2.国際紛争の武力解決を認めない憲法9条との関係は。違反することはないのか。公務員には憲法擁護の義務があるわけですが、どのように考えているのか。
3.国民保護法制で住民の命と安全はどのようにして守られるのか。軍事優先になることはないのか。
4.県が管理する空港、港湾の非軍事平和利用についての見解はどうか。
S63年5月10日、県は、白浜空港で自衛隊機が離着陸訓練飛行を行っていた問題で、今後、自衛隊機の軍事訓練は認めないとの運用基準をまとめた経緯がありますが、そのことは今でも変わらないのか。
5.海外で軍事展開する米軍と自衛隊の共同作戦体制づくりとその推進は、国民の生命、身体、財産の保護とは両立しえないと思います。平和憲法のもと、日本への武力攻撃事態が起きることを前提にして、あれこれ法律をつくることではなく、そういう事態をおこさせない道を選ぶこと、そのために尽力することではないでしょうか。知事の見解はいかがでしょうか。そのためにも平和行政を確立し、県施設の平和利用を強く求めるものです。
以上、知事から一括しての答弁をお願いいたします。
◆木村良樹知事
地方公共団体は、住民の生命、身体及び財産を保護する義務を負っている。県としては、武力攻撃から住民の生命、身体及び財産を保護するという立場から、状況に応じ適切に対処することになると考えている。
憲法第九条では、自衛のための必要最小限の実力を行使することは認められている。我が国への急迫不正の侵害があれば、排除手段として適当な方策が他に無い場合は、必要最小限度の実力行使はやむをえない。
国民保護法案では、国、県、市町村及び公共機関が連携して住民を保護するための計画を前もって作成し、計画にもとづき避難等の訓練をおこなうことになっている。武力攻撃事態等で公共施設を利用する際も、住民保護のための措置への調整が十分に尽くされると考える。
自衛隊の空港・港湾利用については、防衛訓練の利用は認めていないが、災害時の平和的利用については従来どおり認めていく。
県民が平和で安全な暮らしができることを念頭に取り組んでいるが、万一の場合に備えて、国民保護法制等の法整備も重要だと考えている。
次に社会保障構造改革について
H15年度内閣府の「国民生活に関する基礎調査」では勤労者世帯の1世帯あたりの平均所得が6年連続減少し、生活が苦しいと意識している世帯が53.9%で過去最多になっています。日常生活での悩みや不安を感じている世帯は67.2%、悩みや不安の内容は、老後の生活設計、自分の健康、今後の収入が上位、いずれも率が上がってきています。勤労所得や年金などの国民所得が減少を続ける中で、医療、介護などの社会保険料や利用時の自己負担が増大し、社会保障に対する国民の負担は増えつづけています。さらに負担の増大を求めてくる社会保障構造改革が県民のくらしにどのような影響をもたらすのか、県民の福祉、健康を保持する使命をもつ県としてどのような対応をしていくのか。
1.政府の社会保障構造改革についての基本的な考えと対応、県民のくらしへの影響をどのように考えているのか。
2.今回の年金改正についての評価についてです。保険料引き上げと給付額の削減が今後14年間連続して行われることとなりました。今回の改正は、国民年金保険料納入率80%への引き上げ、出生率の引き上げも前提にしていますが、現在の保険料金額でも60%の納入率。県民生活からみても年金制度の空洞化や無年金者の解決につながるのかどうか心配をするところです。国民皆年金制度の維持充実へとつながるものになるのでしょうか。
3.第3次の和歌山県障害者計画、紀の国障害者プラン2004が今年度から10年間を計画期間として策定され、前期5年間について数値目標が設定されました。社会福祉分野においても構造改革がすすめられているもとで、障害者福祉についての公的責任のありかたをはじめ基本的な考え方、また、計画の数値目標を達成するための財源確保をどのようにしてすすめるのか。
◆嶋田正巳福祉保健部長
障害のある人もない人も、社会の一員として互いに人権を尊重し合い、共に和歌山に住んで良かったと実感できる共生社会を実現するため、自立生活支援などに重点を置いて取り組んでいく。福祉・保健・医療、教育・労働など各分野の連携で、総合的に施策を推進していく。
他府県とも連携し、障害者福祉の財源の安定的確保を国に働きかけていくなど、財源確保に最大限努力する。
4.障害者プランの中で、精神障害者の社会的入院の解消がいわれ、数値目標を示して入院から在宅への環境づくりが提案されています。どのようにすすめるのか。
最近、精神障害の子供をもつ家庭からの相談が増えてきています。その多くが親が健康な間はなんとか、がんばれるが、親が高齢で動けない状態となったり、死亡した後がたいへん不安だ、ということが共通して語られます。先だって、高校生の時に発症し、20才以前から20数年、統合失調症で通院治療を受けている人の相談がありました。両親はすでに他界し、70才を超えた伯母さんが同居して生活をともにしていました。高校卒業して働きにいっても人間関係が作れず仕事にならない、収入もなく今後のことが不安で夜も寝られない日があるということでした。20才前に治療を受けていることが確認できましたので、とりあえず障害基礎年金の請求から始めることにしました。伯母さん亡きあと1人で生活できなければ、施設か入院ということになってしまいます。本人は今の家で生活していきたいという希望をもっています。障害をもつ人が在宅で適切な治療を継続し、地域社会の中でサポートを受けながら生活できる環境づくりが必要です。そこで、いくつか提案をしてみたいと思います。
@少人数で共同生活をするグループホームへの運営補助制度がありますが、立ち上げ時への支援体制がないように思います。0からの出発になりますので立ち上げ時の応援する施策が必要ではないでしょうか。
A精神障害者の高齢期に対応する入所施設、入院施設ではなく生活施設としての障害者に対応できる施設づくりが必要ではないでしょうか。
B精神保健福祉法32条の申請をすれば通院医療費の自己負担分が医療費の5%に軽減されています。さらに自己負担分への助成をすすめれば、障害年金での生活など所得の低い人の受診の機会を広げることや通院治療の継続を促すためにも有効な方法だと思います。すでに、県内の28市町村が単独助成にふみきっています。福祉医療費の一環として県で半額補助がもてないものでしょうか。
◆嶋田福祉保健部長
プランでは、精神障害者社会復帰施設やグループホームの整備をすすめるとしている。今年度から、入院中に精神障害者社会復帰施設や小規模作業所等で、生活訓練等を受けていただき、退院及び社会的自立を促進する。グループホーム立ち上げに際しては、さまざまな相談に応じ、運営に必要な経費の補助をおこなっている。
高齢化により介助が必要な精神障害者を対象とする精神障害者福祉ホームB型の整備を進める予定。平成十六年度から、和歌山市内で一箇所を整備する予定。
通院医療費は自己負担分のうち25%を県と国で2分の1ずつ負担し、残り5%は自己負担。県単独の5%上乗せ補助は非常に難しい。
C公営住宅への入居条件の緩和をしてはどうでしょうか。50才以上の高齢者、身体障害者手帳の1〜4級を持つ人については、単身入居の申請ができるということです。同じ障害でも1人での生活が可能な軽度の知的障害、精神障害のある人でも単身での入居申請は認められていません。見直しが必要なのではないでしょうか。公営住宅は、高齢者、障害者など住宅に困窮する社会的弱者への積極的な供給という役割も担っているはずであります。
D公営住宅のグループホーム事業への適用が公営住宅法45条で規定されています。地域での生活を支援していくためにも、公営住宅がその役割を果たしていくことは意義のあることだと思えます。本県でも積極的に運用してみてはどうでしょうか。
◆酒井利夫県土整備部長
精神障害者は、公営住宅法施行令には、単身入居できると規定されていない。自立支援の観点から、関係部局と連携しながら将来の研究課題としたい。社会福祉法人等によるグループホームの利用については、県営住宅の需給状況等に応じ、可能な限り利用の促進を図りたい。
1.今年度、国は地方交付税を三位一体の改革と言いながら、一方的に削減しました。地方交付税は、地方自治体固有の財源として、全国の自治体の行政サービスの水準を平準化することと、そのための税などの自主財源を補う一般財源としての財源保障機能とがあります。今年度は、当初予算で交付税の振り替え措置でもある臨時財政対策債を含め前年当初比286億円の減額予算を組むこととなりました。これは、県単独の普通建設事業費の307億円、警察費294億にも匹敵する財源がなくなったということです。人件費や事務事業費など162億円のカットを行いましたが、今年度末起債残高見込みは一般会計で6923億円と過去最高、基金残高見込みは584億円とここ10年間では最低の額となり、財政はいっそう厳しさを増しています。
知事は、国への提案・要望の中で、地方交付税について明確な要望をしていないように見受けられます。「財源調整・財源保障の両機能を堅持し、充実をはかること」、「地方交付税の総額については、平成16年度の大幅な削減前の水準を確保するよう措置すること」ときちんというべきではなかったのか、と思うわけですが、知事の存念を聞かせていただきたいと思います。
2.住民自治と市町村合併についてです。
@知事は合併特例新法をどう評価しているのか。新法に定められた知事権限の行使についてどう考えているのか。共同通信社による都道府県知事へのアンケート調査では全国では6割にあたる28人が行使しない、なるべく行使しないと回答しています。知事の所見は、いかがなものでしょうか。
A住民自治の発揮と特例法の期限内の合併をめざすということについて、どのように考えておられるのか。知事は機会あるごとに県民自治、県民参加の県政を唱えておられます。合併特例法の期限内にこだわる理由はどういう点にあるのでしょうか。
◆木村知事
合併は、住民への十分な説明、市町村間の十分な協議が尽くされることが必要。合併の時期は、国からの様々な支援措置がある法期限内に行うことがより大きな合併効果が上げられるため、ベターだと考えている。
B合併のための事業費はいくらかかるとみているのか。合併による新たな財政需要がどのくらい生まれると想定されるのか。住民基本台帳、税、財政などの新たなコンピューターシステムなどソフト面での整備が必要となってきます。公共施設や道路整備などハード面を含め県内での総事業費はどの程度と想定されているのか。
C合併特例債の元利償還への交付税措置、交付税の算定がえ特例など、交付税総額の抑制がすすめられようとしているなかで、どこまであてにできるものなのか。交付税財源の保証を県ができるのでしょうか。新合併特例法は、合併特例債を廃止。算定がえ特例の期間も短縮、そのことをみても交付税の先行きに楽観はできない。
◆宮地毅総務部長
合併で必要になる事業として、電算システムの統合がある。統合経費は目安として旧一市町村当たり約一億円程度で、県は昨年度から補助金で支援している。新庁舎は既存の庁舎を利用する例が多い。その他少額で様々な経費が必要となってくるだろうが、交付税措置や国の補助金等の必要な財源措置がされている。合併にともなうハード事業についても特例債等の必要な財源措置がされている。
合併特例債の発行期間は合併後10年間、償還期間は10年から20年、したがって交付税措置が必要な元利償還は平成17年度から20年から30年かけて行われるため、単年度当たりの負担はそれほど大きくないと試算している。財源は確実に措置されると考えている。合併算定替は、現行の算定を当分継続する特例なので、毎年度の交付税算定で確実に措置される。
【再質問】
1、新法での知事権限の行使を明らかに
2、住民合意、住民のコンセンサスということについて、どう考えているのか
3、全体として交付税総額は圧縮されている中、合併特例債等の交付税措置によって増えるということは誰が言えるのか
◆木村知事
知事の権限を行使するかしないかは、法律ができて、今後の状況を見たうえで判断する。
ダラダラいろんなことをやってもらちがあかないので、期限を目安に努力を重ね、それに対して県は支援している。
交付税総額は今年も減っている。しかしトータルは減っても、合併したところの特例債についての交付税措置は国が約束したところだから算定されることは間違いない。だから最近は、あるところが確保されていれば、さほど約束していないところが圧縮されて、全国の自治体に大きな影響を及ぼすことになっている。そうならないように、交付税総額をドラスティックに減少させることはやめてほしいと、国に強く要望しているところだ。
紀の川大堰は既存の新六箇井堰を改築し、治水、利水、流量の維持を目的にS62年に建設事業に着手、H15年3月に本体工事が完成、同年6月から暫定運用が開始されました。関連事業として、JR阪和線紀の川橋梁架け替え、新六箇井堰の撤去、利水容量と毎秒1万2千トンの流量確保のための河床掘削を進めていくということ、JR阪和線の紀の川橋梁は根入れが浅く、河床掘削により転倒の危険性があるため、河床掘削に先立ち橋梁の架け替え工事をするというように聞いています。
紀の川大堰は150年に1度の確立の出水に対応することとし、毎秒1万2千トンの水を安定的に流下させる可動堰とし、河底の掘削により毎秒0.29トンの新規利水容量が生まれ、県と大阪府との間に分水協定がかわされています。こういった関連事業が動きだそうとしているわけですが、国の直轄事業ですので、県負担金もついてきます。
関連事業の一つとして、県と和歌山市による河川敷を公園として整備する紀の川リバーサイドグリーンベルト計画が策定されています。
2月議会の予算委員会の議論で、国の直轄事業への負担金のありかたについて、国に無批判についていくのではなくて、大滝ダム事業費の変更問題にも見られるように、事業のありかたや事業費の問題、県民生活への影響など県としても県民に説明できるような対応が必要と申し上げてきました。
1.紀の川大堰関連の今後の事業計画と事業費、県の負担額は。全体の事業費と県負担の総額はいくらになると見込まれているのか。
2.当初、新六箇井堰撤去に伴う紀の川の河床の掘削により排出される土砂の量約500万立方bともいわれていたが、排出量の計画と今回の処分方法は決まっているのか。
3.紀の川リバーサイドグリーンベルト計画はどうしていくのか。
4.関連事業による地元への影響、河川の自然環境保全上の影響はどのようなものがあると考えられているのか。左岸では大堰完成による水位上昇で、すでに地下水への影響が出ており、和歌山工事事務所が対策をすすめています。関連事業での影響調査と対応はどのようにされようとしているのか。県からどのような申し入れをするのか。
◆酒井県土整備部長
全事業の完了予定は平成21年度。今後の主な事業は、JR阪和線橋梁架替、新六箇井堰撤去、河道掘削及び低水護岸整備。全体事業費は1110億円で、平成16年度以降の残事業費は約305億円。県負担は平成15年度までで約96億2千万円、平成16年度以降は今年の負担率で計算すると約27億3千万円の見込み。
掘削土量は全体で約500万立方bで現在までに約80万立方bの掘削が行われている。今後の予定量は現在精査中。掘削土は河川砂利としてコンクリート用骨材に利用している。
紀ノ川リバーサイドグリーンベルト計画は、財政状況、県民ニーズをみて整備のあり方を検討する。
国土交通省では周辺地域への影響調査及び河川環境調査を実施しつつ事業を進めている。地下水位への影響として、鋼矢板の打設による対策工を実施する予定だと聞いている。周辺地域への影響にも十分配慮した治水、利水、環境保全のバランスのとれた事業が進められていくと認識しており、本県としても必要な調整を行っていく。
5.紀ノ川分水の今後の見通しと県の対応は。
6月2日の朝の事故は、過積載のトラックが横転し、線路をふさいだ丸太に乗り上げてJRの電車が脱線し、JR紀勢線と国道42号が、長時間にわたってストップした大変な事故でした。幸い、死者がでませんでしたが、何人ものけが人を出し、ことによってはもっと大きな惨事になりかねないものでした。通報があったのにJRが事故を防げなかったことについて、どういう問題があったと見ているのか。
いま、学校現場が大変忙しいなか、ジグザグのコースをたどる子どもの成長を親と教職員が余裕をもってみつめるということができているのだろうかという思いをいたします。しかし、こうした子どもの捉え方をした教育実践もすくなからずあることも知っています。
木村知事は、和歌山の教育は古いというような発言を、なんどかされていますが、このことについて、どういう感想をお持ちでしょうか。
◆木村良樹知事
和歌山県の教育は古いと言ったことはない。それぞれの子どもの発達過程とか、いろいろなことに合わせたような能力を伸ばせるような教育を和歌山から発信していきたい。中国なんかでは子どもは目の色をかえて勉強している。日本だけが微温的に、競争はしなくてもいいという形が可能かどうか、そういう厳しい立場もとっていかねばならない。和歌山県で新しい形の教育を行うことが正しいという信念で行っている。
さて、子どもの成長をじっくりと見守る余裕がない。このことが、親による児童虐待を見る場合にも大事な問題です。そうした親への支援も求められます。また学校では、そのためには教職員定数の改善がいそがれます。
和歌山県では、県単独負担の教職員数は、どのどん減らされ、小中学校の教職員は、昨年から今年にかけて170人ほど減らされているが、その原因は児童生徒の減だけではない。県単独負担教員は53名も減らされています。
歴史をふりかえってみますと、
これまで140人ほどかかえていた県単独負担教員は、いまでは、 人にへらされてしまっています。どんどん減らすだけなのか。そうではなくて、今日の教育課題におうじて、確保していくつもりなのか。
◆小関洋治教育長
教職員定数は、平成13年度から実施されている小中学校に関する第7次改善計画に基づき年度毎に取り組んできた。本年度は定数改善計画を活用し、大幅に拡充した。今後、定数の確保に努める。
先の県議会で通された予算で、「和歌山の部落史編纂」として200万円の新規の歳出が組まれていることがわかってまいりました。私は人権問題特別委員会に所属していますが、委員会での予算や施策の説明でも触れられまさんでした。200万とはいえ新規事業ですし、今後継続を予定している事業のスタートです。こうしたものは、きちんと説明する必要があるとおもいます。私は、こんな予算が組まれていると聞いたとき、私の不注意で見逃したのかと思いました。ところが、予算書のどこをひっくりかえしても、人権問題特別委員会の資料を見ても、この提案は見つからないのです。予算を審議する議員の目にふれないような提案をするなどということは、議会無視ではありませんか。なぜこんなあつかいをしたのか。
さて担当課の方に問い合わせてみますと、「社団法人・和歌山人権研究所」が編纂する「和歌山の部落史」という本のために県として200万円の補助をするということです。
補助金を出すための要綱がつくられています。しかし、実際には「社団法人・和歌山人権研究所」という特定の団体が補助をうけることが前提として話がすすんでいることも不明朗であります。補助事業の要綱は、いつつくられ、どのように県民に提示されるのか。「和歌山の部落史」を編纂したい団体があれば応募できるのか。「人権問題研究所」および
◆野添企画部長
16年度予算は部落史研究の構想を具体化できるかどうかを見極めるための予備調査に対して補助するもので、その他各種団体への負担金等と併せて、人権行政総合調整事業という事務的経費をあつめたもの。その経費として一括計上したもの。
補助金要綱は、事業が具体的に予算化された後に制定するもの。部落史研究についてははじめに社団法人和歌山人権研究所から提案があり、これまで協議を重ねてきた。部落史研究にふさわしい機関だと判断している。県と各市はこれまでも必要な情報交換を行い協力を依頼してきた。また今後各市町村には、資料収集などの必要な協力を依頼したいと考えている。
その趣旨をまとめた文書が出されています。「和歌山の部落史はなぜ必要か」という表題の文書です。「人権問題研究所」の総会でだされた文書だそうです。趣意書では、「『和歌山の部落史』が存在していない」としている問題です。「和歌山の部落の歴史的研究」にとりくんだのは、和歌山大学の故渡辺広教授でした。渡辺教授の研究書として「未解放部落の史的研究」「未解放部落の形成と発展」「未解放部落の源流と変遷」という三つの著作があります。渡辺教授の業績によって、和歌山の部落の歴史研究は、他府県と比べて、類を見ないほど実証的に研究されているといえます。「和歌山の部落史が存在していない」というのは、あまりにも認識不足だと思いますが、和歌山県での部落問題の歴史研究の到達点をどう考えているのか。
第二の問題は「和歌山の部落史」というものを、行政がかかわってまとめる必要があるのかどうかという問題です。同和問題だから、どこまでも行政が特別な扱いをしなければならないのでしょうか。同和対策事業と社会の進歩の中で、同和地区をめぐる状況が大きく変わりました。いつまでも「線引き・特別対策」をつづけることは、同和地区内外の垣根をつくるという弊害の方が大きいという段階にきたのです。だから「同和行政」は廃止されたのです。
この観点に立てば、同和問題の痕跡がなくなるまで、同和を特別扱いした行政をすすめるというのは適当でなく、「同和問題の歴史だから行政が支援して当然だ」といことにはならないと考えます。
さらに参考までに申し上げておきたいと思います。「趣意書」の中では、「大阪の部落史」というものが参考になるということがかかれています。取り寄せて検討しました。現在出されているのは「資料集」です。
1969年、部落解放同盟が「矢田教育差別事件」とよぶ糾弾事件がおこりました。「同和教育は大事だけれども、それだからといって勤務時間が守られないのを我慢しなくてはならないのか」という組合役員選挙での文書を「差別文書」と決めつけたものです。この糾弾については1981年、大阪高裁で「有罪」という判決が出された、糾弾事件でありました。
この事件について、「大阪の部落史」第8巻・資料編は、二つの資料を掲載しています。そのひとつは解放同盟
「矢田問題」という大阪の同和問題で見解が分かれた大事件、しかも司法の判断では、糾弾行動が有罪と断罪された事件で、一方の意見のみを紹介する資料集になっています。こうしたものをモデルにして「和歌山の部落史」を編集しようといういうわけですから、わたしとしてはこれでいいのかと心配をするわけです。
◆木村知事
この問題は、同和問題と直に結びつけて考えるべきものではなく、学問的研究、日本社会の構造を考えるという観点から考えていくというのが、私の基本的な認識だ。
同和問題は法律は切れたが、未だ差別事象は現にあり、行政としては差別;がある限り対応していく必要がある。矢田問題があった時代と今の状況を一緒に考えるならば、可逆性を問われることになっていくだろう。
第4は海南市・国道370号の阪井バイパスの問題
このバイパスは、海南市の動脈とも言うべきものでありますが、2車線もきちんととれない道路を、大型トラックやバスが苦労しながら対向しています。24時間の交通量は2万台、それだけに早期の実現が求められています。海南市の動脈とも背骨ともいえる阪井バイパスをめぐって、海南市の責任者と県の担当課がどこまでひざを交えてどこまで協議しているのか。
県と海南市の協力関係は、たいへんよくなっています。それでも気のついた問題をあげましょう。
阪井バイパスで竜部池という池に橋をかける計画があります。一方、「竜部池の堤防を補修してほしいという要望があがっている、竜部池の農業用水としての需要はへっているので、一部を埋め立てて道路を通せば一石二鳥ではないか」という意見も聞きました。こういう意見が公式の場では検討されないままくすぶっているわけです。この話を、県の工事担当者にお話しますと、「そりゃ、池を埋められるのなら工事はしやすいし、安上がりです。けれども、いろいろむずかしい問題があるでしょう。水利権の問題もあれば、貴重な生物がいる場合もある」とおっしゃいます。それはその通りです。しかし県としても、できるかどうかは別として、
県の道路整備課は、専門的知識をもっている優秀な職員がおられますが、次々に担当がかわっていく。一方、
この工事計画として示されたもので、住民の理解を得にくい問題のひとつは、一部地域で盛り土をして、既存の道路と立体交差するということであります。しかも、10数年前に示された案では、平面交差になっていた箇所が、こんどは盛り土・立体交差になっています。「平面交差にしてほしい」という地元の要望も、検討に値するものがあります。住民から出された問題について、県の担当課が海南市の関係者がととことん議論して、これが最善なのだということを住民に説明していただけるようにしていただきたいと思うわけであります。阪井バイパスの工法・企画など、現在どういう計画をしておられるのか。高架・平面交差、橋をかけるのかどうか、道路の規模などという問題で、地元の意見もふくめて政策決定をする場をどうもたれるのか。
◆酒井利夫県土整備部長
現在の計画案については、昨年12月より地区ごとに説明会を開催し、いただいた意見を踏まえ、県と市で検討をおこない、より使い勝手のよい最善の計画案としていきたい。
第5は下津町・橘寮建設にかかわる大阪の大手ゼネコンの島本建設への丸投げに近い工事、島本建設倒産にともなう第二次下請けへの未払いにかかわる問題
私たちは、大阪の大手ゼネコンは、島本建設に工事を丸投げするほど密着した関係にあるわけですから、島本建設の経営内容も、島本建設が第二次下請けに支払いをしていなかった状況もつかんでいたと考え、第二次下請けを救済する社会的・道義的責任があると主張して参りました。その後、県・および国土交通省は、このたびの工事にかかわって、大手ゼネコンを処分したとお聞きしています。そのことは、大手ゼネコンと島本建設が密接な関係にあったことをうらづけるものと考えます。
その処分内容、処分理由についてお伺いいたします。また、今回は私たちに相談にきた第二次下請けのみなさんからの告発によって問題が明らかになったのですが、今後、こうした丸投げなどを防止するためにどうした指導をされるのか。
◆酒井県土整備部長
監理技術者が、一定期間、当該工事現場に専任しているとは認めがたい状態にあったため、国土交通省から建設業法第二十八条第一項の規定に基づく指示処分を受けたことを踏まえ、和歌山県指名停止措置要綱に基づき、4月12日から一ヶ月間の指名停止をした。今後、県工事で施工体制の点検強化を図り、契約時に配置技術者の写真提出を義務づけるとともに、抜き打ち的に工事現場の立ち入り調査を実施する施工体制点検特別グループ、通称「施工体制Gメン」を組織するなどの取り組みをしていく。
私は、カゴメによるガラス張りの大規模ハイテクハウスの現場と近隣農家の様子を実際に確かめたいと、この6月1日に広島県世羅町の「世羅菜園」、あくる日の2日には長野県三郷村の「安曇野みさと菜園」を調査に行ってまいりました。どちらもびっくりするぐらい巨大な施設でした。
この2つの施設を調査して感じた特徴は以下の4点です。
第1に、どちらも大規模な国の農地開発の失敗遊休農地に目をつけてスタートしたということです。第2点目には、地元農家との連携が見えてこなかったという点です。第3点目には、水の問題です。栽培用の水だけではなく、水やガスを使って積極的に温度管理するハイテクハウスならではの大量の水を必要とすると感じました。広島県は格安の農業用水をふんだんに使っているようですし、井戸がちゃんと出ている長野県でも不安をもっているようです。第4点目は、雇用の問題です。その実態は年間を通じて一定の仕事があるというわけではないし、雇用人数は4時間6時間のパートを入れての話でした。暑いハウスの中の仕事は思ったよりきつくて若いかなり元気な人でないと続かないということですし、また、先ほどもふれましたが、出荷作業の機械化が進むと人手はこの先要らなくなるシステムだということもリアルに見る必要があると感じました。
私は、こうした実際のハウスの調査と平行して、2月議会後も県内の様々な関係者と懇談を重ねてきました。
日高や那賀のJAの役員さんは県行政への不信感をあらわにしていました。JAからは企業の農業参入をすすめる特区構想やカゴメ誘致による甚大な痛手をうけるとして、再考をうながす要請書が県に提出されています。「文書で回答をくれといっているが、ナシのツブテだ」と怒りをかくしませんでした。また、あるミニトマトの生産部会では10数人の役員さんが集まってくれました。そして「県から説明はまったくない。高品質なトマト作りに取り組む私たちを県は応援してくれていると思っていたのに」と戸惑い、また「高品質化のためハウスに換気ファンをつける国の補助事業があるのだが、県は1円も援助してくれない。カゴメにそんなにお金を出すのなら・・・」と憤慨しておられました。
一方、産直にとりくんでいる紀ノ川農協では、年間一株買取のシステムでシーズンをとおして配達し、消費者から「トマトらしい味がいい」と好評だそうです。ここでも大阪市場の価格低下が値段設定にひびいてきているそうで、カゴメトマトの影響は消費者全体の購買力が落ちている中で脅威だといいます。
こうした点に基づき、まず第1の質問として、2月議会以降、農家と関係団体への説明や県内農家への影響調査はどうすすめられてきたのかをおたずねします。農林水産部長よりお答えをいただきたいと思います。
次に私は、用地の賃借料の設定について質問したいと思います。
今回、1平方メートルあたり年間100円という価格設定を協議していると聞きます。その根拠とした経済効果を「社会経済研究所」の試算では、20年間で580億円の経済効果と大々的に評価をしているわけですが、この試算で現れた問題点を指摘してみたいと思います。
まずは県内への経済波及効果の低さです。建設費など一過性のものよりも、営業にともなってどう波及するかという「第1次波及効果」を見るとよくわかるのですが、県内への誘発額は20年間で11億円であり県外へは93億円と、県内分は全体のわずか1割あまりにすぎない。苗はカゴメが県外からもってきますし、肥料や農薬、ロックウール等の資材はほとんど県外調達であり、地元調達の低い事業であるということからきています。
その反面、県内農家をはじめとするマイナスの経済効果はまったく計算されていません。県内トマト農家の生産額は年間約17億円です。市場は1割入荷が増えれば2割値段が下がる、2割増えたら半値に下がるともいわれてきました。実際この4月5月は好天に恵まれて入荷が順調で価格が大きく下がっているのが実態です。この価格低下傾向にカゴメの参入が影響し、もし仮に2割安くなったならば20年で70億円の県民所得が失われることになり、「雇用の創出」という看板のパート人件費20年分がぜんぶ消えてなくなる計算になります。それどころか一層の農業衰退をまねきかねません。県内の地場産業と比べても、地元への経済効果や他産業への波及効果が低く、県民の所得がマイナスになる要因をかかえる今回の誘致を決してバラ色に描き出せるものではないと指摘せざるを得ません。
そういう今回の誘致に対し、土地代が1平方メートルあたり年間100円というのは、他の県内企業用地と比べても安すぎるのではないでしょうか。私はこの価格の見直しを求めるものです。県が開発公社から借り受ける原価は560円、たった6分の1しか請求しないことになります。この差額は年間1億7千万円、20年間で約34億円にものぼります。これは県民の税金でまかなうことになります。加えて土地造成費用の20億円、税金の優遇措置など、あわせて数十億円の補助をする結果となります。今年度予算の編成においてもお金がないからといって県民向けのわずかな予算にも大ナタふるいながら、一営利企業の経済活動にこれだけの県民の税金を投入するのは納得できるものではありません。「県民に向けた県政か、一企業に向けた県政か」こういう批判の声があがっているのも当然です。
知事におたずねいたします。1平方メートルあたり100円という賃貸料金は、他の県内企業用地と比べても格段に安すぎ、土地造成費用約20億円と合わせて、事実上一企業への過大な税金投入となるのではないか。この点についてご答弁を願います。
◆木村良樹知事
トマト農家への影響についてはものすごく重く受け止めており、できるだけの共存が図れるようにいろいろ手を尽くしている。何分和歌山県にできなくても近畿のほかの県にはできるということもあるので、和歌山で雇用が確保されるなら、結構なことじゃないかと思っている。賃貸価格の設定にあたり、県議会のコスモパーク加太対策検討委員会からの「民間企業へは無償も視野に入れて貸し付けることなど、相当思い切ったインセンティブを導入すべき」という報告も踏まえ、雇用者数、経済波及効果等を勘案して、他県の状況も勘案しながら一u当たり百円に決めた。
◆阪口裕之農林水産部長
これまで関係団体に働きかけ、県内JA組合長・常任理事会議をはじめ、県養液栽培研究会において直接カゴメ株式会社からトマトの生産計画について説明を受け、種々意見交換がおこなわれるなど積極的な取り組みも見られる。地域段階でも研修会の開催も行われていると聞いている。県内トマト農家では品種的には競合しないものの、今後の経営に大きな不安を抱いている。あらゆる機会をとらえ農家の意向や実態把握に努め、共存できる体制づくりとトマト農家にとって向かい風とならないよう努力していきたい。
2、「緑の雇用事業」について
この間、本宮町、中辺路町、龍神村、清水町とまわって関係者から生の声を聞いてまいりました。地域のリーダー的な山林事業者は「たいへんいい事業だが」と前置きして「せっかくの若い子らを短期間で帰してしまうことになってはいないか」と指摘されました。Iターン者の方々にお話を伺うと、「とても仕事は楽しいが、先が不安で仕方がない」という答えが次々と返ってきました。「今の収入では子どもが大きくなったらやっていけない。もどるなら今、ここで他のことに賭けて見るのも今、と悩んでいる」「いっしょに働く高齢の山林労働者のみなさんには頭が下がります。でも5年後ぐらいには世代交代が必要になってくると思うんです。その時に役に立ちたい。ぼくたちはすぐには1人前になれなくても4年か5年あればせめて半人前ぐらいにはなれると思う。その間、やる気がある人が続けられるようにしてほしい」と言います。またある奥さんは「今の制度では6ヶ月ごとに肩たたきされるように思えてくる」と、6ヶ月・1年で区切られ、来年の予算はわからないという中で不安をにじませていました。森林組合の方は「1人前になるまで所得の補填をしてあげて、1人前に旅立てるようにすることが本当だろう。不安な中で仕事をしててもいい結果は出ないと思う」と言います。自転車操業のような細切れの形をあらためるべきだと強く感じました。
次に「環境保全で雇用の創出」というのが事業の目標なのですが、肝心の環境保全の事業が、全体として山の仕事を増やすところまでいっていないという点があります。あるIターンの人は「環境の面からも山を大事にするという、やりがいのある仕事が和歌山にはあると思ってやってきた。過疎で若い後継者がいないから募集していると思ってきた。しかし実際はちがった。人がいないのではなく、仕事がなかった。ぼくらが緑の雇用をおわったら山に仕事はないんだ、へえそうなんだと感じた」というんですね。
また、地元の山林労働者の声は実感がこもっていました。ある男性は「去年は3ヶ月しか仕事がなかった。53万円の収入だった。緑の雇用にはみんな期待していた。山のことに政治が目を向けてくれたと思った。月のうち1週間でも10日でも仕事ができるのではと期待した。よそから来てくれた若い子らとまじりおうて仕事ができるようになると希望をもった。しかし実際は何の仕事もまわってこなかった」とおっしゃいました。
肝心の環境保全の仕事や、林業が業として成り立つ方向性がないと、この緑の雇用は「一時的な職業体験」で終わってしまうのではないでしょうか。
また、昨年度、農林水産委員会で意見が多数出された「緑の雇用担い手住宅」も実際に回ってみると問題点がよくわかりました。「きれいな住宅を用意してもらってありがたい」という感謝の声とともに、台風が来るのに雨戸もない。虫も多いのに網戸もなくて窓もあけられない。細長い窓なので既製品もあわず後からつけるのもかなりな出費だったとか、お風呂の給湯が田舎暮らしにはコストの高いガスのボイラーでガス代が月に4万円ほどいるのでお風呂に毎日入れない」などの意見が次々出され、和歌山の山間地での生活にマッチしない「都会のモデルハウス」のような住宅に役場関係者からも批判が続出しました。「県は国の予算を取らなければならないので、実績作りに必死だったように思う。逆にいえば格好をつけるのにせいいっぱいで、地域に合わせた柔軟性がなかった」と言います。
担い手を育成するという点では、6ヶ月や1年ごとの細切れの制度ではなく、技術的にも生活面でも見通しの持てる4・5年の期間を打ち出すべきではないか。そして2点目には「環境保全で雇用の創出を」というスローガンをかかげながら、肝心の森林整備の予算が不十分です。林業が業として成り立っていくような方向性や、環境保全事業の方向性などの展望がもてる事業であるべきではないか。そのためにも山を荒廃させた国の林業政策の転換をせまるべきではないか。「緑の雇用担い手住宅」での問題点などに学び、農業との組み合わせなど今後の方向性は、地域の実情に合わせて県内市町村とよく相談しながら進めてゆくべきではないか。
◆木村知事
「骨太の方針」の中に緑の雇用事業が取り上げられたことは、国もこの事業を今後も続けていくということ。県独自の施策も踏まえて対応していきたい。林野庁ではこの事業を施策のほぼ中心に据えるくらいまで変化してきているので、働きかけを強めていきたい。
◆阪口農林水産部長
緑の雇用事業は地域の活性化を図ることを目的としており、市町村との連携は不可欠。所得や住宅の確保を市町村と協議しているが、例えば梅の剪定や収穫など農業の繁忙期に業務提携するなど、市町村やJAとの連携をより一層深めていきたい。
3、有田川の濁水・災害対策について
さる5月26日から有田川でもアユ釣りの解禁となり、この日を待ちかねた人々が近隣他府県からも大勢おいでになるシーズンとなりました。しかし、今年の解禁日は5月13日夜から降った雨によりダムが泥にごりとなり最近まで約1ヶ月にわたってにごりが続いてきました。解禁日の釣り客は例年の半分程度であったといわれています。
雨が降ったら川が濁るのは自然のことですが、雨があがれば、支流の水がまず澄んできて、そして上流からの水もだんだん澄んでくるわけですが、二川ダムをもつ有田川はこのダムがあることによって濁りがいつまでも続くことになっているわけです。
有田川漁協の組合長さんにお話をうかがうと、「ダムと発電所にしょっちゅう言うていくがサッパリラチがあかん。今年はアユの遡上も多くて最高やと思っていたのに」と嘆きます。
また言うまでもなく、災害対策上も満水での運用は不意な雨に対応できません。1例として今年のアユの解禁前の、雨とダムの関係をデータで見てみますと、5月13日の夜に山間部でまとまった雨が降りました。有田川水系でも50ミリ程度の雨になりました。そうすると一晩でダムが一杯になったのです。それもそのはず、始めからダムの水位が高すぎるのです。わずか毎秒30トンから90トンの流入量の雨が一晩ふると海抜195メートルの水面が200メートルぎりぎりまでポンと上がってしまうのです。それで次の日にはダム放水となります。地元の住民からは「雨がふるのわかってたら早よからちょっとずつ放水すりゃええのに、いっぱいためてからどんと放流する」とか「濁った水をダム一杯ためやんと、濁った水ははよ出してしもて上流からの水がすんでダム湖もきれいになってからゲートしめたらええのに」また、「なんせダムの所長かわって新人がきたら水をいっぱいためるんで恐ろしてたまらん。ダムの水位をうんと下げてほしい」などの不安と怒りの声がいっぱい出されています。
二川ダムは常時ほぼ満水になるよう運用されているので、一度濁るといつまでも濁りがとれず、また不意な大雨に対応できない危険な状態です。雨の多い時期のダム水位をもっと下げるよう操作規定を見直すべきではないか。
私は水力発電が全部ダメだという立場ではありません。自然エネルギーを有効に利用すべきですし、今後はダムのようなものではなく小規模な環境負荷の小さい水力発電が主流になると考えています。しかし、この二川ダムの場合で考えると、近年の自然条件の変化もふまえ、濁水問題の改善のためにも、洪水対策のためにもダムの水位を下げるために発電用の貯水量を減らす必要があるとかんがえます。発電のための貯水は冬だけにするとか、雨が多い時期には発電をやめて水位をさげ、雨が降った時の放水で発電するだけにするとかの方法もあるでしょう。こういうふうにダムによる発電の貯水量、スタイル、方向性を見直す時期にきている。加えて一昨日の答弁にもありましたように企業局廃止で発電をどうするかということも検討するという状況もありタイミングもはずせない問題です。ダムを満水にするぐらい川の水を大量にせき止めることの環境面・治水面でのデメリットを今日的に考慮し、ダムによる水力発電の方向性を見直すべきではないか。
◆木村知事
水力発電は非常にクリーンなエネルギーで有用だが、放流の仕方等について地元の意見に、虚心坦懐に耳を傾けて対応できるべきものは対応したい。
◆酒井利夫県土整備部長
洪水の初期段階からできるだけ多くのダム放流を行い、ダムの貯水位をあらかじめ低い状態にした上で洪水調整を行うとともに、ダム貯水位のより低い状態から洪水末期の比較的濁りの少ない河川水をより多く貯留することは、洪水対策のみならず、濁水長期化対策としても有効な施策だと認識している。現在二川ダムではダム操作規則を見直すべく検討を行っているところだ。
4、湯浅町の町並み保存について
先日、県の観光課が熊野古道の散策マップを8分冊で作成されました。駅から駅まで歩けるようなたいへんいいものを作っていただきました。その熊野古道が海岸部の街中を通るというのが有田郡の湯浅町です。この湯浅町は熊野古道の通る町として、また醤油発祥の地として古くから栄え、現在でも往時を伝える町家や史跡、迷路のような細い小路が数多く残り、なつかしく落ち着いた「たたずまい」が残る町です。
この醤油倉や味噌作りをはじめ、歴史的な価値をもつ建造物や町並み、これを生かした街づくりをと、国の「伝統的建造物群」の指定にむけた調査が、文化庁や県文化財センター・大学関係者・識者のみなさんによっておこなわれ、専門家からも指定にふさわしいその価値が認められています。この「伝統的建造物群」の指定は全国で約60箇所、近畿では大阪富田林の寺内町(じないまち)や奈良の橿原市今井町(いまいちょう)など各府県で合計約10箇所あるわけですが、残念ながらまだ和歌山では1件も指定されていないんですね。その和歌山初の指定をめざしてがんばっています。
湯浅町では町民参加による町づくり委員会の答申を受け、歴史的景観をいかし街中の商店街に活気をと、古道の通る中心市街地の活性化に町民や商工会・町行政がとりくみ、町並みそのものを美術館にみたてた街角ミュージアムの展示や散策マップも発行され、歩道整備も今年からはじまります。「サバっとアジまつり」や今年から始まった「白魚まつり」など地元特産品を生かしたイベントも盛り上がっています。
和歌山県立医科大学の独立行政法人化について
現在、公立大学では、すでに法人化された大学から、近く法人化を予定している大学、まったく法人化を検討していない大学といろいろありますが、法人化を予定しているなかには、東京都立大学や大阪府立大学、横浜市立大学があります。都立大学では、教員定数を八六七人から、五一五人へ一気に減らすリストラ計画が大学関係者の頭越しに打ち出され、採用期間を限定した任期制のポストを強要するといったことがあり、大学人が都の強引なやり方に猛反発しています。横浜市でも、新しい大学への移行は再就職とし任期制を原則とし、市の財政による研究費の負担はおこなわず、学費を値上げするという答申がおこなわれ、大学側から強い反発がでています。大阪府でも、大学関係者が参加しない諮問機関でまとめた報告をもとに基本計画を策定し、大学の評議会の意思決定を得ないで、教員定数の一〇%削減、学費のありかたの検討、教員の任期制の導入などが盛り込まれています。これらのケースでは、いずれも行政が大学の意見を聞くことなしに、経費の削減などを主な理由に法人化や任期制の導入が打ち出されているのが特徴です。
昨年十月、公立大学協会が「公立大学法人化に関する見解」を発表されております。その中に、設置自治体に対する要望があり、1番目の項目に、「公立大学法人に移行するか、旧来のままの設置形態(直営)を維持するかの選択を、設置自治体が各大学との協議をふまえた上で判断する」ということが掲げられております。これは、国立大学がこの四月から全国いっせいに法人化されたのとは異なり、公立大学にはついては、法人化しない選択肢も認められているからです。法人化することで、県立医大の性格も変わり、医大で働く教授や教官、付属病院の医療スタッフは地方公務員ではなくなりますから、大きな影響があり、法人化するかどうかは、大学当事者との協議が欠かせないものです。この点で、基本方針に十八年四月から法人化すると決定する結論を導く上で、大学当局との協議の経過内容、大学当局との間で検討された論点をお示しください。その上で、法人化への移行という結論となった理由をお示しください。
和歌山医大は、教育・研究・診療という重要な役割を果たしています。何よりも県民の健康を守る医師の養成を任務としており、地域医療の中心的医療機関でもある付属病院、また、予防、健康増進対策を支援することも期待されています。基本方針では、法人化によるメリットとして何点かあげていますが、医科大学の中期目標、中期計画、年度計画について、県の評価委員会が業務の実績評価をおこなうことになり、運営交付金は県の財政から支出され、県行政と大きく関わっています。県が今後、法人化計画を具体化するのであれば、大学当局との綿密な協議を重ね、何よりも県民のいのちを守る医療の向上、より良い医療人の養成、県民の福祉の増進を最優先にする立場にたって、期限に縛られることなく、県民の立場にたった大学改革を求める。
あり方懇の提言では、県を含めた一部事務組合形式、公設民営方式なども想定されるとか、大変厳しい意見が盛り込まれていましたが、今回の基本方針では、「地域医療の中核拠点して、住民に信頼され、支持される地域に根ざした規範となる病院になること」、また、大学付属病院本院の教育・研修機能を補完し、幅広い分野の医療に対応できる「総合診療能力の高い医師」を育成するための機能の充実などが掲げられています。こうした方向については、地域住民の願いとも合致すると思います。しかし、方針でも指摘しているように、病院施設の老朽化など、抜本的な医療環境の整備が求められているのも事実です。私は、県がこれまで紀北分院の環境整備を打ち出しながら、実際には手をこまねいてきたのではないかとの住民の方の批判を聞きましたが、医大法人化の方針を出した今回、紀北分院の環境整備をいうのでしたら、県が地域の方々の声を十分に聞きながら、分院の整備に責任をもつことを明言していただきたい。
◆木村良樹知事
今年の二月、学長をはじめ大学関係者と設置者側の関係部局長等で構成する医大改革推進会議を設置し、検討を重ねてきた。その結果、現行制度の枠組みの中での改革には限界があり、県立医科大学の改革を推進し、その機能を一層発揮するためには地方独立行政法人制度の活用が有効であるとの結論にいたった。
法人化のメリットが最大限発揮され、県立医大の使命が十分果たせるようなシステムづくりが重要なので、大学をはじめ関係機関とも緊密に意思疎通を図りながら県民の視点に立った改革の実現にむけ、十分議論し、検討していきたい。
紀北分院の環境整備は、設置者としての県の責任を明確にしつつ、地元市町村等の関係団体の意見や財政状況等も勘案しながらどのような整備が必要か検討を進めたい。
厚生労働省は、本年四月二十七日、乳癌検診と子宮癌検診の実施について、見直しと「ガン検診」指針の一部改正がおこなわれ施行されているところです。
私は、女性の尊い生命が乳癌によって失われたくないという思いから、見直しによる充実強化を願うものであります。これまで、事業の実施主体である市町村の積極的な努力と、検診機器の整備に県も支援しているところです。今回の見直しでは、三点の指摘がなされています。@ 検診率が低いこと
このことから、乳癌検診については、乳房エックス線検査(マンモグラフィ)を原則とする、しかしマンモグラフィの整備状況が進んでいない現状を考慮して、当分の間、視触診も併せて実施するとなっています。マンモグラフィによる検診実施は、乳癌発見率は高く、年々増加しているものの、導入後三年経過したが、四八%で普及は進んでいない状況にある。その導入と強化を求めています。
マンモグラフィによる乳癌検診の実施についても、実施医療機関も認定施設で、医師、診療放射線技師についても、専門的な知識・技術が求められ、習熟した撮影技師、読影医師の必要性と規準が示されている。
私は乳癌で女性が命を奪われないためにも、何よりも検診体制の充実強化を強く望むものです。
私の友人の娘さんは、和歌山市の癌検診カードで、触診だけしかできない方法はおかしい、初期検診の大切さを病院に指導してほしい、
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しこりがあるのに必要な検査がおこなわれなかったため、六ヶ月も発見が遅れた、最新の検査機器の整備が少ない。マンモグラフィ整備を急いでほしい。
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乳癌に対する正しい知識や、予防について啓発をしてほしい
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専門医がどの病院にいるのか、情報を提供してほしい
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癌告知された時から、相談や心の支えの支援をしてくれる専門的な場所をつくってほしい
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乳癌について、思春期から啓発してほしい
と訴えています。また、
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本県の乳癌検診率の現状と県目標は
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精度の高いエックス線検査機器(マンモグラフィ)を少なくとも2次医療圏域の中核病院に整備を
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専門的知識と技術をもつ医師、診療エックス線技師の確保が必要です。
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一九九八年、国の補助制度が廃止され、一般交付税化されました。市町村の実施事業といって、国の制度改正で市町村負担軽減のため、補助金制度の復活を求めることを考えるものですが如何ですか。
◆嶋田正巳福祉保健部長
乳がんに対する正しい知識の普及に努め、がん検診の大切さ、自己触診の必要性と手法等についても機械をとらえて啓発活動を強化し、早期発見に努めたい。乳がんに関する最新情報を医療機関等と連携を図りながら県民に提供し、乳がんに不安をもつ女性に対し、保健所、市町村をつうじて相談体制の充実を進めたい。「元気わかやま行動計画」で受診率を平成22年度に30%を目標にとりくんでいる。平成14・15年度に購入したマンモグラフィーを積載した検診車を活用するなどして、ほとんどの市町村が視触診とマンモグラフィーとの併用検診を行っている。2次医療圏域ごとにマンモグラフィーは少なくとも一台は設置されている。がん検診の財源は平成十年度から交付税で措置されており、受診率も上昇傾向が続いている。
准看護師から看護師への通信制教育について
今春から就業経験十年以上の准看護師を対象に、働きながら看護師の資格をとるための二年課程通信制の教育制度がはじまりました。今年度は、山口、福岡、大分の三校です。二〇〇五年度、来年度の開設予定は、本県を含む兵庫、徳島など十校が準備中と聞きます。
本県下の病医院、福祉施設などで四八〇〇人余りの准看護師が働いています。そして、看護師への教育を受講したいと、希望者は一〇〇〇人をこえる状況にあります。希望者全員が受講できることを望むものです。
これまで進学したいと思いながらも、あきらめていた人たちも「やっと道が開けた」と来年の開校に熱い期待を寄せていることも聞いています。開校に向けての進捗状況をお聞かせ願います。来年四月開校予定ということは聞いているが、学費はどれくらい必要なのか。放送大学の活用というが、どんな科目でその学費について情報がほしいという声が多く寄せられます。
希望する受講者は決して安くはないであろう学費の準備は、最も気がかりな点です。放送大学の活用についても理解を深めておきたいとその情報を求めるのは、ごく自然なことです。希望と期待にこたえる情報提供が求められるところです。この間、どのような情報がどんな方法で提供されてきたのでしょうか。
県はこの教育制度が看護の質を向上させ、県民にゆき届いた看護を提供することに大きく貢献するものであるととらえ、具体的な支援を検討する必要があると考えるものです。例えば、学費補助や、修学資金制度の適用、学費補助については、県看二部の授業料との比較において、積極的な支援措置を願うものですが、いかがお考えでしょうか。人手不足の中から送り出す医療機関などに対する支援も必要です。
直接的、間接的には、送り出す職場の支援は欠かせないものとなりますから、経営者に希望者全員の受講を支援する支援体制が急がれるところです。学費の補助や勤務軽減、学習グループによる支援など、さらには、看護教育は国の責任です。設置者に対しても経営安定のため、財政援助を国に求めるべきです。
◆嶋田福祉保健部長
各種団体や関係者と協議を重ねた結果、和歌山県病院協会の理解をえて、平17年度に社団法人和歌山県病院協会立和歌山看護専門学校において設置することになり、既に今年一月末に厚生労働省に設置計画書を提出した。病院協会では、4月に和歌山看護専門学校に二年課程通信制準備室を設置し、七月末までに看護師養成所指定申請書の提出を行う。
和歌山看護専門学校では現在、授業料は一年間25万円程度、入学金6万円程度を考えているとのこと。カリキュラムは放送大学履修科目を含め、指定申請にむけて現在検討されている。県内の学生確保のため、推薦入試制度も検討している。
看護職員修学資金貸与制度の活用は可能だが、枠に限りがあるため、今後の検討課題にしたい。
昨年七月三日、岩出保健所から岩出町根来地内のホテルの旅館業許可申請に関わり、このホテルが岩出町の設置しているスポーツ施設の百メートル以内であることから、岩出町教育委員会に対して、意見照会がおこなわれました。このホテルは、元はモーテルとして営業していたものが、休業し、経営者も代わって、旅館としての営業再開が申請されたものです。保健所の照会文書では、この施設は県のモーテル類似施設指導要綱第二条に規定する「モーテル類似施設」には該当しない施設であると書いてあります。
岩出町の教育委員会は、次のような意見を回答しています。
「当該施設の北側に位置する根来総合運動広場は、テニスコートやサッカー場などを有し、スポーツ少年団をはじめとする住民の方が利用しているところであります。また、当該施設の東側に位置する大門池は、岩出町立図書館の建設予定地であり」「平成17年中に開館する予定であります」。「根来寺周辺地域は、図書館建設準備委員会でも文化・文教ゾーンとされており、町においても施設の整備を図っているところであります。当該施設の営業が再開されれば『モーテル類似施設』として利用される可能性が大であります。このことから、教育的配慮及び青少年の健全育成の観点より、旅館業法第3条第3項の規定による『清純な施設環境が著しく害されるおそれがある』と考えます。」として、最後に、「今回の旅館業営業許可されることについては断固反対いたします」と結んでいます。
地元の自治体が断固反対との回答を上げたのですが、県は、旅館業の営業許可をおろしました。私は、ここには、最初のボタンの掛け違いがあったのではないかと思います。この施設は、元はモーテルだった施設が、経営者が代わり、改装して旅館業としての営業許可申請をしたわけですが、県は、この施設がモーテル類似施設指導要綱に規定するモーテル類似施設ではなく、旅館ということで申請を受け付けています。要綱では、「車庫又は駐車場から玄関、帳場を経由せず、直接客室へ通ずることができる出入り口を有する構造であるもの」など5点に該当するものを「モーテル類似施設」としています。
私は、現地を見て参りましたが、外観からは普通のホテルや旅館とは見えないものでしたが、町のほうも、この施設を「モーテル類似施設」ではないという県の見解に異を唱えています。ご承知のように、根来寺は由緒ある寺院であり、その周辺は中世の遺跡が多数あり、歴史学者のみなさんから高い評価を受けている地域です。今、岩出町は、この地域を文化・文教ゾーンとしていく考えだと伺っています。和歌山県としても、町と協力してこの地域の環境を守る努力が必要だと思います。
そうした状況をふまえた上でお聞きしますが、岩出町への意見照会は、旅館業法施行条例によるものであって、モーテル類似施設指導要綱にもとづくものではありませんでした。しかし、この要綱は、「大規模の模様替え」もその指導の対象になるとしています。このケースは、これに当たると考えますが、いかがでしょうか。また、指摘した施設が、「モーテル類似施設」ではないという判断の根拠をお示しください。また、この指導要綱は施行後二十年が経過しましたが、この間のモーテル類似施設審査委員会で審議された件数をお示し下さい。そして、実態と指導要綱の規定が整合性を失ってきている面も出ていると思いますので、改定を検討する必要があると思います。
◆津本清環境生活部長
今回は既存の施設の改修であり、建築基準法第二条の建築、大規模な修繕、模様がえに該当しないため、建設に係る事前協議を対象とした県モーテル類似施設建設指導要綱の対象に当たらず、また申請書に基づき施設並びに宿泊客の入室経路等を書類審査し、現地調査したところ、同指導要綱の別表第一に規定する要件には該当しないことからモーテル類似施設でないと判断した。
指導要綱は、社会情勢の変化も見きわめながら、今後必要に応じて見直しを検討していく。モーテル類似施設審査委員会での審議件数は三件。