目 次

和歌山市・石泉閣事業廃止へ
住民票コードの削除求める審査請求
裁判情報
今後の予定
第7回定期総会のご案

 

No.36

発行日2003 317


和歌山市・石泉閣事業

市民の力で廃止へ

その真相追及を

 当会が、石泉閣建物の借上げ契約が無効だとして、支出済みの公金返還と今後の公金支出の差止めを求めていた「石泉閣事業」について、去る2月28日の和歌山市議会本会議において、同事業を今年度限りで廃止する条例が可決されました。

 これは、大橋市長が市長選挙の際に公約に掲げて当選したことから、それを実行したものです。このことは、市民の廃止を求める意思が、選挙を通じて実現させたことを意味します。市民の力です。

 また、私達の公金支出の差し止めを求めていた部分の裁判も、公金の支出がなくなることから、実質的に勝利したことを意味します。

 ところで、同事業には、これまでに約2億5000万円もの血税がつぎ込まれています。これに対しては大橋市長は、何の措置も取っていません。

 しかし、市民が求めているのは、単なる事業の廃止だけではないのです。市民が廃止を選択した理由は、私達も主張してきたところの旅田・前市長が、石泉閣建物所有女性と「愛人」関係にあるとされること。そして、そのような関係にある女性との借上げ契約は違法無効であり、市長としての裁量権を明らかに逸脱していること。かつ、契約に必要な市議会の議決についても、「債務負担行為」によるべきところ「長期継続契約」としている違法があることなどが、許せないとしたからに他なりません。これらの真相を明らかにし、その責任追及も求めているのです。

 から、大橋市長には、事業の廃止のみならず、真相を明らかにする実行ある措置を講じることが求められていると言わねばなりません。

 また、当会には、次のような声が届いています。

 「廃止だけでは済まされない問題だ。同事業を進めてきた責任を徹底して追及してほしい」とか、「事業の推進に合意した議会にも問題がある。その責任も追及してほしい」などです。ごもっともな御意見だと思います。

 なお、私達が追及する裁判は、これからも継続します。これまでの支出金の返還を求める部分がそれです。

 私達は、この裁判を通じて、その責任を徹底して追及していきます。

 今後、既存建物としては風致条例違法とする不適格建築物と言うだけでなく、明らかに違法建築物であること。さらに、従前の石泉閣は、庭園部分や北別館の敷地部分が不法占拠だったこと。そして、和歌山市が、石泉閣所有者と国との間の法律的に不安定なことを承知で、合法を装って借上げていたことなどを明らかにします。

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住民票コードの削除を求める審査請求

6市町村の42名が請求

 住民票コードの削除を求める審査請求事件について,各処分官庁の弁明意見書の提出があり,送付されてきました。これに対する反論書もすでに提出しました。

 当該審査請求は,和歌山市26名,橋本市2名,海南市2名,田辺市5名,美山村5名,上富田町2名と6市町村で42名と少なくない方々がしています。各処分官庁の弁明意見は少しずつ異なりますが,それほど内容において大差はありません。代表して和歌山市の弁明意見の全文と,これに対する反論意見の大要を掲載します。


和歌山市の弁明

「所要の措置」講ずる主体は政府,市は「関知しない」と言う

 「審査請求人のプライバシーを侵害するもので違法」との主張について、個人のプライバシー権については住民基本台帳法はシステム上の保護策として住民基本台帳ネットワークシステムに係る本人確認情報の利用及び提供の制限、住民票コードの利用制限等を定め、自己情報のコントロール策として自己情報の開示請求権、自己情報の訂正申出等について定めている。

 従って、個人のプライバシー権は法により保障されているものと考える。

 また当市では個人情報の保護を最重要課題とし、和歌山市個人情報保護条例によって、市が保有する個人情報について自己情報の開示及び訂正を求める権利を保障するとともに、セキュリティ対策要綱により個人情報の漏えいのおそれがある場合等に備えたセキュリティ組織の整備や緊急時対応計画を定めている。

 本件審査請求の法律上の争点は、住民票コードを付与した行為(処分)が住民基本台帳法附則第1条第2項に違反するという点にあるが、住民票コードの記載は住民基本台帳法附則第3条に基づき行った行為(処分)である。

 住民基本台帳法附則第1条第2項に規定する法律の施行に当たって、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずる主体は政府であり、当市は施行された法律に基づき事務を執行しているものであって関知しない。

 したがって、本件処分は審査請求人が主張しているような違法なものではなく、法を厳守した行為であって適法且つ正当である。

反論意見

住基ネット・個人情報への重大な侵害

1 「関知しない」は,法令遵守義務違反であり,市民の利益を省みない暴言

 大橋市長には,市民を代表する市長としての行為が正当ないしは合理的であることを市民に説明する義務があります。それを,充分につくさないで,関知しないとは何事ですか。しかも,主体が政府の行為だから関知しない,とはあまりにも無責任すぎます。「関知しない」は,この事柄について無批判で,言いなりになることを宣言しているに他なりません。つまり,大橋市長は,和歌山市の主体性を自ら否定していることを意味します。

 また,所要の措置をする主体は政府だから関知しないということは,住基ネットへ接続した後の市民の情報について適正に管理されているか否かについても,関知しないと言っていることになります。それは,それこそ法律無視も甚だしく,市民の利益と福祉を裏切る違法行為です。

 つまり,市長には,市民の利益と福祉に責任を負う立場から法を順守し住基ネットに接続後の市民の情報についても,管理が適正か否かについて判断する義務があるのです。また,処分の妥当性を根拠付けるにも,所要の措置を政府が講じているか否かが大きな意味を持っているのです。そうであるのに,「関知しない」として一孝だにせず,しかも,所要の措置がとられていないことが明らかな段階での当該処分は,住基法3条および改正住基法36条の2に反する違法な処分であること明らかです。

2 プライバシー権保障に対する理解の誤り

 大橋市長は,「個人のプライバシー権については住民基本台帳法はシステム上の保護策として住民基本台帳ネットワークシステムに係る本人確認情報の利用及び提供の制限,住民票コードの利用制限等を定め,自己情報コントロール策として自己情報の開示請求権,自己情報の訂正申出等について定めている。従って,個人のプライバシー権は法により保障されている」としています。しかし,これは,プライバシー権の理解を明らかに誤っており,本件処分を合理づける理由になっていず,従って,プライバシー権は侵害しており,大橋市長の本件処分は取り消されるべきです。

 そもそもプライバシー権は最高法規たる憲法に保障された基本的人権の一つです。そして,個人のプライバシー権は現代的には,自己情報コントロール権としての意味を持ちます。

 さらに,プライバシー権を保障するという意味はこうです。

 個人情報に対する本人の自己決定権を保障し,保護することです。つまり,プライバシー権を保障するための個人情報の「保護」の意味するものは,「自己情報コントロール権」を「保護」することにあるのです。いつ・誰に・どの程度,自らの情報を提供するかは本人に決定権があるという考え方です。そして,この考え方にたったとき,この自己コントロール権が「保護」されず侵害された状態を「漏洩」と言うのです。つまり,個人情報の「漏洩」とは,単純に所定の機関や部署あるいは,担当者以外に個人情報が漏れることではなく,本人が了解していない範囲に個人情報が提供されることをいうのです。だから,本人が了解していない場合,いくら利用について制限し,所定の担当者以外に情報が漏れていないとしても,それは「漏洩」状態にあたります。まさに,現実の住基ネットがそうです。住基ネット自体が,強制的に個人情報を提供していることから明らかなように,自己コントロール権を保護しないことを前提にしているのですから,実は「漏洩」のためのシステムに他ならないのです。

 そうすると,住民基本台帳上の個人情報を個人の意思に関係なく強制的に一元管理する「漏洩」のシステムたる住基ネットは,プライバシー権を侵害していること明らかと言わねばなりません。

3 基本的人権を制約できる公益性はない

 住基ネットは,公益なき権利制限規定です。

 総務省は,住基ネットの公益性として,@住民票の広域交付,A転入転出手続きの簡略化,B住民票添付の省略の三点を住民側のメリットとして上げ,行政側のメリットとして「高度情報化による事務の効率化」をあげています。しかし,住民側のメリットとされている@〜Bは,メリットでも何でもありません。住民票が広域交付できるといっても,住んでいる町以外で急に住民票が必要になることなど殆ど考えられず,また,広域交付を望んでいる人が全国にたくさんあることなども考えられず,旅先で必要になる人もいないでしょう。現行で充分間に合っています。Aにしても,取り立ててメリットがあるとも考えられません。現在でも,転入先に行くだけで,転出先から送ってもらうことも可能ですから何ら不都合がないのです。なお,毎年発行される住民票の写しは,国民一人当たりにすれば0.7枚程度にすぎませんし,この内のかなりの部分がサラ金業者からのものです。また,市町村外へ引越しする人は,年間600万人程度だそうで,国民一人あたりに換算すれば,転入転出の手続きが簡単になる恩恵を受けるのは20年に1回程度にすぎないのです。Bは,住民票の添付が省略されても殆どメリットがありません。住民票が必要な場合は,戸籍謄本も必要な場合が多く,添付書類の交付のうちで,住民票だけが省略されてもあまり意味がないからです。

 また,ここで留意すべきは,上記@〜Bのサービスは,今年8月から交付開始が予定されている「住基カード」の交付を受けた者のみが得られる「利益」です。交付を受けない者には,住基ネットからの受益はまったくないことです。つまり,国民に等しく得られるメリットではないのです。このような「利益」で,いかように考えても,基本的人権を制約できる公益性に当たるはずがありません。

 むしろ,事務の効率化と称して,これまで,各自治体が管理していた住民の個人情報を国が取得しやすく管理しやすくなり,さまざまな個人情報が国に集積されることによるデメリットの方が大きいでしょう。

 住基ネットは,要するに公益なき権利制限,すなわち単なる権利侵害の仕組み以外の何ものでもないのです。

4 市個人情報保護条例,住基ネットにおけるプライバシー権の保護には不充分

 大橋市長は,市個人情報保護条例によって,市が保有する個人情報について,自己情報の開示及び訂正を求める権利を保障していると言います。これは,この条例によって,プライバシー権を保障しているとでも言いたいのでしょう。しかし,同条例を否定的にとらえるものではないですが,住基ネットに関しては,自己コントロール権を保障していないので,その限りでは意味をなしていません。

 前述したとおり,個人情報の保護は,自己コントロール権の保障にあります。現に私の意志に基づかず,強制的に提供された本人確認情報の提供の中止および提供ずみの情報の削除請求をしましたが,「認めない」とする決定が下されました。その理由は,強制的な接続を容認するものでした。つまり,市の個人情報保護条例は住基ネットに関して,個人の自己コントロール権を保障していないこと明らかですから,「個人情報保護」を冠した条例があっても実質の意味がありません。

 東京都の杉並区の「杉並区住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例」が規定(資料4−1,2)するように,本人確認情報を全国ネットのオンラインにのせることが,プライバシー侵害になるおそれがあれば「OFF」にして接続を切断できる形のものでなければ市民のプライバシー権を保護しているにたりる条例とは評価できないのです。

5 接続記録の開示請求が保障されていない

 さらに,プライバシー保護で強調しなければならないことは,提供した本人確認情報に対する接続記録の開示規定がないことです。

 個人の情報に,いつ,誰が,何の目的で利用したのか,そのことが分かるための接続記録の開示がなされないでは,個人の知らない間にいかように悪用されても,それをチェックする方法がないのです。不正の防止は,取り分け,その情報を開示することにあります。このような規定はどこをさがしてもないのです。この点でも,プライバシー権が保護されていないと言わざるを得ません。

6 本人確認情報の漏洩の危険が現実に存在する

 前述したとおり,プライバシーの権利は今日では自己情報コントロール権を意味し,自己の情報が暴露されないだけでなく,本人の承諾なく提供することや,特定の目的のために提供した情報が本人の関知しないところに流通し,利用されたりしないことが求められます。そして,現状では,特定の目的のために提供した本人確認情報が,本人の関知しないところへ流通し,利用される危険が,現実に存在し,その意味からもプライバシーの権利を侵害しています。その根拠はこうです。

 @ 今日,さまざまな場面で,民間業者あるいは公的機関により個人情報が収集されています。たとえば,民間について言えば,銀行系の全国個人信用情報センター,クレジット系のシーアイシー,サラ金系全国信用情報センター連合会という個人信用情報機関があります。そして,この情報の流出事故がしばしば報じられています。公的機関による個人情報収集の例として,自動車ナンバー読み取りシステム,高速道路交通システムなどがあります。いずれも,いつ,どの車両が,どこを走行していたかが,具体的な犯罪捜査の必要性とは無関係に収集され,蓄積されています。これらの個人情報は,ばらばらに管理されている限りでは,蓄積もしくは流出による被害は限定的です。しかし,共通のコード番号により特定個人についての情報を正確に「名寄せ」できるようになれば,その個人いわば「丸裸」にすることが可能となります。このように,共通番号制度の危険性は,個別分野
で番号を付すことと質的に異なるのです。

 これまでにも,業者が相当の費用をかけて,住民基本台帳を閲覧して名簿化がされてきました。それは住民基本台帳が,それ自体は基本的な情報しか記載されていませんが,個人についての網羅的で正確な情報源であるが故に,価値ある資料とされてきたからに他なりません。正確な基礎的な個人データがあればそれにいろいろな情報を載せていくことで,さまざまなデータベースを作成することができるのです。住基ネットに流される情報が限定されているからといって,プライバシー保護の観点からは決して軽視できないのです。全国民の住基データを入手できるとしたら,少なからぬ費用や摘発のリスクを負ってでも,侵入しようとする者が現れることは明らかであり,流出による被害も従来とは比べものになりません。

   

A 1999年6月,京都府宇治市で住民基本台帳データ21万7617件分が流出するという事件が発生しました。

 その他にも地方自治体関係の情報流出は珍しくありません。今年になってから報じられたものでも,例えば,熊本市において警察官が何の手続きもなしに日常的に住基台帳を閲覧していたこと,四日市市において,市職員が正当な目的なしに,市民の個人情報にアクセスしていたことなどが想起されます。

 B 2002年5月に発覚した防衛庁の情報公開請求リスト事件は,防衛庁に対し情報公開法に基づき開示請求をした者のリストを作成し,庁内に流していたものです。開示請求者のリストを作成して当該開示請求者への対応に関与しない者にまで流していたこと自体問題ですが,リストには,請求書には書かれていない職業や所属団体などの個人情報が付記されていたというのです。しかも,総務省の調査では,同様のリストが他の省庁でも作成されていたと言います。これは,国の機関が個人情報の収集,他の情報との結合,流通についての規制の必要の認識に乏しく,日常業務の中で処理されてしまうと,多くの者が目にしていても問題性を意識することが難しくなることを意味しています。このような官庁の姿勢からすれば,住基ネットによる個人情報の収集・結合・流出の可能性は現実的なものであることを如実に示しています。

 その後,最近,防衛庁データ流出事件が報じられています。これは,自衛隊のコンピュータネットに使用されるシステムのデータが流出し,開発元の富士通がデータの買い取りを求められたとする事件です。陸上,航空自衛隊の情報ネットワークシステムやIPアドレスなどの重要な情報が孫請け会社から流出したというのです。これは,刑事事件になりましたので,表面化しましたが,「買い取り」で話がまとまれば表面化することなくすんだかもしれないのです。こういう事から考えると,同種事件が他にも起こっている可能性は否定できないのです。

 C 2002年12月には,福島県岩代町において,住基ネットに登載した岩代町民約9600人の個人情報などを収めたマイクロテープが盗難される事件がありました。同町から管理・委託を受けたコンピューター関連会社・エフコム福島支社の福島市中町にある分室駐車場に止めていた社有車が車上荒らしに遭い,中にあったジュラルミンケースごと盗まれた,という事件です。盗まれたテープは5本で,そのうち2本は見つかっていないし,しかも,総務省が事件の発生を知ったのは,1日半経過後だったと言う。万一にもあってはならないことでした。

 D さらに,ついこの2月に,銀行口座の開設時などに提示を求める本人確認書類として,一部の金融機関が住基ネットの11桁の住民票コードが記載された「通知書」を利用していたことが発覚しました。

 今後も,便利な故に,個人情報を横につなげられたり,役所のファイルに蓄積されたりする形の一人歩きは火を見るより明らかと言わねばなりません。

7 国民総背番号制に道を開く憲法違反の法律

  住基ネットは,全国民を番号により特定し,その番号をさまざまな分野の共通番号として利用することによって,国家が国民の行動を監視することに道を開いたことを意味するものです。国家が国民の行動を監視する制度は,主権者たる国民の個人的な情報を国家が包括的に管理するものであって,国家に対し国民が個人として尊重されると定め,生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利を保障している憲法13条に違反しています。その根拠を次に示します。

 @ 住基ネットは,どこにも国の権限が明示されていません。国の権限がないにも関わらず,住基ネット推進のために主導的な役割を果たし,不参加や段階的参加を表明した地方自治体を違法と決めつけるなど,地方自治体の主体性を真っ向から否定する対応を一貫してとり続けており,地方自治体の主体性を否定しています。また,指定情報処理機関は,都道府県の任意の依頼を受けて事務処理処理を委託されるだけの機関であるといいますが,実際には,指定情報処理機関は全国でただ一つ,地方自治情報センターのみであり,都道府県は住基ネット情報を自ら処理する能力がないことから,結局,地方自治情報センターがすべての都道府県の委託を受け,全国民の情報を一手に引き受けて処理しています。そして,実務面では,地方自治情報センターの方針がすべての都道府県,市町村に伝えられ,それに従って遂行するほかなくなっている現状にあります。この点からしても地方自治体の主体性は否定され,全国でただ一つ,情報が地方自治情報センターという一つのところに集約されていることからしても,住基ネットは,まさに中央集権的な制度として形成されつつあります。

 A 国の機関はそれぞれが業務単位の本人確認をするだけで,データ・マッチングは想定されていないと言います。しかし,本人確認の接続記録は国の機関の側に残ります。そこに残ったデータについては,住基法は直接には及ばないのです。また,形式的にも,国の機関には,データ・マッチングの規制がされていません。そうすると,残ったデータを使用するについて,何の制約も悪気もなく,それこそ自由に使用することが可能な状態にあることを意味しています。これこそ大問題です。そして,現実にも,各省庁内のLANを超えて省庁間のオンラインを可能にした「霞ヶ関WAN」が存在します。このことからも,本人確認情報をもとにマッチングするシステムはすでに整っている状態にあるのです。また,国会でも,厳格に審議が予定されるはずだった取扱の業務の拡大も,93事務から264事務に拡大されました。

 B さらに,総務省の外郭団体「地方自治情報センター」が保有する個人データが追加されることになりました,また,6情報に加えて,新たに返却・紛失といったカード情報が追加されると言います。これらは安易な拡大を現実に示しています。今後も際限なくなし崩し的に「拡大」される恐れが現実のものとしてあります。

 C 以上の実状からすると,住基ネットによって,まさに国民総背番号制の扉が開かれてしまった,と見なさざるを得ない状況です。

8 住基法附則1条2項は施行の前提条件

 住基法附則1条2項は,「この法律の施行に当たっては,政府は,個人情報の保護に万全を期するため,速やかに,所要の措置を講ずるものとする。」としています。この規定が設けられた経緯はこうです。1999年住基法改正当時の国会審議において,住基法によって個人情報が全国規模でネットワーク化されることにより,個人情報が漏洩し,プライバシーが侵害される危険性があるとの批判を受けて,政府は,住基ネットの稼働の前提として,住基ネットが稼働するまでの3年間に,充分に実行性のある個人情報保護法制を完備することを約束しました。また,同年6月10日に開催された第145回通常国会衆議院地方行政委員会において,小渕総理大臣は次のとおり答弁しました。すなわち,「本法案におきましてもプライバシー保護に格段の配慮を行っているところでありますが,これまでの国会審議を踏まえ,特に,住民基本台帳ネットワークのシステムの実施に当たりましては,民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを速やかに整えることが前提であると認識いたしております。」と。これらの経緯からは,「所要の措置」とは,充分に実効性のある個人情報保護法制の確立を意味することが明らかです。また,このような附則1条2項の趣旨に鑑みるなら,附則1条1項は附則1条2項の措置がとられることを条件として施行時期を決めたものと解すべきです。2項が実施されないうちに施行することは予定していないというべきです。

 そして,附則1条2項の「所要の措置」は,その中核的要素であった政府提案の個人情報保護法案が昨年の国会で廃案になったことから明らかなとおり,個人情報保護法が未成立をはじめ,いかなる意味でも講じられたとはいえず,住基ネットは施行のための条件を欠いたものです。

9 市町村長の義務

 住基法3条1項は,市町村長の義務として,「市町村長は,常に,・・・・・ 住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定められいます。ここにいう「住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置」とは,市町村として住民の個人情報を適正に管理する仕組みを制定する義務を定めたものであり,あくまでも市町村としてできる範囲の処置を想定しています。同3条1項は,1999年の住基法改正以前から存在しましたが,同年の改正により,住基ネットの構築によって個人情報が全国的にネットワーク化されることになったことから,さらに,住基法第36条の2が制定されました。同条は,「市町村長は,住民基本台帳・・・の事務の処理に当たっては,住民票・・・に記載されている事項の漏えい,滅失及び毀損の防止その他の住民票・・・に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない」と定められました。そして,これを受けて総務省告示334号第2,5項「b都道府県市町村にデータの漏洩のおそれがある場合の事務処理体制」において,市町村長に,個人情報の漏洩のおそれがある場合には,住基ネットの全部または,一部を停止できることを前提として,停止の基準の策定を求めています。 一方,現在の住基ネットは,前述したとおり,国においてその前提となる充分に実効性を持った個人情報保護法制が未整備であり,加えて,住基ネットと接続している自治体の3分の1が,個人情報保護条例を制定していないのです。ちなみに,すでに述べましたが,和歌山県は制定されているといっても8月の施行ですので,現在は制定されていないのと同じ状況ですし,県内の市町村においては,50団体中24団体が制定していません。

 従って,住基ネットと接続した和歌山市にとっては,自ら管理する和歌山市民の個人情報が住基ネットを経由して外部に漏洩したり,滅失または毀損される危険性や,住基ネットから漏洩した住民票コードを含む個人情報が民間で利用される危険があります。つまり,現状では,和歌山市が住基ネットと接続することは,和歌山市民の個人情報の重大な侵害に該当します。そこで,住基法第36条の2に定める「適切な管理のために必要な処置」して,住基ネットからの離脱が可能であるし,本件処分の取消しも法的に可能です。

 よって,本件処分の取消しには合理的かつ法的な理由があり,取り消されるべきです。


市職員海外派遣研修費返還請求訴訟

 この間,1月31日に裁判が行われました。通算11回目です。

 当日は,弁論準備手続きでしたが,この日で同準備手続きが終了しました。次回から証人調べがはじまります。証人は,次のとおりとりあえず2名の尋問が決まりました。出張者本人の坂本安廣氏と北野壽彦氏です。その日程は,5月13日午後1時30分〜午後4時30分と,北野氏は,6月10日午後1時30分〜午後4時30分です。

 当日は,是非みなさんも傍聴をお願いします。

石泉閣借り上げ費用差し止め及び返還訴訟

 この裁判も1月31日に9回目の裁判が行われました。この日も,弁論準備手続きでした。

 ところで,新しく当選した大橋市長が,石泉閣事業を廃止する意向とのことが伝えられていました。この裁判も,その結果によって,私達が訴えている内容を変更せざるを得なくなることから,この日は,その結果を踏まえる形で,進めようと言うことになりました。 そして,廃止が決まったことについては,1面でお伝えしたとおりです。これにより,和歌山市に対する公金支出の差止め請求は取下げることになりますが,実質的な勝利です。

 なお,1面でもお伝えしましたが,現在,石泉閣が既存建物として風致条例に違法の建物とする不適格建築物と言うだけでなく,明らかに違法建築物であること。また,従前の石泉閣は,庭園部分や北別館の敷地部分を不法占拠していたこと,そして,和歌山市が,石泉閣所有者と国との間の法律的には不安定なことを承知で,借り上げていたことなどの報告書を準備中です。次号で内容をご紹介できるでしょう。

 次回期日は,4月16日AM10:00〜の予定です。

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3月17日 PM4:00〜
   ニュース発送作業日

3月25日 AM10:00〜
   住基ネット意見陳述(県)

3月26日 PM6:00〜
  第6回全員会議

4月16日 AM10:00〜
公金支出差止及び返還請求訴訟
(石泉閣借り上げ契約)

4月23日 PM6:00〜
総会

5月13日 PM1:30〜
市職員海外派遣研修費返還請求訴訟
坂本氏尋問

6月10日 PM1:30〜
   同 北野氏尋問

次回会員会議のご案内

   日 時  3月26日(水)午後6時〜
   場 所  和歌山市勤労者総合センター
    (和歌山市役所西隣 TEL 073-433-1800)

       こぞってご参加下さい

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第7回定期総会のご案内

     

下記のとおり、第7回定期総会を開催致します。みな さんの積極的なご参加をお願い致します。

なお,今回は,住基ネットが私達の自己コントロール権を侵害していることに重点をおいて報告します。
会員外の方でも歓迎しますので是非お越し下さい。

 記

日 時 4月23日(水) 午後6時〜
場 所 和歌山市勤労者総合センター
     (和歌山市役所西隣 TEL 073-433-1800)

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