2009年6月県議会 松坂 英樹 一般質問
 2009年6月23

1.高すぎる国民健康保険料(税)について
(1)県内自治体の保険料(税)について
(2)保険料(税)滞納世帯数の推移
(3)負担軽減に向けての取組み
2.有田川の防災・環境対策と二川ダム
(1)多目的ダムの今日的役割について
(2)有田川の「整備基本方針」と「整備計画」について
(3)二川ダム発電用水利権更新について
(4)有田川の堆積土砂撤去と立木伐木
3.学校耐震化
(1)県内小中学校の耐震化進行状況
(2)市町村への働きかけと支援
4.「道州制」と関西広域連合
(1)府県制度の役割、「道州制」と地方分権について
(2)和歌山にとっての「道州制」「関西州」とは
(3)「道州制」と関西広域連合の関係
5.煙樹ヶ浜水際地雷訓練
(1)県立自然公園での軍事訓練に対する姿勢

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1.高すぎる国民健康保険料(税)について
(1)県内自治体の保険料(税)について
《質問》 松坂英樹 県議
 まずはじめに、高すぎる国民健康保険料(税)の問題で質問をさせていただきます。
 国民健康保険料または保険税について、以降便宜上保険料とさせていただきますが、この保険料の負担がたいへんだという声がここ数年で大きな社会問題となってきました。先日の新聞報道でも、保険料の格差が「全国で3.6倍、近畿で2.8倍」と大きくとりあげられました。こういった格差が指摘されるほど、どんどん保険料が高くなっている自治体があり、負担に耐えられない状況がひろがっているということではないでしょうか。
   議場への※配付資料をご覧下さい。県内の保険料の比較、今回のモデルケースでは、年間所得200万円、40歳代夫婦、未成年の子2人の4人世帯、持ち家で固定資産税5万円というケースで比較したものです。08年度の県内保険料格差は約1、8倍となります。そして09年度も、まだ審議中のところもありますが、すでに明らかなところを見ても、値上げ傾向が続いています。昨年度の高額トップ5の中に有田振興局管内の1市3町がすべて入っているというひどい状況です。今月から今年の保険料の納付書が各世帯に送られているわけで、県民の関心も高い時期です。私はこういった状況を見て、なぜこうなってきているのかという問題意識をもって質問をさせていただきたいと思います。
   この間、国保料の値上げによって現役世代や中間所得層の保険料負担が高騰しました。湯浅町の欄を見ていただくと、一昨年26万7200円だった保険料が、昨年は倍近い46万6400円にはね上がったわけです。全国一の値上げ率でした。おとなりの広川町でも26万円だった保険料が41万5900円にはね上がっています。有田川町でも32万3200円が39万5700円に上がっているわけです。
   国民健康保険をめぐる状況としては、この間の「構造改革路線」による所得税減税廃止・税控除縮小などがモロに影響し、高齢者の住民税、それに連動して国保料・介護保険料負担が3年前から急騰をはじめました。これに国保料の値上げがダブルパンチとなっているのです。
   具体的に例を上げますと、有田川町の仮にAさんとしますが、65才単身・年金収入180万円のケースでは、住民税・国保料・介護保険料を合計すると2005年には4万5300円でした。3年後の2008年にはダブルパンチで18万9200円になりました。そして今年は介護保険も値上がりしたのでとうとう20万2700円と、以前の約4、5倍になってしまう計算です。
   こうした国保保険料値上げが、長引く不況と昨年からの経済危機により深刻な打撃を受けている県民生活を直撃しているのです。
   そこで知事にお尋ねします。知事として、県民の暮らしの実態把握については、県としての組織を通じて、また直接政治家として県民の暮らしの悩みや苦労をお聞きすると思います。この国民健康保険料について、今の保険料負担について、実際、知事はどう感じていらっしゃいますか。心を痛めていますか。先ほどの所得200万円のモデル世帯での試算では、所得の2割をこえる保険料負担の自治体もあるんです。平たく言って1か月、2か月分の収入が国保の支払いだけで消えてしまうというのは、たいへんなことです。国保は今、えらいところまできているのではないでしょうか。知事は政治家として、国保料の県民負担をどう認識しているかをまず答弁をお願いします。


《答弁者》 知事
   国民健康保険は、国民皆保険の根幹となる制度でありますが、被保険者に低所得者や高齢者が多く、保険料負担能力にも限界があり、加えて医療費も増大しているため、財政基盤が脆弱であるという構造的な問題を抱えております。県と市町村の懸命な運営努力にも関わらず、ご指摘のような保険料の状況が生じたものと認識しております。


《質問》 松坂英樹 県議
   またこの保険料について福祉保健部長にもお尋ねします。保険料高額のトップ5に入った有田1市3町や和歌山市をはじめ、国保料の高騰がすすむ県内自治体・保険者の状況を、県としてどう分析し、認識しているのでしょうか。
   国保会計の赤字に加えて、自治体本体の財政危機の影響が大きな要因ではないでしょうか。また加入者の状況としては、国保は無職の加入者が約半数を占めるにいたり、本来想定していた自営業や農業の占める割合は2割にまで下がっています。このような所得や年齢の構造的な要因、加えて雇用・経営状況の悪化などの要因があると思います。所得が少ない人には軽減措置がありますが、全体の中でこの軽減措置を受ける世帯が占める割合も増えているのではないでしょうか。また、保険料算定時の各種追加負担や国からの冷たいペナルティーなども影響していると考えます。
   しかし何より根本には、国庫負担の削減による財政悪化と国保加入者の貧困化があり、保険料値上げをする、滞納者が増大する、国保財政が悪化する、また保険料を値上げする、こんな悪循環を生んでいます。
   福祉保健部長からも保険料に対する県としての認識をお聞かせ下さい。


《答弁者》 福祉保健部長
   国民健康保険の被保険者には無職の方が多く、また高齢者の占める割合が高いといった特徴があり、県内の保険料軽減を受けるような低所得者の割合も、平成17年度46.4%から平成19年度47.9%へと増加しております。
   また、本県の国民健康保険特別会計の単年度収支につきましては、基金の取り崩し等の影響を除きますと、平成19年度においては、21の保険者すなわち市町村が単年度赤字であり、4保険者が累積赤字を計上するなど、厳しい運営状況が続いております。
   現在の保険料の水準につきましては、このような被保険者世帯の所得・資産の状況や国保事業の運営状況等を勘案し、市町村の国民健康保険運営協議会等において審議を尽くし、決定されたものと認識しております。


(2)保険料(税)滞納世帯の推移
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、保険料の滞納世帯の推移についてお尋ねします。保険料滞納者からの保険証とりあげが問題になっています。保険料のあいつぐ値上げによって保険料の滞納にどう影響が出ているのか心配です。県民にとっても、また国保会計にとっても滞納は問題を一層深刻化させます。
   そこで福祉保健部長にお尋ねします。経済状況の悪化と国保料の高騰による保険料滞納への影響はどうか。滞納世帯数の推移と最新の数字をご答弁願います。


《答弁者》 福祉保健部長
   全国の平成15年から19年における国民健康保険滞納世帯の割合は、18%から19%で推移しており、平成20年には20.9%となっております。
   本県における平成20年の滞納世帯数は、38,073世帯で、その割合は20.7%となっております。
   平成21年の滞納世帯の状況につきましては、本年8月に概ね確定いたしますが、経済状況の悪化等による滞納世帯数の増加も懸念されるため、注視しているところです。


(3)負担軽減に向けての取組み
《質問》 松坂英樹 県議
   さて、国民健康保険制度は国民皆保険の根幹をなすもので、国保法第一条には「社会保障及び国民保険の向上に寄与することを目的とする」とうたっています。法の趣旨からも、また加入者の性格からみても本来「相互扶助」的性格よりも、公的社会保障の制度というのが基本だと考えます。私どもはまず当面の課題として、国の「構造改革路線」で削減された社会保障予算、毎年2200億円ずつ削減されてきたものを復活させて国庫支出を引き上げ、国保料を一人1万円引き下げよと求めているところです。
   県内市町村の国保会計の状況、県民負担の高騰という中で、和歌山県としては、県民の負担軽減のためにどう取組もうとしているのでしょうか。
   低所得者への減額・免除制度の拡充、所得に応じた保険料算定方式の見直し、生活困窮者からの保険証取上げ中止などの改善をすすめるとともに、国に対しても加入者負担軽減のためにこの際強く働きかけを行うなど、県としてもこの問題にいっそう取組むべきではないでしょうか。
   また、市町村国保会計に対して行っている県単独福祉医療の4つの制度による現物給付ペナルティー分の補てんですが、老人医療・重度心身医療の2つだけでなく、のこりの乳幼児・一人親医療の2つの分についてもおこなうべきではないでしょうか。
   県の負担軽減にむけての取組みについて、知事ならびに福祉保健部長より答弁をお願いします。


《答弁者》 知事
   県では、平成21年度、国民健康保険を財政的に支援するため、一般財源で約92億円の予算措置を行っております。このうち約70億円は、平成17年度の三位一体改革により、新たに県が市町村を支援することとなった経費であります。
   私は、どのような地域に住んでいようとも、国民に等しく医療を受ける権利を保障するということは、これは国の責務の根幹をなすものであると考えております。現在、国政の場において、医療保険制度の改革が議論されておりますが、これまでも、国民健康保険などが抱える構造的な問題を解決し、負担と給付の公平化、安定した制度運営を将来にわたって確保するため、国の責任において、すべての医療保険制度の全国レベルでの一元化に向けた具体的な道筋を早期に提示することを主張しております。
   医療保険制度の一元化が図られるまでの間は、国に対して国民健康保険の財政基盤強化策等の一層の充実を要望してまいりたいと考えております。


《答弁者》 福祉保健部長
   現行制度による低所得者に対する保険料軽減措置に加え、今回の経済危機対策として、失業者の方で収入が激減している場合等に、必要に応じ保険料の分割納付や徴収猶予、減免などに配慮することを、市町村に指導しております。
   次に、老人医療費と重度心身障害者医療に加えて、乳幼児とひとり親医療の実施による国庫負担金減額措置に対する県費助成につきましては、現在の厳しい財政状況から困難であると考えております。
   県といたしましては、これまでも国に対して、福祉医療の必要性を訴え、国において早急に福祉医療費の公費負担を制度化することや、地方単独福祉医療制度の実施に伴う国庫負担金減額措置の廃止を要望してきたところであり、引き続き国に要望してまいりたいと考えております。


《再質問》 松坂英樹 県議
 要望するとともに、1点、知事に再質問をさせていただきます。

 まず要望ですが、部長からは県内自治体の各種数字も示していただきました。3分の2が単年度赤字という状況だとか、保険料を軽減されている世帯数が大変多いということも紹介されました。しかしまだまだ分析・指導は不十分だと指摘せざるをえません。また「滞納世帯数」も3万8,000世帯・20%、大変深刻な数字だと思いますが、その数字もまだ昨年6月の数字しか出せない仕組みでは、テンポが合わないと思うんです。
 昨年大幅に引き上げた自治体の議論を聞きますと、これまでは基金を取り崩しながら保険料を抑えてきたが、とうとう基金も底をついた。だからもう単年度で赤字は出せない。では保険料はこういった計算式で出さざるを得ないという国からの指導にそって保険料を設定したら、ここまで値上げをせざるを得ないという説明だったそうです。それに対して審議会や議会では、その計算は一面的ではないかとか、そこまでいっぺんに上げると上げすぎではないかという議論もあったようですが、しかし決論的には地方財政が厳しい折、町民に負担を求めざるを得ないという議論が支配的な状況であったそうです。
   これは保険者と住民がしっかりと舵取りをすべき問題ですが、本当にその見通しが的を得ていたのか、県民町民への影響はどうか、国保財政は結果として決算で見てみたらどうなったのかなど、きっちりとフォローし、指導してゆくよう要望します。

 その上で、負担軽減にどうとりくむかという姿勢を知事に再質問させていただきます。知事も先ほどの一覧表を見て、「えらいことになっているな」という感想をお持ちだと思います。知事は答弁の中で、国保は国民皆保険の根幹だという認識を示されました。その国保が各自治体の努力にもかかわらず、本当にたいへんなところまできているという認識で一致できたと思います。
   また、この間の三位一体改革の中で、新たに70億円の重い県の負担が発生していることも示されたと思います。部長の答弁の中には、福祉医療がその趣旨からして窓口負担のいらないように配慮しているものを、現物給付しているのにそこまで国はペナルティーをかけてくる、そのペナルティーは国の減額をやめるように要望しているということも答弁されました。
   ご答弁いただいた中身からみて、この国保の問題、本当に国の果たすべき役割、責務が問われているということだと思います。
   そこで、知事にお尋ねしますが、国がこの姿勢を転換しようとすれば、私も先ほど指摘いたしました、毎年毎年、社会保障関連予算を2200億円ずつ削減してきたこの計画をちゃんと撤回してもらわなければダメだと思うのです。国政レベルでもここ数日これが焦点となっておりまして、きのうの財務大臣の発言や今日の会議でも大変迷走をしているようです。決着は国政の場でつけるにしても、この政治の大きな舵取りについて、和歌山県の知事として、地方政治の立場から、物を申すべき絶好のタイミングではないかと思うんです。国に対して国保財政基盤の充実強化を求めるのなら、この社会保障2200億円削減計画はもうやめるべきだと今、国にせまるべきではないでしょうか。
 知事の考えを再度お示しいただきたいと思います。



《再答弁者》 知事
   私は、現状市町村がいかに困っているか、それから市町村の住民がいかに困っているか、こういうことについてはですね、和歌山県の実情をふまえて訴えていかないといけない。それから原理原則論としてやっぱり国としてはすべての国民に対してきちんとした責任を持つべきだと、これは地方分権の世の中でも日本全体として絶対にそうすべきだということだと思っております。
   ただ、国の財政の中身がどういう懐具合にどうなっているのかというようなことについて、私は、まだ少なくとも今、それから将来においてどのくらいかわかりませんが、十分な材料を持っていません。
   従って国政に対して2,200億円をどうするかこうするかということについてですね、私は現在のところ、どうすべきかということを申し上げる立場にないと思います。
   ただ、この国保の問題については、きちんとやってもらわないと困る、それを訴え続けてまいりたいと考えております。


《再々質問》(要望) 松坂英樹 県議
   意見を言う対場にないという非常に残念な答弁でありましたが、しっかり実情を伝えて、責任を持つべきだということは国に言っていくという立場を表明されたと思います。
 国保の問題は知事もおっしゃったように、1市町村の限られた条件では解決できない問題になってきているわけで、運営主体はあくまでも保険者・市町村ですが、県としても担当だけに任せるのではなく、福祉保健政策全般、市町村財政の担当など、広い立場でこの際プロジェクトチームを組むということもし、市町村といっしょになって対策を練るようなこともするよう、本腰を入れたさらなる対応を要望します。


2.有田川の防災・環境対策と二川ダム
(1)多目的ダムの今日的役割について
《質問》 松坂英樹 県議
   2つ目の質問として、有田川の防災・環境対策と二川ダムについて質問をさせていただきます。昨夜の雨で一息ついたものの、現在有田では記録的な雨不足・水不足で、ダムより上流の雨量が、この間ダム史上4番目に少ないという状況でした。しかし一方では、各地でのゲリラ豪雨の被害も伝えられ、雨の降り方の変わりように危機感をいだいています。私たち有田川流域の住民は、あの昭和28年の7・18水害から56年たった今も水害の恐怖が心の傷として残っており、有田川の災害対策は住民の切実な願いです。
   この有田川の災害対策を考えるとき、二川ダムの果たしている役割は大きいわけですが、ダム建設時には治水が最大の目的であったものの、電力事情の時代的背景や、農業・工業用水の確保、補助金の優位性等から多目的ダムとして建設されたものだと考えています。
   今日のゲリラ豪雨などの異常気象、森林の荒廃等による保水力の低下、河川環境への配慮などの点からも、発電優先のダム運用から治水能力向上へ、環境負荷を減らすため大量の水を貯めこまない運用、こういったものにこれからの時代は取組むべきではないでしょうか。多目的ダムの今日的役割についてどう考えているか、知事にご答弁をお願いします。


《答弁者》 知事
   二川ダムは、洪水調節という治水機能と、発電という利水機能の2つの目的を併せ持った多目的ダムであります。
   この二川ダムについて、治水機能の強化を図ることは、ダム下流全域の治水安全度の向上という観点から重要な選択肢の一つであると考えております。
   他方で、発電用の利水容量を治水容量へ転換することになりますと、これはその分だけ補償等々費用負担をしなければいけません。また、水力発電はクリーンエネルギーでありまして、これが減少するということにもなります。また現下の渇水において、よくお解りであると思いますが、ダム放流の部分を発電用の利水容量に依存している実状なども考慮する必要があると思います。現に、渇水対策で、地元で振興局を中心にして、議論しておりますが、こういう時はですね、発電が優先だということではなくて、関電も協力してくれていることは皆さんもご承知のとおりであります。従って、メリット、デメリットをよく見極める必要があるのではないか、こういう観点を踏まえ、今後、河川整備計画の策定を進める中で、関係者や地域の方々の声も良く聞きながら考えなければいけないと考えております。


(2)有田川の「整備基本方針」と「整備計画」について
《質問》 松坂英樹 県議
   次に有田川の「整備基本方針」と「整備計画」について県土整備部長にうかがいます。今年3月に、有田川水系河川整備基本方針が策定され、有田川の長期的な整備の基本方針をまとめたわけですが、これまでの県方針・計画を、どう見直しされたのでしょうか。
   また、この方針にもとづいて、今後策定される河川整備計画ですが、この「整備計画」においては、堤防をどう整備するのか、河床の上昇をどう抑えるのか、ダムをどう位置づけるのかというようなことが議論されると思うのですが、この整備計画が住民とともにしっかり議論される仕組みになるのでしょうか。
   「整備計画」は、新河川法の趣旨を生かし、住民参加で練り上げてゆくべきだと思いますがいかがでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   本年3月に策定致しました「有田川河川整備基本方針」は、治水安全度など基本的には従来の考え方を踏襲したものとなっておりますが、最新の気象資料の追加、既存の二川ダムの有効活用等を考慮した見直しを行っております。
   今後、河川整備計画を策定するにあたりましては、河川法に基づき、関係する住民の方々の意見を反映させるために必要な措置として、説明会或いは懇談の場を持ちパブリックコメントも実施するほか、関係市町村長の意見を聴いて参ります。


(3)二川ダム発電用水利権更新について
《質問》 松坂英樹 県議
   次に二川ダム発電用水利権更新について県土整備部長にお尋ねします。二川ダム本体完成から43年がたちました。来年2010年には、発電用水利権設定後45年目にして初めての水利権更新をむかえます。どれだけの水を発電用に使うか、貯めるかを許可する水利権です。先ほどお尋ねした有田川「整備計画」におけるダムの位置づけの検討や、発電所売却により水利権が移転した経緯、こういったものをふまえて、充分に地元協議も行いながら水利権更新内容を検討すべきではないでしょうか。ご答弁を願います。


《答弁者》 県土整備部長
   特定水利使用となる発電の水利権の許可につきましては、河川法第36条により関係地方公共団体の長に対し意見を聴くこととなっております。
   水利権の更新につきましても、同様の手続きを行うことになり、二川ダムに関係する下流域の市町の長の意見を十分に検討したうえで、更新手続きを進めて参ります。


(4)有田川の堆積土砂撤去と立木伐木
《質問》 松坂英樹 県議
   この問題の最後に、昨年度の補正予算に加え、今回の補正予算でも有田川の堆積土砂撤去と立木伐木に取組むとのことでありますが、その見通しについても県土整備部長よりお示しをいただきたいと思います。


《答弁者》 県土整備部長
   今年度、有田川町内におきましては、補正予算もあわせて、田殿大橋上流側と吉備橋上流側において実施する予定としております。
   具体的な実施位置や規模等につきましては、河床の堆積状況を精査のうえ地元のご意見も聞きながら適切に対応して参ります。


3.学校耐震化
(1)県内小中学校の耐震化状況
《質問》 松坂英樹 県議
 3つ目の質問の柱、学校耐震化についての質問にうつります。さる6月16日、文部科学省から学校耐震化の最新の数字が発表されました。昨年9月議会では、特に遅れていた県内小中学校の耐震化を求めて質問をさせていただきましたが、昨年の補助制度改善、それに加えて昨年の補正予算、現在進行中の新年度補正予算措置により、耐震化の工事完了・着手、事業計画・予算化などがどう進んでいるのか、県内小中学校の耐震化状況について答弁をお願いします。


《答弁者》 教育長
   学校施設は、児童生徒等が一日の大半を過ごす活動の場所でありまして、非常災害時には地域住民の応急避難場所としての役割を果たしますことから、その安全性の確保は極めて重要なことと考えてございます。
   県内公立小中学校の耐震化進行状況につきましては、お話のとおり平成21年4月1日現在の耐震化率は、昨年より4.9ポイント増の65.8%で、全国47都道府県中18位となってごさいます。
   本年度、国の補正予算における「地域活性化・公共投資臨時交付金」と従来の補助制度とを組み合わせることによりまして、過去に例のない財政支援を受けることができ、市町村の財政負担が大幅に軽減されることとなりました。
   これにより、現在のところ市町村は113棟を耐震化する予定でありまして、事業が全て認められれば、県内の小中学校の耐震化率がおよそ80%になる予定でございます。


(2)市町村への働きかけと支援
《質問》 松坂英樹 県議
 加えて、県内市町村への働きかけと支援についてお尋ねします。国としては、今年度の思い切った補正予算措置により、今年度と来年度の2年間で耐震化の実質的な目途をつけたいと考えているようです。この交付金事業にどう乗っていけるのかを市町村はけんめいに検討中なわけですが、その実情をお伺いすると、耐震改修・耐震改築の実質負担が結果的にどれくらいになるのかという不安、また、いっぺんに進めるとしたら工事の時期や工期、計画・発注・現場管理などの体制不足など、物理的・体制的な制約がつきまとっているという状況です。こういったものを乗り越えてゆくため、県として市町村に対してどう働きかけ支援してゆくのでしょうか。
 国に対しては 現場の実情に即した対応を求めるとともに、県内市町村に対しても、事業化にむけた市町村教育委員会と財政当局との連携推進、実際の事業推進の面でも積極的な指導援助をすべきだと思うがいかがですか。


《答弁者》 教育長
   県教育委員会といたしましては、小中学校の耐震化を推進するため、今年度中におきましても、取り組みの遅れている市町村に対しまして個別訪問を実施し、大幅な財政負担軽減が図られているこの機会を活用して、耐震化率100%を目指して取り組むよう、粘り強く指導助言を行うとともに、国において市町村の耐震補強事業等に係る申請が、速やかに採択されるよう働きかけてまいりたいと存じます。


4.「道州制」と関西広域連合
(1)府県制度の役割、「道州制」と地方分権について
《質問》 松坂英樹 県議
   引き続き、「道州制」と関西広域連合について質問させていただきます。これまでの「道州制」についての財界からの要請、道州制ビジョン懇談会など政府の動向、与党自民党案などを見ると、もう6年後の2015年から17年を目途に道州制導入をめざすなど、一気に都道府県の解体、道州制への移行をすすめようとしています。ところが、こうした一部の動きがあるものの、「道州制ってどういうことなのか」という国民的議論も合意もない中において、これでは「地方分権」どころか地方自治の解体ではないかと考えます。憲法にもとづいて本来国が責任を負うべき社会保障や教育をはじめ、国民の福祉とくらしを地方に押し付ける一方で、基礎自治体を住民から遠ざける、そんな「道州制」は、地方のいっそうの疲弊と地方自治の形骸化をもたらすものです。
   全国町村会は昨年11月26日に道州制導入反対の決議を採択しました。決議文では「これまでの議論は政府や財界主導によるものであり、主権者たる国民の感覚からは遊離したものになっている」「仮に道州制が導入されても、地域間の格差が解消されるとは到底いいがたく、むしろ、新たな中央集権体制を生み出すことになりかねず、道州政府と住民との距離も一段と遠いものになる」「道州制の導入によりさらに市町村合併を強制すれば、多くの農山漁村の住民自治は衰退の一途をたどり、ひいては国の崩壊につながってゆく」と断固反対を表明しています。また町村議長会も11月19日に「町村の実態を無視」しているとして道州制を実施しないよう政府に求める同様の特別決議を採択しています。
 知事は、現在の府県制度がもっている意味や果たしてきた役割をどう考えていますか。財界・政府などの推し進める「道州制」というものは、地方分権といえないのではないかと考えますがいかがでしょうか。知事のご答弁を願います。


《答弁者》 知事
   現行の府県制度の評価についてでありますが、私は和歌山県知事を務めておりますので、府県については、きちんと機能していると思っております。府県は、広域的な地方自治体として、市町村の区域を越えるような広域的な事務、市町村の補完事務などを処理して、県民の安全・安心、幸福を守るために相当な役割を果たしていると、いうふうに自負をしているところであります。
   一方で、明治時代に設定された現行の都道府県の区域は、現在の時間距離、あるいは科学技術の発達、専門化などを考えると狭くなっているということもまた事実だと思っています。日本全体のことを考えれば、行政の効率化とか人々の幸せとかそういうことを考えると、道州制の導入は長い目で見ると不可避ではないかなあというふうにも思っています。
   一方、私は、「地方分権」とは、住民が自ら幸せになるために様々な選択を自分で責任を持ってできる社会を作るということだと思っております。「道州制」を導入するのであっても、このような地方分権を推進するものでなければならないと考えております。
   政府や経済界の道州制に関する提言・報告書を拝見しますと、「地方分権」を実現するための道州制であるということをみんな言うております。
   しかし、世の中には、地方分権が進まないから、この際、道州制にしてしまえ、そうすると一挙に地方分権が進んで全部問題解決であるというようなことを主張する人もまたおります。
   しかしながら、本当に「道州制」が「地方分権」を実現するものかどうか、これは十分考えなければいけないことだと思います。現時点では、国と道州、道州間、道州内の資源配分のあり方とか調整とか、そういうことについての詳細な制度設計が行われておらず、そこが未知数であると私は考えます。


(2)和歌山にとっての「道州制」「関西州」とは
《質問》 松坂英樹 県議
   続いて、和歌山にとっての「道州制」「関西州」はどういうものなのかを質問させていただきます。知事はこれまでも「和歌山県にとってプラスになるものでなければ」と発言されてきたと思います。経済界が先導する「道州制」のねらいは、繰り返される大阪湾再開発構想に見られるように、財源や社会資本を整理集中させよという発想だと指摘しなければなりません。「道州制」推進論者が、「道州制」を語るときでも、関西広域連合を語るときでも、その必要性として、広域行政や権限委譲などの理屈付けを色々しますが、底流というか基本にこんな考え方があるなかで、近畿のわずか5%の人口の和歌山県が、自然環境豊かな県土を守り地元地域経済の発展を担保できるのか、はなはだ疑問だと考えます。
   和歌山にとって「道州制」とは何なのか。「道州制」や「関西州」が和歌山に「プラスになる」または「マイナスになる」とは、どういうことだと考えているのか。答弁を願います。


《答弁者》 知事
   私は、和歌山県の知事でありますので、和歌山県に現在住んでる方々の幸せに責任を持っていると思っております。「道州制」や「関西州」における資源配分が、今、和歌山に住んでいる人々にとって、現在及び未来において現状よりも有益なものになるというような制度設計そういうことができるならば協力して力を用いなければいけない、そういうふうに考えている次第であります。


(3)「道州制」と関西広域連合の関係
《質問》 松坂英樹 県議
   最後に、「道州制」と関西広域連合の関係について知事に伺います。知事は、関西広域連合は道州制を前提にするものではないと答弁されました。「前提条件としない」という知事の解釈や状況はお聞きしましたが、できてしまったらその先どうなるのか。関西広域連合と「道州制」の議論とは、関西広域連合ができたら、じゃあ次は道州制への移行を議論しようと、先で繋がってゆくものだと考えていますか。それとも道州制は道州制、広域連合は広域連合と別のものだと考えていますか。
   また、一番大事な、県民の中で、関西広域連合の議論をどうすすめてゆこうとしておられるのかについても知事の考え方をご答弁願います。


《答弁者》 知事
   府県の区域を越える広域的な課題に対応しようという目的は両者共通しておりますけれども、「道州制」が基本的には府県の廃止を前提にしておりますが、「広域連合」制度は府県の存続を前提にして一部を広域連合に移すということであります。
   したがって、この間もご説明申し上げましたように、関西広域連合は、道州制を目指して設立するものではありません。このようなことについては、ご理解の上で、また、関西広域連合の具体的な姿、それから機能、それの持つデメリット・メリットそういうものについて、県民の中でよく理解していただいて、分かった上で発足しなければいけないと考えております。
   したがって、我々当局としては、他府県とよく議論をして、原案を出して、議会の中でもよく議論をしていただかなければいけないと考えております。


5.煙樹ケ浜水際地雷訓練
(1)県立自然公園での軍事訓練に対する姿勢
《質問》 松坂英樹 県議
 5つ目の項目である煙樹ケ浜水際地雷訓練について質問いたします。自衛隊による水際地雷訓練が計画されている煙樹ケ浜は、県立自然公園に指定されている自然豊かな景勝地・観光地です。しかも今回の県立自然公園の見直し・再指定により、この砂浜は第2種特別地域から第1種特別地域に格上げされた貴重な県民の財産です。また、背後には学校・病院・市街地が隣接している地域でもあります。
 そもそも、水際地雷や機雷の敷設・掃海というものは、日本への敵国上陸阻止という額面上の目的だけでなく、攻撃時に敵国の封鎖、敵国への上陸時に自ら敷設した機雷の掃海というのが行われるという、攻める守るの表裏一体の関係にあります。
 
周辺事態法に基づく、海外での軍事行動を想定した日米共同訓練が進む中で、日米協力項目に位置づけられている軍事作戦です。
 
こうした動きの中での自衛隊「増強」として、計画されてきた軍事訓練であるという流れを指摘しなければなりません。また、地雷も禁止、クラスター爆弾も禁止になる時代、今や空爆が主たる軍事作戦である時代に、時代おくれの訓練でもあります。
   いま、自衛隊は必要だという立場の人も、災害対策の組織・機能が大切だという人も、日本本土を守ることが前提です。日本防衛を脇に置いた自衛隊が、米軍といっしょに海外へ海外へといくのはおかしいんじゃないか。機雷や地雷の敷設・掃海というような「戦争準備」はいかがなものかという声が上がっています。
 この軍事訓練は、基地や演習場というような施設の中ではなく、貴重な自然公園での訓練となるわけであり、県民の貴重な財産である煙樹ケ浜県立自然公園には軍事訓練はふさわしくないと思いますが知事はどう考えますか。
   また、訓練に対する漁業関係補償として漁礁を整備する事業が協議されていると聞きます、「国の予算枠がついたから今年中に訓練も周辺事業もスタートしないと事業を返上しなければならない、早く決着して早く訓練を」という一部の動きもあるようですが、こんな急がせ方は本末転倒いかがなものかと思いますがどうでしょうか。
   以上、県立自然公園での軍事訓練に対する姿勢について、知事に答弁を求めます。


《答弁者》 知事
   煙樹ヶ浜の素晴らしい海岸美は観光客や住民にとっては憩いの場であり、本県にとって重要な観光資源と認識しております。
   もとより、美浜に駐屯していただいております陸上自衛隊の部隊については、災害のときに常に活躍していただいていることは明らかでありますし、人口減少を懸念される当県といたしましても、この部隊がいらっしゃるということは大変有り難いことでもある。
   それから、また地域との間でも大変必要な町民の要素になっているというふうに考えております。したがって、私としては、この駐屯していただいていることは有り難いことだというふうに思います。
   訓練については、海岸部に岩礁が少ないこと、陸地部は相当の平坦地を有することなどがどうしても必要になってくるそういう地理的条件や和歌山駐屯地に隣接していることなどから、煙樹ヶ浜が最適地であるとの結論に至ったというふうに私は聞いております。
   当該地は自然公園の中ではありますけれども、平成18年に模擬訓練を行ったところ、住民生活や観光等に影響を及ぼすものではないという結果であったと伺っております。
   いずれにしましても、地元の理解を得ることが重要と考えますので、国が今後も美浜町及び関係者と十分な協議を重ねていただきたいと考えておりまして、県としても、国、町と連携、協議を図ってまいりたいと考えております。
   なお、お金があるから早くやらなければいけないんだ、そういうことを私は聞いたことはありません。

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   09年6月議会


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09年6月県議会、松坂英樹 一般質問=6月23日
09年6月県議会、松坂英樹 一般質問=6月23日
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