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山南に逃げろっと二人が何度言っても同じ答えである。
「屯所に戻りましょう。沖田君・小波君」っと言っては笑みをつくろう山南だった。
二人が山南を連れ帰り屯所に戻ると
「山南さん、どうしてけって(帰って)きたんぜぇ。」歳三が問う
「大津で、沖田君と小波君と出会いまして…戻って来ました」
「山南さん、屯所に戻ったっと言う事は 分かっているだろうな…」
「局中法度に触れましたね。私…切腹でしょう、土方くん」っと言い笑みを浮かべる。
「そのとうりだ、山南さん…切腹は暮れの六つだ」
「歳、山南くんは総長だ。切腹などしなくては良いのでは?」と近藤が問うと
「甘ねーな、近藤さんよ!総長と言えども【局中法度】に触れてぇーだ。仕方があるめい」
「最後に、お二人に忠告しておきたいのですが…このままでは「新選組」は駄目になっていきます」
「ありがとーよ、肝に命ずるぜぇ。」とニヤリと笑い、「切腹まで、山南を部屋に閉じ込めておけ!」との
歳三の声が響く。
部屋に閉じ込められた、山南を救うため
小波は、部屋番をする事にした。
「小波君、ありがとう。でも 私は逃げないよ」
「何言っているんだ、私が部屋番をするっと願い出たのは 君を救う為だよ」
「ありがとう、でも君には私の最後の頼みを聞いて頂きたい!」
「最後の頼みとは?」
「今生の別れに会いたい人がいる。情けない話だが【明里】にもう一度会いたい」
「分かった!明里さんを連れてくるよ」っと言い部屋番は、佐之助に任せた。
「山南さん!私は眠っていた事にするから、早く逃げて下さい」
「構わないでくれたまえ。原田君、私は此処で書物を読んでいたいから」
「山南さん」っと佐之助もやり切れない気持ちだった。
小波は、明里を探しに 島原に行った。
「なんで、山南はんが切腹するの…うち土方はんに言ってくるわ!」
「仕方がない事ですよ。明里さん、其れよりも六つになると 山南さんが…」
「わかりましたぞぇ。行きましょ、小波さん」
「後、山南君が、君を見受けしてくれたよ!」と笑みを浮かべる小波。
「なんで、そんなに うちみたいな女郎に優しいん…」と号泣する明里に
「早く、いきましょう。もうすぐ、六つの鐘がなる!その前に」っと小波が
諭すと「わかりました。連れって下さい。屯所に」
と足早に急ぐ二人だった。
「もうすぐ、六つだな…」っと思っている山南に
「山南君、連れてきたよ【明里】さんを!」
簾を開けると、小波と明里が居る
「山南はん、なんで うちみたいな女に優しいん?」
「何だね、明里!何時もの笑顔はどうしたのだ」っとくすりと笑う。
「うちの事、見受けしてくけたんやろ…」
「ああ、明日から 君は自由だ。私が居なくなっても強く生きていくのだよ」っと
諭すように言う。
そして最後に「私は君の事を愛していた。ありがとう…」っと言い
簾が下がった。「山南はん!!」と号泣する明里の姿を小波は、そっと肩に手を置いた。
六つの鐘がなった
「山南さん、出てください」との声で
「終にこの時がきたな…」っと思いを浮かべる歳三。
立会い人は、近藤・伊東・歳三だった。
「あの、介錯人は 小波君にお願いしたいのですが…」
「介錯は、総司だ」と冷たく言い放つ歳三。
総司が連れてこられ、介錯の事を話すと
「嫌です!絶対に私は嫌ですから」と怒る総司に
「おめぇー副長の俺の事が聞けねーのか!」と歳三
「総司、局長命令だ」と近藤が言う。
しぶしぶ、介錯を承認する 総司であった。
「山南君に歌を捧げたいのだが?駄目ですか、局長」
「それとも、私よりも土方先生の方が良かったですかな」とニヤリと笑う伊東。
「伊東さん、頼んだぜぇ…」歳三の声が震えている。
伊東が句を読み上げた後、山南は切腹をした。総司の刃が光った。
部屋に戻った、歳三は号泣した。何年ぶりだろうこの様に泣いたのは。
「山南さん、あんたとは試衛館から一緒だったな。何かが俺達の歯車が狂ったのだろう」
と悲しみにくれる歳三であった。