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2005年10月05日 | 【 3.月刊『お前だえよ!』 】 |
野上夏まつり
今年の夏は、例年以上に‘夏祭り‘に出演させて頂くことが多い。
‘野外ステージのスタンディングで約30分間のトークショー‘こういう形が多い。
落語家でありながら‘落語‘じゃなくてトークショーとはこれいかに??
落語は、本来着物姿に扇子と手拭いを持ち座布団に座って面白い物語を演じるコト。
これを楽しく聞いてもらうにはまず、雑音のない密室でなおかつ着席状態で無ければいけないのです。これは、‘落語‘とは聞いてもらう皆さんの頭の中で演じ手が話すことによって物語を想像して理解してもらわなければ‘芸‘として成り立たない訳です。
これだけ聞けば‘何だか難しそう~‘なんて感じる人もいると思うけど、聞いてみればそうでもないわけで・・ とは、言えどもある一定のお約束の下で楽しんでもらう芸というのは確かである。だから野外の夏祭りのような雰囲気では、硬派に落語を演っても中々楽しんでもらえる環境ではないのです。こういう場合は立ったまんまマイクを持ってすぐ笑ってもらえる面白いお話を機関銃の様にお届けする方がいいのです。
とにもかくにも、お喋りで喜んでもらう事が僕のお仕事!と、この日も意気込んで向った先は野上町。毎年お盆の8月15日に開催している‘のかみ夏祭り‘。ここは、8年前から色んな形でお世話になっている僕にとって思い入れのあるお祭り。
地元、野上町の老若男女から里帰りしてきた人達まで集まり、ステージイベントあり盆踊りあり最後には花火もある野上町最大級のお祭りである。賑やかづくしのお祭りだが、今年はちょっと感じが違う。というのもお隣、美里町との町村合併により来年の元旦から紀美野町と名前が変わるからだ。野上町としては、今年最後の開催なるという事もあって関係者のみんなの気合も違う。広場の正面にステージを組み、中央にはやぐら。
周りには地元の特産品の販売や露店が立ち並んでいる。そして夕方の曇り空の下、花火の空砲が祭りの開催を知らせた。この日の僕は最初、式典とかアトラクションの司会もするので男の格好(浴衣姿)、夕闇に包まれて祭りも最高潮に達した頃に着替えて和歌山のおばちゃん姿へと変わる、何とも一人前のギャラで二度楽しめるスペシャルサービス。
祭りも順調にプログラムが進み、いよいよフィナーレの花火!
今回が節目という事もあり、いつもより気合が入った花火上がると噂を知った我々関係者や来場者みんなが固唾を飲んで花火の上がる隣のグランドへと見つめた。
ひとつひとつ上がる度に歓声が湧き上がる。よそ見する事なく見つめていた町民の人たちはきっと故郷の大事さをかみ締めていただろう。そして最後の大きな花火が上がり終わると皆が惜しげもなく拍手を送っていた。僕の隣に小さな子供を抱いた若いお父さんが瞼を閉じて泣いている姿に胸が熱くなった。景色も人も何も変わらない筈なのに何故か寂しい。故郷の名前が変わるという事は、町にとって本当に大きな出来事と実感した瞬間だった。そして祭りも終り、スタッフが片付けに急いでる時、実行委員会の人たちがステージ前へと集合がかかった。「片付けの手を止めてみんな来て!」「枝曾丸さんも来て下さい!」すると、副実行委員長が「町村合併で何かと大変だった祭り開催を実行して頂いてありがとうございます。」と涙声で会長へ感謝を言った後、「おい!胴上げしょうら!」と会長を胴上げし始めた。驚きと感激にやさしいおじいちゃまの会長さんも泣きながらいつまでも宙に舞っていた。‘故郷っていいなぁ~‘ともらい泣きする僕の身に染み込んだ今年の真夏の夜でした。ありがとう!野上町!!
Posted by sisomaru at 2005年10月05日 19:34