1998年8月21日(金) 重慶マンション(チョンキンマンション)

香港に着いたのは現地時間の午後1時30分。空港の到着口で両替した。前は香港の空港はレートの悪さが有名だったが、トーマスクックだったのでまあそう酷い事もなかろうと1万円を出したら、512.8H$になった。市内電話用に1H$も混ぜてもらった。そして、エアポートバスの乗り場まで久しぶりに感じる熱気で汗をかきながら重くなった荷物を背負って行った。

その近くの電話機から安宿の集合ビルである重慶(チョンキン)マンションのゲストハウス、ドラゴンインに電話した。それは、日本でFAX予約したら返事に空港から電話せよとあったからである。下手な英語で言ってみたが、空港工事の音がものすごく相手の言うことがよく聞こえない。今空港に居ること、予約している事、ゲストハウスのFAXに書いてくれていたようにバス停で待っていてほしいと一方的に言った。何だか通じてないらしく、エアポートバスの番号だけを言うので仕方なくOKと言って電話を切った。

そしてバスに乗り込んだら33H$でおつりをくれないとの事。そうだったのだ。両替したにも関わらずバス用に細かくしてもらうのを忘れていた。100H$しかなかった。これでもいいかと思ったけど運転手がショッピングして来いと言うのでバスを降り、荷物を今度はカートに乗せて、それでも今度は坂道を登って行ったので結構しんどい思いをしながら先ほどの両替所まで行こうとした。そしたら、警備員に止められた。どうやら到着口を逆に入ろうとしたかららしい。皆自由に歩いているように見えながらチェックされてるのだ。「Exchange」と言ったら外側のトーマスクックを指さされた。それでそこまで行って「Change small」と言ったら駄目だと言う。バンクへ行けというので、これも指さされた方へ行くと隅っこに銀行があった。そこでやっと細かくしてもらえた。手数料もなく窓口の女の子は感じよく接してくれたので嬉しかった。トーマスクックの女の子は感じ悪かったので特にそう感じた。そしてやっとバスに乗り込めた。

ここまでで電話してから相当時間がたっていてので、ドラゴンインの人は待ってくれてないかもしれないと思った。いや、初めからあの調子だと待ってくれてなんかいないかもと思ったりもした。バス内は中国人か台湾人か香港人らしき人ばかりで日本人らしき人はいなかった。私だって黙ってたらわからないだろう。港のどこにでもあるような施設を見て驚いている4人連れがいた。この人達は中国人だろうか。こんなもので驚いてるなんて。

そして4時半頃重慶マンション前のバス停に着いた。先の4人はここで降りた。私もここで降りるとすぐにインド人の客引きが150H$で部屋がある、と言ってきた。これに引っかかると駄目だと言うことをガイド本で読んでたので、予約してると言いながら早足で奥の方へ歩いて行った。しばらく付いて来たが、あきらめたらしかった。地球の歩き方の春号に載ってた見取り図で知っていたB棟のエレベータの位置まで脇目もふらず行った。なんだか黒い人ばかりだと視覚に感じてはいたが、目をあわすのが怖かったのでまっすぐエレベータの方を見て隅に立っていた。

そしたら東洋人の中年女性が声をかけてきて、100H$で部屋があると言う。そして、ラッキーゲストハウスだと言う。思わずじっと顔を見ると、見覚えがあった。そう、あの深夜特急のテレビ版で大沢たかおが泊まったゲストハウスの人だった。私は、そこでバッグから持ってきた地球の歩き方の切り抜きを出してその女性が写っている記事を彼女に見せた。そしたら彼女はにっこりして自分だと言った。私もうれしくなり先ほど感じてた怖さの事を忘れ、結構大きな声で片言英語をしゃべってしまった。彼女はまた宿の事を言ったが、私はドラゴンインに予約しているのでと言ったら、自分のところは9階だからよろしくと言って子供と左のエレベータに乗ろうとした。私も一緒に乗ろうとしたら、右側のエレベータへ乗れと言ってくれた。そうだ、ここは偶数階と奇数階でエレベータが違ったのだということを思い出した。そしてその後は少し怖さも薄れて周りを見る余裕が出てきた。そしたら、それぞれのエレベータの上に中の様子が写っている画面があった。そして警察官が一人エレベータ乗り場前フロアに居た。治安が悪かったので警察も気をつけているみたいだ。右側のエレベータに乗り込んだ。

やっぱり周りは黒人とインド人ばっ かりだった。6〜7人乗ったらブザーが鳴った。皆が壁にへばりつくように立って真ん中を開けたらブザーが鳴らなかった。コツがいるようだ。3階で降りたら、目の前にドラゴンインのドアがあった。

入って行ったら、笑顔でこんにちはーと言われた。そしておじさんは電話の真似をした。そばの部屋を見せられた。バス付きで部屋も広かった。おばさんがOKかと言うのでOKと言ったらレシートを書き始め、2泊で500H$と言う。あれっと思い、受け取ったFAXを見せ400H$だよと言ったら初めて予約してたことに気づいたらしく謝ってくれてこれは別の部屋だと言う。そしておじさんが別の入り口の方へ連れて行き、先ほどの部屋よりはランクが落ちる部屋を見せてくれた。シャワーの部屋で感じも少し暗かった。よく見ると、シーツも汚く、掛け布団もなかった。どうしようか迷い、もう一度広い部屋を見せてもらったらシーツはこちらも汚かった。そしてベッドがWであることに気づいた。せっかく重慶に泊まるんだったら安い方にしようと思い、安い方でOKと言った。そしてレシートを書き直してもらって400H$払った。部屋に入る時、おじさんは新しいバスタオルと石鹸2個を持ってきてくれた。その後、鉄観茶を急須にポットにお湯を入れて持ってきてくれた。おじさんは常に笑顔を崩さす愛想よかった。

一服してから避難経路を確かめに階段を降りて行った。階段は汚かった。そしてレートがよいという重慶内のパシフィックプレイスというインド人経営の両替商まで行った。奥まったところでガラス越しにインド人女性の客が二人居るのが見えた。私も入って行き、順番を待った。そして、1万円を何も言わず出したら534H$換えってきた。空港よりやはりよかった。手数料も要らなかった。しかし、重慶入り口の店のレートはもっとよいものを表示していた。ガイドブックに載っていない店なのでボラれるかもしれないが。

地下鉄のチムサーチョイ駅までオクトパスカードを買いに行った。これは、150H$を払ったら100H$分の地下鉄に乗れるプリペイドカードで、改札口でこのカードをかざすと中に入っているICで判別し料金が自動的に引かれる。金が不足になったら増額できる。そして不要になったら使った分以外はすべて返してくれるという超便利物だ。香港人もほとんどの人が使っている。

夕闇が迫っていた。港の方へ行き、夜景がよく見えるプロムナードまで行った。カップルとか友人どうし、また一人で来てる人、それぞれが暮れゆく風景を楽しんでいた。徐々に香港島の高層ビルに電気が灯り始め、美しい景色を見せ始めた。

すっかり空が暗くなったので、私は、スターフェリーに乗ろうとセントラル行き2等乗り場まで行った。表示に1.7H$でおつりなしとあった。2H$しかなかったので窓口の人にそのまま出したらおつりをくれて通してくれた。待合い場の赤ランプが青に変わるまで椅子に座ってた。5分位待ってゲートが開いた。乗り込み、風がよくあたる場所に座った。10分位の船旅だが、充分楽しめた。地下鉄よりずっと安いし、夜景も楽しめ、ムードがあるから私は好きだ。

セントラルに着いて地下道の端まで200m位歩き、そこから引き返してまた船に乗ろうと今度も係りの人に2H$見せたらおつりなしという表示を指された。そのままコインを改札口に入れそこを通った。場所によって扱い方が違うらしい。また、船旅を楽しんだ。

下船してすぐ見えたセブンイレブンでパンと水を買ったら11.4H$だった。宿へ戻ってシャワーを浴び、ベッドの上にバスタオルを敷いて寝ころんだ。掛け布団がないので変な気分だった。時差ボケのせいで一向に眠くならなかった。周りの音もよく聞こえた。多分3時過ぎに眠ったろう。

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