2009年2月県議会 藤井 健太郎 一般質問
  2009年3月11日

1. 新年度予算と景気対策、重点投資について
(1) 国の景気対策と地方財政
(2) 内需拡大に雇用と社会保障の果たす役割
(3) 県民生活を根底から支えるとりくみ

2. 雇用問題について
(1) 雇用をとりまく情勢の見通し
(2) 雇用創出施策について
(3) 雇用の確保と維持について
(4) 誘致企業での雇用について

3. 失業者の生活支援対策について
(1) 生活保護行政のありかた
(2) 生活福祉資金の利活用

4. 県職員の定数削減について
(1) 人事行政について
(2) 削減の内容、外部委託について
(3) 職員の過重労働と県民サービスは
(4) 常勤代替をすすめていないか

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1.新年度予算と景気対策、地方財政、重点投資について

《質問》 藤井健太郎 県議
   昨年12月議会では、経済状況の急激な悪化が進行しつつあるもとで、県政が県経済と県民のくらしをどのように守っていくのか、県民の暮らしの底が抜けることのないように、新年度予算が県民生活を底ささえできるような予算となるように要望いたしました。
   この間、国においては、08年度第1次、第2次の補正予算ならびに09年度予算において、財政措置12兆円、金融措置63兆円の景気対策が組まれたところです。今、新たにさらなる補正予算の議論が始まっているところでありますが、地方自治体としては、県民に役立つ施策については有効に活用することが望まれています。しかし、一方では、これらの景気対策と地方財政との関係がどのようになるのか。地方に財政的なしわよせがおよび地方財政の運営がいっそう厳しい局面に立たされるようなことになりはしないか、将来の県民負担の増大につながるようなことはないのか、という心配もするところです。
   県の新年度予算の姿を見てみると、前年度当初予算との比較では県税で143億円の減、地方交付税で147億円の減、かたや県債が240億円の増となっており、県債の歳入予算に占める割合が20%に及ぼうとしています。県債の中身を見ると、景気対策としての建設事業のための増額よりも、地方交付税の不足分としての振替や退職手当債など財源不足を補う形での県債への依存が高まってきています。09年度末では一般会計、特別会計合わせると県債残高が8,944億円と前年度より500億円の増で過去最高を更新し、基金残高は特定目的基金すべてを含めて614億円で前年度より131億円減少する見込みとなっています。地方交付税の振替としての臨時財政対策債は後年度元利償還額が全額交付税措置されるといいますが、地方交付税そのものは増えてきてはいません。新年度、国は地方財政対策で地方交付税を雇用対策等の推進費として別枠で1兆円準備したとしていますが、県の地方交付税そのものは前年度より減額の見込みとなっています。国の景気対策を含んだ新年度の県予算の姿、財政調整基金、県債管理基金の残高は行財政行革プランの範囲内となっているようですが、県債残高の増が後年度負担の増大へとつながり、地方財政の行く末をいっそう厳しいものにしているのではないかと思われます。国がすすめる景気対策や国の地方交付税の財源不足分を地方自治体の財政にしわよせさせることがあってはならないと思うわけですが、知事の見解はいかがでしょうか。
   とはいえ、県は県として、経済対策、景気対策に一生懸命取り組んでいかねばなりません。これまでの輸出を中心とする外需だのみの経済構造から内需の拡大めざす政策へのシフトがいわれていますが、そのためにも深刻な状況に陥りつつある雇用の安定化と国民のくらしのセーフティネットである医療・介護・年金などの社会保障制度が必要とする人に十分に機能していくことが、国民の将来不安をやわらげ、家計支出を応援していくことにもつながるものと思います。非正規雇用から正規雇用へと雇用の安定化をすすめることや社会保障制度での高すぎる保険料や自己負担金の軽減をすすめ、だれでもが安心して払える制度にしていくことが内需拡大に果たす役割は大きいものがあると思いますが、知事の見解はいかがでしょうか。
   知事は、新年度の予算編成方針で、和歌山県の強みを伸ばす取り組みと県民生活の根底を支える取り組みに重点投資する、とされていましたが、新年度予算では、特に県民生活の根底を支えるといわれる事業について、どのような考え方で、いくらの予算で、どのような事業が計上されているのでしょうか。中小企業制度融資のように前年度より継続している事業への上積みなど見受けられますが、制度改正をおこなったものや新年度の新規事業について、現下の経済情勢を見通して、これが県民生活の根底をささえることになると考えておられるものは何なのか、次の3点を知事にお尋ねします。
(1)国の景気対策と地方財政について


《答弁者》 知事
   現在の社会経済情勢に対応するための「緊急対策」につきましては、国の経済対策で措置された基金や交付金を最大限活用するとともに、人件費の抑制や事務事業の見直しなどの行革努力によって財源を捻出したところでございます。
   この結果、平成21年度当初予算といたしましては、収支不足額を新行財政改革推進プランで想定した範囲内に抑制するなど、景気対策のための財政出動と財政規律の維持との両方の目的を果たしたと考えております。
   しかしながら、国の厳しい財政事情等により、今後、仮に、例えば、交付税総額が縮滅されるようなことになりますと、本県のような交付税依存度の高い地方公共団体において、持続可能な財政運営を行うことが困難になり、最低限保障されるべき住民サービスですら維持できないことが懸念されるということでございますので、行財政改革の一層の推進は我々としてはもちろんなんですけれども、国に対して、所要の地方交付税総額がちゃんと碓保されるように、強く働きかけていく所存でございます。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2)内需拡大に雇用の安定化と社会保障の負担軽減が果たす役割について


《答弁者》 知事
   我が国経済が輸出や設備投資、個人消費の急激な減少という深刻な状況にある中、従来の対外輸出への過度の依存から内需主導による持続的発展可能な経済へと転換していくことが重要であります。
   雇用情勢の悪化による将来の雇用不安等から消費が低迷する状況にあって、安定的な雇用の維持・創出は消費の拡大に大きく寄与するものと考えております。
   このため、県といたしましても、中長期的には、働く場の維持・確保に多大な貢献をしている県内中小企業の活性化支援や、あるいは新産業の創出、さらには企業誘致など、様々な施策にしっかりと取り組むことが大切であると考えております。
   また、社会保障の関係では、ナショナルミニマムの観点から国が取り組むべきところも多く、社会保障の給付と負担の水準がどうあるべきかの国民的な議論が必要と考えております。
   県といたしましては、県民のセーフティネットの維持確保を図るため、常に状況を把握して必要な要望、提案を行ってまいりたいと考えております。


《再質問》 藤井健太郎 県議
   確かにこれから和歌山県の経済、全国よりも遅れてというか、自動車産業などでも裾の産業ですので、県内でも部品工場等がたくさんあり、そういった所がだんだん厳しい状況になってきているという話も聞いております。
   一刻も早く景気を回復させる、政治としての役割も大きいものがあろうかと思います。国に対して社会保障の負担軽減をなど申し入れていくというお話がありましたが、では県としてはどうしていくのかという問題があると思います。
   行革方針のなかで福祉医療制度の問題があり、12月議会でも取り上げましたが、現行制度を新年度は維持をするということになっております。これは知事の“英断”ともいうべきことであろうかとも思いますが、ただ、いくつか課題も残しており、精神医療がその中に入っていない。本来ならば自立支援医療として、一括して精神医療も福祉医療の制度に入れるべきであったわけで、それが取り残されているという問題があります。
   行革委員会で副知事から、「現下の厳しい情勢の中のあっては、県民の暮らしを守るために福祉医療制度で負担金を徴収することは見送った」という説明がありました。この厳しい経済状況が一定続くと考えられ、一刻も早く回復しなくてはいけないわけですが、それならば行革の中で県民の福祉医療・福祉事業に対して負担金を徴収する、新たに負担を課すというような方針については凍結、もしくは撤回をすることが必要ではないかと思うんですが、そこのところの知事の見解はどうなのか。


《再答弁者》 知事
   これについては、これから、例えば景気がますます悪くなる、そういたしますと助成の対象になっている方々にももっとシワ寄せが行くということになると思います。そういう意味で財政の方もますます苦しくなるであろうけれども、ますます苦しくなったそういう恵まれない助成の対象になっている人に負担を課すのはますます苦しくなる、ということだけは申し上げておきたいと思います。
   そういう苦しさをちゃんと理解する、そういう県政で有りたいと考えております。


《質問》 藤井健太郎 県議
(3)県民生活を根底から支える新年度のとりくみについて


《答弁者》 知事
   これは予算の説明におきましては、少し名前を変えて「安全安心を確保する取り組み」というふうに分類をしております。中身は一緒でございますが、県民生活を根底から支える取り組み、安全安心の取り組みについてのご質問でございますけれども、平成21年度予算におきましては、約230億円を計上いたしまして、重点的に実施してまいりたいと考えております。
   具体的には、特にこれまでいろいろ考えてまいりました高齢者対策あるいは地域対策、そういうものについて、新たに取り組みたいと思っておりまして、元気な高齢者が地域の困っている高齢者を支えるような仕組み作りとか、大規模災害時に孤立するおそれのある集落の通信手段の確保とか、医療従事者の働きやすい環境整備など新たな施策も含めまして、地域で安心して暮らせるための取り組みを展開してまいりたいと考えております。
   また、世界的な景気後退の中で雇用情勢が悪化していることに対応した「緊急対策」といたしまして、これはすでに実施しておりますが、「和歌山で働きませんか」他3つのプロジェクトの推進、あるいは予算の中でお願いしておりますが、「ふるさと雇用再生特別基金」を活用した雇用機会の創出などを行ってまいりたいと考えております。

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2.雇用問題について

《質問》 藤井健太郎 県議
(1)雇用をとりまく情勢の見通し
   厚生労働省は派遣、請負など非正規労働者の雇い止め状況について、今年の2月報告として昨年10月から今年の3月末までに2,316事業所15万7,806人が職を失うとの調査結果を発表しました。昨年12月報告の1,415事業所8万5,012人から約2倍増加する見通しとなっています。本県においては、2月報告では50事業所524人の見込みとなっていて、昨年12月報告の12事業所313人から1.7倍、職を失うであろう人が増えています。厚労省の調査報告は年度末に向けて職を失う人が増えつつあることを示しています。また、派遣業の業界団体は製造業だけで派遣や請負労働者が全国で3月末までに40万人失業するとの見通しをたてているとの報道がされております。
   県では、年度末に向けて県内の動きをどのように把握されているのでしょうか。また、新年度の見通しをどのように考えておられるのでしょうか。3年前の06年、多くの製造業が請負契約から派遣契約に切り替え、このとき派遣になった労働者が今年3月末以降一斉に派遣期限の3年目を迎えることになるいわゆる09年問題といわれていることにも直面します。派遣労働者への直接雇用への申し入れとなるのか、雇い止めとなるのか経済状況からみて、不安なところです。県として新年度に職を失う人の数字的な見通しについてどのように考えているのか。商工観光労働部長にお尋ねします。


《答弁者》 商工観光労働部長
   議員からご説明がありましたように、ますます雇用の需給が逼迫してくると考えてございまして、県といたしましても、労働局など関係機関と連携を図りながら、必要な雇用状況の把握に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
   次に、新年度以降の数字的見通しにつきましては、いわゆる2009年間題と言われている労働者派遣法の適用がますます進行することから、県内の中小企業におきましても、派遣労働者をはじめ非正規労働者への影響が大きく出てくるものと推測してございます。
   労働局におきまして、これらの調査を新年度以降も継続するとしてございまして、県としましても、情報の共有、状況把握に鋭意努めてまいりたいと考えてございます。
   なお、雇用の維持につきましては、雇用調整助成金の幅広い適応や離職者への訓練等の生活支援など様々な施策が検討されてございまして、県としましても、これら施策を注視しながら、適切な施策を考えてまいるということにしてございます。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2)雇用創出施策について
@雇用創出の目標数値について
   すでに今議会で目標値の設定を求める議論が重ねられているところですが、国の雇用創出を目的とした事業への対応と県の施策による雇用への効果をどのようにまとめていくのか、県の雇用の創出にとりくむ姿勢、熱意をはかるうえでも欠かせない課題だと思います。 
   雇用に着目した事業にとりくんでいくのに、ゴールを見ずに走ることにもならないはずです。
   すでに、企業立地促進法にもとづく「和歌山紀ノ川流域地域基本計画」では企業立地件数107件、新規雇用創出2,539人と成果目標が発表されている事業もあります。県にも雇用に関するプロジェクトチームがつくられているようですので、私は、ふるさと雇用、緊急雇用にかかわらず、県がとりくむ産業振興策によってどのくらいの雇用が生み出されると考えられるのか、そのことも示していただきたいと思いますが、どのように考えておられるのでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   雇用創出目標につきましては、今回の本会議におきましても同様のお答えをしてございますが、一段と厳しい雇用環境の中にあって、逆転の発想と申しますか、優秀な人材を確保する絶好の機会であると考えてございまして、人材確保難であった中小企業とか、農業あるいは福祉分野への誘導の絶好の機会と捉えまして、県としましては、わかやまで働きませんか等の情報サイトを開設するとともに、ふるさと雇用再生特別基金などを活用しながら、企業誘致や新産業の創出も含め、雇用創出に向け、様々な施策を展開してまいりたいと考えてございます。
   創出目標につきましては、国においては、ふるさと雇用再生特別交付金等を活用して最大25万人の雇用を目標としているところでございまして、県としましても、国の算出された目標を一定の目安として捉まえながら、市町村と連携し、長期的な雇用につながるような事業などを、とりまとめの中で、より精度の高いものにしてまいりたいというふうに考えてございます。


《質問》 藤井健太郎 県議
A国の交付金事業について
   国の県への交付金による雇用創出を目的とした事業が新年度からとりくまれます。1年以上の安定雇用の創出を目的とし、事業者と3年間の委託契約を結び、3年後には一人立ちを求める「ふるさと雇用再生特別基金事業」44億円、6カ月未満の短期雇用の創出を目的とし県・市町村の直接雇用もしくは事業者への委託もできる「緊急雇用事業臨時特例基金事業」16億円、双方とも既存事業への財源振替は認められず、新たな雇用機会の創出を目的とし、新規雇用者のうち失業者の人件費が一定割合を占めることが要件になるなど、失業対策事業の色合いが濃く、双方とも臨時的、一時的な財政措置となっています。
   市町村ならびに民間事業者への委託や補助となるわけですが、新年度に県が直接、委託や雇用を考えている事業はあるのでしょうか。どのような事業を考えておられるのでしょうか。国からの交付金は1回限りですが、自治体の独自財源の補てんで事業を膨らませることもできることになっています。国に事業費の増額を求めていくことをはじめ県として事業費の上積みや期限後の事業の継続などについて考えておられないのか。これから事業をはじめるのに、そこまで考えられないといわれるかもしれませんが、効果を検証して雇用創出効果が大きければ、そのときの経済状況の判断の上に、事業を継続させていくことも意義あることだと思いますが、どのように考えているのか。


《答弁者》 商工観光労働部長
   県として直接、委託や雇用する事業もあり、内容的には、将来の施策展開の基礎となる各種調査の作成などを想定してございます。
   ふるさと雇用再生特別基金活用事業につきましては、3年間にわたる継続的な事業でございまして、委託終了後も継続雇用が見込まれ、かつ一過性に終わることのないような事業を中心に委託してまいりたいと考えてございます。
   なお、県費の追加支援につきましては、まず、国の交付金の予算を最大限活用してまいりたいというふうに考えてございます。
   また、当然ながら、当該事業の効果につきましては毎年検証し、次年度へのステップアップにつなげてまいりたいというふうに考えてございます。


《質問》 藤井健太郎 県議
(3)雇用の確保と維持について
   県は昨年の12月議会閉会後の12月19日、全国的に派遣労働など有期契約労働者の解雇、雇い止めが広がっていることを受けて、県内に波及してくることへの懸念から商工会議所連合会、経営者協会など県内経済団体5団体に集まってもらい、正社員をはじめとする求人の確保と雇用の維持について、直接要請を行いました。また、業種組合70組合と従業員10人規模以上の県内約3,000事業所に同様の要請文書を知事と和歌山労働局長の連名で送付しました。12月議会一般質問で、雇用の確保と維持に対する県の姿勢について伺いましたが、知事は不安定な就労がより改善できるように経済団体や主要な県内企業に正規求人や非正規労働者の正社員化の要請をしなくてはいけないと答弁され、雇用の継続と安定化にむけての県の姿勢を明確にされました。
   しかし、現実は、派遣労働者など非正規の労働者が直接雇用されていくのではなく雇い止めになることが増加する見通しとなっています。今後、どのように対応されていこうと考えておられるか。3,000事業所へのフォローをどのように考えておられるのか。非正規労働者の正社員化を要請していきたいとする知事の考えをお聞かせ願います。

   わたしたちも、今年になって昨年に引き続き、再度、雇用の維持と労働法制の遵守について和歌山労働局への申し入れを行うとともに、県内の従業員100人規模以上の鉄鋼、機械、化学、染色などの製造工場と県が誘致したいくつかの工場を訪問し、雇用の維持や県経済の先行きについて懇談を重ねてまいりました。
   長年地域に根付いての事業活動や社会貢献活動をされている企業が多く、技術革新と新規設備投資で競争力を高めることや雇用の維持のために努力しているということ、これからの景気の先行きについては、不安が増していることなどが共通して話されていたように思います。
   気になったのは雇用の維持については、派遣労働を受け入れている企業では正社員と非正規社員とを区別して対応していくという話があったことです。非正規の社員が経営上の都合で、契約期間の途中で解雇されたり、短期契約を繰り返し更新している派遣労働者が一方的に雇い止めになるなど、労働者の権利が侵害されることになれば問題があります。
   先だって、県内の製造企業の生産ラインで働く派遣労働者から私たちのもとに、今年の3月末で派遣契約が終了することに伴い契約の更新はしないことを通告されたという訴えがありました。よくよく話を聞いてみると、6年ほど前に派遣会社から請負契約できていたが、3年前に6カ月契約と期間を定めた派遣契約に変えられ、これまで5回契約更新を繰り返してきた。派遣契約の期間は今年3月末で2年半となるが、請負となっていた時期にしていた仕事や働き方とかわってはいないということで、偽装請負の疑いがきわめて濃厚であることがわかってきました。偽装請負であったとするならば、雇い止めではなく直接雇用の申し入れをしなくてはならないところです。この会社は内部留保もしっかりしており、減収減益が見込まれる中にあっても高配当を続けている優良企業です。体力的にもしっかりしていると思われますが、派遣労働者の月々の収入は14万円から残業したときは18万円ぐらいで、正社員と同じ働き方をしているのに、昨年12月には正社員にはボーナスが出たが、派遣社員にはボーナスもなく4月から来なくていいといわれた、憤りを感じる、派遣という働き方はやめさせてほしい、とも訴えられていました。知事は、このような訴えに対して、どのような見解を持たれるでしょうか。
   そもそも派遣労働は臨時的・一時的労働に限られており、正規労働者がしている仕事を派遣労働者へと置き換えてはならないものです。そのため同一業務への派遣受け入れ期間は原則1年、最長3年とし、3年を超えて派遣労働者を使う場合は、派遣先企業は働く期間にかかわらず直接雇用の申し入れを行う義務が生じます。
   04年3月の法改正により製造業への派遣労働が認められるようになりましたが、多くの製造業者はそれ以前から請負の形で派遣労働者を使っており、それが偽装請負であったとするならば、通算すると3年をこえて派遣労働者を同一業務につかせている企業が多いのではないかと思われます。
   現行の労働法制に照らして直接雇用への道が開けており、労働者が希望するのに企業がそれを実行していないとしたら問題です。
 雇用の維持、確保についての第一義的責任は企業にあるのは当然ですが、違法行為に対する指導や是正、勧告については直接的には国の権限で行うことです。しかし、県民のくらしを守る立場にある県としても、雇用の確保や維持についての要請で終わるのではなく、労働者の権利を守るための積極的な取り組みが必要ではないでしょうか。このことについても知事の見解をお聞かせ願います。


《答弁者》 知事
   まず、経済団体等への雇用の確保・維持要請後の取り組みについてでございますが、県の独自施策として県内の中小企業や農業、福祉・医療などの求人情報を、関係機関の協力を得ながら、県のホームページにおいて、情報提供を実施しているところであります。和歌山で働きませんか等々のプロジェクトでございます。
   また、さきに開催した就職面接会への参加企業に対しても、再度、一人でも多く求人を確保していただくよう依頼したところであります。
   今後とも、機会を捉えまして、正規求人の確保等について、経済団体等に要請して参りたいと考えております。
   次に、派遣労働者の権利を守る取り組みにつきましては、一般的には、派遣先企業と派遣元企業が労働者派遣法等関係法令をちゃんと理解して、遵守するということが重要でありまして、このためには国が地方機関におきまして指導、監督していると認識しております。
   しかしながら、県といたしましても、諸案件について、緊密にこのような機関と連絡をとりながら情報収集を図りまして、また民間にもそういうアンテナをはりまして、かつ、中小企業労働施策アドバイザー等による制度の周知や労働相談など様々な施策を活用して、適切な雇用関係になるよう努めてまいりたいと考えております。


質問》 藤井健太郎 県議
   私はひとつの企業で働く労働者からの訴えを取り上げ知事の見解をお伺いしましたが、直接的な答弁はありませんでした。「それは国の仕事だよ」というようなお話であったかと思いますが、県民の方がそこで働いているわけです。ずっと働き続けられる、一定の期間が過ぎれば直接雇用の申し入れがあることを期待していたが、雇い止めだということで非常に憤りを感じておられる。本来ならば偽装請負の疑いが濃厚であり、その期間を含めれば当然、直接雇用の申し入れがあって然るべきです。
   その企業は先ほども申しましたように、県内の優良企業です。しかも、県の経済団体の役員をされている企業でもあります。そういった企業でそういう事態がおこっているとしたら、これは問題ではないのかと知事の見解を問うたわけですが、直接的な答えはありませんでした。再度、知事の見解を問いたいと思います。
   そして、労働局まかせにするのではなく、こういう問題については労働者の現行法での権利も守られていないということですから、県の労働行政として、そこのところはきちんと労働者の権利が守られるように、是正のための働きかけをぜひしてほしいと思うわけですが、知事の再度の答弁をお願いいたします。


答弁者》 知事
   議員ご指摘の点については、あるいは法律の違反かもしれません。そういうふうに思いましたもんですから、法律違反を取り締まる権限を持っている機関はちゃんとありますということを申し上げました。
   しかしながら、そういう法律違反みたいなことをやっちゃいけませんよというのを一般的に申し上げるのは、これは我々の務めでもあると思います。
   従いまして、あるいはまたそういうことをですね、別に我々は聞く耳を持たないと言っているわけではありませんので、県の機関等々にですね、たくさんの情報が入れば、それは例えば国と情報交換をするということも大事ですし、直接ですね、ちょっとおかしいんじゃないですかというふうなことも、それは言わないといけないと思います。
   それから一般的にですね、そういうことについてはですね、注意しないといけませんよということは、我々の仕事としてこれからもやっていく、そういう気持ちでございます。


《質問》 藤井健太郎 県議
(4)県が誘致した企業での雇用について
 私は企業誘致そのものについては、地域の特性にも合致し、環境破壊にもつながらず、適切な優遇施策の範囲内であれば、県民の新たな雇用と所得の創出、地域経済の振興にもつながる政策として有用であると思っています。進出した企業は地域からは、地域社会の一員として、地域経済に貢献してほしいという期待を担うことにもなります。今日の経済状況のもとで減収、減益を余儀なくされている企業も多くあることと思いますが、安易に事業縮小や労働者の解雇に走ることは、地域からの期待を裏切ることにもなってしまいます。
   県の誘致企業における08年度従業員数調べによりますと、これまで78社が誘致されており、回答のあった76社では5,432人の従業員が働いているとなっています。そのうち正規が61%で3,332人、非正規が39%、2,100人と、働く人の4割が非正規社員で派遣労働者は651人となっています。今年の1月調査では、前年度と同じ企業比較で正社員が若干の増、非正社員が大幅減で契約社員と派遣社員が減り、パート社員が増えています。誘致企業の中には、派遣社員を雇い止めにして、より賃金の低いパート社員に置き換えているところもあるようです。誘致企業の雇用の中身、動向について把握しておく必要もあろうかと思います。また、派遣労働者の直接雇用への働きかけはきちんとできているのでしょうか。同一業務についての派遣の受け入れ期間は3年ですが、すでに過ぎているところや偽装請負の期間があるところ、派遣の継続を予定してのクーリング期間を設けているところなど、現行の労働法制に照らして、是正が必要な企業はないのでしょうか。進出協定書においては、関係法令を遵守するとともに、地域社会の一員として安定した雇用の創出及び継続への努力義務を課しております。進出企業に対して県、市町村からの立地助成金はじめ各種の支援措置が行われているところですが、同時に協定に違反した場合は補助金の返還を求めることができるとなっています。補助金の返還を求めるような事態とならないように、協定事項をしっかりと守ってもらうことが大事だと思うところです。雇用の確保と維持については、県内事業所に要請文書は出しておりますが、人事や労務管理の機能は県外の本社で行っている誘致工場もたくさんあります。本社に対しての要請はどのようになっているのでしょうか。人員削減を予定している企業については、直接、本社への要請が必要ではないでしょうか。
   また、誘致企業の労働法制の遵守についての検証など行われているのでしょうか。


《答弁者》 商工観光労働部
   本社への要請についてでございますが県内に立地する工場のみならず、県外に所在する本社に対しましても、立地後に訪問させて頂き、雇用の維持確保につきまして強く要請しているところでございまして、今般の急激な景気変動を踏まえまして、これまで以上に精力的に取り組んで参りたいと考えてございます。
   次に、労働法制の遵守につきましても、本来、違法行為に対する是正等については国が主体となって行うこととなってございますが、県民の暮らしを守る立場にある県といたしましても、進出協定書に「関係法令の遵守」を厳格に盛り込んでございまして、これらを踏まえ、その未然防止等につなげて参りたいと考えてございます。

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3.失業者の生活支援対策について
(1) 生活保護行政のありかた

《質問》 藤井健太郎 県議
 解雇、雇い止めなどで離職を余儀なくされ、社員寮や宿所をでていかざるをえなくなったり、新たな就労を希望していても求人数が減少するもとで就労のめどが立たないことや手持ち資金が底をついてくると、たちまち生活に困窮する事態に直面することになります。
   雇用促進住宅への入居や雇用保険の失業給付がすぐに受けられる場合、またハローワークの住居費を含めた資金でもある就職安定資金が受けられる場合は当面の生活の支えとなりますが、それらが活用できない失業者も多くいます。ホームレスとなって車で寝泊まりしている失業者からの相談や雇い止めとなったが、住居を失い、持病が進行したため軽作業にしかつけないという人からの相談など経験してきたところですが、最後の砦は生活保護の申請で、生活保護を受給しながら住居を確保し、求職活動を続け生活の自立をめざすこととなります。万策つきて市町村の窓口を訪れた場合は保護の申請を受付け、速やかな保護の開始が望まれるところです。しかし、窓口にいくと、まず住むところを確保してから来てほしいといわれ申請を受けてもらえなかったとか、保護の開始まで1カ月はみておいてほしいといわれ、それまでの生活費がないといった相談も寄せられています。保護の決定は特別の理由がある場合を除き原則14日以内となっており、申請者の手持ち金がわずかしかないという場合は、迅速な保護決定が求められています。そのための職員体制の整備も必要となってきています。
   住居のあるなしや労働能力の有無だけで申請の受付けを判断することなく、申請者の申請権を侵すことなく、速やかな審査と可否の決定を行うことが求められているところですが、県の考え方と指導はどのようになっているのか。


《答弁者》 福祉保健部長
   まず、生活保護行政のありかたについてでございますが、失業者から生活困窮の相談がある場合は、相談者の事情や要望に応じて、議員ご指摘のように他法他施策について懇切丁寧な情報の提供と支援を行うとともに、関係機関とその連携をより一層図るように、また、その際には、相談者の生活保護の申請権を侵害しないことはもちろん、申請権を侵害していると疑われるような言動も厳に慎むよう、福祉事務所に対し指導してきたところでございます。
   さらに、生活保護の適用に当たっては、住居がないことや稼働能力があることのみをもって保護を要しないとせず、住居のない方には居宅生活が可能かどうか、また、稼働能力がある方には求職活動をするなど稼働能力を活用しているか否かに留意するなど通常の手順に従い必要な審査を行うとともに、申請者の状況に応じ適切な処理に努めるよう、福祉事務所に対し引き続き周知徹底を図ってまいります。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2) 生活福祉資金の利活用
 また、社会福祉協議会では、失業により生計の維持が困難になった世帯に対し、20万円以内の生活資金を貸し付ける離職者支援資金の制度、緊急一時的な当座のつなぎ資金として5万円以内の緊急小口資金貸付制度などが運用されていますが、これらの実績はどうなっているのか。有効活用されているのか、今後、どのように利活用をはかっていこうとするのか。


《答弁者》福祉保健部長
   失業などにより生計の維持が困難となった世帯等に対して生活資金の貸し付けを行う離職者支援資金につきましては、平成18年度以降は貸し付け実績がございません。また、緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった世帯等に対して生活資金の貸し付けを行う緊急小口資金につきましては、年々減少傾向でございまして、今年度は2月までで1件の貸し付けでございます。
   両資金とも、有利子資金を貸し付けることで世帯の経済的自立を支援する制度でございまして、県社会福祉協議会において、資金の貸し付けも含めて自立につながる支援を総合的に判断の上、資金を必要とする人には適切に貸し付けを行っているところでございます。
   引き続き、失業者の生活支援につきましては福祉事務所等関係機関と調整を図りながら、最善の支援に努めるとともに、資金の貸し付けが適当と判断された場合には速やかに手続を行うよう県社会福祉協議会を指導してまいりたいと考えてございます。


《再質問》 藤井健太郎 県議
   失業者への支援は行政の大事な役割です。
   その中でせっかく離職者の支援資金や小口の緊急融資制度があるにもかかわらず利用されていないというのは、周知がされていないからなんでしょうか。使いにくいからなんでしょうか。それとも、それを必要とする県民の方がいないからなんでしょうか。私はそういうふうに思いません。制度そのものに何らかの問題があって、本当は使いたいけど使えない、有効に活用できないという問題があるのではないか。
   そういった点も含めてこの改善をどう進めていくのか、福祉保健部長にこの問題について再質問させていただきます。


《再答弁者》 福祉保健部長
   生活福祉資金の利活用について、窓口にお見えになり利用されたいという県民の中には、雇用保険法上の給付などと勘違いされている方もおられ、3%の有利子資金で、緊急小口資金であれば4ケ月以内にお返しいただかなければならないなど、制度を説明する中で、ご利用をお止めになる方もいらっしゃると聞いてございます。また、生活福祉資金全体といたしましては、住宅の改修などに使われる福祉資金とか、無利子であります修学資金などが、よく利用されてございます。
   緊急小口資金、離職者支援資金ともに、今後とも市町村社協等を通じまして広く周知を図ってまいりたいと考えてございます。

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4.県職員の定数削減について

《質問》 藤井健太郎 県議
   知事は新長期総合計画の実現に向けての財源捻出と財政健全化法をクリアしていくためにも行財政改革の推進が必要だとし、今後5年間の行財政運営の指針としての「新行財改革推進プラン」を策定しました。5年間の歳出削減目標額687億円のうち258億円、4割近くの金額を人件費削減にあてる計画となっています。一般行政・公営企業での人員削減目標は、08年度からの5年間に11.7%、480人を削減する計画となっています。今議会には、プランにもとづき知事部局職員の定数を3,954人から3,844人に110人の削減が提案されています。
   職員数の削減は県の財政運営上の判断からということだけではなく、国の地方財政計画では全国で2万4,000人の削減となっており、それが地方交付税算定へ盛り込まれてくることや退職手当債の償還財源を捻出しつづけていくためにも職員数の削減計画の策定が求められてくることにもなっています。
   一方、自治体の行政サービスはマンパワーが主体となっているだけに、絶えず行政需要とのバランスをとりながら適切な職員配置をすすめていかねばなりませんし、急激な削減は将来の職員年齢層に断層をつくり、継続的な県民サービスの提供を困難にすることも考えられます。これまで、組織の統廃合などの機構改革、指定管理者・市場化テスト・業務委託などの業務の外部化、または事業そのものの廃止などにより、管理者ポストと職員数の削減をすすめてきましたが、最初に削減ありきでそのあとつじつま合わせをしていくというのが実情ではなかったかと思います。
 今日の経済情勢下において、社会全体での雇用の確保と維持が求められていますが、県は民間企業に雇用の確保を説きながら、県自身は職員数の削減をすすめていくことにもなりますし、業務の外部化は非正規労働者の拡大や労賃の引き下げなど雇用の不安定化につながっていくこともあります。
   そこで、知事並びに総務部長にお尋ねします。

(1)人事行政について
   雇用情勢が厳しさを増すなかで、県庁で働く職員の雇用の維持と確保、役割についてどのように考えているのか。行政需要や歳出予算とのバランス、県職員の年齢構造や適正数など人事行政の基本的な考え方について知事にお尋ねします。


《答弁者》 知事
   議員お話のとおり、県では、「新行財政改革推進プラン」に基づき、職員数の削減を行っているところですが、一方で、将来偏った人員構成に陥ることのないよう配慮し、計画的な採用に努めているところです。
   今後、さらに経済や財政の状況が厳しくなると見込まれますが、民間にも呼びかけているとおり人材確保のチャンスでもあり、本県にとって必要な人員を確保していきたいと考えております。
   こうした人員体制により簡素で効率的で活き活きとした組織を構築し、最大の効果をあげるよう職員の適正配置に努め、県政の重点施策や緊急な課題について対応して参りたいと考えております。
   ただ、心配なのは職員の健康問題でありまして、これについても十分配慮しています。ひとつの例と致しましては、仕事については、できるだけ重点化して自らこれはもういいなと思うようなものは、どんどんと整理をしながらやって行こうじゃないかということを職員にも呼びかけているところであります。


《質問》 藤井健太郎 県議
(2)定数削減の内容、外部委託について
   知事部局での定数削減の内容は、どこでどのようにして削減をすすめていくのか。新年度、外部委託、指定管理者などの予定はあるのでしょうか。


《答弁者》 総務部長
   「新行財政改革推進プラン」に基づき、定数削減に取り組む中、今議会におきましては知事部局で110名の削減をお願いしているところであり、振興局における部課の再編など組織機構の見直しや事務事業の見直しを行うことにより実施してまいります。
   事務事業の見直しにつきましては、これまでも指定管理や業務委託を進めてきたところでありますが、次年度においては、新たに指定管理者制度を導入する施設はなく、業務委託については、ふるさと定住センターにおいて実施する予定としております。


《質問》 藤井健太郎 県議
(3)職員の過重労働と県民サービスの後退
   職員数の削減により、職員の過重労働や県民サービスの後退につながらないようにするための手立てが考えられているのか。


《答弁者》 総務部長
   厳しい財政状況の中、今後とも職員数の見直しを進めてまいりますが、徹底した事務事業の見直し、民間活力の積極的な活用等により、職員の負担増や必要な県民サービスの低下につながることのないよう努めてまいります。


《質問》 藤井健太郎 県議
(4)職員の働き方の推移 常勤代替をすすめていないか
   職員の働き方の推移はどのようになってきているのか。職員数を削減して非常勤職員やアルバイト、派遣労働などに代替させているようなことはないのか。非正規職員の労働条件を切り下げていくようなことはないのか。


《答弁者》 総務部長
   非常勤嘱託やアルバイト職員についても抑制を図っているところであり、正規職員に代えてこうした非正規職員を増やしているということはございません。また、これら職員の給与等の処遇につきましては、労務の内容や労働条件に合わせ、適切に対応しているところでございます。



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09年2月県議会、藤井健太郎 一般質問=3月11日
09年2月議会、藤井健太郎 一般質問=3月11日