2009年2月県議会 奥村 規子 一般質問
2009年3月9日
@ 雇用対策への対応について
A 介護保険制度の改善について
(1)介護報酬の改定と介護職員の労働条件の改善、人材不足解消について
(2)介護保険料・利用料の減免、免除制度の実施・拡充について
(3)要介護認定制度の見直しについて(要望)
B ひとり親家庭への支援策について
(1)県単独医療費助成制度の継続について
C 障害者(児)のスポーツ振興について
(1)障害者(児)スポーツの発展のための基本的な考え方
D 再質問(要望)
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@ 雇用対策への対応について
《質問》 奥村規子 県議
議長のお許しを得ましたので、4点にわたって質問させていただきます。
1点目は雇用対策への対応について、知事にお尋ねします。
日本の経済は、かつて経験したことのないスピードで悪化していると言われています。そのような中で経済不況により、雇用問題が一挙に表面化してきました。派遣社員や期間社員などの非正規雇用労働者を対象にした大量整理解雇が起こっていることです。私の身近なところでも「派遣切り」があらわれています。知り合いの甥御さんや元同僚の息子さん、そしてその友達など、みな20代の若者です。彼らは和歌山市内のある大手企業の派遣労働者として働いていました。ところが昨年の11月に突然、派遣契約の解除を言い渡されました。その時は自分の身に何がおこったのか分からず、頭の中が真っ白になり、しばらくしてやっと「何で?
まじめに3年近くも一生懸命働いてきたのに・・・」と自分に問いかけてみても答えが見つからなかったと言われていました。今も失望と屈辱の気持ちをもったままです。幸いに会社の寮ではなく実家から通勤していたために、住むところがないということで路頭に迷うことはありませんでしたが「不況だから、仕方がない」という言葉では片付けられません。
もし私自身が、家族が突然会社から「来なくていい」と言われればどれだけ理不尽さを感じ、悔しい思いをすることでしょうか。働く場がない、働くことができないということは暮らしが成り立たないだけでなく、生きることができないということです。
そもそも派遣と言う働き方に大きな問題があると私は考えます。
政府は戦後の労働法制を戦前戦中の反省を踏まえ、直接雇用を原則としました。この原則に風穴を開けたのは1985年制定の労働者派遣法です。1996年には対象業務が16から26に拡大され、1999年の対象業務原則自由化、2004年には製造業にも拡大するなど、労働法制の規制緩和により低賃金で使い捨てができる非正規雇用「働く貧困層」を一挙に拡大させました。派遣労働者や期間工の雇い止めや解雇をどう抑えて働く権利を守るのかが政治に問われていることではないでしょうか。安定した仕事こそ県民生活の基盤です。本来、自治体の役割は県民のいのちやくらしを守ることです。その立場で景気対策とともに雇用対策にかつてないほどの力を注がなければならないと考えますが、知事に雇用対策についての基本的な考えをお尋ねいたします。
《答弁者》 知事
世界同時不況の深化により最近では、正規労働者の削減や新規採用者の減少なども報じられております。今後ますます雇用情勢が厳しくなるものと認識しております。
このような状況のもと、先日から、多々同様のご質問にお答えしておりますが、県といたしましては、雇用の確保、雇用のミスマッチの解消のため、「和歌山で働きませんか」等の3つのプロジェクトを立ち上げるとともに、「ふるさと雇用再生特別交付金」等の基金を活用した雇用・就業機会の創出に鋭意取り組んでおります。
同時に、将来の成長する産業を支援することにより、新たな雇用が増大していくということが大事でありまして、長期的な観点から雇用の拡大に努めてまいりたいと考えております。
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A 介護保険制度の改善について
《質問》 奥村規子 県議
2点目は介護保険制度の改善について、福祉保健部長にお伺いします。
1つ目は介護報酬の改定と介護職員の労働条件の改善、人材不足解消の問題です。
昨年の9月議会でも関連質問をさせていただいていますが、2009年4月は介護保険制度開始10年目の年で、3度目の見直しがされます。依然として介護現場では劣悪な労働条件により、人材不足が深刻です。朝日新聞の記事に「受け持つ24人が認知症 夜勤明け体重1.5キロ減」という見出しがありました。施設に働く、ある介護福祉士さんの夜勤の様子です。夕食時、足腰の弱ったお年寄りを一人ずつ食卓に導きながら徘徊している方への対応、何十回も同じことを大きな声で尋ねる入所者さん、テーブルで言い争う声に仲裁に入りながらトイレ介助のランプの点滅に気づき走ってゆく。夜勤は週1回以上、学生時代の仲間が半数介護職を離れ、職場でも次々と辞めていく状況だと言います。
県からも国に向けて要望を上げられましたが、今回の報酬改定で介護報酬が3%引き上げられることになりました。また、介護報酬の引き上げは介護保険発足以来はじめてのことですが、これで労働条件が改善され、人材不足が解消されるでしょうか。「人に役立つ仕事をしたい」と目を輝かせて話してくれた専門学校に学ぶ学生さんに、希望を与えることができるでしょうか。老人保健施設で働く○○さんの、「ゆっくり丁寧に介助したい」という願いに応えられるでしょうか。
介護労働者の離職率は全産業平均より約5ポイントも高い21.6%。介護福祉士の国家資格を持つ約47万人のうち、実際に福祉・介護に従事する人は約27万人にとどまっています。
厚生労働省の統計調査では、施設で働く介護職員の給与水準は全労働者平均の6割です。利用者が怪我をすれば対応を問われ重責を負う仕事でありながら、給与は看護師の半分という状況です。あるデイサービスの事業所では月たった5万円の増収で、スタッフ1人当たり2,000円にも届かないということです。また、ある老人保健施設では、1.3%の増収にしかつながらないといっています。「自分の所はまだいいほうで、全くゼロの所もある」ということです。大規模施設でも月300万円で8〜9%の増収になりますが、それでもボーダーラインといっています。「経営状況から賃上げは厳しいが、政府が処遇改善を大宣伝してきた中で賃上げがなければ離職に拍車がかかりかねない。努力しなければ」と頭を痛めています。訪問介護事業所では、介護福祉士が職員の30%を超えるなどの要件を満たすと、報酬が10〜20%増える特定事業所加算があります。特定事業所加算をとれば月に23万円の増収、職員で割れば月6,000円にも届かず、特定加算をとらなければ報酬改定による増収は月に5万円ほどだということです。一方、加算をとると利用料が上がり、限度額ぎりぎりまで使う困難な人が利用できなくなる事態も懸念されます。いずれにしても、介護職の処遇改善に結びつく報酬改定なのか疑問を持つところです。福祉保健部長はどのようにお考えですか、お聞かせください。
《答弁者》 福祉保健部長
議員ご指摘のとおり、介護保険事業所等における人材不足が深刻な状況にあることから、平成21年4月の介護報酬改定につきましては、介護従事者の人材確保・処遇改善を基本的な視点の一つとして、3パーセントプラスの改定が、国において決定されたところでございます。
県といたしましては、人材確保のためには、介護職員の給与を含めた労働条件や処遇の改善が必要不可欠であると認識してございます。
国におきましては、来年度、介護報酬改定の影響を検証する事業として、改定前と改定後の介護職員の賃金をはじめとした処遇状況等について実態調査を行うこととされており、こういった検証事業等を通じ、真に介護職員の労働条件の改善や人材の定着につなげていくことが重要であると考えてございます。
また、県の介護職員確保施策につきましては、「和歌山で介護の仕事をしませんか」プロジェクトを立ち上げ、就職相談会の開催や国の助成金を活用した介護人材確保支援などにより、介護職員の確保に努めてまいりたいと考えてございます。
《質問》 奥村規子 県議
2つ目は介護保険料の改定の問題です。65歳以上の高齢者の介護保険料は、現在の第3期は県平均で月額基準額4,513円ということですが、県民の負担感も深刻な経済状況の中で一層大きくなっています。
厚生労働省調査では、各市町村には高齢者から取りすぎた保険料が推定3,800億円も積み立てられているということです。
基金の県内市町村の状況はどうでしょうか。また今回の保険料改定で、この基金を取り崩して保険料軽減に当てられるのかお聞きします。また、保険料・利用料の減額、免除制度の実施・拡充をし、安心して必要な介護を受けられるようにすべきと考えますがいかがでしょうか。市町村が導入できるような軽減制度を県としてつくる考えはありませんか、福祉保健部長お答えください。
《答弁者》 福祉保健部長
平成21年度から23年度までの第4次介護保険事業計画では、県内22保険者において保有する介護給付費準備基金約28億円ございますが、28億円のうちその約88%を、保険料軽減のために繰り入れる予定と聞いてございます。
また、介護保険制度における第1号被保険者の65歳以上の方の保険料でございますが、被保険者の負担能力に応じた負担を求めるという観点から、現在、所得段階別に6段階から8段階の保険料率が設定されており、低所得の方の負担が軽減される制度になってございます。
さらに、第4次計画では、県内21保険者において、低所得者の方への配慮といたしまして、基準負担段階でございます第4段階で公的年金収入金額及び合計所得金額の合計額が80万円以下の被保険者に対して、その基準額に乗じる保険料率を軽減する予定となってございます。
次に、利用料につきましては、各種の軽減措置に加えて、平成20年4月から高額医療・高額介護合算制度が実施されているところであり、また、21年4月からは社会福祉法人等による利用者負担軽減措置の軽減幅の拡大も予定されてございます。
今後、こうした被保険者の負担能力に応じた利用料の軽減制度等について、より一層の普及啓発に努めるとともに、保険者に対して必要な助言を行ってまいりたいと、そのように考えてございます。
《要望》 奥村規子
県議
3つ目は要介護認定制度の見直しについて、要望をしておきたいと思います。
介護保険を利用するために必要な要介護度の調査と認定の仕組みが、来月の新年度から変更になります。
介護保険サービスを利用するためには、要介護度の認定(「非該当」「要支援1、2」「要介護1−5」の8段階)を受ける必要があります。コンピューターによる1次判定、3人以上の専門家で構成する認定審査会による2次判定が行なわれます。軽度に認定されるほど、保険で受けられるサービスの限度額が低くなるというものです。これまでも要介護認定のしくみは、認知症の人などを中心に実態がきちんと反映されないと言う声があります。また、状態には変化がなくても軽度に変更されることが増え、問題となっています。
今回の見直しは調査項目が減り、調査員が気づいた点を伝える「特記事項」の欄も減っています。実態が反映されるのか、一層軽度に判定されるのではないか、と批判の声も多いです。
政府が行なったモデル事業の結果では、現介護認定から軽度に認定される人が20%、重く認定される人は16.7%であったと聞いています。「要介護」から「要支援」に軽度変更された場合、施設に入所できなくなり訪問介護の利用も制限されることや、「要介護2」以上から「要介護1」以下に変わると、電動ベッドなど福祉用具が原則として利用できなくなります。「非該当」では介護保険のサービスを利用できません。
現状態が変わらないのに軽度に判定され、生活上の困難が生じていないかなど実態をきっちりと把握し、特に軽度に認定された場合のケースについては、県民に不安を与えることのないように充分な検討と県独自での支援の在りかたも含め、丁寧な対応に努めていただきたいと思います。以上は要望とします。
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B ひとり親家庭への支援策について
《質問》 奥村規子 県議
3点目はひとり親家庭への支援策について、福祉保健部長にお尋ねします。
国民生活基礎調査によると、母子世帯が年々増加しており、父子世帯を合わせると全世帯の1.9%を占めています。父子世帯の場合、児童扶養手当の対象とならないので、最近の経済状況の中で要望も強くなっています。
しかし、父子世帯に比べ圧倒的に多い母子世帯の平均所得は、2005年では212万円です。就業率80%以上であっても、全世帯や他の子育て世帯との経済格差は年々拡大し、母子世帯の相対的な貧困はかつてより高まっているといえます。2004年に実施した県の調査では、66%は年収が200万円未満で、児童扶養手当や児童手当が含まれています。就業の半数以上がパートや臨時雇用です。
知人の彼女も7歳と5歳の子どもを抱え、がんばっています。夫の暴力から逃れるため県外から移り住み、パートで働きながら子育てをしていました。正社員になれたときは大変喜んでいましたが、子どもが病気になったときは休まなければならないのでつらいと言います。採用面接では「子どもが病気など、何かある時は見てもらう人があるか」と確かめられることが多いと言います。将来の教育費のことも心配で、生活費を必死になって節約しているということです。普通に一生懸命働いても楽にならない現状で、根本的には就業条件を向上させる実効的な施策と子育て環境をよくすることが急務です。
このような中で、県単独医療費助成制度の一部自己負担の導入は、さらに不安を大きくするものでした。しかし、継続を求める県民の大きな声で、今年度の実施は見送られました。
ある子ども専門の診療所では、毎月約1割の患者さんがひとり親世帯の子どもだということです。子どもの場合は特に感染疾患が多いため1度の受診では済まず、2度、3度と受診することが多い中で、さらに眼科や耳鼻科など他科を受診しなければならないケースもあり、自己負担の一部有料化は家計を圧迫します。
気軽に受診できることは重症化を防ぎ、何よりも子どもの健康・いのちを守ることができます。これは経済不況が深刻化する中でひとり親世帯のみならず、重度心身障害者(児)や老人の方にも通じることです。医療を気軽に受けることができるということはとても大切です。是非、今後もこの制度を継続していただきたいと思います。
福祉保健部長いかがお考えですか。お聞かせください。
《答弁者》 福祉保健部長
ひとり親家庭医療費助成制度をはじめとする県単独医療費助成制度につきましては、対象となる方々の健康の保持と福祉の増進を図るため実施しているものでございまして、基本的には、今後も持続可能な制度とすることが何よりも重要であると考えてございます。
このため、今後とも本県の財政状況の動向や皆様からいただきましたご意見を踏まえ、引き続き検討してまいりたいと考えてございます。
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C 障害者(児)のスポーツ振興について
《質問》 奥村規子 県議
最後に、障害者(児)のスポーツ振興についてお聞きします。
誰もが健康で文化的な生活をいとなみ、スポーツを親しむことができる環境が必要です。今そのためには、何よりも雇用の安定、労働時間の短縮、賃金の引き上げ、そして安定した休暇や自由時間が取れることです。
また、誰もが身近でスポーツが楽しめる施設の拡充をスポーツ振興の根本にすえることが必要だと考えます。障害者や高齢者にも配慮した使いやすい施設の増設、耐震基準に見合った安全な施設の補修・改築、使用料の減額・免除の措置や指導・管理職員の増員でサービスの向上を図ってゆくことが求められています。スポーツを通じて自分を発見し、より人間らしい生活を築き、地域社会の構成単位としても大切な役割を果たします。一人一人が主人公となるスポーツ活動や自主的なスポーツ活動を支援してゆくことは、スポーツが本当に文化として発展していく上で大切なことです。
先日、女性団体のかたがたと大阪市長居障害者スポーツセンターを見学してきました。私が一番見学したかったのはプールなどの更衣室でした。障害のある男の子を育てられているお母さんから、スポーツ施設利用の際、更衣室で困っている話をよく聞くからです。
このことはほんの一例だと思いますが、2015年には第70回国民体育大会・全国障害者スポーツ大会が開催されることもあり、より一層、障害のある人、誰もが親しめるスポーツ発展のための基本的な考え方を福祉保健部長にお尋ねします。
《答弁者》 福祉保健部長
平成27年に国民体育大会が和歌山県で開催される予定となっておりますが、本大会開催後には、全国障害者スポーツ大会が開催される予定です。今後、障害者スポーツの指導者やボランティアの育成等、障害のある方々のスポーツに参加できる環境づくりを進め、この大会を成功させるとともに、この大会を機に、より多くの障害のある人たちが、様々なスポーツに親しむことができるよう、障害者スポーツの振興を図ってまいりたいと、そのように考えてございます。
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D 再質問 (要望)
《要望》 奥村規子 県議
知事にいただいた答弁の中での「景気を良くしていく」ということも大事ですが、景気を良くしていくために、先ほど私いろいろ申し上げました、働くところがなく失業されている方、ひとり親家庭の方、そういう所得が200万、300万円の方が県内にどれだけいらっしゃるかというのは当然分かることですし、その中での施策をまず充分やっていくことが大事ではないかと思います。
先ほども挙げた、介護の現場が大変で人材を求めている状況もありますし、例えばいま県では第6次看護需給計画、需給見通しというものがある中で、毎年600人、700人が不足しているといった数字がちゃんと出ているわけです。
今の世界の金融危機から受ける大変な状況の表れ方が、和歌山は少し遅いのではないかというお話も先日お聞きしましたが、体力が充分ある県ではないということも知事はときどき言われますし、それが表れてきたときには非常に大変な状況になると思うんです。特にどこで表れてくるかといえば、先ほど言いました若い人たちや、また、収入が少ない方、ひとり親家庭の方たちであり、そこに対する施策を充分とっていただきたいと思います。
先ほど「働きませんか」ということを取り組むといったお話もありましたが、働く場があったとしても、労働条件や環境整備が充分でなくては、本当に定着するかどうかという問題がまた出てくると思うんです。
ある労働組合の方たちがとられた統計で、例えば病院で働く人たちの統計が出ている中では「公休がなかなか取れない」や、また、年次有給休暇の取得状況をみても6日以下が6割で、「昨年度1年間の年次有給休暇の取得はゼロだった」という報告もあるわけで、そういった労働条件、環境をきちっと整備することと、そのためにはまず人材確保が必要であり、社会保障、福祉や医療の分野でしっかりと人を確保し入れていくという施策をぜひ思い切ってしていただきたい。
テレビなどで聞いていても「100年に1度の金融危機」だと政府や閣僚の中で言われる人もありますが、それならやはり、雇用対策もそれぐらい力を入れてしないといけない状況ではないかと私は思っています。
ぜひともそういった既に不足だと分かっているところに、しっかりと働ける条件づくりや環境づくりを取り組んでいただきたいと思いますので、要望をさせていただきます。
以上でございます。