一般質問項目


●松坂英樹県議
 1、紀伊半島沖地震を教訓にした震災津波対策について
 2、県営水力発電所売却計画と有田川の安全対策について
 3、公共事業における県の信頼回復について

●雑賀光夫県議

 1、暴力とテロ・憎しみの悪循環を断ち切る方向を示す「憲法9条」と「九条の会」アピールについて
 2、教育問題
 3、関西電力発電所の安全確保とデータ改ざん問題
 4、災害問題と河川の治水対策・少ない河川改修予算について
 5、効率的な道路改修、一例として海南金屋線(海南市・神田)の早期改修について

●藤井健太郎県議
 1、三位一体の改革と行財政運営
 2、南海貴志川線廃線問題

●村岡キミ子県議
 1、雇用問題について
 2、障害者問題について







意見書

●和議第27号 地方交付税の総額確保に関する意見書(案)
  
⇒日本共産党県議団提案 賛成は日本共産党県議団(4名)のみ ・・・否決

●和議第28号 義務教育費国庫負担金の堅持に関する意見書(案)
  
⇒日本共産党県議団提案 賛成は日本共産党県議団(4名)と新生わかやま県議団の2名が賛成
                                                       ・・・否決

●和議第29号 低髄液圧症候群の治療推進を求める意見書(案)
  
⇒全会派賛成 ・・・可決

●和議第30号 郵政事業民営化に関する意見書(案)
  
⇒公明党県議団のみ反対 ・・・可決


松坂英樹議員(日本共産党県議団)の反対討論全文

 日本共産党県議団を代表して反対討論をさせていただきます。

まず、議案第115号については、建設事業に伴う市町村負担を求めるものであり、市町村からの負担率軽減の要望に反するものであり反対であります。

次に、議案第116号は市町村の配置分合の議案で、新田辺市の1市4町村の合併議案です。私どもの市町村合併に対する基本的な姿勢は、住民のもっとも身近な行政単位のサイズを決めるものだから、住民の自主的な判断と合意形成が賛否の判断基準だという立場です。ですから、機械的に賛成したり反対したりせずに、住民自治がどう発展するのかという観点で個別具体的に判断をするものです。さる2月議会に上程された南部・南部川の合併議案には住民の意思が反映された案件として賛成をいたしました。しかし、今回の合併はたいへんな矛盾を含んだものであり反対するものです。

 私はこの反対討論にたつ前に、改めてこの和歌山県議会で市町村合併議案がどう扱われてきたのかを調べてみました。というのは私の住む吉備町と有田市の合併議案を県議会が否決した歴史があるからです。昭和40年9月議会にその合併議案は上程されました。当時は小野真次知事、町田義友議長でありました。この時は地元住民の充分な議論もないままに有田市・吉備町議会で合併議決がされたと聞きました。県議会に対してはこの合併に地元から賛成の請願、反対の請願が入り乱れて提出されています。県議会は9月議会、12月議会と2回にわたって合併議案を継続審議として、調査も行うなど慎重に審議にした上、翌41年3月議会で採決され、無記名投票の結果、賛成15票、反対26票、賛成少数で否決されたのでした。この例にあるように、県議会でも慎重な判断が求められているということではないでしょうか。


 今回の新田辺市の合併案件については大きな問題点があると思います。先日、「住民投票を求める龍神村民有志」のみなさんから提出された要望書、そしてその中にもありますように、合併の再考を求める有権者の過半数署名は重く受け止めるべきだと思います。龍神村、本宮町、中辺路町などでも、合併に対する住民アンケートを求める声や、合併の是非を問う住民投票の実施を求める直接請求がされるなど、様々な角度からの声が繰り返し出されました。こういう点からみれば到底住民合意がはかられているとは言えません。

 加えて住民サービス切り捨てと負担増の問題です。今回の合併協議では、当初国や県が看板にしていた「サービスは高いほうに、負担は低いほうにそろえられる」等の合併メリットはことごとく崩れ去っています。合併後の財政が予想以上に厳しくなるという見通しのもと、過疎地域に指定されている4町村の第一次産業への支援、高齢者福祉、定住促進対策などが大幅に切り捨てられようとしています。実際の家族単位の負担増を調べると年間25万円もの影響が出る地域があるという試算すら出されています。さらにこのような調整方針の全体像がまとまったのは今年3月であり多くの住民にはよく知らされないまま合併議決がされていることからみても、住民合意がはかられているとみることはできません。これらは決して看過できるものではないと考え、議案第116号には反対をするものです。

以上で私の反対討論を終わります。



一般質問&答弁の要約

●松坂英樹議員の質問


1、紀伊半島沖地震を教訓にした震災津波対策について
 
 9月5日、紀伊半島沖でマグニチュード7、4を最高とする連続した地震が発生し、県内をはじめ震度5弱の激しいゆれが観測され、夜中の11時57分の地震に対しては紀伊半島沿岸に津波警報が始めて発令された。

 地震のあと、湯浅広湾に面した湯浅町と広川町の役場を訪問し、防災担当者から初動体制や住民の避難体制について聞いた。昨年の6月議会で私は、傾いて時間どおりに閉まらない水門の問題を取り上げたので、それぞれの水門の開閉状況も聞いた。昨年指摘した湯浅町の水門は改修にかかっており、無事操作できたのだが、こんどは養源寺掘水門の緊急降下スイッチが作動しなかった。県からこの水門の管理をまかされている広川町は、2回目の地震、夜中の地震で津波警報が出されたのを受け、職員が水門操作のために駆けつけた。1回目の地震の時は通常操作で水門を閉めたが、2回目は津波警報が出たので、通常の約3分の1の時間で閉まる緊急降下をしようとしたが操作不能だったため、やむなく通常操作に切り替えて無事降下させた。あとで調べたらこの職員の操作方法が規定どおりで正しく、機械の故障だろうということだった。

 これは地震本番だったからこそわかった問題点として重視する必要がある。緊急降下スイッチは水門に無理がかかるので、訓練では使ってはならないとされていた装置だが、いかに本番で役に立たないかということがわかったと思う。今回の地震での教訓をあきらかにし、防災訓練のあり方や施設の問題点を点検する大事な機会だ。

 また一方で、地震発生時の行政側の対応としては、避難勧告の発令が2自治体しか行なわれなかった点が指摘された。湯浅町・広川町ともに、地震の発生地点や、津波予想が1メートル程度ということ等をふまえて現場で総合的に判断したということだったが、避難勧告を出す基準の精査や徹底が求められるのは当然だ。しかし、地震の後、住民がどう動いたかがもっと大事だ。行政と住民自身が一体となった日ごろの訓練や防災啓発が大事であり、いくら行政がよびかけても住民が動くところまで準備を重ねておかなければ命を守ることができないと再認識した。

 まさに、東南海・南海地震が現実のものとしてせまってきており、住民の意識も飛躍的に高まっているこの時期をのがさず、避難体制や住民自身の手による取り組みを発展させる必要がある。

避難勧告の基準など県・市町村の初動体制について、および水門や防潮扉などの操作について、今回の地震を通じて明らかになった問題点と教訓を。

 津波被害の想定される沿岸市町村では浸水予想図や避難場所・避難経路を徹底するための防災マップ作りがすすめられている。行政からの避難のための情報の徹底とともに、住民自身が誰とどの道を通ってどこへ逃げるのかという具体的な行動計画や訓練を地域で練り上げることなしには役立たない。この取り組みの状況は。

◆白原勝文危機管理監
 市町村の初動体制について、対応等にばらつきがあった。9月7日に危機管理監名の文書で「地震防災対策や地震発生時に市町村長がとるべき対応等について点検・見直しを行い、早急に対処するよう」依頼し、住民への避難勧告についても適切に対処するよう重ねて依頼した。県も職員の参集や連絡体制、初動マニュアルの整備・活用状況などを検証し、今後改善していきたい。

 「津波防災マップ」は、沿岸21市町のうち、7市町が作成済み。現在県は、津波ハザードマップの基礎となる浸水区域図を作成するためのシミュレーションを行っており、結果が出次第、順次沿岸市町に提供する予定にしている。ハザードマップ作成にあたり、住民参加で作成するためのマニュアルも市町村に提示している。未整備市町村には早急な整備を呼びかけている。津波避難訓練は一昨年から沿岸21市町と県、三重県等隣接県との連携をはかり、約一万人を超える住民等の参加を得て実施しているが、本年も12月21日の実施にむけ準備を行っている。

◆酒井利夫県土整備部長
 水門・防潮扉の操作については、現地で施設の再点検を行い、緊急時の操作訓練を実施し、津波時に適切な対応ができるよう取り組む。


松坂―先ほど公立学校施設の耐震化状況について全国の進捗状況が発表され、和歌山県の耐震化率は昨年にひきつづき全国45位という状況。耐震診断は進んだと思うが、来年度末までの3カ年計画で全校の耐震診断を完了させるという計画から見てどうなのか。耐震補強をどうスピードアップしてゆくのか。


◆小関洋治教育長
 小中学校の耐震診断の実施率は、昨年4月は5.6%であったのが、今年7月には55.6%。耐震化工事の円滑な実施を各市町村に指導している。県立学校の耐震診断は本年度中に完了させる。耐震化率の低い市町村には診断、工事を着実に行うよう働きかけていく。

 

2、県営水力発電所売却計画と有田川の安全対策について

県は、今年度末での企業局廃止の方針を打ち出し、県内に3箇所あるダムによる水力発電所を関西電力に売却をする計画であることを明らかにした。この発電所売却計画の発表は、県民から見れば本当に突然だった。

 二川ダムをはじめ、発電所を持つ県営の3つのダムは洪水対策と利水、主に発電の目的をもつ多目的ダム。しかし、ダムは洪水対策のためにはできるだけ水位をさげて大雨にそなえたい。しかし発電のためにはできるだけ水を多く貯めて多くの発電をしたい。片方は水位を下げたい、もう片方は水位を上げたい、多目的ダムというのはこういう矛盾した操作が求められる宿命をはじめからもつダムなので、多目的ダムは通常は一杯に水をためて発電し、大雨が予想される時には予備放流をして水位を下げて備えるという設計になっている。

 ところが実際は大雨の予想はかろうじて予想できるのは台風の雨ぐらいで、最近問題になっている集中豪雨や梅雨前線の大雨などは予想できず、実際に大雨が降りはじめて、それから気象庁が警報を出す。ダムの水位が上がりすぎてから、あわててガバッと放流する。そのころには下流も水位が上がっているのによけいに洪水がひどくなるというのがこれまでの現実の姿。


 もし発電が営利目的にやられたらどうなるのか。安全性よりも経済効率の方が結果として優先されるのではないか。発電所売却によって、電力会社の電力需要や採算性が優先させられて、洪水対策や安全性、河川環境などが2の次になってしまうのではないかという声が流域から出ている。

 また一方で、発電所が売却されれば、水利権も関電の手に売り渡すことになる。現在の発電用の水利権は申請者の発電所も知事、許可するのも知事。ダムも発電所も県のものだからこそ一体のものとして運用できたことが、片方が人手に渡ってしまってからは、住民の声やダムと発電所の調整は非常に困難になる可能性があるといわなければならない。

 現在、古座川七川ダムと佐田発電所、有田川二川ダムの岩倉発電所、日高川椿山ダムの美山発電所は遠隔操作だが、週一回の発電機の定期点検にはじまって水をダムから送ってくる導水管の定期検査など保守点検や安全点検など、職員の方が苦労されている。この保守点検や安全点検のコストを安くあげるために民間委託するとなるとどうなっていくのか心配だ。

 また、海南市のインテリジェントパークにある、発電所遠隔操作のための管理センターは、県内3つの発電所を1箇所から遠隔操作できるようにと、コンピュータに6億円、建物全部で13億円かけてこの4月にオープンさせたばかり。売却すればたった1年でここから遠隔操作する必要がなくなる。一体何のために新築したのか。


 売却先の関西電力は、建設から40年も50年もたった水力発電所をひきうけても得するはずがない、こんな古い小さな発電所を関電は本気で買うのだろうかという疑問の声がある。県の3つの発電所はそれぞれ1万キロワット程度の出力。関西電力海南火力発電所は210万キロワット、御坊火力発電所は180万キロワット。電力需要の低迷で、現在海南火力は4つある発電施設の1つしか稼動しておらず、御坊では稼働率が3%をきっており、年間6日か7日しか動いていない。火力発電所と比べると出力計の針の誤差の範囲のような施設で、しかも施設の買取費用に加えてダム建設時の借金支払い残も一括で国に返すという莫大な費用もかかる。関電に買ってもらうことで、県は大きな借りをつくるのではないか。

電力需要急増期には国策として多目的ダムが一斉に計画された。ダムをつくるための土地の買収・保障、ダムと発電所の建設費用を全部国と地方のお金でまかなって建設し、発電所の維持管理は行政がやって、できた電気だけ買い上げて、利益を上乗せして消費者に売るという電力会社にとっては結構な仕組みだった。そして県が維持できなくなり、その発電施設をタダ同然で電力会社が引き取るということであればトータルでみると得をするのは電力会社。大きな台風や水害の悲惨な歴史を繰り返したくないという願いをたてに、自治体としても財政面で有利な発電所付の多目的ダムという形が全国的に広まった。

 今のダムの現状は、洪水対策が第一で発電は二の次と口では言いながら、実際は発電のための大量の貯水がされているというのが実態。県が発電所を売却することによりこれがいっそう悪化するのではというのが住民にとって最大の心配事。新聞報道で県のこの計画を知った関係者からはすぐさま不安と怒りの声が巻き起こり、有田地方でも、有田川流域の清水町、金屋町、吉備町、有田市の1市3町の首長がそろって本庁にきて計画と経過の説明を求めた。清水町議会では全会一致で抗議の文書を採択し、議会代表が県庁に提出にきた。

 ダム直下の二川地区では区長さんはじめ多くの区民の方々が集まり、次々に怒りを表明された。「二川地区はダム建設反対だった。しかし、洪水対策のためにと泣く泣く同意した。発電所を売り渡すのであったらダム建設時の約束違反だ。1からやり直しをせんなんことになる。発電が儲からんのやったら、もう発電をやめて、どうか防災ダム一本にしてほしい」というのが圧倒的な声だった。

 今回、和歌山県では、企業局は売却理由として県内3発電所について「電力不足の時代にはそれなりの意義があったが、将来的にリスクが大きすぎる」といっている。歴史的な役割を終え、洪水被害やにごりの長期化で問題がある発電施設については、そのあり方そのものを問うことこそが必要とされている。私はそういう決して遠くない将来の展望をさぐりながらも、当面の課題となっている拙速な発電所売却には反対であり、県は慎重な態度をとるべきだと主張する。

まず、今回の発電所売却計画にいたった理由について、そして売却計画の概要とともに、発電施設の資産価値、売却時に国に返さなければならない起債残高をお示しいただきたい。水利権や発電放流の操作方法など売却条件については、情報公開して地元合意を事前に得るつもりはあるのか。

◆西芳男企業局長
 県営で電気の卸売りを続けるには採算性の面で将来に大きな不安があることが、売却計画の主な理由。豊富な管理の経験がある民間事業者に任せれば、より信頼性を保てると考え取り組んでいる。
 発電所や水力発電に必要な一連の設備を売却の対象としている。ダムそのものは今までどおり県が保有・管理していく。
 発電施設の資産価値(電気事業会計の固定資産)は84億7,938万円、返済すべき起債残高(企業債未償還残高)は46億4,540万円。
 水利権や発電放流の操作方法など売却条件については、企業局がこれまで関係者と話し合い取り決めてきた事項についてはそのまま引き継ぐことを基本に、具体的に関西電力と協議を行っている。



松坂―二川ダム操作規定の改定はいつまでにするのか、河床が上がり危険な有田川下流の堆積土砂問題はその後どうなっているのか。

◆酒井県土整備部長
 遅くとも平成17年度の出水期に間に合うように改定したい。

 土砂の堆積状況は平成12年から大きな変化は認められていないが、低水流路が蛇行している区間や堆積・洗掘などの局所的な河床の状況も踏まえ、対応を検討していく。


松坂―「発電所が採算重視になるとダムにいっそう水を貯めようとするのでこまる」という声が住民、地元市町村長、町議会からも出されているが、この災害面や河川環境面での不安や疑問・怒りを知事はどう受け止めているのか。来年3月末までに結論を出すという性急な発電所売却計画は白紙撤回し、住民や地元自治体と充分に議論して方向を出すべきではないのか。

◆木村良樹知事
 このまま放っておくと採算がとれなくなる、今ならば買ってくれる可能性もあると、検討を進めてきた。ダムはこれからもずっと県営ダムとして県が責任を持って管理していく。

【再質問】
松坂―3月末までの売却という期限にどうしてもこだわるつもりか。地元合意もなしに売ることはしないと明言できるのか。

◆木村知事
 関西電力がそれほど信頼できない会社とは思われない。安全面で絶対におろそかにならないよう、細部について詰めなければいけないことについては、交渉して鋭意詰めていくことになると思う。

【再々質問】
松坂―地元合意なしに売ることはしないと明言できるのか。

◆木村知事
 県として住民に情報開示する義務がある。しかし最終的に決断するのは、やはり県が責任をもってすることであり、企業局の採算性など、諸々のことを判断してやっていく。


3、公共事業における県の信頼回復について

 国道480号清水町内三田バイパスでの橋の設計ミスの問題では、先の6月議会で4166万円の補正予算を組んで手直し工事の準備をすすめていた。工事の状況や訴訟に関する状況が説明されたが、手直し工事の概算工事費が補正予算額の2倍以上、1億500万円になると説明を受けた。6月議会の時点ではわからなかった工事が膨らんだとの事だが、手直し工事の見通しが甘かったのではないか。手直し工事の修正はどのようなものか、また完成予定期日に影響はないのか。

◆酒井県土整備部長
 想定した以上に、橋脚の地中基礎部の補強などが必要となった。増額はまことに遺憾。有田側の橋台は上部の一部を取り壊し、再構築する。川の中に立つ橋脚も上から約5b取り壊して再構築し、地中基礎部も2.5bの拡幅を行う。未着工の高野側の橋台、上部工の工事は10月から再開予定であり、平成18年度供用への影響がないよう最善の努力をする。



松坂―旅費肩代わりという業者との癒着問題が6月末に問題になった。これは県土整備部の職員が出張した際、宿泊費などを請負業者に肩代わりさせたというもので、同行した業者は昨年末に県を定年退職した元幹部職員だった。知事は記者会見で「県土整備部内の構造的な問題があるのかどうか、徹底的に解明するよう指示した」とのべ、部内で業務改善委員会を立ち上げて解明と再発防止に取り組んできたと報告している。業務改善委員会ではこの問題をどう解明してきたのか、また再発防止に向けたとりくみはどうか。

◆酒井県土整備部長
 本年7月27日県土整備部の局長クラスで「県土整備部関係業務改善委員会」を立ち上げ、再発防止のために問題点や対策の検討を行っている。今回の場合、利害関係者との節度あるモラルが欠けており、検査やチェック体制に改善すべき点があったと認識している。検査出張時の留意事項を定め、チェック体制を確立し、工場検査の在り方の検討をすすめ、研修等を通じて職員の意識改革を図る。



松坂―定年や中途退職した職員が、県の仕事をうける業者にすぐ再就職するケースが多く、行政と業者の癒着につながるとの批判がある。国会でも国家公務員法の法改正も論議されている。県としてもこのような方向にそって離職後一定期間は密接な関係にある営利企業への再就職を原則禁止にするなどを検討すべきではないか。

◆宮地毅総務部長
 県では「退職後2年間は、退職前の業務に関連した営業活動を自粛」するよう指導している。密接な関係にある営利企業への再就職については、国や他府県の動向等に注視して在り方を検討していきたい。

【再就職問題についての松坂県議の再質問にこたえて】
◆木村知事
 和歌山県だけの減少ではなく、日本全国どこでもそういう風な状況なので、大きな動きが出てくれば、それに合わせて和歌山県も積極的に対応していきたい。
 


●雑賀光夫議員の質問


 1、暴力とテロ・憎しみの悪循環を断ち切る方向を示す「憲法9条」と「九条の会」アピールについて

 アメリカとロシアでおこった二つの悲惨なテロ問題を通じて考えてみたいのは、原爆・水爆までもっている二つの軍事超大国が、テロから国民の命を守れなかったこと、むしろ、軍事的に他国を支配する政策を取っているからこそかえって、テロの目標にされたという問題をどう考えるかということだ。いま、大切なことは、いかなる理由があってもテロは許されないという国際世論でテロ勢力を包囲しながら、武力とテロ・憎しみの悪循環を断ち切ることではないか。「憲法9条」は、世界にその方向を示している。「テロに屈服するな」といって軍事的対応を強めることは、問題をすり替え、事態を一層深刻な方向にむかわせることになる。

 さる6月、ノーベル賞文学者の大江健三郎さん、国連婦人会の三木睦子さん、高野・熊野の問題を精神的側面から考察しておられる梅原猛さん、哲学者の鶴見俊輔さんなど9人が、「憲法9条を守ろう」というアピールをだした。全国に賛同者がひろがっている。知事は、9人のアピールを読み、どういう感想を持ったのか。

◆木村良樹知事
 この国の泰斗の方々が叡智を集め発表されたもので、中身は非常に立派なものだと思う。ただこの問題はそれほど簡単にいかないところに、ものすごく難しい問題があって、私自身も非常に悩んでいる。この場で意見を申し述べようとは、簡単には思っていないのでご理解いただきたい。



2、教育問題 

 まず一つ目は、三位一体の改革にかかわる教育予算の問題。
 8月全国知事会は、「地方財源移譲にかかわって、どの補助金を削るか」という問題を小泉首相から丸投げされて論議されたと聞いている。地方財政にしわ寄せを重ねてきている根本の問題を抜きにして、「財源移譲をいうなら、削るものを差し出せ」という問題の丸投げそのものに問題があると思うが、全国知事会は丸投げされた問題を論議した。 

 最大の論議は、義務教育費国庫負担という、教職員定数について国が基準を決め、半額国庫負担、半額は地方交付税に算定するというこれまでの制度に手を付けるかどうかの問題であった。財政の豊かな県でも、そうでない県でも、最低基準としての教職員定数は保証するというこの制度に手を付けることについては、12の都県の知事が反対したが、その中に木村知事の名前はなかった。そして今回は、中学校教職員分、義務教育費国庫負担削減案がだされている。

 しかし、義務教育費国庫負担を廃止しフラット税率により税源移譲をおこなった場合、有利になるのは東京を始めとする7つの都市部の県だけであり、和歌山では38%、117億円の減収になるという試算がある。もちろんひとつの試算であり、さまざまな補正はおこなわれるのであろうが、和歌山にとって有利なことにはなりえないのではないか。

知事は、義務教育費国庫負担制度廃止になぜ賛成したのか、国庫負担の廃止と税源移譲額の差をどうするのか、これまでの教育条件を低下させることなく、教職員定数の改善、少人数学級の推進など、いっそう進められる見通しをもっているのか。

◆木村知事
 いま国は口を出すために金を出すという形になっている。地方団体は昔から教員の経費については自前の税源でやるべきだといってきている。本当の教育の根源的なことは百年の大計だから国が責任をもって考えればいい。ただお金の話は別の話で、地方がある程度自立的にやっていくべき。金はもらっても口は出させないという考えには疑問を感じる。



 第二の問題は、高校再編成について。

8月26日、県教育長は、記者会見で「県立高校の再編整備計画」(案)の概要を発表し、パブリックコメント・県民の意見をもとめ、9月28日の教育委員会で決定すると聞いている。とくにその中で、「来年度から大成高校の募集停止をし、海南高校と統合する」という問題は、あまりにも唐突であり、地元では大きな困惑がうまれている。高校は、地域の文化の中心であり、子どもたちの進路保証の問題であり、地域の活性化、まちづくりの問題としても重要。この計画発表直後から、野上町・美里町の行政関係者、野上・美里中学校、大成高校、大成高校OB会役員など訪問して意見を聞いてきた。

大成高校では、数年前に大きな募集定数割れがあり、二次募集では学区枠をはずして、他地域からの生徒を受け入れたこともあったが、ここ数年間、学区撤廃にもかかわらず3学級の定数を、地元野上町・美里町・海南市の生徒が372名中、約300人を占める、一年生でいえば、119人の入学生の106人が海南・海草からきているという地元にねざした高校。学校の様子も大変落ち着いていると評価されている。

こうした努力をしている学校を、突然、募集停止にするとはどういうことか。募集停止案を発表する3日前には、90人を越える中学3年生をむかえて体験入学を実施している。フェンシングをやっている在校生が、地元・野上中学校を訪問して、「ぜひ、大成高校に来てください」と呼びかけている。真剣に進路を考えている中学生や進路指導をしている教員のみなさんを無視した発表に、怒りの声があがっている。

野上中学校では、育友会としてアンケートを実施。7割以上が提出された。育友会執行部としてアンケートを集約し「大成高校の存続を強く要望します」として、その理由を3点あげている。要約すれば、@進路指導がはじまった時期の発表は生徒や保護者を不安にしている、A地域や住民の理解や同意がない、B募集停止後の対応策が示されていないということだ。そして、パブリックコメントという手段で広く意見を聞くシステムはできているが、このような重大な方針を決める前に、私たち学校関係者および住民の意見を直接聞いていただく場が設定されなかったことは」到底納得できない、としている。

なによりも大事にすべきは、大成高校を希望していた地元の中学生、大成高校が募集停止になれば、他郡市の高校まで通わねばならない、高校進学そのものを経済的理由であきらめなくてはならない子どもたちの問題だ。大成高校の募集停止をして海南高校の募集人数をふやしたからといって、大成高校を希望していた生徒たちが海南高校にはいれるとは限らない。「きのくに教育協議会」の報告書でも「小規模校であっても、生徒や地域のニーズに対応した学校づくりができると判断した場合は、別途検討するものとする」と記されているし、分校は存続する。大成高校の場合はどうなのか、古座高校の場合はどうなのか、地元の方々と相談しても遅くはない。子どもたちの夢を、受験半年前に断ち切るのが、教育者のすることなのか。学校見学に行って「この学校をめざそう」と心に決めて子どもが、その3日後に「募集停止なる」と聞かされてどんな思いをするのか、考えたのか。

◆小関洋治教育長
 本計画は、社会状況が大きく変化する中で、一人ひとりの生徒の力をどう伸ばしていくか、その教育の推進のための方策という観点から、中長期的な展望に立ち策定した。海南高校・大成高校統合案は、昨年の「きのくに教育協議会」での、適正規模確保の観点から喫緊の課題だという報告に基づき、地域や学校の状況、中学生の入学希望の動向などあらゆる角度から検討を重ね策定した。

【雑賀議員の再質問にこたえて】

雑賀議員−計画発表後に寄せられた意見を聞いて教育長はどう感じているのか。
     パブリックコメントの内容や県議会での議論など、多くの声を受けて計画を見直す考え     はあるのか。

◆小関教育長
 パブリックコメントで寄せられている内容を十分に吟味する必要がある。説明の周知に努力し、多くの方々の意見を聞き、慎重に判断していきたい。


 3、関西電力発電所の安全確保とデータ改ざん問題

 関西電力美浜原発で、配管から蒸気がふきだし、5人が亡くなった。事前に点検が必要であったのに、点検項目からもれていたという報道を聞き、人災だと思わずにはいられない。和歌山県の海南火力、御坊火力でも検査にかかわる不正、改ざんがあったと、その1ヶ月前、6月末に報道されていた。「海南ではモーターの軸が水平に保たれているかどうかを調べるテストで、計測値の結果が、基準となる『管理値』を満たしていなかったため、管理値を勝手に変更して記入するという悪質なケースが5件あった」と報道されている。

 海南市議会の全員協議会の場に海南火力の責任者を呼んで、説明をもとめた。海南火力では過去に二回、重大な事故をおこしている。ひとつは1972年、3号機が水素爆発をおこし、2.6トンの部品が建物をつきやぶり、となりの当時の海南鋼管工場までふっとぶ事故だった。そこでは2度もの事故があったのにデーターを改ざんするとは何事かと厳しく追及された。

 そこで私は、県であればもっとくわしい情報をあつめて、問題の追及をしているであろうと考え、危機管理室に電話をいれた。ところが、危機管理室は、自分の担当だとは思っていないようで、地域振興課にまわされてそこから資料をいただいたが、そこでも「県民の命にかかわる重大な問題」という認識はまったくない。関電和歌山支社から届けられた「報告文書」だけは届けられた。「関西国際空港エネルギーセンター他の定期事業検査に関する調査結果について」という、関西電力株式会社による6月28日付け書類だが、そこには「海南発電所3号機定期自主検査」という一行だけで、何が問題だったのかわからなかった。海南市の市会議員を通じて「海南発電所における定期事業者検査に関する不適切事業について」という関西電力株式会社海南発電所が作成した28ページの文書を手にいれていたが、それとくらべても、まったく粗末な資料であった。県の対応としてはきわめて不十分だ。

 その後、日本共産党吉井英勝衆議院議員と一緒に、関西電力海南火力に調査に入った。美浜事故は、蒸気配管事故だから火力発電所でも同じ危険がある。復水流量計オリフィスという蒸気・熱水の流れる速度を計るために配管を細くしている部分があるが、そこで配管の肉厚減少がおこった。すでに福島県の相馬共同火力発電所でもこうした事故があったと報道されている。美浜原発のタービン入り口は70気圧、280℃。海南火力では、246気圧、538℃。火力発電所の方が、蒸気圧は3、5倍も高い、温度は二倍高い。同じ事故がおこれば、海南火力のほうが大きな事故になるのに、原発の場合でさえ「定期安全レビュー報告書」の提出が義務づけられているのに、火力発電所では出していないこともわかった。

 美浜での原発事故が起こって以後、火力発電所の安全性についてどういう調査をしたのか。調査をしてどういう問題点をつかんでいるのか。関西電力のデータ改ざんなどの問題について、どういう危機意識をもち、どう対応し、今後どういう対応をしていくつもりなのか。

◆木村知事
 原発事故は原発本体部分で起こったものではないので、火力発電所に大きな関係があると思っている。初動の情報収集等についてまずいところがあれば改めるべきであり、原発事故についても十分な情報収集を行いたい。改ざんについては、今後もいろいろな指導を行い、情報等収集のうえ、適切に対処していかねばならない。



雑賀−
大企業のデータかきかえという問題は、危機管理室として無関心でいい問題なのか。


◆白原勝文危機管理監
 改ざん問題は、住民の安全に関わる重要な問題であると認識している。県が関西電力とむすんでいる環境保全協定に関するデータには改ざん等はなかった。美浜原発の事故発生後には、各種検査の徹底と安全確保について行政指導した。今後も改ざんや隠蔽等のないよう、適正に検査が実施されるよう指導し、危機管理の必要性の啓発、「和歌山県危機管理計画」に基づき県職員への危機意識の向上等も図っていく。


4、災害問題と河川の治水対策・少ない河川改修予算について

 海南市を流れる川は多くはないが、貴志川は3年前の大雨で溝口付近であふれた。亀の川は、阪井・下河原付近では、通常でも川の水面と周りの土地の高さが近く、すこし流量が増えれば浸水する。その近所の家では、砂袋を常設している。さらに亀川地区にはいって、県営住宅の付近で昨年は堤防の崩落がおこった。一昨年は堤防を越えての浸水。また日方川は改修計画があり、大幅な立ち退きがおこなわれているのに、なかなか工事がすすまない。河川改修予算は、災害復旧は別として、災害を事前にふせぐための予算は、その重要性に比していかにもすくなすぎる。申し上げた箇所の改修見通しはどうなっているのか。河川改修の予算の現状をどう考えているのか。

◆酒井利夫県土整備部長
 貴志川溝の口付近の改修は、周辺地区の開発状況を勘案しつつ改修計画を検討する。
河川改修は上下流の流下能力バランスを勘案しつつ下流から進めるのが原則なので、亀の川の改修についても時間を要するが、周辺地区の開発状況を勘案しつつ暫定的な対応を含め今後の対応を検討していく。日方川は今年度から井松原橋の改築に着手し、平成18年度に完了する予定。厳しい財政状況だが、効率的・効果的な治水対策の推進に努める。

【雑賀議員の再質問にこたえて】

雑賀議員−河川改修予算はいかにも少ないと思うが、県土整備部長はどのように思うか。

◆酒井県土整備部長
 厳しい財政状況の下ではあるが、本当に必要なものを効率的・効果的に整備していきたい。

 

5、効率的な道路改修、一例として海南金屋線(海南市・神田)の早期改修について

 道路というものは予算がついても、地元との関係でなかなかすすまないものもあるが、そのなかで「住民がこまっている生活道路の中で、思い切って予算を付ければ住民の協力も得られて一気に進むのに」と思うものもある。たとえば、海南金屋線で海南第二中学校、日方川にそった部分だ。大変狭くて、車の対抗もままならない。海南市の亀川という地域で火事があった場合、海南消防署から消防自動車はどういう経路をはしるのだろうか。道路わきの家は、以前からほとんどが土地買収に応じられるように、うしろにさがっている。今回の質問を準備する過程で、ごく一部を除いて用地買収がおわっているそうだ。大規模な工事には何年もかかるとしても、電柱を後ろに下げ、障害物をとりのぞけば、本格的な舗装はあとになったとしても、海南市中心部から亀川にむかう消防自動車もさっと走れると思うのだが。

◆酒井県土整備部長
 海南第二中学校、日方川にそった部分は狭隘区間であり、優先的に用地買収を行っており、用地進捗率は86%。買収済み用地を活用して待避所を二箇所設置しており、今年度中にはすれ違いできるよう、暫定的な拡幅を行う。



●藤井健太郎議員の質問

1、三位一体の改革と行財政運営 

 三位一体の改革の初年度は、国庫補助負担金の大幅カットと不十分な財源の移転、一方的な地方交付税等の削減がすすめられ、事務事業の大幅な削減と基金から財源を取り崩して予算収支の帳尻合わせを強いられた。とうてい地方分権型の予算と呼べるものではなかった。

 歳入予測の未定要素が多く、緊縮型になるのではないか、しかし雇用や産業振興、少子高齢化や社会保障福祉関係予算の自然増への対応など県民生活向け予算は確実に確保しなくてはならない。起債残高をふやしたり、基金からの多額の取り崩しは後年度に財政負担を強いることになる。国庫補助負担金はカットされる一方、税源移譲が遅れ、地方交付税も削減されては、今年度よりたいへんなこととなる。今後の予算編成のスケジュールも含めて、どのように考えているのか。

◆木村良樹知事
 予算編成方針は例年10月をめどに出している。「三位一体の改革」の動向が不透明であり、老人医療や介護保険等の社会保障関係費の増加も予想されるため、県財政はますます厳しくなるだろう。予算編成では徹底したスクラップアンドビルドによる行財政改革を進める必要があるが、一方で県内経済や雇用への配慮を行いつつ、県民が安心して暮らせる県づくりへの取り組みも必要だと考えている。さらに地域の自立につながる地域活性化策にも積極的に取り組みたい。


藤井−全国知事会の提言について。


 国庫補助負担金の廃止・縮減の具体的メニューを国に示したが、ことは全国の地方財政全体にかかわる問題だから、一致する点ですすめることが必要だったのではないか。通常は満場一致が原則と聞いているが、今回、反対意見の知事も一定あるのに多数決で決められたことについてはどう考えているのか。

 
国の要請にしたがって国庫補助負担金削減のメニューづくりを先行させたが、国からの税源移譲の規模と内容を先に決定し、それに見合った国庫補助負担金を廃止・縮減してこそ、自治体の自主的行政運営の拡大がはかられるのではないか。やりかたが逆ではないか。とりわけ財政力の弱い本県にとって、県の試算にあるように国庫補助負担金のカット額と税源移譲額とが乖離し一般財源をより義務的経費にあてなくてはならなくなり、ひいては財政の硬直化を招くことになりはしないのか。

 義務教育費国庫負担金制度の廃止が自治体側から提案された。知事は人件費は自治体でもつべきとの見解だが、義務教育は憲法において保障されているように全国どの地域でもすべての子供たちに無償で公平に与えられるものであり、教育の機会均等と教育水準を維持するために国の責任を明確にするための負担金制度でもあると理解している。生活保護、保育所なども国の責任で全国的に標準行政水準を維持すべきだと思うが、今回の全国知事会の提案で国と自治体の役割分担がどのように明確にされたのか。

◆木村知事
 知事会では夜12時をまわるまで議論し、改革案にも少数意見を付記するなど、議論を尽くしたうえでの非常に民主的な決定であったと考えている。そもそも三位一体の改革は、先に税源移譲が決定していることからそれに基づいて改革案を提出した。地方6団体の改革案では、国が負担すべき経費
については、社会保障関係の負担金のうち、格差なく国による統一的な措置が望まれる生活保護や児童扶養手当など、制度全般の見直しのなかで検討すべき老人医療費や介護保険など、国家補償的性格を有する電源立地や災害復旧などをあげている。それ以外は地方に税源移譲するよう求めている。


藤井−今後の三位一体改革の見通しについて。

 どうすすめるのか、確たる財源保障の見通しはあるのか。本県の財政力指数の低さからみて、税源移譲の見込みと財政に与える影響、地方交付税の見通しなど、どういう見解をもっているのか。

 特に、地方交付税の縮小案が国庫補助負担金の廃止案と別個に国で議論がされている。地方交付税の削減を突出させ、地方財源を大幅に削減させることにつながらないか。財政制度審議会や経済財政諮問会議の民間議員が地方交付税は地方財政の肥大化をもたらしモラルハザードを招いたと攻撃を集中させているが、問題は地方交付税制度にあるのではなく、主には、国によって起債を事業費の90%から100%認め、元利償還は後年度全額交付税措置するからということで、建設事業拡大の補助金のように財政誘導に使われたところにある。それにのった行政当局にも責任がある。地方交付税は、自治体間の財源格差を調整する役割もあるが、基本的には自治体が全国の標準的な行政水準を維持するための、国税から地方への財源移転という自治体固有の財源でもある。交付税総額について16年度の大幅削減前の水準を確保できるよう特別な働きかけを行うべきではないか。

◆宮地毅総務部長
 本県のように財政力が弱い自治体では、国庫補助負担金の削減額に比べ税源移譲額が少ないと見込まれるので、その場合には地方交付税による調整が必要だと考えている。地方6団体の改革案では、国と地方6団体との協議機関を設けることを求めており、税源移譲との一体的実施、確実な税源移譲、地方交付税による確実な財政措置などを前提条件とし、特に地方交付税は、改革を行っている間は昨年のような不合理な地方交付税等の一般財源を削減しないよう求めている。



藤井−16年度から20年度までの5年間を財政改革期間とし「財政構造改革プログラム」を早急に策定するとのことだが、その理念は何か。選択と集中による事業の再構築や公共事業改革に取り組み、財政的な自立をめざすといわれているが、その内容は具体的にはどういうことをすすめようとしているのか。単なる経費削減の計画にならないか。

 地域づくりやまちづくりの理念やビジョン、方向性が示せるのか、県民にとって希望のもてる計画となるのか、住民の声・職員の現場の声が反映されるものとなるのか。

◆宮地総務部長
 プログラムは財政再建団体への転落を回避しつつ持続可能な財政構造への転換を図ろうとするもので、平成20年度までを財政改革実施期間と位置づけ、具体的な内容は検討中だが、たとえば県行政の責任領域の見直しやNPOとの協働による事業の再構築や公共事業におけるコスト縮減などを含めた今後とるべき財政健全化のための取り組みと歳入・歳出両面にわたって目標額を示すものと考えている。県民の意見も聞きながらこのプログラムを実施することで財源を捻出し、福祉、治安、教育、地域活性化等、必要な施策に取り組んでいきたい。



藤井−三位一体の改革と市町村財政について。


 三位一体改革による市町村財政への影響額を試算し、発表した目的はなにか。各市町村と発表することについての調整はされているのか。三位一体の改革の全体像が明らかになった時点で再度試算をするのか。


 今後の市町村への対応をどうしていくつもりなのか。市町村財政への影響試算のまとめで、市町村に歳入・歳出の徹底的な見直し、行政の責任領域の見直し、市町村合併の推進を強調しており、すべて市町村に向けてのアピールとなっているが、県として市町村と一緒になって財源確保のための国への働きかけはしないのか。

◆宮地総務部長
 和歌山県全体への具体的な影響を見定めるために試算をおこなった。この試算は今後、地方分権の趣旨に添って改革が行われるよう国に訴えていく際の材料にするとともに、県や市町村の財政構造の転換を図る際の重要な基礎資料になる。あくまで県・市町村への影響の全体像を捉えるためのものなので、個々の市町村と協議・調整は要しない。今後、三位一体改革の全体像が明らかになったとき再度、試算内容を見直すことも検討したい。市町村には、歳入歳出の徹底的な見直し、民間活力の活用による行財政改革、市町村合併の推進などについて積極的に助言していきたい。


藤井−合併する、しないにかかわらず、やはり市町村への財政的支援が必要だ。市町村への県補助金などの財政支援策の充実は考えているのか。
ここでいう補助金は財源補填的な支援ではなく、特色ある施策、独自性を打ち出していく上での支援策という積極的な支援策をさす。合併する自治体には合併しょうとする自治体あたり1億円の特例支援交付金が地域振興基金で準備されている。合併せずに自律をめざす自治体でも、合併した自治体以上に独自性の発揮が求められている。そこでは同じように県民の生活がある。おなじように支援が必要なのではないか。

 市町村に対して県が施行する土木事業など建設事業にともなう負担金が工事による受益を理由に徴収されている。今年度当初予算では、50市町村全てで42億8千万円となっている。全国知事会は国直轄事業について地方公共団体に個別に負担金を課すことは不合理として廃止を提案している。県の負担額は約130億円。維持管理費についても管理主体が負担すべきとしてこれも廃止を提案している。県の建設事業も県土保全という県が主体となる施策について、市町村に負担金を課すことは財政負担の市町村への転嫁となる。縮減・廃止の方向が考えられているのか。

 ちなみに、平成16年度市町村向け県単独補助金は118事業で75億2千万円、その多くは福祉、教育などソフト関係。ハード面の建設事業関係の補助金は25億円ぐらい。県の市町村への単独補助より市町村が負担する金額の方が多くなっている。それに、負担金の多くが市町村の財政力にかかわりなく一律の負担率となっている。財政力に応じた負担率にするなど、工夫することもできるのではないか。

◆木村知事
 厳しい社会経済情勢が続くなか、分権型社会を担う主体として市町村の責務が増加することは確実だ。合併によるスケールメリットをいかし、行財政能力をたかめることは非常に有意義だ。合併への取組や合併した市町村に支援していきたい。合併しなかった市町村は従来と同様、国の制度や地方財政措置に沿って支援していく。負担金には引き続きご協力をお願いしたい、軽減についても当面は困難。

【藤井議員の再質問にこたえる】

藤井−三位一体の改革と行財政運営(地方交付税について)

◆木村知事
 国に対しては、必要な交付税総額は確保するよう、徹底的に主張していかねばならないと考えている。交付税総額を減らす目的のために三位一体の改革が逆に使われることにならないようしていきたい。


藤井−三位一体の改革と行財政運営(高等学校の統廃合について)

◆木村知事
 派生的には財政の問題もでてくる可能性があるが、財政の問題から高校の統廃合の問題が起こっているわけではない。


藤井−三位一体の改革と行財政運営(三位一体の改革と市町村財政について<合併の有無と市町村への財政支援について、県工事市町村負担金について>)

◆木村知事
 合併については、やっぱり根本には今合併してほしいなと、してほしいけれども住民が決めることだという根本の中で県は支援施策をとっている。合併しなかったところをいじめるとか、何もしないとかいう気持ちは毛頭ない。


2、南海貴志川線廃線問題

 南海電鉄が今年8月10日に、貴志川線の事業から撤退を表明。事業廃止届を10月1日に国に提出し、来年9月末に事業から手を引くということ、また南海和歌山市駅から和歌山港駅までの途中3駅も来年度中に廃止することを明らかにした。和歌山港駅から水軒口まではすでに廃線となっている。

南海貴志川線が廃線になると、一番困るのが通学手段、交通手段を奪われる学生や高齢者などみずからの移動手段をもたない交通弱者といわれる人々だ。職場と住居の分離が徹底し、郊外に公営住宅や民間住宅の開発が進み、学区制の撤廃など通学圏の広域化も合わせ生活空間が膨張してきた今日、交通は市民の基本的な生活条件の一つともなっている。  

 県の交通関係の財政支出の中で中心となっているのが、京奈和自動車道などの高規格道路から国道・県道をはじめ、港湾、空港などの幹線網整備とその維持費、環境保全のための対策費など。鉄道については直接的な予算措置は駅舎のバリアフリー化や紀勢線へのトイレの設置、などが近年見受けられる程度です。鉄道についても、生活交通の手段として、また良好な社会資本として町づくりをすすめる上での鉄道の価値を見出し、交通ネットワークづくりの動脈として位置づけていくことが必要ではないか。

 廃止されようとする南海貴志川線についても、いったん廃止されて放置されると新規開業には莫大な費用が必要となる。貴志川線は、90年という歴史のなかで地域の努力によって守られてきた財産であり、失ってしまうことは地域社会にとって大きな損失。良好な社会資本として残していくことを求める。

 貴志川線は利用客が減ったとはいえ、年間200万人近い人が利用し、輸送密度(1Kmあたり1日の平均輸送人員)はH14年度で、3129人。中小鉄道の全国平均での収支バランスのとれる点は輸送密度2000人以上が目安なので、存続は十分可能な路線だといえる。貴志川線と平行して走る県道秋月海南線、ピーク時の通行台数は時間あたり686台、走行速度時速13Km、県道和歌山橋本線はピーク時810台、走行速度23Kmとたいへんな混雑ぶりで、バス転換はおよそ非現実的だ。鉄道を存続させもよりの駅への駐車場整備や駅を中心とした町づくりがすすめば、貴志川線利用者も増えることはまちがいない。

 県の交通政策の基本方針はどういうものか。高速道路を軸とする幹線整備に重点が置かれているようだが、高齢化社会への対応や地震など災害に強い町づくりをすすめるためにも、都市計画街路、バイパス道路、踏み切りの改良、歩行者・自転車のための段差の解消や歩道整備、地方道の整備など日常生活を重視した日常生活重点型の交通政策がより求められてきているのではないか。また交通弱者といわれる高齢者、障害者、学生や子供などの交通権確保に対する県の責任をどう考えているのか。

◆木村知事
 「ひと・まち・環境にやさしい交通」の実現を目指し、交通環境のユニバーサルデザイン化、環境負荷軽減の推進、安全性、利便性、快適性を高める「ITの活用」を交通政策の基本としている。
これからは既存交通基盤の効率的な利用と、環境問題への対応やまちづくりとの調和など、交通分野に求められる社会的要請への対応を図らなければならない。


藤井−南海貴志川線のこれまで果たしてきた地域での役割、位置づけをどのように考えているのか。貴志川線廃線問題への対応で県の果たす役割をどのように考えているのか。環境、福祉、町づくり等の観点から社会資本としての鉄道交通の位置づけと県の役割を明確にすることが求められているのではないか。

 鉄道の政策的優位性について、鉄道の果たす便益性、便利で利益があるということについてどのように評価しているのか。地域における社会基盤としての鉄道の価値をどのようにして一般的にではなく具体的に認識していくのか。

安全かつ確実な輸送サービスの提供を受けるという利用者が享受する便益、環境やエネルギー消費での優位性、駅周辺の土地利用計画、道路混雑の緩和、など社会にもたらす便益性を明らかにしていくことが必要。便益性評価の手法については、国土交通省運輸局の鉄道プロジェクトの費用対効果分析マニュアルをはじめ定量的手法がすでにいくつか確立しており、金額に表していくことができる。鉄道を残すかどうか、採算性が判断の基準にされがちだ。それも大事な問題だが、自治体が判断する上で、鉄道のもたらす社会的、経済的便益性もきちんと評価しておく必要がある。

◆野添勝企画部長
 南海貴志川線は、通勤、通学、通院など多くの人に利用されており、地域に密着した生活交通路線だ。鉄道のもつ定時性や大量輸送というメリットを発揮するという点で、貴志川線の存在は大きい。現在県は、国、和歌山市、貴志川町、および南海電鉄を交え、存続について協議を重ねている。地元の意向を十分に踏まえ、住民の生活交通確保のため、できる限りの協力を行いたい。鉄道は定時性、安全性の面で優位な交通機関であり、環境面、エネルギー消費面でも二酸化炭素排出量は、鉄道は自家用自動車の9分の1と、地球環境にもやさしい交通機関だ。単に採算面だけでなく、あらゆる角度から総合的に判断する必要があると考えている。


藤井―鉄道の存続を求める25万筆を超える声からしても存続を前提にした協議を急ぐべきではないか。貴志川線を鉄道として存続させるための方策を検討していくための庁内組織づくりについてどう考えているのか。

◆木村知事
 地元の意向を十分に踏まえながら、地域住民の生活交通確保のため、適切な対応を図っていく。



●村岡キミ子県議の質問

1、雇用問題について

 最初に、雇用問題について何点か質問をいたします。

 知事の「政策宣言」は、「4年間で延べ1万5千人の雇用の場を確保」するとして、「きめの細かい無料職業紹介事業に」取り組むとしているが、和歌山県の完全失業者は3万人を超えており、常用雇用を求めながらパートやフリーターとして働く人も多数いるのだから、長期にわたって失業や半失業状態にいる方が安心して働ける場を得るにはこの目標は少なすぎる。1万5千という数値目標の根拠は何か。

◆木村良樹知事
 県でも目標をもって最大限の努力をしていくということで1万5千人の雇用創出目標をたてたが、この目標数値にとらわれず、雇用創出効果に軸足をおいた総合的・重点的な事業展開により雇用の確保をはかり、県民の生活安定と生きがいをもてるような施策を進めていきたい。


村岡―目標は「延べ」の数字なので、緊急雇用のような短期間の臨時雇用も含まれるとすれば、実際に働く場を求めている県民の雇用をつくるということでは、見かけ倒しになる可能性がある。4年経って、実際に雇用の場が増える目標にする必要があるのではないか。

 雇用の確保と県民のくらしや福祉、教育条件の向上につながる施策を結びつけたものを雇用拡大の柱にすることが大切だ。それは、特別養護老人ホームや介護施設の充足、医療現場での看護師不足の解消、障害者施設や在宅支援体制の充足、30人学級などの子どもの教育条件の改善、自然環境や森林保全のための要員配置、農業の振興による県土の保全、防災力の向上、など、こうした分野での雇用の拡大は、若い人が地元で働ける場と県民の暮らしを豊かにするものだから、ぜひその方向で計画を策定されることを求める。

◆石橋秀彦商工労働部長
 重要なことは、雇用の場の確保だと考えている。1万5千人の雇用創出計画は、産業振興のための技術開発や経営支援、企業誘致、観光や農林水産業当の地域資源を生かした雇用創出策を図るとともに、福祉や教育等の施策も含め、全庁的な事業について各分野で雇用創出効果の検討を行っている。年内の早い時期の策定に向け取り組んでいる。


村岡―厚生労働省の04年版「労働経済の分析」では、03年のフリーターが217万人、15才〜34才の若年層のうち仕事をせず、学生でもなく、職業訓練もしていない無業者(ニートと呼ぶ)が52万人にのぼることが明らかにされた。全国で52万人ならば、和歌山県でも4千人前後は存在するのではないか。多くの若者が社会の中に出ていけない状態に追い込まれている。若者が社会へ出る準備のできる場、自分の思いを話せる場など、県としてどう対処していくのか。

◆石橋商工労働部長
 若年層からのキャリア教育やインターンシップの充実等による職業意識の醸成、ジョブカフェでのカウンセリングの強化や、これと連動した職業訓練等により、就職への自信や意欲を喚起していくことが肝要だと考えている。労働局や関係機関と連携を図りつつ適切な支援に取り組む。



村岡―先週、近畿の高等学校の教職員組合が高校生の就職黒書というものを明らかにした。黒書は女子の事務職が依然として少ないとか、「賞与なし、交通費なし、社会保険なし」という企業からの求人があるとか、「就職の学校紹介業務は本来の教育活動を圧迫するほどになっている」「対生徒、対担任、対企業、就職関係行事の計画・実施、書類作成等等超多忙、時間軽減・人員配置・時間的配置等を強く望み」たいと訴えている。一方では、就職支援教員(ジョブサポートティーチャー)が配置されているので充実した仕事ができる、就職アドバイザー制度の継続を強く希望するなどの声が寄せられている。ジョブサポート、ジョブサポートティーチャー、就職アドバイザーなどの制度については、なんとしても守り充実していくことをのぞむ。

◆小関洋治教育長
 そうした人材の確保に努め、就職支援に係る取組を進めていきたい。


村岡―
和歌山労働局のまとめた昨年6月1日現在の障害者の雇用状況は、1.8%の法定雇用率が適用される従業員56人以上の民間企業では、常用雇用労働者数が5万1千人余り、常用雇用の障害者が993人で、雇用率は1.95%となり、全国平均の1.48%を大きく上回っているが、県や地方の教育委員会関係での雇用率は、2%の法定雇用率を下回る1.26%。なぜ低い雇用率になっているのか、達成するためにどうしていくのかか。

◆小関教育長
 公立学校および教育委員会事務局の本年度の障害者雇用率は、県立学校が2.16%、委員会事務局が2.20%だが、小中学校教員は1.04%で、教育関係全体としては1.56%。主な要因は、教員採用検査で教員免許状の取得が用件なので、障害のある受験者数が極めて少ないこと。現在は点字問題を使った受験や手話による説明の実施などの配慮をしている。法定雇用率が達成できるよう努力していく。



村岡―障害者雇用率は民間企業では56人以上を雇用している企業が対象なので、55人以下の企業での障害者雇用の実態はこの調査では明らかではない。厚生労働省の障害者雇用の実態調査によれば、全国で身体障害者数は平成13年度 約325万人にたいし、平成10年での常用雇用は約40万人。知的障害者は平成13年 45万9千人にたいし、常用雇用は平成10年で6万9千人。精神障害者数は平成11年では204万人にたいし、常用雇用は平成10年で約5万1千人。いずれもごくわずかな雇用だ。

 和歌山労働局によると、県内では障害者の求職申し込みが平成13年で690人、14年で722人、15年で692人で、就職件数は各年とも200人台。
紀の国障害者プラン2004では、「障害のある人の雇用に努める企業等を支援し雇用促進を図るため、県における物品調達に係る入札の実施等について、障害者多数雇用事業所等への優遇措置の導入を促進します」と書かれている。平成11年10月22日に当時の労働省から「障害者多数雇用事業所に対する官公需の発注の配慮について」との通達が出され、平成14年10月30日にも、厚生労働省から「障害者を多数雇用する事業所、授産施設等に対する官公需の発注等の配慮について」では、@官公需の発注について配慮をお願いしたい、A障害者を多数雇用する企業への支援の方策について検討することB授産室等の製品について、庁用物品としての調達、各種行事や大会等における記念品としての活用なども含め、その優先的発注など積極的な活用をはかること、C授産施設等のおこなっている役務提供の活用、の4点について配慮を求めている。県はこの通達をどのように受け止め、対応してきたのか。

◆石橋商工労働部長
 重要な課題だと考えている。各市町村等を対象に趣旨を説明し理解を求めるとともに、庁内各部局でも前向きな取組が行われてきた。今後とも、より一層の支援の方策について検討する。

◆宮地毅総務部長
 通知も踏まえ、昨年度から授産施設等が物品等を調達しようとするときは、適正な予算執行の中で、各所属が随意契約で直接調達できるよう物品調達事務規定の一部を改正して活用を図っている。

◆嶋田正巳福祉保健部長
 知事部局、教育委員会、各振興局等で開催される行事やイベント等の情報収集を行い、授産製品の活用に努めている。昨年度、授産施設等で扱う商品を掲載したホームページを社会就労センター協議会に委託して立ち上げ、市町村に対しても授産製品等の積極的な活用をお願いした。



村岡―ある福祉工場では、県立医大の白衣のクリーニングを毎年三月に入札する。落札できれば、月に40万円程度の仕事を確保できるが、もし取れなかったら、と緊張して入札前日は夜も眠れないほどだそうだ。県や行政機関が、障害者の多数雇用事業所や授産施設、福祉工場の仕事を一定確保するための制度をつくる段階になっている。共同作業所や授産施設の製品の開発や販路の確保の問題だが、作業所が生産できる製品や行政が希望する製品を調整する部署をつくれば、かなりの仕事を確保することができるのではないか。長野県では、障害者多数雇用事業所や共同作業所が提供できる物品、役務については、それらの事業所と随意契約することや、印刷物については、障害者多数雇用事業所等と優先的に随意契約するという「障害者多数雇用事業所等からの物品等の調達に関する要綱」を定め、昨年6月から運用を始めている。県として、印刷や清掃、クリーニング、記念品などで、福祉枠とでもいうようなものをつくり、安定した仕事を障害のある方に確保するための要綱のような規定をつくってはどうか。

◆宮地総務部長
 障害者雇用の安定や就労の促進を図るため、障害者多数雇用事業所等への優遇措置についても現在検討をすすめている。




2、障害者問題について
 
 ことしの当初予算で心身障害者のグループホームへの補助金が削減された。
和歌山市の施設分4ヶ所、4百万円を削ったものだが、それぞれの施設では県の補助金が削られただけで、和歌山市からの補助は増額されないまま運営を続けている。中核市だから市がだすのが当然、県は撤退するというのでは、あまりにもホームの運営実態をみない冷たい態度だ。

 あるホームでは、2つのホームで12人の若者が生活している。施設長夫妻と娘の3人で運営している。毎日の掃除、洗濯など基本的な生活習慣を身に付けられるよう留意している。食事づくりや生活指導などで忙しく、体はいくつあっても足りないそうだ。入所者の負担は月6万円だが、施設長はじめスタッフは無給に等しい状況。県の補助金があったときでも、人を雇うのは無理だったそうだ。ホームの近くには作業所があり、ホームの若者の多くがここで仕事をしている。ホーム以外から来る人をふくめて作業所には24人いるが、毎日だいたい12、3人程度が通ってきて、割り箸や歯ブラシの袋詰めや、ビーズの枕づくりなどをしている。給料は、多い人でも一日に8百円にもならない。自立への支援として、補助金カットについては再考を求めたい。

◆嶋田福祉保健部長
 障害者の自立のためへのご苦労は認識しているが、県と中核市の責任分担の観点からも、中核市である和歌山市の政策判断が基本になる。全国的にも中核市に対する同様の補助が行われていないのが現状。


村岡―
厚生労働省の精神保健福祉対策本部はこの9月、精神保健医療福祉の改革ビジョンを決定。この改革の基本的考え方は、「入院医療中心から地域生活中心へ」というもの。社会的入院を余儀なくされている人、つまり受け入れ条件がととのえば、退院が可能とされる人は全国に7万人あるといわれており、今後十年間でこの解消をはかるとしている。この人たちの地域生活を支援する体制の強化がいま求められていることは間違いない。厚生労働省が社会的入院の患者数を初めて明らかにしたのは一昨年末にすぎず、これをあらたな第一歩として、多くの患者が地域でくらし、働けるようサポートしていく施策の前進が強く期待される。

 改革ビジョンでは、住まいの対策は地域生活支援体制の第一歩として重視している。授産施設から退所する人は利用者の約2割、就労できた人は約2割、常用の仕事につくことができたケースは約6%にすぎないとのべ、「就労支援、自立支援等の機能を高めることが急務である」と指摘していることは重要だ。
昨年度末の県内の精神科入院患者数は2334人。「紀の国障害者プラン2004」では入院患者のうち、受け入れ条件がととのえば退院が可能な人は511人あるとされ、このうち400人について、退院し、地域生活を始めてもらうとしているが、それ以外の人は介護施設での対応が必要だとしている。400人のうち、生活支援については、生活訓練施設、福祉ホームB型、グループホームの3つの施設で対応する方針が示され、就業支援については、通所授産施設と小規模通所授産施設を整えるとされている。

 このプランについて、精神障害者の支援にとりくんでいる方々からは、もっとスピードアップをしてほしい、福祉圏域ごとに目標をもって地域格差が生まれないようにしてほしいという声が寄せられている。それだけに、退院にともなう社会復帰施設等の整備と人的体制確立が急がれなければならない。プランでは、400人の社会復帰をめざして、十年間で生活訓練施設を2ヶ所40人、福祉ホームB型は10ヶ所、200人が入所できるようにして、残りの160人分はグループホーム40ヶ所を整備するとなっているが、施設整備を考えるとき、退院して社会復帰をめざす人だけを対象にしては不十分だ。すでに退院し、親元へ戻っていたが、親が亡くなるなどして、1人になってしまった人、あるいは1人ぐらしをしていたが、不安なのでグループホームへ移りたいというケースもある。グループホームは現在12ヶ所あるが、もっとニーズにこたえた施設数へと、目標そのものを増やしてほしいという願いが寄せられている。プランでは、5年後には20ヶ所、10年後には40ヶ所増やすとなっているが、その手立てはどうとるのか。

◆嶋田福祉保健部長
 現在12箇所のグループホームが設置されている。できる限り早く目標が達成できるよう努力していきたい。計画期間中でも、社会情勢の変化、地域のニーズ等を勘案の上、必要に応じ、計画の調整をおこなう。


村岡―
さきの6月議会で藤井健太郎議員は、知的障害、精神障害をもつ方は単身での入居が認められないことを見直すべきだと主張した。それにたいし県土整備部長は、グループホームとしての県営住宅の利用については可能な限り促進をはかると答弁したが、単身入居については公営住宅法の施行令では規定されていないということだった。

 県営住宅をグループホームとして利用することを促進するという点では、実際には要綱が障害になっている。社会福祉法人等による県営住宅の使用等に関する要綱では、申し込みができる住宅の要件として、1年以上空き家になっていること、直前3回の定期空き家募集において、応募倍率がおおむね1倍以下のものなどとなっています。県営住宅入居申し込みの倍率が直近の7月には10・64倍となっているもとでは、現実にはグループホームとしては利用できない要綱になっている。可能な限り促進するのなら、要綱を改正するべきではないか。和歌山県では、昨年十月からことし三月まで、法人のグループでの入居実績はあるということだが、改革ビジョンもふまえ、単身入居もすすめるために公営住宅法の施行令の改定を国へ求めるなど、よりいっそう積極的な対応を求める。

◆酒井利夫県土整備部長
 社会福祉法人等によるグループホームの利用については、事例や実績を積み重ねるとともに、県営住宅の需給状況等に応じ、可能な限り利用の促進を図っていきたい。精神障害者の単身入居については、自立支援の観点から関係部局と連携しつつ、将来の研究課題としたい。


村岡―精神障害者のグループホームには、ヘルパー派遣ができない。知的障害者のグループホームには認められているのに、なぜ区別されているのか。知的障害者のホームでは、重度の障害の場合には運営補助金の加算がある。精神障害者の場合にも考慮されるべきだ。国への要望や県独自のとりくみを考えていただきたい。

◆嶋田福祉保健部長
 精神障害者グループホームへのサービスや制度の充実を国に働きかけていきたい。



村岡―
社会適応訓練は、通院中の人が最長3年間事業所に通い、作業能力や対人関係を取り戻していこうというもので、年間の利用人員の上限は30人。一般就労につなげていくために多くの人による利用が求められる訓練制度だ。事業所には一人当たり、一日2千円の助成があり、今年度上期の実績は17事業所で30人が訓練している。受け入れてくれる事業所をふやすことが大切になる。1996年度末には16の協力事業所があったが、昨年度末までの目標40にたいして、ことし4月1日現在では29事業所しか登録がない。民間企業、あるいは共同作業所関係の売店、また市や町の社会福祉協議会といったところが協力事業所になっている。事業所の所在地は、管轄保健所別にみると田辺が19で、6割を占めている。一方で、和歌山市は3事業所、しかも2ヶ所は共同作業所関係。なぜ地域によって、これほどまでの格差が生まれるのか。人口の多い和歌山市で協力事業所を増やす努力と、訓練できる人数枠を30人にとどめず、拡大することを求める。

◆嶋田福祉保健部長
 精神障害者社会適応訓練事業への協力事業者が少ない地域を重点とし、事業者、県民の精神障害等への理解の促進や、協力事業所の開拓に努める。平成15年度より人数枠を26人から30人にふやしたが、一層の拡大について今後検討する必要がある。



村岡―就業・生活支援センター運営事業は、精神障害者のみならず、身体、知的の障害者をふくむ事業。就職や職場への定着が困難な障害者を対象に、身近な地域で就業及びこれに伴う日常生活、社会生活上の支援を一体的におこなう施設。県知事が指定する民法法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人等がになっている。昨年度中に運営されたセンターは全国で45ヶ所あり、今年度末には80ヶ所に増やして、来年度も大幅に増やす方針ときいているが、「紀の国障害者プラン2004」では、積極的な設置目標は示されていない。田辺市で運営が始まっているが、県のプランでは、福祉圏域ごとの設置といった積極的な目標が必要だ。

◆嶋田福祉保健部長
 障害者就業・生活支援センターは田辺市と和歌山市の二箇所に設置している。この活動状況や社会的ニーズ等を踏まえ、今後の設置計画について検討していく。



常任委員会質問と答弁の概要(和歌山県議会「常任委員会概要記録」より引用)

◎藤井健太郎議員(総務委員会)
◎村岡キミ子議員(福祉環境委員会)
◎松坂英樹議員(農林水産委員会)
◎雑賀光夫議員(文教委員会)

●総務委員会での藤井健太郎議員のやりとり

◎医大法人化のプロセスについて
◎県がいう「真の地方分権」について
◎コスモパーク加太について
◎南海貴志川線について
◎三位一体の税源移譲について
◎情報公開条例及び個人情報保護条例の一部改正について


【医大法人化のプロセスについて】

藤井:今回の2,037万1千円は財務会計のシステムに要する予算ということだが、6月議会での補正予算との関係は。

県:6月は、資金管理や人事関係等の制度構築の支援に関するもので、今回は財務会計本体の関係である。

藤井:6月と同じ業者に委託するのか。

県:国立大学の法人化に実績のある同じ監査法人に委託する。

藤井:5つの専門部会の議事録は作っておられるか。

県:記録はとっている。

藤井:プロセスがわからないと結果だけでは、内容がわからない。議事録は公文書ではないのか。公文書なら公開が必要ではないか。

県:作成したものは公文書と考えている。法人化は情報を公開するのが基本で、プロセスも含めて公開できるものと理解している。

藤井:法人化対応委員会は公開されているのか。

県:委員会は学内のあらゆる職種・職域から構成され、会議については学内の教職員に公開されている。各委員は内容を職場に持ち帰り、報告して積極的な意見を持ち寄り、委員会に反映させている。

藤井:医大法人化のプロセスを誰が見てもわかる形で残してほしい。それを見て、法人化のことを判断したい。議事録を公開し、住民や議員が意見を出せる場をつくってほしい。

県:プロセスにかかるものは残している。ご意見の趣旨に添うよう努めたい。

藤井:専門部会がどのように開かれているからわかる進行表はあるのか。

県:進行表に沿って運営している。

藤井:<要望>プロセスがわかるようにきちんとしておいてほしい。


【県がいう「真の地方分権」について】

藤井:政策審議室関係の説明の中に「真の地方分権」とあったが、「真の地方分権」とは何かということを教えてほしい。

県:それぞれの方の思いがあると思うが、一般的に言われるのは、自治体が独自に主体性を持って、ものごとを進め、地域の住民サービスを行っていくということであると考えている。
 財政的な面で県や市町村が自立し、住民に近い自治体が、独自の考え方で予算を伴って、施策を実施していけるようにしていくことが三位一体改革の一つと考えている。

藤井:「真の地方分権」とは、どういうものであり、それを確立するためにはどういうアプローチが必要であり、国や地方がどのようにすればよいのか、文章で書いたものが見当たらない。市町村においては、財政面から市町村合併が押し付けられているが、どうすれば地方が自分で財政を律して独り立ちしていけるという方向になっていくのか。「真の地方分権」の中身がどんなものであるか我々に示されていない。

県:県のあり方、市町村のあり方がこうあるべきという全体の話であると思う。一例として、国の補助制度を利用する場合、県は国の基準にあわせ、採択をお願いしていくということになる。国は国がすべき事務に専念し、地方に任すものは地方に任せるべきであると知事はよく言っているが、道路なども、県や市町村が地方の判断で実施できるようにするためには、一般財源として持っていれば、国の基準によらなくてもできることとなる。そういうことで、地域の自主性に基づいた施策を行うことができれば、その部分での「真の地方分権」ができると思う。

藤井:「真の地方分権」について、まとめたものがあったら教えてほしい。まとめたものがなかったらつくってほしい。

県:地方分権研究会、21世紀臨調、全国知事会でも様々な議論があったことはご承知のとおりである。理念的に「真の地方分権」に向けて各都道府県、地方の集まりがどういう形が良いのかということを現在、議論している過程であると理解している。
 三位一体改革から議論がされているが、「真の地方分権」についての理念はあっても具体的な姿は明確になっていないと理解している。したがって、これはある程度の期間をかけた議論が必要であり、たとえば、21世紀臨調であれば、国民的議論にもっていきたいという考え方があるので、そういった中で徐々に明らかになっていくものと考えている。

藤井:知事は、マニフェストを示し、自立していこうということが「真の地方分権」であると言っている。県当局としては、何を「真の地方分権」として目指しているのかという理念の部分をはっきり答えないとならないと思うがいかがか。

県:和歌山県の考える地方分権については、県民自治であるとか地方の自立とか地方の意志決定に任せられるような仕組みをつくっていくということをマニフェストに明らかにしている。ただ、「真の地方分権」という話になると、国でも地方制度調査会で議論されており、また、様々な知事連合でも議論されている。さらには、道州制の研究会もスタートしたところである。和歌山県だけの地方分権ということもあるが、「真の地方分権」については、全国的な見地から議論されていくべきものであると考える。

藤井:「真の地方分権」について、地方分権そのものは否定しないが、和歌山県での「真の地方分権」の姿を住民の皆さんと一緒に確立し、こういう和歌山県をつくっていこうと議論していくことが必要だと思う。
 政策審議室が中心になると思うが。

県:和歌山版の「真の地方分権」について庁内的に研究しようと思う。



【コスモパーク加太について】

藤井:カゴメと県との土地賃貸契約は秋頃と聞いていたがどうなっているのか。

県:一応10月を目処に当初予定していたが、造成工事等が若干遅れ気味で、今のところもう少しかかる見込みである。また、現在、カゴメ(株)では地元法人の設立についても検討している。

藤井:これまで議論してきたが、1uあたり100円で賃貸することに変わりはないか。

県:今のところそういうことで進めている。

藤井:賃貸期間は20年間ということであったが、価格については20年間それでいくのか、それとも経済状況等を鑑みて変えていくのか。

県:特段の経済状況の変動がなければ、基本的には1uあたり100円でいく。

藤井:経済状況の変動があればそれに合わせて変えていくか。20年間という契約がいかに長いかと思う。
 1uあたり100円でいくというが、企業局などは土地造成後の鑑定評価額で賃借し、県の土地の売買や賃貸については企画部ではないが審議会を設置している。土地の価格審査を行うことはないのか。

県:得に審議会等は設置していない。

藤井:土地の売買については審議会を設置しているのか。

県:大規模な事業などの場合、県土整備部で行っている。

藤井:県が鑑定評価額で開発公社から借り上げ、その価格の2割くらいでカゴメに貸すわけになるが、その差額が県に損害を与えることになりはしないか。県民側から見ると、余りにも適正な範囲から離れている価格ではないか。

県:コスモパーク加太については、県としての大きな懸案であり、大きな課題である。その中で議会には検討委員会を設けていただき、コスモパーク加太を整理していく方針をいただき、それに沿ってきている。
 1uあたり100円ということについては、経済波及効果等々を勘案した、和歌山県の将来を考えた政策判断であると認識している。

藤井:県の政策判断であるというが、それが県民に損害を与えない許容範囲内の金額であるという判断であると理解させてもらう。契約を締結したら契約書を参考に渡してもらえないか。

県:契約を締結したら議員各位にお渡しさせていただく。

藤井:残地部分の活用についてであるが、現在第二期の土取工事を行っているが、採石が済んでも、広大な土地を県が借り続けるわけで、今後とも県が全力で利活用に取り組むというが、具体的にはどうなのか。

県:一つは、カゴメ誘致用地として、残りは、企業用地、防災用地として活用していく。

 企業用地については、パンフレットを企業に配布して、誘致を呼びかけていく。防災用地についても、等南海大地震関係について、危機管理局で被害想定などに取り組んでもらっているが、それに対してどのように対処するか協議していく。

 

藤井:最初の時から、防災や企業誘致と言っていたから、それ以降どう進んだのか聞いたのだが、今のところ協議中ということか。

 

県:具体的な話はまだ進んでいない。

 

 

【南海貴志川線について】

 

藤井:貴志川線の問題であるが、和歌山市・貴志川町とも鉄道存続を第一義的としている。県議会答弁では、「地元の意向を踏まえ」となっていたが、地元の意向は鉄道存続である。この中で、具体的な中身の協議をしていかないと、前に進まない。どのようなスケジュールを考えているのか。

 

県:現在、国や南海電鉄を含む関係5者で協議を重ねている。この中で、運営形態の検討、人件費の見直しや種々のコスト縮減等について検討を進めているところである。できるだけ早く、どのような方向にするかを詰めていきたいと考えている。

 

藤井:<要望>5者協議には南海電鉄が入っており、話しにくいことがある。県・市・町の行政レベル3者の中で、採算性のみの判断でなく、鉄道が持つ便益性、インフラ整備などとの位置づけ、また、利用者をどう増やしていくか、まちづくりをどう進めるのか等を同時に進めていき、最終的な判断をする必要がある。この問題を県から投げかけていかなくてはと考えている。茨城県では日立電鉄廃止にあたり県が費用便益を算出するなど中心的な役割を果たしてきたが、和歌山県でも、県が中心となっていただきたい。

 

 

【三位一体の税源移譲について】

 

藤井:三位一体の税源移譲に関して、個人住民税の10%比例税率化があるが、本県への影響はどのようなものか。

 

県:県と市町村合わせて約200億円の増収となり、県と市町村の割合が、現在3:7である。

 

藤井:それでは、県財政への影響はどうなるのか。

 

県:今の試算では、県、市町村合わせた県全体での削減対象の補助金の額は、約280億円となるが、対して個人住民税のフラット化で移譲される税源が約200億円となる。

 さらに、交付税措置されるものがある。補助金の削減対象になる事業も、補助金がついていた時と同じ様な事業費でやっていては、意味がないので見直しを行っていく部分があるかと思われる。また、補助金がなくなった部分については、起債で賄えることもあろうかと思われる。それでも、削減される補助金と移譲される税源との差額が生じるかもしれないが、今後の決まっていく内容を注視しつつ考えていく。

 

藤井:補助金削減額と税源移譲額の乖離について、今の段階でのきちんとした試算はしていないのか。

 

県:補助金削減対象額の280億円については、地方6団体の削減案に基づいて試算したものであり、税源移譲額については、3兆円に基づく試算で、先に本県から出した試算と変わっておらず、それ以上の試算は今のところだしていない。今後、年末まで刻々と状況が変化していくので、新たに試算を出すかどうか今のところ明言できない。

 

藤井:試算の中、今、県財政ではっきりわかっていることは。

 

県:先ほどお答えしたことしか解らないのが現状である。国の条件が解らない中で地方6団体にも意見を求め、地方6団体も今解る前提のもとで意見を出しており、不透明な部分が大分あるので、交付税もきちんと確保していただくような主旨を出しているし、今はお互いの意見を主張し合っている状況である。

 

藤井:それでは財政構造改革プログラムは、どういった試算に基づくものなのか。

 

県:その時点でわかり得る情報に基づき、財政運営に携わる者として最悪の事態も想定しながら、策定していく必要があると考えている。今までのプログラム同様、策定時の情報というものは不確かなものなので、実施については、変化した状況を踏まえながら行っていく。

 

 

藤井:真の地方自治の内容はどういうものか。経費削減が言われる中で、果たして地方自治が確立できているのか、地方分権が進んでいるのか。

 

県:日本憲法により地方自治という制度はできたが、実態は、機関委任事務により知事や市町村長は国の機関であり、国の下請的なことを行ってきたところ。地方分権の最初の改革で、事務の面で、地方が自分で判断できる形になってきている。

 しかし、財源の面では、国が税の大部分をとって、地方に補助金という形で分配しているのが現状である。これでは地方自治といえるのか。目下、財源面でも地方が自分の仕事を自分で判断するという目標の途上にあり、状況は混沌としているが、今後、地方自治のあるべき姿を見失うことなく努めていきたい。

 

藤井:<意見>これは決して抽象的な議論ではない。分権社会とか地方自治の確立という中で、今どういう過渡期を迎えていて、こういう目標に向かって進んでいるんだという話をきちんとできる様にしておかないと。

 

 

【情報公開条例及び個人情報保護条例の一部改正について】

 

藤井:情報公開条例及び個人情報保護条例の一部改正について、地方独立行政法人は実施機関と同様に取扱うこととなっているが、指定管理者は、公の施設の管理を実施機関から指定管理者に変えていく場合に、情報公開条例では、「努める」と表現されており、情報公開制度が後退するニュアンスになっているが、条例上はどうなるのか。

 

県:指定管理者制度では、従来の管理の委託の方法から、施設の使用許可などの今まで行政が行っていた業務が指定された管理者に移ることとなる。その際、個人情報保護については、条例上の義務規定として、契約の中で、取扱いを定めることとしている。情報公開については、出資法人等と同じように、条例上で努力義務を課して、要綱で情報公開を実施していくことになる。

 

藤井:情報公開について、努力義務の規定では、情報公開の流れの中で後退することにならないのか。

 

県:民間を含む指定管理者が、情報公開に関して、出資法人等と同様の取扱いをすることとなるので、後退とはならない。

 

藤井:公の施設の管理が外郭団体から民間の指定管理者に変更していった場合、条例の規定が、努めるとなっている以上、今までより後退することになるのではないか。

 

県:公の施設の管理について、直営の施設と指定した民間が管理する施設とに分かれる枠組みの中で、民間が管理する施設については、委託を受けた出資法人等の情報公開と同様の取扱いをするので、従前の取扱いと変わることはない。

 

藤井:県直営の施設が指定管理になった場合に、情報公開は内容的には変わらないのか。

 

県:指定管理者制では、県という実施機関から離れることとなるが、出資法人等にあっても要綱を定め、同等の情報公開を実施しているので、情報公開制度の後退とはならない。

 

藤井:条例ではなくて、要綱で規定するけれども、県直営の公の施設と同じ条例の内容で情報公開をきちんと実施しなくてはいけない。努めるものとするとの努力規定になっており、情報公開条例に規定する実施機関の義務規定とは違う。

 

県:出資法人等の情報公開の決めぶりにあわせて、同じような表現で努めるものとしているが、その実施に関しては、県が責任をもって指導するということである。

 

藤井:公の施設で、実施機関に代わって、民間業者の判断により、情報公開するかしないかということを決めるのではなくて、県としては、県の情報公開条例に準拠した形で公開してもらう方向であると理解してよいのか。

 

県:はい。



●福祉環境委員会での村岡キミ子議員のやりとり

 

村岡:看護師養成所2年課程(通信制)に関して、知事マニフェストでは平成20年度までに准看護師から看護師へ700人移行させると明言している。また、アンケート調査結果では約1,000人が入学を希望しているが、これらについて実現可能な数字なのか。

 

県:看護師養成所2年課程(通信制)は1学年250名を予定しており、3年間で750名の移行教育が可能。決して不可能な数字ではない。

●農林水産委員会での松坂英樹議員のやりとり


◎食育について
◎しいたけ生産施設の予算減額について
◎トマト工場について

 

【食育について】

松坂:みかんの学校給食への提供について、うかがう。食育の予算が減っていると2月の委員会でも質問したところであるが、昨年度は和歌山市内の小学校等に、今年は県下全ての小学校等にみかんとパンフの配布をするということで結構なことである。

 カンキツ全国大会でも食育の重要性を言っていた。国の補助事業の制約もあると聞いているが、予算と取り組みの内容を教えて欲しい。

 

県:予算的には昨年より少し増えている。みかんの提供については、県下のJAにお願いし、県としては、パンフレットを作成して配布するなど一体的に取り組むことにしている。

 

松坂:県として取り組むのであれば、子供達に給食の時になじんでいただく観点から、予算を組んで生産団体等と連携して、取り組んでいただきたい。どの様な取り組みをしているのか。

 

県:2月に食育推進協議会を作り、学校関係者や生産者とも連携を図りながら進めている中で、県下の小学校等にみかんの一斉配布も行う。食育というのは、地域から進めるものであり、県下の一部の地域では、既に取り組んでいるところもある。県、市町村、農協の三位一体がまだまだ十分でないので、今後とも協力に進めて参りたい。

 

 

【しいたけ生産施設の予算減額について】

 

松坂:しいたけ生産施設の予算減額について、施設建設の中止理由については不透明のように思うがどうか。また、県の損害はないのか。他の生産者への影響はないのか。

 

県:事業の制度上、田辺市を通じての指導を行ってきたが、当初見込みよりも水道代が高くなること、シイタケ価格について若干の価格低下の恐れがあること、自然志向の食品であるシイタケについて水道を使っての生産は将来に向けて不安などがあるとの理由を挙げていた。そこで全体計画を見直し、地下水の検討や経費削減できないかなどの指導を進めてきたが、事業者の中止の意思が変わらなかった。他の生産者に対しては、こうした事業を希望する方はなく、とくに影響は無かったと考えている。県財政への影響については、国への本協議前であり、特に損失・影響はなかったと考えている。

 

松坂:損失・影響がなかったということは了解した。しかし、新聞紙上で見る限り中止理由が納得しがたいが、県として納得したのか。

 

県:県としては、重要な事業なので、このような形での中止は残念だと思っている。何とか実施できないかと、ぎりぎりまで指導を行ったが、時間的な制約の中で事業者の中止意向が変わらないことから、総合的に止むなしと判断した。

 

 

【トマト工場について】

 

松坂:トマトについて工事着工を迎え農家の不安が高まっている。市町村より意見書が出ていると言われるがどういう意見か。

 

県:8月30日に打田町議会より意見書が出ており内容は、次の三点となっている。販売価格が下落しないよう適切な対策を講ぜられたい。企業の農業参入については、県内農業者の意見を尊重すること。トマト生産者のみならず、農業全体の振興及び活性化を図ること。

 

松坂:(要望)機会を捉えてと言っても、農家は、県から説明に来ていないと言われる。引き続き説明、話し合いの場を設けるよう要望したい。

 

●文教委員会での雑賀光夫議員のやりとり

 

【高校再編問題】

雑賀:高校再編問題について、パブリックコメントの集まり具合はどうか。

 

県:メール、ファックス、郵送等様々な形で意見が寄せられている。まだ、郵送分が全て届いていないので、全体の集計はしていない。

 

雑賀:案を示してパブリックコメントで県民の意見を聞くというと、目新しい言葉で民主的できれいに聞こえる。本会議で野上中学校育友会の再編計画に対する見解及び取り組みを紹介した。一番意見を聞かなくてはならないのは、大成高校や古座高校の地元の意見である。県内から広く聞いたからそれでいいということではない。この高校をどうするんだという意見の聞き方は大事であるという感じを持っている。教育長の見解はどうか。

 

県:私も保護者と同じ立場であれば、委員と同じ受け止め方をしたかもしれない。今回の発表の仕方は初めてのやり方で馴染みが少なく方法もわかりにくいところもあったと思う。従来型のやり方に対する多少誤解があるのかなということが根底にあったのかと思う。原案を出さなければ議論できないし、趣旨・内容・見通しについて事前に関係方面に話はしたが、それ以外に幅広く説明し、意見交換し、理解してもらうことも重要であると考えている。出向いていって膝をつき合わせて意見交換している。

 

雑賀:案を示して意見を聞くという新しいやり方、案といえども、大成・古座高校にどれだけ打撃を与えたか。1年間延ばしても廃校になることが分かっていて、入学を希望する者がいると思っているのか。この打撃を修復するには、仮に大成高校を来年募集をするのなら、相当なテコ入れをしなければならない。

 

県:非常に重い意見と受け止めさせていただきます。

 

雑賀:小規模校であっても特色があれば残すとの話がある。分校を残すのでしょうと、大成・古座高校は残せないことはないと思うのだが。

 

県:きのくに教育協議会の報告書には分校は残すと記載している。分校は山間部にあり、教育の機会均等という観点から残すことにした。大成高校との議論とは少し違うと思う。

 

雑賀:きのくに教育協議会の報告には、通学の機会均等を保障するために小規模校を残すと書いている。地域の特色ある学校の場合には残す。分校だけに通じる論議でなく、古座や大成高校でもそういうことで残すことは、協議会の論議からいえば合うわけである。

 

県:特色ある学校であれば小規模校であっても残すという議論は分校だけではない。適正規模ではない学校を「特色ある学校」という観点で存続させることについては、学科編成を考えて、1学年3学級の紀北農芸高等学校の例がある。分校については、へき地での機会均等という意味合いもあるが、生徒が多様化する中で様々なニーズを持った生徒を受け入れたい、小規模校にふさわしい生徒がいる現実もある。そうした生徒の受け入れに分校も機能している。地域に密着した特色ある教育活動を展開している。大成高等学校の募集停止については、海南・海草地域において、海南・大成の両校を小規模校として存続させることがいいのか、適正規模の学校を1校確保し、学校の活力やクラブ活動の維持、大きな集団への適応力の育成等のいずれを選ぶかという中での苦渋の選択を行った。

 

雑賀:大成高校、古座高校も残してもらいたい。今回、教育委員会に対して批判の声が議会内外から挙がっている。きのくに教育協議会の意見を根拠としているが、きのくに教育協議会の委員の選び方が変わってきている。

 

県:委員の構成は、20名以内で時々のテーマに応じて県内外から学識経験者や学校教育、社会教育、PTA、経済界など様々な分野から委嘱し、それぞれの立場から意見を伺っている。これまで地域の実状や社会の動向を的確に踏まえながら、本県の教育改革に有益なご意見をいただいてきた。

 

雑賀:1期は、和教組・高教組の委員長、文教委員長が参加し、通学区の議論や小学区制の議論では異なった意見を併記している。2期は、教育長から求めがあって教職員組合が推薦した現場の教員が入っている。3期は、和教組・高教組・文教委員長も入っていない。IT教育に限定されたからと思う。4期はテーマが高校再編であるのに、現場からは校長しか入っていない。もちろん文教委員長も入っていない。こうした姿勢が今の混乱につながっていると思うが、教育長はどう思うか。

 

県:時代とともにテーマ・課題も変わっていく中で、より幅広い立場の方々からご意見を伺いたいということである。

 

雑賀:現場の意見を聞かない方向に変わってきていることが、きのくに教育協議会の扱いの中に現れている。高校再編がテーマであるのに文教委員会の代表をはずしている。その都度適切な人選をしているというがこれでは県民は納得しない。答弁はいらない。教育委員会は一般県民が傍聴できるが、開催日をどういった手段で県民に知らせているのか。

 

県:広報は実施している。

 :教育委員会は定例で開催しているので、報道関係には周知している。

 :月刊、週間の行事予定に載せている。定例の教育委員会は毎月第3火曜日に開催している。

 

雑賀:県民に教育委員会が開催される日時、内容等をわかるようにしてはどうか。教育委員会の玄関の掲示板に貼り出してはどうか。

 

県:教育委員会は1週間前に報道提供しております。教育委員会の周知については検討していきたい。

 

雑賀:(要望)きのくに教育協議会は公開で実施しているといっている。開催日時を周知してもらいたい。


―9月9日から29日まで