「王政復古」の大号令がかかる、「戦になるぜぇ。近藤さんよ、それも薩長が手を結んだ汚ねぇ…戦だ」
「歳…」「分かってらっな、あんたとおいらは一心同体だよ。近藤さん」歳三は、近藤に微笑みかけた。

「なんだって!近藤さんと総司が高台寺の残党に襲われただと!?詳しく教えてくれ
永倉」「近藤局長は、容保公に呼び出されその帰りに…」「ぜぇ、近藤さんと総司はどうなったんぜぇ?」
「近藤局長は、右肩を負傷、沖田君は未遂だったと言う事です」
「馬鹿野郎!」拳を柱に叩きつける歳三。
「明日は、戦があるって言うのに…しかたがねぇ、おいらが指揮をとるぜぇ」
「副長がですか?」永倉が問うと「こう見えても【祭りの喧嘩は得意だったのさ】」っと微笑む歳三であった。
【鳥羽伏見の戦い】の前夜、「近藤局長とおめぇは大阪に行け」「嫌ですよ、わたし…」と咳き込む総司。
「そんな、病人がいたら迷惑なんだよ!」っと冷たく突き放す歳三。
「分かりましたよ。局長と大阪で待っています」っと膨れ面の総司を見て、くすりと笑う歳三であった。

夜、お雪の元を尋ねた歳三「まっていましたぞす!」っと嬉しそうな笑みを浮かべるお雪
「今日は、おめぇさんとの【さよなら】の日だ」「嫌ぞす、うちを何処までも連れてっておくれやす」と
涙ぐむお雪。「戦に女はいらねぇーのよ!」っと突き放す歳三。
「此処に、50両ある。これで幸せに暮らすんだぜぇ」と歳三の目にも一筋の涙が。
「嫌や、こんなん嫌や」と泣きじゃくるお雪を強く抱擁する歳三。
京の夜は更けていった。

1月3日【鳥羽伏見の戦い】の火蓋が切られた。
その頃薩摩屋敷では、人斬り半次郎っと異名を持つ【中村半次郎】と【黒田清隆】が話しあっていた。
「これで、この戦は終わりもんそ」中村さん、黒田は半次郎の光眼に氷付いた。
「これは、錦の御旗」「これで、おいどん達は官軍になりもうしたな。黒田どん」
「中村半次郎…恐ろしき男じゃ」っと黒田が佇んでいると、「この人お方は、高台寺の残党で【薩摩】が面倒を
見ることになりもうした」「憎きは【新選組・土方歳三だ】」っと叫ぶ者達
「この御旗で【新選組】も灰になりもうそう」っとくくくっと笑う半次郎だった。

「くそー、武器が違いやがる」っと苛立つ歳三。「やはり、我々の負けでは…」と永倉。
「負けてはおらぬ。副長、此処は私に任せて下さい」っと刀を抜く源三郎。
「源さん…犬死はいけねぇーよ」っと留める歳三。
「最後の最後まで、私は【勇さんと歳さん】の力になりたいっと思って」
「源さん…」「井上さん…」っと歳三と永倉の目に涙が浮かぶ。
「私が劣りになっている間、この場所から逃げて下さい」その時である
歳三は、目を疑った「俺達は、お上の為に働いて来たのだろう。新八」
「まさか、我々が【賊軍】になろうとは」あっけにとられた二人だった。
「なぁー!新八【錦の御旗】じゃねぇーかい!!」その時である、歳三を庇うように
源三郎は倒れた。「源さん!!」歳三が呼ぶ声に、源三郎はうっすらっと目を開いた
「歳さん、試衛館時代が懐かしいですね…これで、私も平助や山南さんに会える…」っと言って
息を引き取った。「源さん!!」と泣き叫ぶ歳三の声がこだました。

その頃、探索方の山崎も瀕死の状態だった。
山崎に付きっきりの小波に山崎は「あんた、ほんまは長州の間者やったやろ」っとぼそりと言った。
吃驚した小波は「違います!」と答えたが「あんたが入隊した時から、副長は見抜いていたで」と言う
「副長が…」っと困惑する小波に「ええ機会や、あんた逃げたらええわ」っと言う。
「山崎さんをほって、逃げる訳にはいけません」っと言うと「元々、あんたが入隊した時から副長は見抜いていた
でも【山南さん】の勧めやから、殺されなかったんやで」っと山崎は言う。
「儂は、あかんみたいな…意識が消えていきよる」っと笑う山崎に
「山崎さん!!」小波は叫んだ。「儂は、海にでも沈めてもらう…こと…にするわ」っと
言い、息を引き取った。歳三が心より頼りにしていた男が又、亡くなった。
小波の姿は【伏見】から消えた。長州屋敷にも戻らなかったっと言う。

大阪についた歳三は、近藤と再会した。「鳥羽伏見の戦いはご苦労だったな。歳」
「嫌、おいら嫌な予感がするんぜぇ」「上様と殿が陣頭に立てば勝てるぞ!歳」「ああ…そうだな」っと
作り笑みを浮かべる歳三の予感は的中した。
将軍・慶喜と容保の姿が見えない。「思ったとうりだぜぇ。近藤さんよ!おいら達捨石よ」
「まさか」っとがくりっと肩を落とす近藤に
「江戸に行こうぜぇ。懐かしい江戸に!」
その時である、髭を蓄えた西洋かぶれの男が握手を求めて来た。
「新選組の皆さんですね。私の名前は、榎本武揚っと言います。私の【開陽丸】で
あなた方を【江戸】までお連れ致しましょう」っと微笑む。
「榎本さんか…まるで【近藤さん】みたいな人だ」っと歳三は近藤と榎本と重ねて見ていた。


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