藤井健太郎県議の質問と県の答弁(2003年6月24日3番目に質問)

※質問は全文を、答弁は要約したものを掲載しました。
※再質問及び要望は記録文書がまだ出ておりませんので掲載していません。

1,平和行政について

2,和歌山市の和歌浦干潟の保全について

3,農作物の鳥獣被害とその対策について

4,介護保険事業について
5,健康対策について

 

1,平和行政について

 わが国の憲法前文に、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあります。いわゆる平和的生存権といわれるものですが、憲法はひとりわが国の国民だけではなく、世界中の全ての人々が平和のもとで生活を送ることができる権利を認めています。また、99条では「公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負う」とあります。したがって、行政は住民が平和のもとでくらしていけるように努めていかねばならないということです。忘れがちでありますが、平和を維持する不断の努力の上にたってこそ、様々な行政課題の追求もできると思います。平和に相対するのが戦争です。和歌山市戦災復興誌によると、昭和20年7月9日、和歌山市への大空襲で、死傷者約6千人、焼失家屋約3万3千戸、罹災者11万人、市内中心部633haが焦土となったとあります。今なお、戦争の傷跡や後遺症で苦しんでおられる市民の方が少なからずいらっしゃいます。戦争ではなく平和を、私は、平和を維持するための努力はなにものにも変えがたいと思うわけですが、この際、知事の存念を聞かせていただきたい。そして、平和という問題についてどのようにとりくもうとされているのか。あわせて、お伺いいたします。

今、一つは、今国会で有事法制が成立いたしました。今後、その具体化として国民保護法、米軍支援法などの立法化がすすめられるということです。このほど成立したいわゆる「周辺事態法」は、わが国の定義がなく、自衛隊の海外における武力行使をも可能にする内容をもつ法律で、地方自治体の責務が定められています。自治体行政や住民生活への影響はどのようになるのでしょうか。私は、施政権の及ぶわが国領域への直接攻撃を受けたときの備えとしてのみではなく、海外での軍事力の行使のために、またその反撃を想定しての戦時体制づくりに住民や住民の財産が動員されることがあってはならないと思うわけです。また、そういう事態をつくってはならないと願うものです。軍事力によらない平和の維持の追求を地方自治体としても努力していただきたいと願うものですが、政府の考える有事法制に対して知事の所見と今後想定される地方自治体に関連する立法について、どのように対応されるのか、お伺いいたします。

◆木村良樹知事
 日本の国の恒久平和を願う気持ちは立派だと思っている。ないことだとは思うが、日本に他国が攻め込んできた時の対応手続きを定めていないことは、現状況からは適切でないと考えている。有事法制施行後1年以内に検討されることになっている国民保護法制の整備は重要だ。

 

2,和歌山市の和歌浦干潟の保全について

 和歌山市の中心部を流れる和歌川は、その河口部に干潮時になると巨大な干潟を表します。その面積は、約35haで、近畿最大規模といわれています。生息する生物は約300種類と推定され、貴重種も多く生物の宝庫ともいわれています。瀬戸内海国立公園の区域にも近く、和歌浦周辺一体の海岸線の保全が望まれているところでもあります。この干潟は、一時はヘドロの堆積がすすんでいましたが、漁業権をもつ漁協の再生への努力や公共下水道の普及ともあいまって、以前に比べるとアサリの稚貝が育っているなど再生しつつあるのではないかと関係者の期待がもたれています。片男波砂州から和歌浦干潟、そして名草山を展望する景観は、万葉時代をほうふつとさせる和歌山北部を代表する景観の一つでもあり、県の施設である万葉館が片男波砂州の上に開設されています。片男波公園は県民の憩いの場でもあり、和歌浦一体は歴史的景観をもつ観光スポットとしても注目されています。今日、地球規模での環境問題が論じられている中、和歌山の自然環境を保全し、将来に継承していくことは、私たちの世代がしておかねばならない仕事だと思うところです。県の和歌浦干潟についての基本的な考え方、対応についてお聞きし、保全のための努力を求めたいと思います。そこで、環境生活部長にお尋ねします。

@和歌浦干潟についての基本的な認識をどのようにもっているのか。

A県が策定した環境基本計画での和歌浦干潟の位置づけはどのようになっているのか。

B改正河川法では、従来のコンクリートで固めた護岸改修ではなく、住民の意見を反映させることや「自然再生型河川整備」がいわれています。また「和歌山型の公共事業のありかた」ということもいわれているわけですが、和歌浦干潟をめぐる公共事業のありかたを考えていくためにも、和歌浦干潟そのものの保全と再生を環境政策に位置づけ、そのための組織と事業計画の策定が必要ではないかと思われますが、いかがでしょうか。

◆津本清環境生活部長
 現在、干潟の状態は比較的良好に保たれているが、干潟は県民の貴重な財産でもあり、干潟環境を損なわぬよう配慮していかねばならないと考えている
 環境基本計画では「わんど、干潟、藻場、砂場など多様な生物の生息基盤となる自然環境を保全します」と位置づけている。
 干潟保全の課題が予測される時点において、関係者と相談しながら、保全に向けた必要な取組や対策、協議する組織を含めて検討する。

 

3,農作物の鳥獣被害とその対策について

 本県の近畿2府4県の中で占める農業の位置を見てみますと、1999年の数字でありますが、全人口に占める農業就業者の割合はトップ、1人あたり農業粗生産額もトップ、とりわけ果実の生産額が10倍近くあり、青森、長野、山梨と肩をならべての果樹王国であることがわかります。野菜の生産額も兵庫、京都に次いでおり、耕作地面積の比較からみると高い生産性をあげていると思われます。生産者をはじめ関係者の努力のたまものと思うわけですが、近年、農業生産をめぐる環境が厳しさを増してきているだけに、農業を本県の基幹産業と位置づけて振興策の拡充をはかる必要があるものと思われます。本県の地理的条件でもありますが、中山間地域で農業経営されている方が頭を痛めている問題として農作物の鳥獣被害の問題があります。朝、収穫にいくとイノシシもしくはイノブタにすべて掘り起こされていた。このみかんの木はサルのために植えているようなもの、という話です。県は、農作物被害に対して被害防除と駆除の両面から対策をとられていますが、被害の実態からみて果たして十分な対応といえるのかどうか、今後の対応をどのように考えておられるのか、鳥獣の生息状況や生態の調査をはじめ、被害防止のための本腰をいれた取り組みが求められているものと思われます。そこで、関係部長にお尋ねします。

@鳥獣被害の現状をどのように把握し、認識されておられるのか、また、現状の対策と今後の方向を示していただきたい。

A和歌山県北部において移入種であるタイワンザルについて、特定鳥獣保護管理計画を策定し、捕獲事業を行っていますが、その進捗状況と今後の見通しについて、お答えください。

B今回の構造改革特区の中で認定された新ふるさとづくり特区の内容の一つとして、有害鳥獣捕獲における狩猟免許を有しない従事者を容認するということですが、この特区で何が期待でき、どのような効果があがるのか、お尋ねします。

◆阪口裕之農林水産部長
 平成14年度の農作物被害金額は約3億2,000万円で、イノシシが最も多く、約1億1,800万円、次いでカラスが約7,000万円、次いでサルが約5,300万円など、県内で大きな被害が出ており、生産者が苦慮していることは十分認識している。今後も被害防止に向け、ハード事業を進め、関係部局と一体となって取り組みたい。

◆津本清環境生活部長
 本年4月16日から、第9次鳥獣保護事業計画を改訂し、捕獲方法、捕獲時期等の許可基準を大幅に緩和した。市町村への有害鳥獣捕獲に対する助成を、従来から実施しているサルに加え、平成13年度からイノシシ、平成15年度からアライグマを対象に実施している。
 平成13年9月のサル保護管理計画の決定を受け、餌付けを行いながら、二ヶ所の大型捕獲オリを建設してきたが、オリが完成し、直後3月28日、29日の両日で計18頭捕獲した。今後、電波発信器による群れ位置確認、餌付け法を工夫しつつ特に山にエサが少ない時期を重点に捕獲するなど積極的に取り組んでいきたい。
 狩猟免許を所持していない者が有害鳥獣捕獲に従事できることで、捕獲の円滑な実施が図られると考えている。12町村が対象地域。

 

4,介護保険事業について

 今年度、介護保険の事業計画の見直しにより、新たな保険料体系が設定されました。65才以上の1号被保険者の保険料の全国平均は改定前の2,911円に比べ、13.1%アップの3,293円となっています。年金が引き下げられたもとでの保険料の引き上げが高齢者の生活をおびやかし、必要な介護サービスの抑制につながりはしないか懸念がされます。今回の事業見直しにより、県内の保険料標準負担額の地域間格差が改定前の1.5倍から2倍へと、広がりました。また保険料の所得区分によって保険料が定額で5段階もしくは6段階に区分されていますが、この中の矛盾も広がっています。第1段階は生活保護世帯もしくは老齢福祉年金受給者で非課税世帯となっています。第1段階より高い保険料が設定されている第2段階は世帯員が非課税であるというくくりだけで、収入0から年金収入260万円までの非常に幅の広い所得区分となっていて、今回の保険料改訂により収入に対する保険料負担率の開きがいっそう拡大してきています。保険料が負担できなければ介護サービスが受けられない事態となります。保険料のきめ細かな低所得者への配慮が求められていると思います。

 また、最近、通院や施設などへの移送サービスについての苦情が増え、改善してほしいという訴えをよく聞きます。今年度は、介護報酬の変更もあり、通院に利用されていた介護タクシーについて、タクシー運賃の新たな負担が生じることになったり、予約でいっぱいで数ヶ月後でないと新規に利用できないという問題や市町村が行う高齢者生活支援事業の一つとしての移送サービスを実施していない自治体があることなど、要望にこたえきれていないという問題です。県は、これまでホームヘルパーやボランティアが自家用車を利用しての有償での移送は認めない方針を示してきました。ところが、今般の構造改革特区において、福祉分野の特区として、社会福祉法人やNPOが行う自家用車を利用しての有償移送サービスも認められるようになり、他府県では採用する自治体も出てきています。利用者の通院や移送についての選択肢を広げ、必要とする移送サービスが受けられるように改善をすすめることが求められていると思います。そこで、福祉保健部長にお尋ねします。

@今回の介護保険事業の見直しについて、とりわけ保険料の地域間格差についての認識をどのようにもっているのか。また、県としての緩和策があるのか。

A保険料の第2段階に区分されている人で、第1段階よりも低い収入の人もあります。また、第2段階の所得区分は非課税というくくりだけになっていて、非課税世帯の中でもより所得の低い人への配慮が必要なのではないでしょうか。県当局の見解と今後の対応について、どのように考えているのか。お尋ねします。

B移送サービスについて、現状はどのようになっているのか、供給側が利用者の要望においついていない自治体も多いのではないか。今後、どのような方針をもってすすめるのか。

CNPOやボランティアが移送サービスにとりくめる条件整備をどのようにすすめていくのか。移送車への補助制度など検討できないものでしょうか。

◆白原勝文福祉保健部長
 平成15年度からの本県全体の介護保険料の平均は3,527円で、平成14年度までの保険料2,910円に比べ617円、21.2%の上昇。各市町村の保険料格差は、介護サービス利用料の相違等によるものだと考えられる。
 保険料算定のための所得段階区分は、低所得者層、特に二段階区分層への賦課基準の見直しを行うなど、生活困窮者に対する減免要件を法令上位置づけるよう国に要望している。
 現在移送サービスは公共交通機関や介護タクシーのほか、市町村でも移送車両により居宅と福祉施設や病院などを送迎する「外出支援事業」等が行われている。県はこれらの事業を行う市町村に補助を行っている。今年度は前年度比1.5倍の約9,900万円を予定している。「介護タクシー」は移送は介護保険の給付対象外だが、「乗車・降車の介助」に対する介護報酬が設定された。今後はこれらの事業を組み合わせて行うことが適当だと考える。
 サービスの整備は地域に応じた対応等について検討していく。移送車購入への補助は外出支援事業の中で行っている。

5,健康対策について

 わかやま21世紀健康づくり推進会議から、県民みんなの健康づくり運動、元気わかやま行動計画が提言されています。早朝の和歌山城公園をはじめ各地域の公園・広場では中高年のみなさんがウォーキングをはじめ体操など、それぞれの運動をしている姿をよく見かけます。また、肥満や糖尿病・高血圧の予防、病後のリハビリとして、和歌山市にある県の体力開発センターのプールを利用している人も多くあります。しかし,一方では、総務省統計局の社会生活基本調査を見ると、県民が生活時間の配分及び自由時間に余暇活動としてどの程度スポーツに時間をさいているかという設問では、本県は全国平均値の72.3より低く67.6という指数で、近畿で最低となっています。スポーツを楽しんでいる人口や時間が短いということをあらわしています。

元気わかやま行動計画の中の推進体制の整備として、県民の健康づくりを実践するためには地域活動の活性化が重要として、自主的グループの育成、支援を行うとあります。そのためには、指導者と身近に利用できる施設がどうしても必要となってきます。行動計画には健康運動指導士などの専門資格職の養成確保が必要ということや健康づくりの中核となるセンターの設置等、健康づくりの基盤整備を行うとも書かれています。指導者と施設の確保など、県としての受け皿づくりをどのようにすすめていくのか、関係部長にお尋ねします。  

@健康対策とスポーツ振興についての基本的な考え方をお聞かせください。

A県民みんなの健康づくり運動をすすめていく上で、指導員や専門資格職の養成など体制づくりはどのようにすすめられているのか。

B屋内スポーツ施設の耐震診断、耐震補強や整備はどの程度すすめられているか。建替えが必要な施設が放置されていないか。

C市民が気軽に利用し、専門家の指導が受けられる県の施設として体力開発センターがあります。先日も議論されたところでありますが、和歌山市内のセンターは年間11万人を越す利用者があるということです。この施設の利用者はここ数年増加傾向にあり、特に一年中利用できるプールの利用者がふえてきています。この施設の存続、充実を望むものでありますが、県民の健康増進と生涯スポーツ振興の拠点施設の一つとして、より充実をめざして整備をすすめていくべきではないのか。

◆小関洋治教育長
 すべての人々がそれぞれのライフステージや特性などに応じ、主体的・継続的に日常生活の中でスポーツに親しめるよう、県民の健康・体力つくりの充実各種スポーツの普及等を推進するため、様々な施策を展開している。
 県立体育館などのスポーツ施設の耐震診断は、現段階では実施していないが、最も経済的で合理的な対応策を検討していきたい。
 センターでは体操教室、水泳教室、健康講座を開催し、プールでのリハビリにもセンターが利用されている。今後も高齢者等の健康維持をはじめ、様々な教室の内容を充実させて実施していきたい。

◆白原勝文福祉保健部長
 「健康日本21」を推進するため県では「元気わかやま行動計画」を策定している。この計画推進のため、「健康運動指導士養成講習会」に参加するなど指導員の養成にも努めている。今後関係機関等との連携を図り、学校や企業の運動施設の開放、公共スポーツ施設の利用時間拡大等の推進、健康運動指導士等による啓発や実践活動等を積極的に推進していきたい。