09年12月県議会 建設委員会 松坂英樹
2009年12月14日
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《質問》 松坂英樹 委員
 市町村負担金の原則廃止ということについて伺いたい。
 先の9月議会で知事は国の直轄事業負担金廃止の要望にあわせて、県事業も市町村負担金を原則廃止するという方針をくだしたところである。他県でも一部廃止を検討するところが出ているが、原則廃止は和歌山県が全国に先駆けて表明したと大きく報道された。
 現在、市町村の意見を聞きながら調整中ということだが、10月に発表された見直し方針案を見て、急傾斜地への対策事業、これの市町村負担金が残るというのを見て驚いている。
 9月議会の建設委員会の答弁でも、「原則的には市町村負担金は廃止だが、例外的に負担金が存続するものとしては受益者が限定的で本来は受益者が負担すべき事業であるが市町村が肩代わりしているような事業については存続することになる」と説明をされたところである。このような事業の例で考えていたのは、農林の土地改良事業などは公的面整備ということと同時に、まさに受益者が誰と誰の畑がどれだけというふうに限定されるわけであり、畑の利便性も値うちも上がるわけであるので、これは対象になるのだと思っていたし、県土整備部関係では、ごく一部農道関係の事業がこれに該当して、他には使用料的性格の下水道使用料なるものが残るというふうに理解していた。
 それで、市町村負担金の見直しの内容を伺いたい。県土整備部では何を廃止し、何を残すのか。そして、金額的にも県土整備部、県全体で如何ほど廃止できる原案なのか。

《答弁》 県土整備総務課長
   
市町村負担金の見直しについて、県としては原則的に廃止するということを発表している。そして議員ご指摘のように一部例外的に残す事業がある。具体的には、廃止する事業として金額的に大きなものとしては、小規模道路改良事業、港湾改良事業、漁港施設整備事業がある。
   事業の性格によって例外的に残るものは、まず1点目としては、受益者が限定されており本来は受益者が負担するものについて市町村が肩代わりをしているもの、ひとつには急傾斜地崩壊対策事業、もうひとつは、県土整備部関係では土地改良事業による農道事業が残ってくる。

   2点目としては、流域下水道事業については事業費を使用料で賄っていくという制度であるので、これについても負担金が残る。

   3点目としては、都市計画事業の中の街路事業についても、もともとは市町村事業という位置づけがあるが、それを県が代行して行っている事業についても負担金が残っていくということとなる。
   そして具体的な金額について、まず、負担金を取っているのが県土整備部と農林水産部の事業であるが、県全体で見ると平成21年度予算に基づく数字で、負担金の金額としては29億円あり、廃止するものが11億円、存続するものが18億円となっている。県土整備部では、27億円の負担金のうち、廃止するのが11億円、主なものは先はど申したとおりのものである。そして存続するものが16億円あり、その主なものとしては、街路事業で7億円、下水道事業で6億円、そして農道事業で2億円、急傾斜地関連事業で7千万円となっている。

《質問》 松坂英樹 委員
 原則廃止というが、かなり残る。3分の1しか廃止じゃないということで、これはどうかと思う。2番目の使用料的性格これは了とするものであるが、3番目の街路事業は市町村からいろいろ意見があるのでじっくりと腰を据えて議論して欲しい。
 ところが、1番目の受益者が限定されるという部分には疑問が残る。この見直し方針に対して市町村からどんな受け止めや意見が出されているのか。

《答弁》 県土整備総務課長
   
まず、全般的にこの市町村負担金の見直しについてのご意見で、圧倒的に多かったのは、やはり市町村負担金を廃止することによって、その廃止された事業の事業費が削減されては困るという意見である。そして、市町村負担金を廃止する代わりに県から市町村への補助金を削減されては困るという意見もあった。
   その他に負担金の見直し、軽減をしてほしいという意見もあった。


《質問》 松坂英樹 委員
 市町村は嬉しいという反面、肝心の事業量を減らされたら困ると、全体がカットカットでこの間ずっと続いてきた中で、事業量を減らす理由にされたり、他で減らされたら困るという姿勢がにじみ出ていると思う。
 しかし、本来、市町村負担を取るべきではないという個々の意見が出されているのは正論だと思う。今の原案では原則廃止というけれども看板倒れだというふうに思う。
 今議会には、例えば議案で県単独事業の急傾斜地の対策事業、これは災害緊急砂防事業の負担金が提案されているわけだが、この負担金などについても来年度も残ってしまうという原案になる。
 そこで、急傾斜地への災害防止事業の性格について少し議論したいのだが、第1点目は、これは市町村事業ではなくて県が主体になってやる事業ではないかと思うところである。市町村には平野部に位置して面積の狭い自治体もあれば、広大な山間地を抱えて災害防止をすべき箇所数を数多く抱えている自治体もある。10年間の急傾斜地の対策の事業数や金額のまとめをいただいたが、やはり10年間トータルで見ても100箇所を超す事業をやっているところもあれば、ゼロとか一桁という自治体もあって、やはり地形的にもともと条件が違うのだと思う。そんな中で県土の保全という点、県民個人の責任ではなくて自然と向き合って暮らしていく中での災害防止であるから、国または県という広域的自治体が主体となってやるのが当然で、市町村の仕事だというように仕分けてしまう事業ではないということがまず確認できると思う。なおかつ、受益者が限定的であるというが、人の命や財産を自然災害から守るのは個人の益なのか。人家の前には道路もあるわけだし、集落として暮らしてこそ人は生活できるわけで、個人だけでなく公益的であるからこそ公共事業として行うのではないかと思う。
 市町村の意見をいろいろ見せていただいたらこういうものがあった。例えば、急傾斜地関連事業については、法律上受益者負担をさせることができるとなっているが、住民の最低限の安全保障の観点から国、県レベルで税金を投入して行うべきサービスとも考えられる。一部の県民の受益となるサービスについても個々に精査して内容によっては負担金の廃止を検討していただきたい。まさにそのとおりだと思う。防災対策、災害対応という点からは特にそうだと思う。事業全般については先ほどお聞きしたが、今度は担当課からこの急傾斜地関連事業について、事業の性格からして市町村負担金が存続することをどう考えているのか答弁願いたい。

《答弁》 砂防課長
   急傾斜地崩壊対策事業に係る市町村負担金のあり方については、急傾斜地崩壊対策事業は、他事業とは異なり受益者が限定的であり、本来、受益者が負担するべきであるが、市町村が受益者の負担を軽減するために負担しているものであり、引き続き市町村負担金は存続と考えている。

《質問》 松坂英樹 委員
 国には負担金廃止を求め、全国に先駆けて市町村負担金の原則廃止と謳いながら、中身としては不十分であると考える。
 急傾斜地崩壊対策事業に関する市町村負担金の廃止や負担金の軽減も含めて柔軟に考えるべきだと思うが、どうか。

《答弁》 河川・下水道局長
   急傾斜地崩壊対策事業について、原則、家屋を守るのは個人であると考えている。多くの人々が利用する道路事業とは異なり、急傾斜地の崩壊によって影響を受ける範囲は限定的であることが多いため、市町村負担金については存続と考えている。


《要望》 松坂英樹 委員
 補助事業の急傾斜地対策では負担金の割合についての軽減措置もあるのだから、県単独事業についても、負担金について負担金割合も含めて部内において検討してもらいたい。また県全体で議論をする場合にも委員会で意見があったということを伝えてもらいたい。このことは、強く要望しておきたい。

《質問》 松坂英樹 委員
 部長は、市町村負担金についてどのように考えるか。

《答弁》 県土整備部長
   
事業にはそれぞれ性格があり、事業が決まった経緯もある。また国、県、市町村で行う事業にも性格がある。公益性の観点から大規模なものは国、国が補えないものは県が補っているという性格もある。「原則」とは金額の多寡ではなく概ねの考え方を述べたものであり、我々は、原則、市町村の負担金はないものと考えている。その中で、急傾斜地崩壊対策事業については、その性格から、個人と公益を考慮して提案しているものであり、今後、市町村の意見を聴いて最終決定を行いたい。

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《質問》 松坂英樹 委員
 議案第172号「平沼田(ひらんた)トンネル」及び議案第174号「田長(たなご)トンネル」の入札執行状況において、いずれも低入札となり失格となった調査失格業者が存在する。県は低入札の価格調査制度を発足させ、異常な安値入札により下請業者にしわ寄せしたり、労働者が低賃金で働かされたり、工事の品質を確保できない点などを防止するよう行ってきたものと認識している。今回、同様の業者が調査失格となった件について、必要書類の付け忘れといった単なるケアレスミスではなく、共通した汲むべき問題点があるのでは思う。
 なぜ、この業者が調査失格となったのか理由を示されたい。

《答弁》 道路建設課副課長
   
今回、調査失格となった業者については、従来からの低入札価格調査に加えて、見積額等の積算根拠が過去の実績に基づく妥当なものか、審査を一層厳格に行う「特別重点調査」の対象となった。
   このため、下請予定業者の見積書が過去1年以内の取引実績によるものかなどについて審査したが、契約書等の取引実績を裏付ける資料が確認できなかった。

   これによって、契約内容に適合した履行がなされないおそれがあると認められるため、調査失格とした。


《質問》 松坂英樹 委員
 言葉で表現すれば、単なる書類の不備で低価格の根拠を示せなかったとなるかもしれないが、一方では、今まで以上に安値で下請業者に発注しようとして、下請業者も仕方なく安い見積書を提示したが、実績までは提示できなかっただけとも考えられる。
 調査失格業者において、県の判断について納得しているものなのか。

《答弁》 道路建設課副課長
   納得した上で調査失格となったものと理解している。

《質問》 松坂英樹 委員
 トンネル工事に入札参加対象となる業者数、工事実績のある業者数はどれくらいか。

《答弁》 道路建設副課長
   
今回の入札に関して、施工実績を有する業者は県内に最低でも約15社あると理解している。

《質問》 松坂英樹 委員
 昨年冬に特別重点調査制度を導入してから、低入札価格調査の対象となった件数は何件か。また、特別重点調査の対象となった件数は何件か。さらに、特別重点調査の結果はどうだったか。

《答弁》 技術調査課長
   
低入札価格調査については、平成20年12月の改定により、従来、予定価格5千万円以上を対象としていたが、1億円以上に引き上げ、採算が確保されていないと思われる過度の低入札を防止するために実施している。
   平成20年12月以降、低入札価格調査の対象となった件数は、平成20年度は2件、平成21年度は11月末現在で18件となっている。そのうち、特別重点調査の対象となった件数は、平成20年度は0件、平成21年度は11月末現在で9件となっている。さらに、その9件のうち、落札決定し契約を行った件数は1件となっている。


《質問》 松坂英樹 委員
 低入札価格調査はハードルが非常に高く、厳密な審査を行うという点では歓迎する。低入札自体は理論的にはあり得ることで、手持ちの足場、資材、在庫などを活用したり、作業工程をその業者独自に改善・短縮するなどし、相場より安くすることは可能であると思う。また、技術の進歩や工夫は大いに歓迎する。しかし、仕事を取りたいために納入単価や労賃を抑えて、下請業者や労働者を泣かせることはあってはならない。
 そこで入札時の条件として、原価を切るような下請業者泣かせの単価は求めていない、現場労働者の単価はこの額を守るなど、実際に生きた担保を取るという点で、今の低入札価格調査制度は十分なものと言えるか。

《答弁》 技術調査課長
   
特別重点調査であるが、業者に対して過去に施工した工事実績での積算根拠や労務者の雇用関係等についての書類提出を求める厳正な審査を行っており、十分なものであると考える。

《質問》 松坂英樹 委員
 今回の低入札価格調査が、工事実績を求めることにより機能したことはよかった。
 ただ、裏返して言うと、安値請負の実績をいったん作ってしまえば、次の低入札の理由書類に使えてしまうことにならないか。実績を求めることがかえって非常識な実績をでっち上げる行為を招いてしまわないか。

《答弁》 技術調査課長
   
低入札価格調査を受けた業者と契約した工事については、工事完成時に請負者から「下請代金状況等調査表」を提出させ、下請代金の支払い状況、不払いはないか等について確認を行っている。

《要望》 松坂英樹 委員
 全国的には、下請業者や労働者が公の仕事で損をさせられることのないよう、公契約条例の制定に向けた動きが広まってきている。
 今後とも、県として入札制度改革に不断に取り組むよう要望しておく。

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《質問》 松坂英樹 委員
 岩倉発電所の水利権更新について聞きたい。
 有田川の二川ダムから取水している関西電力岩倉発電所の発電用水利権更新について、この水力発電所の水利権設定は、ダム建設時から45年の長い水利権設定が終わって第一回目の更新を1月に控えている。私はこれまでも、今日の地球温暖化、集中豪雨などを考えると、堤防強化と共に多目的ダムである二川ダムの能力を向上させることが必要ではないかと提案してきた。今年度から計画策定を始めようとしている有田川河川整備計画、地元の意見を踏まえて水利権の許可内容を決めていくのが有意だと思うが、この計画の策定よりも水利権更新の時期が先に来てしまう。今後の展開がある中で、今回の水利権がこれからも長期に不動のものとして与えられてしまうと問題があると思う。1月の更新は、暫定的な単純更新だというふうな取り決めが必要だと思う。今回の水利権更新、どんな形で許可をする方向なのか。

《答弁》 河川課長
   今回の水利権更新については、20年間の許可期間をもって発電事業者から申請がなされている。今、策定中の有田川水系河川整備計画、これは今後20年から30年間の河川整備の目標及び整備内容等を定めるもので、二川ダムの治水機能の強化を図ることについて選択肢の一つとして検討している。

   今後、策定する有田川水系河川整備計画の内容によっては、発電事業者と今回手続き中の水利権許可の変更協議を行う必要が出てくると考えている。この場合、実際、協議を行うのは事業化の段階になるが、その期間が20年間の許可期間内であっても、発電事業者との協議を円滑に進めることができるよう、何らかの形で発電事業者に確認をとりたいと考えており、その方法を検討している。


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《質問》 松坂英樹 委員
 今般、全県域の汚水処理適正構想の見直しが発表された。
 様々な社会的要因や高コスト構造を理由に公共下水道や農業集落排水等の集合処理計画が縮小され、個別処理に移行していくところが数多く出てきた。
 県は行革方針の中で合併処理浄化槽への補助の削減を打ち出したりしたが、こういった状況の中では、合併処理浄化槽による個別処理の支援が一層必要ではないか。県はどういった今後の見通しや支援を考えているのか。

《答弁》 下水道課長
   全県域汚水処理適正構想では、約3,433haの集合処理区域が合併処理浄化槽に変更された。

   このため、合併処理浄化槽の推進を図っていくが、当然、個人型浄化槽補助事業の推進を図ることもさることながら、特に今回縮小された集合処理区域については、市町村設置型浄化槽事業を市町村に対して積極的に働きかけていきたい。


《要望》 松坂英樹 委員
 和歌山県の地理的条件の中では、無理な集合処理よりもいわゆる市町村設置型浄化槽事業で柔軟に取り組まれることが設置初期費用の軽減だけではなく、自治体の財政負担、ひいては住民負担を軽くすると考えるので、一層の支援を要望する。

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《質問》 松坂英樹 委員
 高速4車線化の準備として、有田インターの出入口が変更され、これに併せて県道吉備金屋線の接続を早期に完成すべく作業が行われている。現在の道路を供用しながら、拡げながら接続していく作業を一体化して行われている現況は、車道は酷くバリケードだらけである。特に歩道にいたっては未完成のままであり、狭い工事中の箇所に車道から張り出した状況で仮設歩道をつけている状態だ。
 振興局としても、歩行者の安全を確保するため、警備員を増員し対応してはいるが、地元住民からは早期の歩道部の完成が期待されている。
 有田インターの出入口切替と県道吉備金屋線道路改良に伴う取り付け部工事の完成時期と安全対策について見通しを示されたい。

《答弁》 道路建設課副課長
   県道吉備金屋線につきましては、去る平成21年11月20日に有田川天満〜植野間の約1kmを供用開始している。
   このうち車道部の暫定供用した約360m部分について、阪和自動車道の有田インターの新しい入口の供用に合わせ、12月18日まで完成させる予定である。

   歩道部については、本年中の完成予定であるが、水道管埋設工事等の調整が必要な一部区間については、来年2月上旬の完成予定である。

   なお、委員ご指摘のとおり、警備員を増員するなどして交通安全対策に対し留意しているところであり、引き続き実施していく。



◇ 議案に対する採決
   議案第168号 平成21年度建設事業施工に伴う市町村負担金について
   は、賛成多数で原案可決(共産党県議団は反対 ※藤井健太郎議員による反対討論
   
   議案第155号 平成21年度和歌山県一般会計補正予算
   議案第170号 訴訟の提起について
   議案第172号〜174号 工事請負契約の締結について
   議案第175号 平成21年度和歌山県一般会計補正予算(減額補正追加案件)
   議案第177号 平成21年度和歌山県営港湾施設管理特別会計補正予算
   は全会一致で原案可決。

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