高田由一議員一般質問と答弁   (2月21日)

※質問は全文記載、県による答弁は要約しています。

1.新年度予算案について
2.公共施設への料金制導入について
3.市町村合併と道州制について
4.試験研究機関のあり方
5.梅衰弱症について
6.日中友好のあり方

1.新年度予算案について

知事は新年度予算の提案説明のなかで「産業振興や福祉、環境、教育などの分野で新たな発想で思い切った施策を実践」することを述べられました。

 予算規模は4年ぶりにプラスに転じました。そのなかで新たないぶきを感じる予算も目立っています。知事が提唱してきた「緑の雇用事業」は国においても制度化され、緑の雇用担い手育成対策として、研修制度ができ2年間の雇用保障ができるようになりました。それと関連して、今年度新たに「緑の雇用担い手住宅整備事業」で約50戸分の定住促進住宅を県が主体になって建設することも過疎にあえぐ山村にとって大きな意義をもっています。その他、林業関係では「木の国」緑の道として小規模な森林作業道の建設に補助をだしますが、これは長年、林業関係者から要望の強かったものであり、さらにこの事業の成果をもって国に補助事業としての採択を要請することなど大いに評価できるものです。

さらに木質バイオマスの活用を検討するなど、埋もれた地域資源の掘り起こしをすることも重要です。しかし逆に、無駄な事業への投資が従来型のまま漫然と引き続くものもあります。関空2期工事への出資金や貸し付けなどはその最たるもので、県民の貴重な財源を有効に使わないばかりか、国の無駄遣いの後追いをするものです。また、打田町への東急車輛誘致では県費を20億円以上も損をして誘致をしましたが、これは県民感情からいっても妥当なものでしょうか。さらに老人医療費への助成について所得制限を厳しくしたため今年だけでも2億5千万円の予算が削られることは医療費負担が増えている今日、考え直さなくてはならないと思います。

 個々の事業についての評価はこれくらいにしますが、私はもっと大胆に予算の構造を改革し、不況で苦しむ県民を助け、雇用を生み出す手助けをする県政であって欲しいと願い以下、質問するものです。

 いま、もっとも注目を浴びている県政のひとつに田中康夫知事の長野県があります。その長野県ですが、現在の公共事業費は年間約2200億円ですが、冬季オリンピックを目前にした1995年度には現在の3倍ちかい年間6200億円がつぎ込まれていました。いくら人口が和歌山県の倍を上回るからといって和歌山県の年間予算分のすべてを上回る額を公共事業につっこんでいたのでは財政は持つわけがありません。このままではあと2年で財政再建団体に転落という土壇場で知事が交代、いま財政改革推進プログラムをつくり財政たてなおしに頑張っています。この計画が達成されれば土木や農林を中心とした公共事業は2002年度比マイナス40%、単独事業では実にマイナス50%など合計634億円の削減になるといいます。

 その反面、重点化枠として210億円の新たな予算がつけられ福祉・医療、教育、環境の分野におしみなく重点投資される予定です。この動きはすでに始まっています。田中知事は2002年度予算で特別養護老人ホーム8か所の新設やケアハウスなど老人福祉施設20か所の新設など、市町村から希望があがったものに対して100%すべて予算をつけました。びっくりしたのは市町村です。「花火をあげてお祝いしなくては」と驚きの声があがったそうです。新年度は在宅の高齢者や障害者施策がぐっと強化される予定です。

 ただ率直にいって、従来型の公共事業を大幅に削れば、建設業界などに大きな影響がでるのは避けられません。その影響を軽減するため2万人の雇用創出を目標とする「産業活性化・雇用創出プラン」によって就業機会の確保、建設産業の構造改革を支援するとしています。例えば脱ダムとの関係では、森林整備による治水が大切と位置づけており、造林や間伐に力をいれていますが、田中県政の森林整備予算の力のいれようは前の県政ときわだったちがいです。前知事時代の2000年予算とくらべて2003年度予算では2倍の80億円以上を確保しています。それだけ膨らませた森林整備業務を森林組合だけにまかせず建設業者を参入させているのも特長です。和歌山県で同じようにしますと、間伐などの森林整備では1ヘクタールあたり7.3人の労働力が必要だといわれています。和歌山県下での現在の実績は年間約8700ヘクタールですから、これを倍にすれば通年雇用で300人以上の新しい雇用が生まれると私はみています。

 また、長野県では新年度予算で県が若者を直接、短期雇用して年間のべ170人の雇用をつくる、あるいは、働き盛りの30から45歳の世代を対象とした3カ月間のトライアル雇用制度も予算化しています。さらに小学校3年生までを30人規模学級とするなどの対策で教職員としての雇用を増やす計画です。これについては今後、市町村と協力しながら小学校6年生まで拡大するようです。このように長野県では、大きな公共事業は減ったかもしれないが、老人ホームや保育所建設、独自の雇用確保策など、地元の業者がうるおい、しかも雇用を生み出す事業への重点投資がされているのです。

 ここで肝心の和歌山県ですが、配付した資料で比較したいと思います。ここにパネルも用意していますのでご覧ください。共通しているのは田中知事も木村知事も2000年の秋に知事になっておりますので、当選前と後の決算を比べればリアルに比較ができるわけです。

決算のなかで義務的経費や一般施策の経費を除き普通建設事業だけを取り出したものを、和歌山県と長野県とで比較してみると、まず和歌山県でも長野県でも全体の普通建設事業と農林、土木の事業がへっているのは共通した傾向です。つぎに民生費は和歌山県でも伸びているが、長野県では大幅な伸びです。これで先程のべた老人ホームや保育所などを建てたわけです。ただし和歌山県ののびは実はこの年度までなんです。これは南紀福祉センターの大規模な改築などがあったためで、その後は99年度より減っている事態になっています。減っている農林の事業のなかでも、間伐が主体になっている造林事業について、長野では大幅な伸びです。これが、雇用を生み出しています。こうしたことを紹介したうえで、知事にうかがいます。大胆な改革をすすめている長野県政についての感想と今後の和歌山県政の改革をどうすすめていくのかをお聞かせください。

つぎに県政改革の新プログラムについてうかがいます。私は、和歌山県でも県政改革のための総合的なプログラムが必要だと考えます。これまで政策目標は長期計画で、財政の改善については財政運営プログラムでと2分化されています。2003年度予算で財政運営プログラムも終了するわけですから、政策と財政あわせた総合的プログラムの策定を求めるものですがいかがでしょうか。

和歌山県でも新年度予算では大規模災害対策として約6700万の予算が組まれました。昨年は1000万にもみたなかったこの分野の予算が増えたことはうれしいのですが、まだまだ不十分といえば言い過ぎでしょうか。昨年、串本町で行われた講演会で京都大学の河田教授は「地震対策は県レベルでみると、高知、大阪、兵庫、奈良、三重県がかなりすすんでいる。和歌山がいちばんおくれている。和歌山県民は非常にのんびりしている」と激励の意味もあったのでしょうが奮起をうながしています。そこで私も三重県と高知県の予算を調べたのですが、三重県では新年度で緊急地震対策事業費として2億6300万円組まれています。高知県では南海地震に備えるとの重点化枠で約6億8000万円の予算です。もちろん各県ごとに予算の枠組みがちがいますので単純に比較はできませんが、和歌山県とはヒトケタちがうというのが実感です。年末には中央防災会議で地震の規模が見直されたのですから、少なくともそれに見合った県の被害想定をやり直さなければなりませんが、その費用は安いものではありません。

そこで知事にうかがいます。地震・津波対策の今後の予算増額について知事の考えをお聞かせください。

つぎに地震による被害想定や津波の浸水想定をどうすすめるかについてうかがいます。さきほど紹介した京都大学の河田教授は現在、県が示している津波の高さ予想について次のように述べています。「津波の高さは残念ながら、県がだしたあの値ではない。県の値がまちがっているとはいわないが、限りなくまちがっている」と微妙な言い回しですがまちがっていると指摘しています。中央防災会議がしめした昨年末の地震規模見直しをもとに実際に住民が避難するときに参考になる被害想定、浸水想定を今後、どうすすめていくのか。答弁をお願いします。

最後に、昨年の議会で私も問題提起した住宅の耐震改修についてうかがいます。私の質問のあと土木部のほうでインターネットを利用した耐震診断プログラムを開発してくれました。柱が何本くらいあるか、壁や基礎はどうなっているかなど住宅の基本部分の数値を入力すればその家の耐震度がわかるという仕組みです。さっそく私の自宅(もう築100年くらいになるのですが)も試してみたところ、「大破壊の危険あり」と診断されて少々ショックを受けております。さてそうして診断がでた後が問題です。各県の新年度予算をみますと、静岡県だけで行われていた耐震改修への補助金が、長野県、兵庫県などで予算化されています。今後、和歌山県でも取り組みをしていくべきではないでしょうか。知事の見解をおしめしください。

◆木村良樹知事

 県により事情は異なる。私は和歌山県を良くするために様々な施策に取り組んでいる。例えば県の公共事業が減少している中で、緑の雇用事業やI・Uターン者のための住宅建設などによる雇用確保や、公共事業の中で県産材を使うなどの努力もしていく。

 他県の知事との共同や県議会等の協力を得ながら、新しい時代にあった和歌山県づくりを進めたい。

 南海地震対策として、莫大な費用がかかるが、防災センター、防災無線をつくる。被害想定は特に津波に重点をおいて15年度から2カ年かけて考えていきたい。耐震化の助成について、個人財産補償はしないという考え方をあらため、全国の動きも踏まえ、対応を考えていきたい。

 

2.公共施設への利用料金制導入について

 今議会に提案されている議案第22から24号は、県文化振興財団に運営を委託している県民文化会館やビッグホエールなどの施設の利用料金を定めるものです。これまでは、県有施設の使用料は県使用料・手数料条例で定められており、その収入は県の収入として計上されていました。これを今度はそれぞれの施設が利用者から直接、利用料金という形で受け取ることができるようにするものです。

これまで県が全額、支出していた管理運営にかかる委託費を、一部だけ委託費として支払い、あとは施設が利用者から徴収するという形にするものです。なぜ、そのようなことをするのか。99年度の包括外部監査では、県文化振興財団について「独立採算性の導入等を検討すべきである」としており、私はその流れの一貫だと考えています。県は委託費の一部を予算化しておき、あとの足りない部分は施設の営業努力でまかないなさい、がんばって儲けた部分については施設の方で自由に使いなさいというものです。結構な話ではないかと思われるかもしれませんが、いまの県の財政状況から見て、不足するときは知らんぷり、がんばってもうけたときは、その分翌年度から委託費は減らされるよと、こうなるのではないでしょうか。現在も県の委託費は減ることはあっても増えない状況です。そんなときにこの利用料金制度を導入することは、施設の維持管理

のためには利用者の負担をふやすか、それともサービスを低下させるかのどちらかにつながりかねないのでは、と私は心配しています。

そこで公室長にうかがいます。いままで使用料として県の収入として計上していたものを変える理由はなんですか。また、県からの委託料と利用料収入だけでは、赤字になった場合、どのような手だてをするのですか。答弁をお願いします。

◆小佐田昌計知事公室長

 施設管理者の自立的な運営を促し、施設の有効活用と一層の利用促進を図ることを期待し本制度を導入した。万が一、利用料金収入が伸びず県からの委託料で運営できなくなった場合は、県民への負担増加やサービス低下させないよう対処してきたい。

3.市町村合併と道州制について

 昨年9月県議会で私は、小規模な町村に対しては強制的な合併をも国が検討しはじめていることについて知事の見解を求めました。知事は答弁で「議論が深められていくことは結構なこと」と述べられましたが、この答弁に驚きました。それというのも昨年の2月議会でやはり私は市町村合併について知事に聞いたのですが、そのときの答弁では、「単に3300ある団体を1000にしようとかいうふうなことで、特に過疎の地域においてはこの問題は大変おおきな問題であるわけですから、そういうふうな形のやり方というのはよくない」と知事はそうおっしゃられていたからです。

そのあと11月の地方制度調査会にいわゆる「西尾私案」でて、ますます小規模町村へのしめつけが強まってきた訳です。これに対しては全国町村会や町村議長会も反発していますし、全国約2500の町村のうち半数に近い1200あまりの町村議会で西尾私案に対して、批判的な決議があげられています。和歌山県内でも43町村のうち33議会で西尾私案を批判する意見書が採択されているといいます。合併特例法を武器に国は押しつけ合併を強力に推進しています。そんなときに政府の地方制度調査会の委員が私案という形ででも、強制合併をちらつかせる内容の案を提出するということ自体、すでに議論の段階をこえ、特例法期限内での合併誘導になっている事実をみなければならないと思います。このような動きについて鳥取県の片山知事は「人口が少ないから、もう窓口業務をするしかないと決めつけて権限を剥奪するのは自治の侵害」と議会答弁し批判しています。

 合併特例債などのアメ(私は本当はドクだと思いますが)を用意し、特例法が切れた後は、西尾試案など強制的な合併もちらつかせるというムチをふるう国のやり方は許せません。そんななか知事は、読売新聞社がおこなったアンケートに答えて、「人口が一定規模にみたない自治体を解消することを合併の目標とすべきだ」との意見に対して「どちらかといえば賛成」と答えられました。また道州制については「賛成」の立場を表明されたと報道されています。

そこで知事にうかがいます。地方制度調査会の西尾私案についての知事の見解をおしめしください。また道州制についても知事の見解をしめしてください。

さらに、さきほども述べた長野県では合併しないで小規模な自治体の今のままでいこうじゃないかと決めている4つの町村と県がいっしょになって市町村自律研究チームを作られて、県の市町村課の3名がその担当だそうです。私は、合併するしないにかかわらず、その市町村を支援していこうという姿勢が大切だと思いました。秋田県や福島県、富山県の知事も合併しない市町村への支援を明言しています。合併をしないと選択した町村、あるいは合併してもメリットがない町村などへの支援について知事の考えを聞かせてください。また2005年3月と期限をきって合併を推進する県単独の合併推進事業の補助金(ハード対策分1億8000万円)は今年も使うところがなくまるまる減額補正される予定です。この際、なくしてはどうでしょうか。答弁をお願いします。

◆木村知事

 「西尾私案」の自治体の基盤強化を図る、合併後も旧来の市町村としての一定のやく割を持たせて取り込むという考え方には賛成だ。今年11月の最終報告まで議論に注目する。道州制はもっと大きな範囲での分権化された地域だと認識しており、その中で本当の意味での分権、地方主権を目指したい。合併しなければ冷遇するということは考えていない。合併推進の補助金はやっていく。

4.試験研究機関のあり方

 今年度完成の果樹園芸試験場につづき梅研究センターが整備され、試験研究設備が充実していくのは好ましいことです。農林水産分野では、残るは老朽化が激しい水産試験場の改修です。今後の課題として早急に結論を出されるよう要望しておきます。この試験研究機関の充実という点で振り返ってみると、私は99年の9月議会で問題提起しました。和歌山県のように県内で発電した電力を他府県に移出している県に対しては国から電力移出県等交付金が交付されていて、本県の場合は毎年3億円がきている。これがそれまでは企業団地の造成などだけに使われていましたが、そのとき私はこの交付金は農業や環境といった分野の試験研究施設を整備する予算にも使えるから、そのようにすべきだと指摘しました。その後、この交付金が果樹試験場整備に約8億円、梅研究センターに約3億円と使われておりこの点での改革は大いに評価したいと思います。 

本題に入ります。先日「行政組織等の見直し実施プログラム」案をみましたが、県立の衛生公害研究センター、工業技術センター、農林水産総合技術センターを2006年度に統括し、仮称、紀の国産業技術支援センターをつくるとしています。これは昨年10月にだされた、県行政組織等検討懇話会の提言をうけたものですが、その意義は「試験研究機関における科学技術振興活動を一元的に統括し、より一層の研究マネジメント機能の充実をはかるため」としています。

 また、新年度予算では、戦略的研究開発プランが予算化されています。県の研究テーマで第3者機関による審査で重要と認められたもののうち、大学や企業との共同研究をおこなうものについて、多い場合で1件3000万円の重点予算配分が受けられる制度がつくられます。

 すでにお隣の三重県で98年度からこういう方式で研究機関をまとめ、予算の重点配分もおこなっています。多自然型の河川工事や森林の下草刈りの省力化、陶磁器のユニバーサルデザイン化など地域に密着したユニークな研究を、県と大学、民間企業などが共同して取り組んで成果もでているようです。そうした表舞台にでる華やかでお金になる研究もありますが、県という公的な機関でしかできない基礎研究もあります。たとえば私は、梅について生理、生態からの研究をと訴えてきたが、和歌山県の試験場にはその蓄積がありませんでした。木の生長を10年、20年と観察してわかることや、気温や水温を何十年と観察、記録してきてこそ最近の温暖化傾向がわかるなど、基礎的な研究は重要です。そこでうかがいます。

組織の見直しや重点的な予算配分制度が新設されるもとでも、基礎研究の分野をおろそかにしないということを言明されたい。そのためにも従来の研究予算を確保したうえで、それに上乗せする形で戦略的研究プランの予算をつけるべきではないでしょうか。答弁をお願いします。

また、戦略的研究プランを選定する第3者機関は他県の事例をみると、大学や企業からの任命がほとんどですが、もっと暮らしのなかで出ている県民の声が届く体制が必要なのではなでしょうか。例えば、後でもふれますが、梅衰弱症の原因解明のために圧倒的多数の梅農家が求めているのは、御坊火電のばいじんの暴露試験です。科学的な評価ができないという理由でこれまで取り組まれていませんでしたが、県民の要望が強いのですから、科学的に評価する手法の確立から初めてもいいわけですから、そうした取り組みを試験研究機関に取り入れさせる。あるいは農産物への鳥獣の被害がどこへいっても大変だが、いかに被害を軽減するか、といった実戦的な研究に取り組むよう求めてきたが未だになされていません。また食の安全性や環境に負荷をかけない農業のあり方など、取り組むべき課題は多い。

しかしそんな取り組みをしてこそ、県立研究機関の存在意義が出てくるのではないでしょうか。いかにして県民に開かれた研究をするのか、そのために第3者機関が有効に働くよう求めたいと思いますが、人選もふくめた知事の考えをお聞かせください。

◆木村知事

 試験研究機関では純粋の研究に重きを置くべきではないと思う。全くダメというわけではないが、実践的な研究と合わせながらやっていきたい。戦略的研究プランには予算を上乗せし、研究課題の採択には広く意見を取り入れたい。

 

5.梅衰弱症について

梅衰弱症をめぐる問題はこれまでも白熱した議論がされてきました。原因究明には未だいたっていませんが、御坊火電が操業率を昨年で4%と落としている状況のもとで、最近、衰弱症の発生が減っており農家のなかでは御坊火電原因説はぬぐい去ることができない状況です。新しい研究機関の体制が組まれていくもとで、さきほど述べたように、農家の声が直接反映できるようなシステムができることを要望しておきます。さて、梅衰弱症をめぐる国の指定試験事業はウメ樹体内養水分バランスに重点をおいて研究してきましたが、2003年度で終了予定です。これまでの成果とあと1年どんな取り組みをするのか。お聞かせください。

 また、梅研究センターの人的体制や研究テーマはどうなるのでしょうか。梅衰弱症の原因としていまだに疑われている大気環境要因を引き続き研究されたいと思いますがいかがでしょうか。そして最後に、梅衰弱症原因究明への農林水産部長の決意をおしめしください。

◆辻健農林水産部長

 生育不良の原因解明にはいたっていないが、着果負担や高温・土壌乾燥が樹体に及ぼす影響に対して、整枝せん定方法、土壌改良などの技術で樹勢維持の成果を得、地元農家で活用している。指定試験ではうめ樹体内の養水分の分布や使われ方の知見が得られた。引き続き生育不良との関係を研究していく。

 (仮称)「うめ研究所」は地域に密着した研究機関としての体制を整備し、梅産業の持続的な発展を図る観点から生育不良の早期解明や、その他新たな研究など総合的な取り組みを行う。

 

6.日中友好のあり方

 新聞報道などによりますと、昨年7月、木村知事を会長とした「和歌山県日中友好交流推進協議会」なる団体が設立され、田辺市内に日中国交正常化30周年を記念した石碑を建てるために募金を集める活動を展開していました。私ども日本共産党は、日中友好の目的をもって記念碑が建てられること自体にもちろん反対ではありません。ところが今回の問題では一部の方々だけで準備をすすめたため、記念碑の内容についても決まったものを押しつける形になり、また財政的にも地元の事業者などに事実上、寄付が割り当てられるなど「これだけみんな不況で苦しんでいるときにいったいどういう感覚なのか」など怒りの声が出ていたのも事実です。そうしたやり方が大いに問題になり結局、中止になるようです。

ただ、この問題については新聞や週刊誌などで、あれこれと報道されていますが、肝心の会長である木村知事の見解を私はみたことがありません。そこでうかがいます。

「県日中友好交流推進協議会」の立ち上げの経緯と、石碑断念までのことの経過を明らかにしていただきたいと思います。また、結果として日中友好に水をさす形になった今回の問題の教訓は何だと思われますか。答弁をお願いします。

 また、私はこの機会に日中友好運動にかかる行政のあり方について一言申し上げます。それは友好運動を県民全体のものにしていくことが大切だということです。私は今回の問題もこうした原因から起こったものだと考えます。例えば和歌山県には50年の歴史をもつ日中友好協会和歌山県連合会という団体があります。民間団体とはいえ正式に中国との関係をもった団体ですが、昨年、中国から国家旅遊局長さんがお見えになって、東急インで歓迎会がもようされたときなども、各界各層のみなさんが多数、こられていましたが肝心のこの協会には声がかからないままでした。このほかすべてがそうですが、意図的な排除といわれても仕方ありません。少なくとも県が行政としてすすめる公費を使った交流運動については広く県民に開かれたものでなくてはなりません。そこで公室長にうかがいます。

特定の団体を排除するなど偏った日中友好運動は見直していくべきではありませんか。また、県民に広く開かれた友好運動とするために今後どのような取り組みをされますか。答弁をお願いします。

◆木村知事

 平成12年に日本全国から訪中した5000人の文化観光交流使節団を歓迎して発表された、江沢民主席の重要講話の石碑を日中国交正常化30周年を記念して全国各地に建立し、中国との友好を深めるとともに、観光等経済面の交流を推進するという計画が持ち上がり、その候補地の一つとして田辺市が入った。これを受け和歌山県日中友好交流推進協議会を設立し、計画を進めてきたが、田辺市並びに田辺市民に様々な意見があり、計画を白紙に戻すことにした。

◆小佐田知事公室長

 昭和59年の友好締結以来、山東省との間で、県と省という行政レベル、また民間レベルでも様々な交流を行っている。現在、民間主導の交流が盛んに行われているが、県としては今後とも特定の団体に偏ることなく、県民に広く開かれた幅広い交流を推進していきたい。

 

=再質問=

高田田辺市や市民の様々なご意見があって白紙に戻ったと言われますが、私はこの問題の教訓は何かとお伺いしたんです。提案した案そのものはよくて、ただ市民の側に議論や様々な意見があってやめたというんであれば、会長としての知事の教訓や反省はないということになるんで、この点を明確にする必要があるんではないかと思うんです。この点をお伺いします。

◆木村知事

 初めから考えを集約して行動を起こせばよかったが十分ではなく、非常に大きな反対やいろんな意見が示された。山東省との友好も含め、県と中国との友好を新たな形で図っていきたい。