8月4日(水) オクサ

5時半に目が覚めた。ジョーカーが5時45分に起こしにきたが,同室の他の人たちは今日も起きそうになかった。他の部屋も静かだった。
一人で,食事場所まで行くと,子ども達がお茶を飲んでいた。ジョーカーは私にもお茶を入れてくれた。
6時になり,ジョーカーが「コントロールタイム!」と言うと,子ども達は行動を開始した。一晩の間に掛かった鳥達の数は多かった。全部取り外すのに半時間以上はかかった。でも取り外すという作業自体が私にはとても面白く思えた。明日からも朝一番の作業には必ず参加しようと決意した。

そうこうしているうちに他の人達も起きて集まってきた。
そして,朝食。一仕事終えたあとの朝食は美味しい。

ノートへの記入は14歳のクリスティがすることが多かった。鳥の名前をラテン語で書かなくてはいけないので,できる人といえば限られてくる。クリスティの他は大学生がしていた。人なつこいペティにラテン語で書けるかと聞くと,少しだけと返ってきた。
私はこの体験で,世界共通の学名はラテン語であると初めて知った。しかし,図鑑の目次が英名で書かれていたり,図鑑の説明も英名でされていることもあって,英名を覚えることにした。ボランティア達の話に登場する名前も英名であった。

博士がナイティンゲールを調査しているとき,「この鳥の鳴き声を聴きたい」と言ってみた。和名サヨナキドリと言ってとても美しい声で鳴くときいていた。歌手の竹内まりやも「真夜中のナイチンゲール」という歌を作っている。しかし,博士によると,「夏は鳴かない。鳴くのは春,5月」とのこと。残念。見た目は薄茶色で地味な感じだ。

アーダムと話した。彼は15歳,背が高く,可愛い顔をしていた。日本だったらジャニーズに入れそうだ。様子を見ていると,カウボーイハットのマーティン(13歳)はアーダムのそばによくいた。しかし,アーダムとクリスティが2人だけで話をしている場面も何度か見た。クリスティはアーダムが好きなのかもしれない。

ペティは人なつこい子どもでよくしゃべる朗らかな子どもだった。また,英語も少しできた。彼はここに来るのは3年目でケチケメートに住み,音楽学校に通っている。ジョーカーは彼の母親の妹で,ここに20年ほど来ていて38歳。料理,掃除,洗濯など生活一般を仕切っていた。
もしかしたら,彼女は雇われているのかもしれない。

ナーマはペティのガールフレンドでケチケメートから一緒に来ていた。彼女は最初だけ鳥の調査に参加していたが,すぐに飽きたらしく,皆が鳥を外しに出かけても一人残って絵を描いたりしていた。

ペティと仲の良いノールベは鳥の鳴き声を聞き分けられ,トカゲなど小動物のことも詳しかった。体が小さかったので年齢を訊くと,ペティとナーマは笑った。ノールベは11歳でペティとは1歳しか違わなかったが,体の大きさはかなり違った。ノールベは年齢の割に小さかった。しかし,他のどの子どもよりもずっと生物に詳しかった。

ペティとは色々話した。普段中学生を相手にしているせいか,また彼らがネイティブでないせいか,子どもには話しかけやすかった。ハンガリーにある山は1000m以下でしかないことなど地理の勉強までしてしまった。

朝10時に「ハウス」など陽があたる場所のネットを閉じた。11時にはネットをすべて閉じた
11時のコントロールの後はフリータイムとなった。ティボールとジョーカーがは昼食の準備に取りかかった。子ども達はそばでしゃべっていたが,それぞれ仕事を任せられた。
アーダムとクリスティは調査ノートに記された鳥の数を種類ごとに表にまとめていた。クリスティはティボールから一番仕事を任せられていた。頭がよいようだ。
私は鳥を外すことに慣れてきた。

昼食を食べ始めたのは1時半。昨日より遅かった。温度計を見ると日陰で25℃だった。日差しはきつかった。

15:30,サラに誘われ,ジャッキーと3人で町まで買い物に行った。15分位歩き,小さな店で水,お菓子を買った。サラが夫に電話をしたいと公衆電話boxに入った。待っている間,ジャッキーと話した。彼女はHSBCの社員で独身だと言った。結婚より独身の方が良いとも言った。
サラガ戻ってきて国際電話はできなかったと言った。別の電話を探して歩いたが,なかなか見つからなかった。私は疲れて彼女らに遅れて歩いていた。私が持っているペットボトルは500ml1本。ジャッキーは1.5lを2本にお菓子も。サラも1.5l1本とお菓子。(彼女たちは水をよく飲んでいた。多分美容のためだと思う。だから毎日買い出しをしていた。)何てタフな人たちなのだろう。後ろから見ると,ジャッキーの腕や脚は筋肉質だった。サラはそうでもなかったが。

2人は私に「ここで待ってて。私たちだけで行ってくるから」と言い残し,行ってしまった。私は疲れ切っていたので内心嬉しかった。5分くらいして彼女らは戻ってきた。郵便局はすぐ近くにあったらしい。そこで水を飲み,お菓子を食べた。私はジャッキーに「ユー,アー,マッスル」と言った。彼女はジムで鍛えていると言った。

夜のティボールの話から。
オクサの街では窓の形が四角と決められている。ティボールは半円の窓にしたいので街に家は建てられない。
また,自然公園内にも家は建てられない。家族とは調査中は別居しているようだった。
オクサは冬はー25℃,夏は30℃と内陸性の気候そのものである。
今日は150羽調査した。この前の日曜は800羽あった。
野鳥は,秋アフリカへ南下するときは地中海上を渡り,春ヨーロッパへ北上するときは中東を通る。
春と秋で生息する昆虫が異なるからだ。
ほとんどの鳥は1〜2年しか戻ってこないが,一度だけ12年後に戻ってきた個体があった。

本日,同定したもの
レッドバックトシュライク(ゾロと呼ぶ,撮影),ブラックバード,トゥリークリーパー(撮影),ホワイトスロート(撮影),ウッドワーブラー(撮影),ウイロウワーブラー,ブラックキャップ,コラードフライキャッチャー(若い),ソングトラッシュ,レッドバックトシュライク(撮影),ロビン