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2004年12月01日 | 【 3.月刊『お前だえよ!』 】 |
2003年10月号 落語家・桂枝曾丸の挑戦は今始まったばかり!~熊楠への思いから~
9月27日(土)に、もうすっかり恒例になった、僕の地元での年に一度の独演会がある。その名も「桂枝曾丸のわかやま芸品館」。本誌、発売日からして告知させて頂くには微妙な公演日なわけですが。
この会では毎年、色んな意味で挑戦させていただいている。今や、すっかり可愛がっている和歌山弁落語もこの会で産声を上げた。
他では味わうことの出来ない、和歌山らしい落語を作っていこうと始めたこの会は結構、新作を発表している。和歌山弁落語以外にも「鯰~なまず~」「河童女房」といった滑稽話はそうである。そして、今回は今まで以上に和歌山にこだわったネタを作り、発表する。
和歌山弁の方は「入院上々」。お見舞いをテーマにしたこの話は、病室を舞台に赤裸々におばちゃんの生態にメスを入れる。大笑いして頂ける事、間違いなし!と信じて今年も堂々と発表していく。
そして、トリに持っていく話はこちらも新作である。和歌山が生んだ奇人であり巨人の南方熊楠をテーマにした落語。
実は、僕と二人三脚でネタ作りをしている同市出身の漫画家・マエオカテツヤが熊楠の大ファンで今回にかける彼の思いはスゴイ。
南方熊楠とは、和歌山市が生んだ世界的有名な博物学者で生物学や民俗学など研究の幅が広く、とにかく興味を持ったものにはトコトン追求していく人だったとか。友人には夏目漱石や中国の革命の祖と言われた孫文なんかが居て、熊楠自身の研究の源としていた田辺に訪れた言うんだからびっくり。一方、町の人たちにも親しく近所からは、気軽に「南方さん」と呼ばれる程、気さくで庶民的な人間性だったという。語学も16カ国語をしゃべり、本なんかも三回程読むと全て暗記していたという正しく天才。また不思議な研究に没頭するあまり、周りから奇人扱いされることもしばしばあったという。、、まあとにかく知れば知るほど奥の深い南方熊楠である。
さて、この超人ともいえる人を枝曾丸らしくどう落語で表現しようか?マエオカとの落語作りをはじめたのが半年前。膨大な資料を目の当たりにし、途方に暮れるふたりであった。そこで、辿り着いたのが事実そのままを表現するというのは辞めよう!南方熊楠という豊かな人間性を使って落語で表現しよう!そう決めてからは、まるで南方熊楠にとり憑かれたようにネタを組み立てていったのである。そして出来上がった作品は、今まで自分自身表現した事のない世界であり、ある意味落語の幅を超えているんではないかと思う程の仕上がりになった。
噺のクライマックスでは、人情家であった熊楠は親友であり助手の男を天災で亡くしてします。それが、熊楠自身が自分のせいだと自暴自棄になってしまうシーンの所は、独り呑んだくれ暴れ発狂してしまう。落語のネタは数多くあるが、発狂というのは多分これだけだろう!自分自身、座布団の上で何処まで表現できるか挑戦である。
先日、南方熊楠の実家である和歌山市内の世界一統という造り酒屋さんにご挨拶に訪れた際、直筆の手紙など拝見させて頂いた。偶然、今回の落語でもそのシーンがあるだけに、直にその息使いが感じとれて、嬉しい反面、あまりの偉大さに自分がどれだけのもので表現出来るかといったプレッシャーが沸いてきた。その分、やりがいがあるんだけど。
確かに今回は今までにない想いで演じるであろう。 制作段階で、男ふたりが大泣きしてしまった程思い入れがある今回の作品。
この感動をより多くの人に届けたい!そして、落語という芸の素晴らしさを伝えたい!僕は和歌山出身でなかったらきっと、この偉大な人物に関心を持つことがなかっただろう。
「和歌山産の落語」へのこだわりを持ち続けて本当によかったと実感している僕の挑戦は、今始まったばかりです!
Posted by sisomaru at 2004年12月01日 18:51