![]()
そう言って、涙を浮かべたり 微笑んだりしている 土方副長の話を聞いていた 私でした。
「鉄之助は、幾つになった?」「15歳です!」「若けーな」と土方さんは笑っていました。
「おめーは、蝦夷には来なくっても良いだぜぇ」と微笑む土方副長。
「私も行きます!」と余りにもの嘆願に、土方さんも「おめぇーを見ていると総司を思い出すぜぇ」
と微笑む土方さん。私は、余りにもの穏やかな感じに驚きました。
そして、【蝦夷地】に、「榎本さん、こんな男を連れてきたのですか!!」怒りを隠せない【大鳥圭介】
「大鳥さん、久しぶりだったな」と笑う歳三。「あんたと一緒だと碌な事がない…負け戦だ」
「まあまあ、この【蝦夷】に着いたらならば、豊富な土地なので気に入ってくれると思いましたよ」
にこやかに話す榎本。
「とうとう【蝦夷】まで来てしまったな」っと自嘲に笑う歳三であった。
榎本軍はたちまち【五稜郭】を落とす。そして、歳三・大鳥は【五稜郭】に入場。
「中々、お主 遣るではないか!」「あまり、おめーさんには誉めて貰いたくねーけどよ…」「土方!」
「おめーさんをからかうのは、たのしいぜぇ」と笑う歳三であった。
そして、たちまちに【松前城】を攻略。
「流石だぜぇ。榎本さん、おいらが目抜いただけの男だぜぇ」と歳三は思った。
「この蝦夷地に、総裁を決めたいのだが…」「なんぜぇ、そいつは」「皆で札を出し合い、決める事だよ。アメリカでは
勿論、この制度だ」「おいら、かまわねーよ」そして結果は
総裁・榎本武揚。陸軍奉行・大鳥圭介・歳三は陸軍奉行並に決まった。
「すごいでは、ないですか!土方さん」島田が喜ぶ。
「おいらが、陸軍奉行並とはね…」と自嘲気味に笑う歳三に、新選組の元隊士が喜んだ。
「何もかもが【西洋】だと榎本さんは言うが、おいら気にいらねーな…」歳三の気持ちは、榎本から離れていった。
その頃、薩摩陣営では【蝦夷地】を任された【黒田清隆】がいた。
「榎本どんを殺しては、新しき新政府には 大事のお方でごわす」
「黒田さん…」「その為だったら、おいは頭でも丸めもんそ!あの人は【五稜郭】にいた捕虜をすべて
返してくれもうした。素晴らしき男でごわす」と榎本の才を改めて知った、黒田だった。
「冬があけると、薩長が この【蝦夷地】にもやってくるだろう…」「榎本さん…」
「君は、死に急いでいる気持ちがするのだが?死に急いではならないよ。土方君」
「ありがとうございます。榎本総裁」
「なに、私が腹を斬ったら薩長も喜ぶだろう」「榎本さん…」「短い間だったけど君には、助けられたよ」と笑みを
浮かべる榎本。
「最後に、戦をしよーじゃねぇですかい!戦って、負ければ仕方が無い事ですよ!」
「土方君、分かった 最後に見事に「薩長」を驚かす戦をしよう!私も、死に急いでいたみたいだ」っと笑うと
握手を交わした二人であった。
「土方さんに、女の方が見えられていますけど?」不信に思った歳三であったが、その女の姿に
目を疑った。お雪だ。「おめーさんとは、別れたはずたぜぇ」「すんまへん。江戸に赴き、歳三はんのお姉はんの
おのぶはんを尋ね【会津】に行き、尋ね尋ねてきました」
「おいら、嬉しいぜぇ!」と喜ぶ姿は、かつての新選組【鬼副長】の土方歳三の姿ではなかった。
「でも、明日になると、此処も戦場になる。今度こそけーって(帰って)くれよな」
「鉄之助を呼べ」私は、土方さんの部屋を訪れた。小柄な綺麗な女性が居た。
「鉄、おめーに頼みてー事があるんだ」「良いですけど、何でしょうか?」「おめーに、このお雪を京まで届けて
もらいてー、そしてこいつは、佐藤のぶって言う おいらの姐さんにだ」っと土方さんは「五稜郭」で撮った
洋装の自分の写真と、愛刀【兼定】を渡した。
「私も、戦います!」「おめぇーおいらの言う事を聞けねーのか!」と睨む土方さんに、私は何も言い返されなかった。
「分かりました…」私は残念な顔をみせると、土方さんは微笑んで「これも、りっぱな仕事だ!おめぇーさんにしか
出来ねー仕事だ。決して死ぬなよ、鉄・お雪」「分かりました!」「土方はんも早く京へ帰ってきておくれやす」
「ありがとよ…すまねーが、お雪と二人で居たいだ。鉄、野暮は御免だぜぇ」とクスリと笑い
部屋の扉が閉じた。