2009年2月県議会 雑賀 光夫 一般質問

2009年3月10日









1. 「新自由主義」が生み出した今日の経済状況をどう考えるか

2. 公共交通、特にJRをどうするか
(1) 公共交通、特にJRの利便性向上と利用促進の具体策
(2) 「住民・県民とともに公共交通を守る」という観点でJRと共同して
(3) 知事・県職員の出張にもJR利用促進を
(4) JR駅舎のバリアフリー化の促進

3. 精神障害者医療について

◎  精神障害者医療費への県費補助早期実現を (要望)
(1) 「早期発見・早期治療」のために精神疾患への訪問・相談体制の拡充を
(2) 精神疾患への専門職員の増員配置を
(3) 「ショートステイ」や「グループホーム」の現状と充実

4. 無料低額診療制度について
(1) 県内の無料低額診療事業の実施状況
(2) 積極的に広げていくのかどうか

5. 学校現場での身分不安定教職員について
(1) 定数内講師の現状とその解消について
(2) 教員採用試験での講師経験の評価について
(3) 各種臨時職員、非常勤講師の身分安定策について

6. 地上テレビ放送のデジタル化について
(1) その後の国の難視対策の進展
(2) 点在する県内難視地域の対策など、
      利用者の側から見てわかりやすい説明をしてほしい
(3) 今後の取り組みについて県としての考えはどうか

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1.「新自由主義」が生み出した今日の経済状況をどう考えるか

《質問》 雑賀光夫 県議
   議長のお許しをえましたので早速質問にはいらせていただきます。
   第1の柱は、「新自由主義」が生み出した今日の経済問題をどう考えるかという問題です。

   今年の1月5日、海南下津港湾振興会の新年会がありました。3人の県会議員で毎年かわるがわる挨拶させていただくのですが、今年はたまたま私の番でありましたので、こんなことを申し上げました。
 「明けましておめでとうと言うのもはばかられるような経済情勢です。首を切られた派遣労働者、胸が痛みます。また地球温暖化が大きな問題になっています。こんななか、今までの考え方ではやっていけないと多くの人が考え始めています。
 かつては『日本で米をつくらなくても、1台でも多く自動車を作って輸出したらいい』という考え方もありました。今、そんなことを言う人はいないと思います。
 交通運輸では、日本では50年前から鉄道・船舶から自動車・航空機に大きくシフトしてきました。地球温暖化が心配される中これでいいのか。」

   3分ほどの短い挨拶で言葉足らずもありますが、眼目は「今までの考え方ではやっていけないと多くの人が考え始めています」と述べた点であります。

   昨年から「100年に1回」というような大変な経済危機がおこっています。自然災害のように言う方もおられますが、私は政治災害だと思っています。それはさておき、政治や経済政策にかかわってきたみなさんの論評は、大変興味深いものがございます。
 昨年末から大きな反響を呼んだのは、中谷巌さんという方が「資本主義はなぜ自壊したのか」という本を出版されたことでした。私も取り寄せて読んでみました。この本は「自戒の念を込めて書かれた『懺悔(ざんげ)の書』でもある」といっています。この方は、日産自動車の社員であったが、ハーバード大学に留学して、近代経済学を勉強した。当時のアメリカの豊かな生活、すばらしい大学の研究環境に目がくらみ、それが新自由主義の経済政策の結果であるように錯覚してしまった。そのことをご自分で「アメリカかぶれになった」と書いていらっしゃる。
   日本に帰ってきて、一橋大学などで教鞭をとるのだけれども、小渕内閣のとき堺屋太一さんに乞われて、「経済戦略会議」に参加し、その議長代行にまでなった。メンバーには竹中平蔵さんもいた。ここで、新自由主義の「規制緩和」路線をしいた。この路線の上で、小泉「構造改革」が行われ、いま、「格差と貧困」が大問題になっているわけでございます。竹中平蔵さんは、小泉内閣のブレーンとしてその路線をつきすすむわけですが、中谷巌さんは、官邸からははなれて、その推移をみまもっていた。そして、自分のとんでもない錯覚、「アメリカかぶれ」に気がついた。
   「今までの考え方ではやっていけないと多くの人が考え始めています」ということがあたっています。そのことを率直に告白しておられる。
   その一方で、自分が推し進めた経済政策の結果に、まったく頓着しないように見える「経済理論家」もおられます。自分が当時閣僚でありながら、郵政民営化に反対だったとおっしゃる方もおられます。どれがいいとか悪いとは言いませんが、それぞれの人間性や考え方が浮き彫りになって大変面白いと思います。
   そこで、知事にお伺いいたします。知事は、2003年までは現在の経済産業省にいらっしゃった。ご自分でも「私は経済官僚でしたから」とよくおっしゃいます。トップではないから、政策決定の責任者ではないけれども、政策の実施に当たられたのでしょう。トップが選択した政策を、心配して見守っておられたかもしれない。こうした立場におられた方として、おそらく中谷巌さんという方のことは、私などよりずっとよくご存知でしょう。中谷さんの発言についてはいろいろな感想をお持ちでしょう。そういうことも含めて、今日の経済問題を、どう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。


《答弁者》 知事
   この新自由主義なるものが何なのかというのがまたよく分かりませんで、似たような名前の出版社もあったなというふうに思っておりますが、中谷さんについては、私は、学者の先生方と親交が厚いんですが、たまたま、残念ながら個人的には1回もお会いしたことがないし、お話ししたこともなくて、また、中谷さんが確かに一世を風靡していた時があったんですけれども、残念ながら、ご本も読む機会を逸しました。今回も、業務の多忙ということもあるんですけれども、新聞なんかで話題になっているということを知っておるんですが、いわゆる、雑賀議員がおっしゃった「懺悔の書」についても読んでおりません。ただ、部下で読んでおる、職員で読んでおる者がありまして、聞いてみると、懺悔がどうしたこうしたというのは分かりませんけれども、個々のいろいろ論点に挙げているいろんな立論については、当たり前のことを言ってないかなというふうに思います。
   現在、アメリカのサブプライムローン問題に端を発した世界的な不況は、本県経済にも、特に中小企業の資金繰り悪化とか、あるいは経済全体が調子悪くて、雇用情勢が深刻化するなど、大きな影響を及ぼしております。
   経済は生き物であります。したがって、活力がないときは活力を出すようにどうしたらいいかと、例えばメンテも要るし、対策も要ります。そのために経済政策というのはあるんだろうと思います。ただ、経済を回していくために、市場競争を基本とするシステムよりも、他の、それ以外のシステムがあるかどうかという点については、たぶん無いんじゃないかなというふうに私は思います。これに敢えて目をつむったソ連が、あるいはアジアのいくつかの国が、とうとう経済が破綻して、国家まで消滅してしまったということは、厳然たる歴史の事実であります。ただ、市場経済に、あるいは市場競争を基本とするような制度といっても、全て競争だけがよろしくて、その経済政策は規制を外すことで、政府はそれ以外何もしないのが良いんだと考えるのは、これは間違いというよりも、経済学の初歩、あるいは経済政策のイロハにもとる話だと思います。何でもマーケットに依存するのではなくて、マーケットが間違うこと、あるいは人々の幸せのためにならないようなことは、ちゃんとした制度の枠組みを作って、その中で活動していただくというのが正しいやり方で、かついろんな時々発生する問題についても、それぞれの国民の賛同を得て、適切な経済政策を打っていくというのが大事なことであると思います。少なくとも和歌山県では、県の財政や政策で、経済政策をやる、あるいは景気対策をやるというのは限度があるんですけれども、我々のやれる限りにおいて、全力を挙げて、これをやっていきたいというふうに考えております。

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2.公共交通、特にJRをどうするか

《質問》 雑賀光夫 県議
   次にさきの挨拶で「鉄道・船舶から自動車・航空機に大きくシフトしてきたが、これでいいのか。」と申し上げました。第2の柱は、鉄道をどう守るかであります。

   和歌山県で、鉄道問題での最近の快挙は、貴志川線を守る運動でした。地元住民の交通手段を守ろうと、県議会では超党派で協力し、知事も和歌山市長・紀の川市長、そして何よりも住民組織のみなさんががんばられた。タマ卿という救世主が現れるとは予想もしていませんでしたが、本当によかった。
   しかし、「よかった」といっているだけでいいのでしょうか。JRきのくに線の乗降客数は1970年の4,670万人から、2006年には、1,000万人減っています。和歌山線は、1,900万人から半減しています。
   県の長期総合計画には「交通ネットワークの充実」という項目がありますが、「道路交通網の整備」はきわめて具体的なのに対して、「公共交通の利便性向上と利用促進」という項目は、具体性を欠くように思われます。
   和歌山県では、かつて「和歌山線を守る会」というものが結成され、ローカル線への「格差運賃」導入に反対する「交通権裁判」がたたかわれました。それは公共交通としての和歌山線を守る運動であり、当時の国鉄としても本当は喜んで、陰ででも協力すべきだったと私は思っています。
   先日の新聞を見て残念だったのは、JR西日本の関連会社が、すさみ町内でモノラックを設置するために熊野古道を壊したというニュースです。JR西日本が、県民とともにきのくに線を守ろうと真剣に考えておられたら、こんな事件は起こさなかったのではないかと思わざるをえません。

   そこで質問ですが
   第1に、「公共交通の利便性向上と利用促進」のために、さらには、これ以上公共交通、特にJRの廃線やまびき運転がおこることのないように、どういう施策をとられるのでしょうか。
   第2に、貴志川線をまもった取り組みに学んで、和歌山線にしてもきのくに線にしても「県民とともに公共交通を守る」という観点が大切だと思います。すさみ町での残念な事件もふまえて、JR西日本も住民とともにしか生き延びる道はないということをわかってほしいと思いますし、県としてそういうとりくみを進めてはと思うのですが、いかがでしょうか。以上、企画部長からお答え下さい。


《答弁者》 企画部長
   鉄道を維持していくためには、利用者を増やしていくことが最も重要でございますが、「公共交通機関は、みんなで利用し、支えていく」という気持ちを持つことが必要であると考えております。
   こうしたことから、これまでも県・沿線自治体・JR西日本が、連携して取り組んできたところでありますが、例えば、和歌山線について申し上げれば、現在、和歌山電鐵の取り組みを参考として、民間団体や地域住民などの参画も得て、JR、地域と一体となっての利用促進に取り組みたいと考えているところでございます。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第3に、県として職員の出張にもっと鉄道をつかってもいいようにも思います。知事も公用車で県内あちこち駆け回るのでしょうが、時には寄り道の必要がないときは、ゆっくりと鉄道を利用されたらいいと思います。そんなこともあるのでしょうか。今後いかがでしょうか。知事のご意見をお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   私も紀南へ遊びに行く時は、JRをよく利用します。出張の時は、どうしても時間を惜しむこともあり、車で行くことが多いのですが、私を始め、職員の出張時のJR利用については、公共交通を守っていくということにもなりますので、職員はもとより、私も可能であればJRを含めた、すなわち、大事な白浜空港も関空も両方念頭において、できるだけ公共交通機関を利用していきたいと考えております。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第4に、具体性を欠くというなかでも具体的にすすめられているように見受けられるのが、JRの駅バリアフリー化であります。黒江駅のバリアフリー化については、海南市との協議がされているようですが、進捗状況はいかがでしょうか。また、乗降人数5,000人を割る駅も含めた計画はいかがでしょうか。
   企画部長からお答えください。


《答弁者》 企画部長
   黒江駅のバリアフリー化についてでございますが、平成21年度から2ヶ年での工事を予定しており、今議会に海南市への補助金1,180万円をお願いしております。
   駅舎のバリアフリー化の計画につきましては、国の目標では、「1日当たりの平均的な利用者数が5,000人以上である駅については、平成22年12月までに、原則としてバリアフリー化を実施する」ということになっており、現在、国の支援も得ながら進めているところでございます。
   黒江駅が終わりますと、これで5,000人以上の駅については 県内での9駅すべてについて完了することになります。
   また、今後、高齢化の進展に伴い、5,000人未満の駅についてもバリアフリー化が必要でございます。既に、いくつかの駅で実施をしておりますが、市町村と連携し、引き続き国の支援が得られるよう要望してまいりたいと考えております。


《要望》 雑賀光夫 県議
   公共交通の問題では、今までの流れに身を任せた上で、「公共交通は大事ではないか」と言われれば「大事だと思っている」と答えるというようなことではだめな時期に来ているのではないか。ですから「これまでの考え方ではやっていけない」問題のひとつとして、この問題をとりあげたのです。
 このたびの県議会では、他の議員のみなさんからも、角度は違っても、南海線の問題、JR和歌山線の問題がとりあげられました。公共交通・鉄道の復権ということを重要な課題としてとりあげなくてはならない時期にきたなという思いをしております。担当部局は、しゃしゃり出てでもがんばっていただきたいと思います。
 ただ、職員のみなさんには、JRの利用を押し付けるつもりはございません。

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3.精神障害者医療について

《質問》 雑賀光夫 県議
   第3の柱は、精神障害者医療についてであります。

 まず、精神障害者医療費の改善を先送りしたことは重大な問題だということを指摘したいと思います。一日も早く改善していただきたい。要望といたします。

 次に、精神障害者の方々を支援する問題について、その実態を申し上げ、行政としての支援を訴えたいと思います。
 「統合失調症」というのは、なかなか理解されにくい病気です。先日、精神障害者の作業所を訪問してお伺いしまして、私も少しわかってまいりました。100人から120人に1人という発症率なのだそうです。
   この病気は、早期発見・早期治療が大切だといわれます。最初は、不安や被害妄想があらわれ、ひきこもりがちになる。とじこもったり暴れたりして、重度になってから仕方なく精神科医に相談するケースが多いのです。私も近所で閉じこもりきりになっている方を、専門家の方と訪問したことがありますが、「帰れ」と怒鳴られて、取り付く島がありませんでした。暴れたりして警察沙汰になった場合は、それをきっかけに治療をうけることになる。地域には治療を受けていない患者の方がいらっしゃると考えられます。
   「たいへんよくできる」といわれている子どもさんが発症する場合も多い。大学に入ることだけを目標にして、一生懸命勉強してきた子どもさんが、大学に入って「さあ、自由にやりなさい」といわれると、どうしていいのかわからない。作業所の方がこんな説明をしてくれました。「その子に110円渡して自動販売機で好きなものを買いなさいといっても自分で決められない。『これにする?』といってウーロン茶を買わせると、次からはウーロン茶ばかり買うようになる」こんな生活しづらさがでるのだそうです。
 良い子であり優秀だった子どもが、突然、大学に入ってから発症するわけですから、親はその病気を受け入れることができない。子どもと一緒に死のうかと思ってしまう。その気持ちが子どもに伝わって「ぼくなんか生まれてこなかったら良かったんですね」「親に殺されるかもしれない」と作業所の指導員に訴えるのだそうです。
 2月14日に和歌山地方裁判所で懲役7年の判決がだされた母親が娘を殺害した事件があります。実は、その母親というのは、私の短い教職生活の最初の年の教え子でありました。まじめな、やさしい子でした。それだけに生傷にふれるようで、事件にはふれたくなかったのです。しかし、精神障害者の家族会の方や当事者のみなさんとお会いし、支援者の方から「誰かがこの問題をとりあげて、みんなで考えましょうと言わなくてはならない。」といわれて、ここでお話しする気になったのです。

   いま、イギリスでは家族を介護者として位置づけ、その支援をすすめていると言われます。「いまでも家族が介護をしているではないか」といわれるかもしれません。介護というのは、精神障害についての専門的知識を持って、適切な対応をすることです。現状は、家族が患者にふりまわされ、悲嘆にくれ、くたびれて、「いっしょに死にたい」というところに追い込まれている場合が多いのです。
   イギリスの研究者の報告では、介護援助者・家族への心理療法をすると、患者本人への心理療法以上に効果があがったといいます。イギリスでは、家族支援ケースワーカーという職種を新設し短期間のうちに700人、全国に配置したそうです。

   このたびの事件で、司法は私の教え子である母親に、「懲役7年」の実刑判決を下しました。私は、その判決についてとやかく言う気はありません。しかし、一般論として、行政としてもっと家族を支援する必要があるのではないかと思わないではいられません。

 そこで質問です。
   第1に、統合失調症をはじめとする精神疾患の実態について、どのように把握され、どう支援されているのでしょうか。「早期発見・早期治療」のためには、相談窓口を開くだけでなく、広く周知することが必要です。また、相談を待っているだけでなく、地域・家庭にでむいて、軽度のときから相談に乗ることが大切だと考えますが、いかがでしょうか。 


《答弁者》 福祉保健部長
   精神障害者の実態につきましては、本県の通院患者数は近年増加の傾向にあり、精神保健福祉センター及び保健所における精神科医等による「こころの健康相談」等でご本人やご家族から、精神疾患の状況等をお聴きするなど、あらゆる機会を通じて実態把握に努めるとともに理解を深めているところでございます。
   「こころの健康相談」につきましては、市町村の広報誌などにより周知するとともに、家庭訪問による相談も行ってございます。また、相談に来られない方のニーズにつきましては、個人情報の課題もございますが、各市町村で実施しております障害者相談支援事業と連携を図り、アンテナを高くし、その把握に努めて参りたいと考えてございます。
   その他にも精神障害者を支援する施策といたしまして、保健所でのデイケア、障害者自立支援法に基づく障害福祉サービスの提供や医療費の負担軽減、事業所での社会適応訓練等を実施しているところでございます。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第2に、家族支援の重要性が注目されているわけですが、イギリスの研究やとりくみをどう受け止められているでしょうか。家族を支援するために、専門職がどのように配置されているのでしょうか。増員するように、県だけでできなければ国に働きかける必要があると思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 福祉保健部長
   精神障害者のご家族への支援につきましては、議員ご指摘のとおり、ご家族への心理教育がご本人の疾患の再発防止につながるという研究結果もありまして、重要であると認識してございます。このため各保健所に保健師や精神保健福祉相談員を配置し、精神科医等とともに精神疾患の症状及び障害の特性やご本人への対処方法等を学習していただく家族教室の開催やご家族のご相談をお受けしているところでございます。


《質問》 雑賀光夫 県議
   第3に、さしあたり、患者を短期間でもあずかっていただく「ショートステイ」や「グループホーム」のようなものが欲しいという要望を伺いました。いかがでしょうか。
   福祉保健部長からお答えください。


《答弁者》 福祉保健部長
   ショートステイにつきましては、平成21年2月末現在、県内において精神障害者を対象に含めたショートステイは、9箇所の施設で27人分の専用床がございます。県といたしましては、精神障害者のご家族の負担軽減という観点からも、今後ともショートステイの充実に努めてまいりたいと考えてございます。
   また、精神障害者を対象に含めたグループホームでございますが、62箇所で定員は321人でございます。グループホームの整備につきましても、整備費の補助やグループホームに転用可能な住宅情報の提供、さらには地域での啓発に対する補助等の制度を設けており、今後とも、グループホームの充実に向け、より一層積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。


《要望》 雑賀光夫 県議
   精神障害者医療の問題は、今回私がとりあげた問題では、一番おもたい問題でした。精神障害者の作業所に何度も足を運びました。家族会の方、精神障害をかかえた当事者の方にもお会いしてお話を聞かせていただきました。
 私の教え子である母親が子どもを殺してしまった事件で、傍聴に行った若い支援者の方は、娘さんが殺されながら「お母さん」と言ったという裁判長の話を聞いて泣き崩れ、「聞かなかったらよかった」といいながら帰ってきたそうです。統合失調症をかかえた若者は「僕らの命は、7年の値打ちですか。だけど、あのお母さんを責められない」と語ったそうです。
 関係者のみなさんは、「私たちもどうしていいのか答えをもっていません。みなさんで考えましょう」と問題を投げだしてほしい。」といわれました。

 教育もそうであります。私は未熟な教員だったころの体罰してしまったはずかしい経験をお話して、教育長にも「失敗した経験を話せ」とお願いしたことがありますが、精神障害者医療の分野というものは、形がととのったらうまくいくというようなものでなく、行政を含めてそれに携わるみなさんが、苦悩を共にすることが大切だとおもいます。

 先日、同僚県会議員のみなさんとともに人権学習として「麦の郷」をモデルにした映画「ふるさとに生きる」を鑑賞いたしました。あの映画の作成には、知事をはじめ多くのみなさんが協力され、全国的にも多くの注目を集めています。映画のモデルになった「麦の郷」のすぐれたとりくみがあったからだと思います。それは、和歌山県の誇りです。
 それでも、その中心になっているみなさんも、「どうしていいか分からない。皆さんいっしょに考えましょう」と呼びかけておられることを、私は重く受け止めたいと思うものでございます。そして、県行政としてこうした思いに応えるために、いっしょに悩み、考えていただきたいと思います。

 専門職を増やすとこが必要だと思います。県に置くのか市町村におくのか、いろいろなことが考えられる。国に要望することも含めて、専門職をふやす努力をしていただきたいと思います。

 専門職を増やしてほしいという家族のみなさん、当事者のみなさんは、受身の立場で助けてほしいといっているだけではないのです。障害当事者のみなさんとお話して、みなさん自ら「精神障害者の人権110番」にとりくんだお話も聞きました。障害に苦しみ、そこから回復しつつあるみなさんが、自分の経験を踏まえて相談電話を受け、電話してくる皆さんの苦しみに共感しながら励ます事業です。
 こうした関係者、障害当事者の努力に行政は応えなくてはならない。行革プランでは全体として職員を削減しています。全国的に見て、職員を削減することが知事の手腕の証のようにもてはやされる風潮がありますが、福祉第一線の人材確保は、イギリスの施策に学ぶべきだと思います。
 国に働きかけることも含めて、強く要望しておきます。

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4.無料低額診療制度について

《質問》 雑賀光夫 県議
   第4の柱は、無料低額診療事業の拡充についてであります。

 私どもが海南市のハローワークの前に開いている「生活相談所」には、さまざまなケースの問題が持ち込まれます。自己負担が困難なために病院に行こうとしない方もいらっしゃいます。
 こうした問題に対応する制度として「無料低額医療事業」というものがあります。社会福祉法に定める「生計困難者のために、無料または低額な料金で診療を行う事業」であり、患者の相談・申請に応じて医療費を免除され、病院は税負担の軽減をうけられるものです。日本共産党の小池議員の質問趣意書で、厚生労働省も決して抑制の立場でないことが明らかになったものです。
 けれども、これまでは県内でもこうした制度を活用したいという医療機関の申し出に対して、消極的な対応をした行政もあったとお聞きしています。
 そこで質問です。

@ 県内ではどういう病院で無料低額診療事業を行っているのでしょうか。
A 今日の「格差と貧困」が広がっている中で、そうした医療機関を広げていく必要が
  あると考えますが、積極的に広げていくのでしょうか。

   福祉保健部長からお答えください。


《答弁者》 福祉保健部長
   和歌山県内では、無料低額診療事業を実施している医療機関は、済生会和歌山病院、済生会有田病院の2カ所でございます。
   本制度は、第2種社会福祉事業のひとつとして、生計困難者に対する医療を確保する上で、一定の役割を果たしていると認識してございますが、社会福祉法人等の事業実施主体に対して、税制上の優遇措置があるものの、減免した医療費は実施機関の負担となることなどから、無料低額診療事業を実施するかどうかの判断は、社会福祉法人等自らが行うものと考えてございます。
   県といたしましては、事業実施の届出があれば、国が定める基準を充たす限り、受理するものと考えてございます。

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5.学校現場での身分不安定教職員について

《質問》 雑賀光夫 県議
   第5の柱は 学校現場の身分不安定教職員の問題です。

   いま民間では使い捨てにされる派遣労働者、非正規雇用労働者の実態。これでいいのかと大きな問題になっています。それは、民間企業だけの問題ではありません。ここでは、学校現場の非正規雇用教職員の問題についてお伺いしたいと思います。
   第一は、数百人の教員が「定数内講師」とよばれる、身分不安定な立場に置かれていることです。教育委員会が、教員採用試験の合格者を絞っている。その結果、教員免許を持っているけれども採用試験に合格していない方を「講師」として採用します。
   次の年度に正式採用されようとすれば、採用試験に合格しなければなりません。しかし、大変な学校現場で子どもとの真剣勝負をしていると、ペーパーテストの準備ができないで悩みます。
   こうして、教育現場で経験を積み、情熱を持ち、まわりから力量を認められながら身分不安定なままで教育に取り組んでいる方が大勢いらっしゃる。
 私は、すぐにでも、定数内講師を半分以下に減らすだけの教員採用をすべきだと思います。そして、定数内講師として経験を積み、試され済みの教員を優先して採用すべきだと思います。教育長は、それぞれどうお考えでしょうか。
 次に、さらに不安定な立場に置かれている教員の方がおられます。
 その第一は、産前産後休暇・育児休業など補充教員のみなさんです。
 その第二は、小規模の中学校で、免許外担当を解消するために「免外解消非常勤講師」というものが配置され始めたのは、学校や子どもにとってはありがたいことです。しかし、その講師の方は大変です。へき地にある3つもの中学校をかけまわらなくてはならない。時間講師だから、授業時間分しか給料がでません。しかし、授業したクラスで子どもの問題があれば、のこって相談することもあるでしょう。音楽の先生なら文化祭があれば、つききって取り組むでしょう。そういうことの保障はどうなるのでしょうか。
 こういう実態をどう考えられるのか、また、こうした問題を解消するためには、一定数の教員をプールして産休補充・免許外解消など各種のしごとに派遣するのが一番いいと思いますが、教育長はどうお考えでしょうか。


《答弁者》 教育長
   定数内講師につきましては、少子化による児童生徒の減少や学校の統廃合などによる今後の定数減と定年前での退職者数に対応するため、一定数は必要であると考えております。近年、新規採用教員を300名近くに増やし、定数内講師の減少に努めているところでございます。
   教員採用検査における講師経験のある受検者に対しましては、筆答検査の一部を免除する制度や実技検査に模擬授業を導入するなど、経験や能力が適切に評価されるよう、選考方法の工夫改善に努めております。
   非常勤講師につきましては、授業のみを担当することが職務になっておりますので、行事等での指導や職員会議等への出席は、その対象外となることをご理解いただきたいと存じます。
   議員ご提案の一定数の教員を任用しプールしておくという制度の導入は、人材を効率的に活用するという観点から困難と考えます。
   教職員定数については、厳しい財政事情ではありますが、毎年国に要望しているところでございまして、今後とも要望してまいりたいと存じます。


《再質問》 雑賀光夫 県議
 教育長に再質問させていただきます。
 定数内講師を減らす努力をしているとの答弁ですが、結果としてへらされていません。
 小中高あわせて、定数内講師は、平成15年には、461人でした。平成20年には522人と61人も増えている。
 退職者が増えているから採用人数を増やしても追いついていない。定数内講師は増えています。これでは減らす努力をしているとはいえません。
 これ以上過去のこと、この答弁が事実と違っていることは責めませんから、今度は、本当に定数内講師を減らすという結果を出すことを約束していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。


《再答弁者》 教育長
   教員の募集人員のことに関しましては、教育委員会だけでなかなか決定できない部分もありますけれども、ご承知のように、できるだけ結果としてですね、減少させる方向をめざして教育委員会としては努力をしてまいりたいというふうに考えます。

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6.地上テレビ放送のデジタル化について

《質問》 雑賀光夫 県議
   第6の柱は 地上テレビ放送のデジタル化についてであります。

 昨年の6月の県議会でもお伺いいたしましたが、2011年がまじかにせまってまいりますと、利用者一人一人の側から、私の家はどうなるのか、どうしたらいいのかという質問が寄せられています。ますますきめ細かな対応が必要です。
 アメリカではオバマ大統領が一定期間実施を延期したということもありました。進展具合によっては、そういうことが必要な場合もあるとおもいます。
 そこでお伺いいたします。
@ その後の国の難視聴対策の進展はいかがでしょうか。


《答弁者》 企画部長
   国の難視対策につきましては、知事を先頭に国に対し精力的な要望活動等を実施してまいりました。
   その結果、平成21年度の国の予算では、共聴施設の新設に対する補助率の拡充、経済弱者への受信機等の無償配布など、前年度比8倍の大幅な増額がなされたところです。
   また、NHKによる支援策も新設され、共聴施設改修時の住民負担が大幅に軽減される見込みとなりました。
   県としては、これら支援策を効果的に活用できるよう、国や市町村等と調整を図って参りたいと考えております。


《質問》 雑賀光夫 県議
A 点在する難視聴地域対策など、利用者の側から見て分かりやすい説明をお願いしたいと思います。


《答弁者》 企画部長
   県では昨年5月に策定した「難視解消ナビゲーター」により、難視地域毎に具体的な対策を提案し、市町村と連携して住民説明会を随時開催してございます。説明会では、その地域の実際の受信調査結果に基づきまして、より具体的でわかりやすい説明を行うこととしております。今後とも要望があれば、すみやかに説明に伺いたいと考えております。
   こうした取組により、本年2月現在で、県内717箇所の難視予想地域のうち460箇所で既に対策が完了したか又は目途が立ち、デジタル対応は着実に進んでいると認識しております。


《質問》 雑賀光夫 県議
B 今後の取り組みについて、県としての考えはいかがでしょうか


《答弁者》 企画部長
   現在のところ難視解消に向けた取組は着実に進んでおり、県としては、引き続き2011年7月の地上デジタル放送への完全移行に向けて、国やNHKの支援策等を活用しつつ、市町村・住民に出来るだけ負担が発生しないよう、地デジ難視ゼロを目指し取り組んで参りたいと考えております。


《要望》 雑賀光夫 県議
 地上デジタルの問題は、対策が進行中であります。国とNHKが責任を果たすように、求めながら対策をすすめていただきたいと思います。
 ただ、努力したけれども、衛星放送というセイフティネットに頼らざるを得ないという事態になる場合がある。その場合は、地域の天気予報や災害情報は入らなくなる。どこまで国民の中で対応が進められるかという問題もある。そうした場合は、アナログ放送の継続も必要ではないかと思います。こうしたことも働きかけていただかなくてはならない場合もあるということを申し上げておきたいと思います。



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09年2月県議会、雑賀光夫 一般質問=3月10日
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