20091217
09年12月和歌山県議会 反対討論      松坂英樹

   和議第60号は、関西国際空港への補給金の執行を求める意見書であり、和議第72号は同補給金の凍結解除を求める意見書であります。
   補給金の凍結は、新政権の下で設置された行政刷新会議の事業仕分けによって、関西3空港の役割分担と今後の空港のありかた等について、国に抜本的な解決を求めるとの立場から、補給金の必要性は認めつつ、解決案が示されるまで凍結するとされたものです。それをうけて政府は、新年度において解決案を示す6月まで補給金を凍結し、6月以降の10か月分として75億円を予算計上するとの報道がされています。
   関西国際空港は、日本の空港ではじめて、旅客・貨物と両方の24時間運用を開始した空港です。1960年代、大阪国際空港のみでは、将来の航空需要に対処できないということと、空港周辺の騒音環境対策として関西第2空港として計画され、関空開港とともに伊丹は廃止される予定でした。しかし伊丹空港が存続となった上に、関西国際空港が開業、さらに第2滑走路を増設、加えて神戸空港までもが開業されたため、各空港の採算性と将来の運用のあり方、国の航空行政について議論が行われているところです。

   関西国際空港は、海上の軟弱な地盤を埋め立てたため想定を上回る建設費となったことに加え、2期工事によって工事費がふくらみ、運営会社は1兆円を超える有利子負債を抱えることとなりました。その穴埋めとして国民の税金を使われることは問題があります。

   国際拠点空港という社会的資本としての役割から見れば、国が適切な財政支援をおこなってしかるべきものですが、関西3空港の今後の運用のあり方をあいまいにしたまま、税金をつぎ込み続けることは国民の理解を得られないと考えます。この際、3空港の運用と役割について整理をおこない、将来の財政負担の展望をしめすべきだと考えます。


   次に和議第61号と和議第73号は、環境税の創設に対して慎重な対応を求める意見書となっています。
   いずれの意見書においても、その前段にもあるように、環境税の導入に当たっては、国民生活の様々な分野に影響することから、国民全体の理解を得ることはたいへん大事で、必要不可欠なことがらです。私ども日本共産党は、1年前に発表した温室効果ガス削減中期目標で、30%削減を提案してきました。そのために、政府と産業界との公的協定、二酸化炭素の排出量に着目した環境税の導入、自然エネルギー重視のエネルギー政策に転換することなどを求めてきたところです。
   しかし一方で意見書が、産業界の負担を押さえ「国際競争力」を確保したいという財界の強い反対を代弁している点には同意できません。温室効果ガスは総排気量の8割を産業界がしめ、わずか161事業所で全体の半分を排出しているとされており、この分野での削減なしに削減目標達成はありえません。また温室効果ガス削減にむけ、産業界が責任ある取組をすすめることも、財源を確保しつつ行政が誘導施策をすすめることも、いずれも新たな技術革新と産業・雇用を生み出すことが期待できるものです。
   温暖化ガス削減のためには、産業界の自主目標ではなく、政府と各業界・企業との間で削減の期限と目標を明記した削減協定を義務付ける必要があります。そのことと合わせて環境税を、国民的合意を得た上で導入し、削減を加速すべきだと主張するものです。

   最後に、和議第74号は全国学力テストの継続実施をもとめる意見書です。
   子どもの発達・成長を保障する上で、学力・体力・運動能力をしっかりと伸ばすこと、その到達度を把握することは重要です。しかし、そうだからといって「全国学力テスト」を悉皆調査として実施する必要はありません。
   学力・体力・運動能力の到達度は、教育現場にふさわしい仕方で測定されるべきものです。その上で、全県・全国・世界水準と比較し、子ども達にとって、何が優れているか、何が足りないのかを検討・議論し、・実践することが必要な場合もあります。
   学力の調査では、OECDが実施するPISA学力調査が世界的に有名です。この調査は15歳の子どもを対象に3年に一回実施されているものです。2006年の調査は世界で57カ国・40万人にすぎず、日本では03年調査で4700人が対象でした。和歌山にも調査がきたのかというと、「以前、ひとつの学校があたったことがある」という程度の人数の抽出調査です。この調査で、フィンランドの学力の高さが注目されて論議されていますが、「調査サンプルが少ないから信用できない」などという評価はありません。
   学力調査を、毎年、悉皆調査として実施し、結果を公表することは、「学校間競争」を生みかねません。過去には、テスト中心の教育が行われ、模擬テストをくりかえしたり、テスト日にできない生徒を休ませることまで実際におこったのです。悉皆調査によって、各学年・毎年行われるような「学力調査」は中止されるべきだと考えるものです。


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