,112

-547

-33.0

73,325

47,133

-26,192

-35.7

串本・古座・古座川の3町

25,153

19,280

-23.35

325

218

-107

-32.9

14,574

8,948

-5,626

-38.6

新宮市と東牟婁郡(古座・古座川除く)

62,866

52,442

-16.58

774

514

-260

-33.6

31,532

23,499

-8,033

-25.5

 

歳入・地方交付税額

歳入・国県支

出金

地方交付税と国県支出金の

歳出に占める削減額

 

平成9年

合併モデル

削減額

平成9年

合併モデル

削減額

減額合計(ウ)

の割合(ウ)/(ア)

和歌山市以外の49市町村

99,234

45,761

-53,473

52,245

34,948

-17,297

-70,770

-22

海南市と海草郡

7,946

4,384

-3,562

4,059

4,375

316

-3,246

-10

那賀郡全体

11,248

7,977

-3,271

4,807

5,507

700

-2,571

-7

橋本市と伊都郡

13,335

6,504

-6,831

6,737

4,957

-1,780

-8,611

-19

有田市と有田郡

14,265

6,011

-8,254

7,778

4,210

-3,568

-11,822

-26

御坊市と日高郡(竜南除く)

13,822

5,135

-8,687

7,246

4,275

-2,971

-11,658

-27

田辺市と西牟婁郡(串本除く)及び龍神、南部、南部川

20,990

7,907

-13,083

14,251

6,758

-7,493

-20,576

-28

串本・古座・古座川の3町

6,436

2,717

-3,719

2,141

1,155

-986

-4,705

-32

新宮市と東牟婁郡(古座・古座川除く)

11,192

5,126

-6,066

5,226

3,711

-1,515

-7,581

-24

合併が住民負担増やサービス後退の原因になります

 最近合併した全国の事例をみてみましょう。
 1995年に秋川市と五日市町が合併してできた「あきる野市」(東京)では、「サービスは高く、負担は低く、市民に迷惑をかけることはない」という約束がされ、当初は両自治体の行政サービスは水準の高いほうが適用されていました。しかし、その後、国保税の引き上げや敬老大会の廃止、学校用務員の民間委託、生け垣設置補助金の廃止、浄化槽清掃補助金の引き下げなどがおこなわれています。合併時の約束から言えば、約束違反です。(「ちょっと待て 市町村合併」(自治体研究社))

今年5月1日に埼玉県の旧浦和、大宮、与野3市が合併してできた「さいたま市」では、ガン検診が有料化または値上げされ、個人市民税の均等割が年間2500円から3000円に引き上げられました。4月1日に合併した茨城県潮来市では、旧牛堀町で敬老祝金が廃止され、公民館の使用が有料になっています。1992年に茨城県水戸市は常澄村を吸収合併。94人の職員がいた村役場は、合併後に支所となり、今年度から出張所に格下げされ、職員は8人に減らされました。障害者福祉、生活保護、老人福祉などは本庁に行かなければなりません。(「しんぶん赤旗」200192日)

今年1月に新潟市に吸収合併された旧黒崎町では、新たに都市計画税が課税され、4年かけて新潟市の税率0.28が課税される予定です。保育料は、旧黒崎町の方が安く、3歳児未満で1300円から2万2700円、3歳以上児では700円から7200円の差がありました。これを3年かけて統一する計画となっており、旧黒崎町ではその分が値上げになります。また、旧黒崎町では工事や事務用品は地元業者優先という考えで発注されていましたが、合併したことで旧町内の業者は仕事が減ってしまったということです。(「住民と自治」2001年9月

 県内最後の自治体合併がおこなわれた田辺市で、同市に吸収された旧牟婁町は昭和31年に中芳養、上芳養、上秋津、秋津川、三栖、長野の6村が合併してできた町でした。合併基本協定では、「当分の間旧役場及び支所を市支所とし、将来上・中芳養に1、上秋津・秋津川に1、三栖・長野に1の3支所を置く」とされていました。吸収された旧牟婁町には109人の職員がいました(田辺市誌)が、現在は6つの旧村単位に連絡所が置かれ、嘱託職員が1人ずつ配置されているだけです。

  合併を誘導する国の狙いを考えます

今回の「平成の大合併」策は、国の一方的な理由・口実からきているものと考えられます。

ひとつには、中央政府の役割を外交や安全保障など国際的なものとし、国民生活にかかわる行政部門を縮小し、その受け皿づくりとして自治体の再構築をねらっていることです。都道府県の消滅や再編成を含む道州制の導入など「この国のかたちづくり」―国家構造の改革ともつながっています。「平成の大合併」はその第一歩を踏み出そうとするものです。

あとひとつは、国と地方の財政危機です。財政悪化の根本原因は、日本の公共事業費(年間約50兆円)が、日本以外のサミット参加諸国の合計よりも多いという数字が示しているように、公共事業優先政治にあります。ことに1992年以来の連続的な「景気対策」の名による公共事業の大幅積み増しや地方単独事業の押しつけなど、国が地方自治体の財政危機を加速させる政策をとってきました。政府は、自らつくりだした財政危機のツケを地方交付税の削減や行政の役割の縮小、あるいは社会保障制度の改悪などによる国庫支出の削減で切り抜けようとしているのです。財政危機を招いた要因を放置したまま、地方自治体と住民に犠牲をおしつけても、財政再建につながるものではありません。

力をあわせて「強制合併反対」の世論を高めましょう

合併効果を強調する「要綱」ですが、合併によって過疎の進行を食い止めるといった文言はありません。しかし、大規模な合併が実施されれば、過疎はいま予測されている以上に進行すると考えられます。山間部においては、役場がもっとも大きな就労の場になっているところもありますが、「要綱」の基本パターンのように、49の市町村を7市1町の8自治体に合併すれば、41の役場は支所や出張所になり、当初は事務や職員が一定配置されても、職員削減の進行とともに、縮小されていくことになるでしょう。このことは、先に紹介した旧牟婁町の例が物語っています。町や村の役場がなくなり、郵政民営化で郵便局が縮小され、そして農協や学校の統廃合がすすめば、過疎のいっそうの進行は必至です。それは、地域の伝統文化の消滅につながる危険をはらんでいます。

地方自治は憲法の柱の一つであり、地方自治体の境界を改める「市町村合併」問題は、その地域の住民が自分たちで決めることであり、また市町村が自身で決定することです。

いま、住民の意思を無視した合併策動を許さない動きが全国で現れています。最近でも、埼玉県上尾市が住民投票の結果、合併反対が賛成を上回り、合併をとりやめた事例が生まれています。茨城県水戸市と常北町の合併を協議するため1995年12月、全国で初めて住民発議で設置された「合併協議会」は3年余の協議の中で住民の合併反対の意向を受け、1999年2月になって休止に追い込まれました。

日本共産党は、住民の福祉の増進、地方自治の確立、発展につとめる党として、地方自治を踏みにじり、住民に犠牲を押しつける「合併の押しつけ」に反対します。県民のみなさんと共同して、国や県の「押しつけ合併」に反対する世論を広げ、ゆたかで住みよい和歌山県をつくるため全力をつくします。

                                          以 上

日本共産党和歌山県委員会

和歌山市西長町2−33
電話 073(425)4111
Fax 073(433)4186
Eメールw-jcpken@naxnet.or.jp