2009年12月県議会
雑賀 光夫 一般質問


2009年12月9日



1.日中友好・交流活動の発展について

(1)中国との交流についてどういう可能性と展望をもっているか
(2)民間団体でおこなう国際交流にどのように支援していくのか

2.地震・津波対策について
(1)和歌山下津港海南地区の津波防波堤および周辺の護岸改良の見通しと決意
(2)津波避難ビル、暫定的緊急津波避難ビル指定の推進について
(3)住宅の耐震診断・耐震補強の進展を図るための施策について

3.道路をはじめとする公共事業について
(1)地方の側から経費節減を積極的に提案してはどうか。その際、「正直者がばかを見る」ことのないような中央と地方の信頼関係をきずくことについて
(2)阪井バイパスについては2車線で十分だと考えるがどうか
(3)「1.5車線道路」「都市計画道路の見直し」について
(4)4車線化が実現する阪和自動車道海南有田間無料化による国道渋滞緩和について

4.亀の川水系河川整備計画と大坪川の排水対策について

5.「小規模中学校」と学習・部活動の問題
(1)「ニュービジョン」報告の「適正規模」と教科学習
(2)部活動を理由にした通学区の弾力化への危惧

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1.日中友好・交流活動の発展について
《質問》 雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。
 第一の柱は、中国訪問の報告と、それにかかわった質問です。
 12月4日には、山東省代表団が来県され、私もマリーナシティで開かれた歓迎レセプションに参加させていただきました。
 さてこの秋、日中友好協会和歌山県連合会と海南支部による中国四川省への友好訪問を行い、私はその団長を勤めさせていただきました。
 日中友好協会は、日中国交回復以前から活動してきました。大変苦労したのは1960年代、中国で「文化大革命」なるものがおこったときでした。中国国内でなにがおころうと、それは中国の国内問題ですが、やっかいなのは、当時、特定指導者への個人崇拝などが求められたことでした。日本共産党も日中友好協会も、それを拒否しましたから、中国との交流はできなくなってしまった。
 その後、中国共産党も中国政府も、「文化大革命」とその路線の対外的な押し付けが大きな誤りであったことを認め、私たち日中友好協会も、中国との交流ができるようになったのです。今回は、その関係正常化して以後、和歌山県連・海南支部合同で企画した第五次訪中団でございます。
   昨年の5月、四川大地震がおこりました。多くのみなさんが支援活動をされましたが、私たちも、義捐金をつのり、街頭カンパをおこない、領事館におとどけしておりました。こうした経過もあって、今回の友好訪問になったものでございます。
   四川省人民対外友好協会では秦琳会長などが対応されました。地震へのお見舞いを申し上げるとともに、私たちの協会は、侵略戦争への反省に立って日中不再戦の運動をすすめていること、中国側が不当な押し付けをしてきたときにも、決して屈せずに対等平等の友好を求めてきたことを紹介し、和歌山の世界遺産を紹介した観光パンフレットや和歌山のおいしい果物のパンフレットもお渡ししました。
   そのあと震災被災地を視察し、学校訪問したのですが徳陽市対外人民友好協会林主任に同行していいただきました。この視察地は、震災のあとをそのままモニュメントとして残しています。広い中国だからできることですが、災害の大きさを実感することができました。同時に使われている鉄筋が少ないことなど、児童が死亡したことについて手抜き工事だと批判が上がったこともうなずかれるという感想もありました。
   わたしたちの訪中は、いわば「野党外交」のようなことをしてくるわけでございます。ちなみに、4年前の第三次訪中団は、杭の字の杭州を訪問したのですが、このときは、杭州の景勝地である西湖と和歌浦が大変よく似ていること、江戸時代に不老橋周辺の和歌浦は、西湖の景観を模して整備されたといわれることを紹介し、この場所が、中国の国父・孫文と南方熊楠が旧交を温めた地であることを紹介もしたのでした。
   こうした日中友好・交流活動を踏まえて、いくつかお伺いしたいと思います。

(1)中国との交流についてどういう可能性と展望をもっているか
   まず、和歌山県としての中国との交流です。貿易・経済交流相手国としても中国の比重は、ますます大きくなってきています。県としては山東省との友好関係をつみあげて来たことは大変結構なことですが、中国は広い。杭の杭州の西湖と和歌浦の縁などいろいろある。海南の家庭用品業界などは、上海をはじめとして各地域に進出しています。たまたま本日は遼寧省の代表がおいでになるということで、私もお迎えに参加したいと考えています。和歌山県として、中国との交流についてどういう可能性を考えておられるのか。知事にお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   中国は長年にわたりまして高度経済成長を続けております。また昨年からの世界経済危機からも比較的早く立ち直り、かつての世界の生産基地から、世界経済を牽引する大消費地へ変貌を遂げていってもらいたいという流れであります。
   県では、友好提携先である山東省における本県企業と現地企業との商談会を継続して支援しているほか、県産食品の有力な輸出先として、上海や香港で展示や販売の促進を行うとともに、中国から本県への観光客誘致にも積極的に取り組んでおります。
   今後とも、本県と友好提携を締結している山東省はもとより、中国との経済的結びつきをさらに強化するとともに、日本の良き隣人としてさらに友好を深めていきたいと考えております。


(2)民間団体でおこなう国際交流にどのように支援していくのか
《質問》 雑賀光夫 県議
   第二に、日中友好団体など民間団体と県行政の関係です。県としての国際交流のとりくみとともに、日中友好など国際交流をすすめる民間団体があると思います。かつては特定の団体にだけ助成をするという時代もあったのですが、いまはそんな時代ではない。広く国際交流をすすめるとりくみを応援することも大事なことではないかと考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 企画部長
   本県の国際交流をすすめるにあたりましては、民間交流団体の役割は非常に重要であると考えておりまして、県としてもこれまで様々な形で協力を行って参りました。
   例えば、助成措置としては昨年度から公民連携のための補助制度を設け、中国をはじめ世界各地と交流する民間団体の事業のうち特に効果が大きいと思われる事業を選定し補助を行っております。
   今後もこうした補助事業をはじめノウハウや情報の提供など、県としてできうる限りの必要なサポートを行いながら、さらに民間の国際交流を活発にしていきたいと考えております。


2.地震・津波対策について
(1)和歌山下津港海南地区の津波防波堤および周辺の護岸改良の見通しと決意
《質問》 雑賀光夫 県議
   第二の柱は、地震・津波対策の問題です。
四川省訪問から、防災対策をいっそう進めなくてはならないと感じて帰ってきました。その後、近畿議員フォーラム「防災分科会」に出させていただき、そこでも改めて勉強させていただきました。
   私の地域、海南市では、なんといっても南海・東南海地震津波対策の問題です。今後30年の間に南海地震がおこる可能性は50%、東南海地震の確立は60%から70%といわれます。同時におこるかもしれないし、別々におこるかもしれない。どちらか一方が起こる可能性は、80%から90%ということになります。
   政権交代がおこなわれて公共事業の見直しがおこなわれています。私は、最近、見直してもいい・あるいは見直さなくてはならないものと、絶対に見直してはいけないもののメリハリをつける必要があるのではないかと考えています。
   見直してもいいものについてはあとから申し上げますが、和歌山下津港海南地区の津波防災堤防は、絶対に守らなくてはならない。
   海南市では、6月、国土交通省の方もおいでいただいて、津波問題のシンポジウムなどおこなわれました。国土交通省の方からは、津波防災についての海南市民の熱意を受けて、「地球温暖化防止につとめることを Do Kyoto,というのになぞらえて、津波対策につとめることを Do Kainan,といわれるようになる津波対策先進地にしましょう」というお話もありました。
   この事業は、どんなことがあっても守り抜かなくてもならないと思っていますが、知事の認識と見通し決意をお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   当地区は公共機関や主要な産業が集積し、津波による被害が甚大で、復興の長期化による県経済への影響が大きい地域であることから、津波浸水対策は議員同様、重要な事業であると認識しております。
   県といたしましては、今後とも予定どおり進むよう、国に対して強く働きかけて参りたいと考えております。


(2)津波避難ビル、暫定的緊急津波避難ビル指定の推進について
《質問》 雑賀光夫 県議
   次に、津波防災堤防の事業がすすんでも、津波は明日襲うかもしれない。「逃げ切るプログラム」の実行が、大変大事です。
   海南市は、大変広い住宅地が、かつての南海地震では大きな被害をうけました。その後の埋め立てで湾が狭くなり、いっそう大きな被害が心配されます。
   以前、県の担当者から、「海南の避難計画は県内でもすすんだものです」とお聞きしたことがあります。その計画では、平地の住民は、山手・高台ににげることになっていました。
   私の事務所は、海南市の東浜という地域にあります。私が小さいころ、南海地震では、二階への階段の上3段をのこして水に浸かった地域です。
   自治会のお世話いただいている方は、「高台に逃げてくださいと訴えても、とてもそんなとこまでいけないというお年寄りが多い」と嘆かれます。近所の年配の奥さんに「どうするの」とお聞きすると、「私は、近くのK病院にかけこむつもり」とおっしゃいます。「本音と建前」の乖離があるわけです。
   こんななかで、「津波から逃げ切るプログラム」に盛られている「津波避難ビル」「暫定的緊急津波避難ビル」というものが、大変現実的であり、いい考えだと考えています。
   ところで、津波避難、暫定的緊急避難ビルの指定がまだまだ少ないのです。近所の奥さんが逃げ込む予定のK病院は含まれていません。ある学校の裏にお住まいの方から、津波のとき逃げ込めるように、「裏門のカギを開けられるようにしてほしい」という要望を頂いたことがあるのですが、その学校が「避難ビル」に指定されていなければ、それもできないでしょう。
   これは、市町村でやればいい問題ですが、県としても「逃げ切るプログラム」で呼びかけているわけですから、市町村にもっと積極的な指定をよびかけるし、公共的な性格を持つたてものには協力を呼びかける。そんなに費用をかけなくても、「本音と建前」が一致した、「逃げ切り」ができると考えますが、いかがでしょうか。危機管理監にお伺いいたします。


《答弁者》 危機管理監
   津波からの避難については、高台などの安全な場所に避難することが原則でございますが、議員ご指摘のとおり、津波が到達するまでに浸水想定区域の外へ避難することが困難な場合もございます。浸水想定区域内に一時的に緊急避難することができる津波避難ビルなどを指定しておくことは大変重要であると考えております。
   県では、昨年4月に「津波から逃げ切る支援対策プログラム」を策定し、津波避難困難地域の解消をめざして、避難ビルの指定や避難タワーの整備などを進めているところでございます。
   現在、県内の沿岸市町では、避難ビル96棟、暫定的緊急避難ビル30棟を指定しており、このうち、海南市は、避難ビル8棟を指定しております。
   また、県と沿岸市町は、毎年多くの住民に参加いただき津波避難訓練を実施しておりますが、その訓練結果の検証も踏まえ、避難ビル等の追加指定について、沿岸市町に働きかけてまいります。

(3)住宅の耐震診断・耐震補強の進展を図るための施策について
《質問》 雑賀光夫 県議
   さらに、近畿のフォーラムでも議論になったひとつですが、住宅の耐震補強の問題です。耐震補強といっても、200万円もかけてそんなに補強できるものではない。命が助かることを中心にして、最低限度の補強への補助ができないのか。フォーラムではコーディネーターの先生が「10万円でもできる補強を技術的にも検討しなくてはならない」と強調しておられました。
   そこで質問ですが、住宅の耐震診断はどこまですすんでいるのか。耐震補強の補助金がどこまで活用されているのか。活用をひろげるためには、部分的耐震に補助金がでるようにしなくてはならないと思いますが、いかがでしょうか。
   県土整備部長からお答えください。


《答弁者》 県土整備部長
   昭和56年5月以前に建築されました木造住宅に対しまして、平成20年度までに、耐震診断は7,231戸、耐震改修は315戸にそれぞれ補助を実施してきております。事業内容につきましても、広く県民の方にご利用いただけるよう、制度の充実に努めております。
   具体的には、倒壊しないとされる基準まで改修を行った工事費に対して補助することはもとより、その基準に至らないまでも、人命優先という考えから、避難を重視した基準を満たす改修工事費に対しても補助できるよう、対象を広げてきたところでございます。
   また、施工業者向けの講習会の開催とあわせまして、新しく開発された耐震金物などを利用した安価な工法の普及にも努めているところでございます。
   さらに、耐震診断から改修につなげるために、今年度から、改修設計費に対して13万2千円を限度として補助するとともに、高齢者の方などに対して、個別の相談や改修計画の提案を行う耐震改修サポート事業を、無料で実施しているところでございます。
   耐震改修工事費につきましては、各種条件にもよりますが90万円の改修工事を行った場合、国、県、市町村の補助金を除きますと、議員お話しの10万円にはなりませんけれども、19万7千円の個人負担で改修が実施できる制度となっております。
   今後とも、引き続き住宅の耐震化に努めてまいりたいと考えております。


3.道路をはじめとする公共事業について
《質問》 雑賀光夫 県議
   第三の柱として、道路をはじめとする公共事業についてお伺いします。
 民主党政権が誕生し、八ツ場ダムの建設中止が大きな問題になりました。国の政策に翻弄された住民のみなさんの怒りはよくわかります。それ以上に、もともと住民のみなさんは反対し、利水の観点からも治水の観点からもむだづかいと今になって言われるような公共事業を国策として推進してきたこれまでの政治の罪深さを感じずにはいられません。
 民主党政権は、さらに事業仕分けなるものをすすめていますが、国民の暮らしに必要な施策までけずってしまうのではないかと言う懸念の声が聞かれます。
 そこで私は、国政レベルでも地方政治の側からも「削ってよいもの、あるいは急がなくてよいもの」と「守らなくてはならないもの」を論議すべきときが来ていると思います。地方自治体側からも、急がないもの、削減できるものは洗い出すべきです。それは、地方にいるものが一番よくわかっているからです。
 同時に、「正直者がバカを見る」ことにならないように、地方から削ることを提言したら「そうかそうか」と削られるだけで損をしたというようにならないように、その地方が本当に必要な要望を尊重するという、中央と地方の信頼関係を築かなくてはなりません。
 私は、自分の地域で建設中の道路を、贅沢道路だと批判したことがあります。
   それは、海南市の日方川ぞいで拡幅中の「都市計画道路・日方大野中藤白線」というものでした。
 1980年ごろに都市計画道路の線引きがなされた。高度経済成長のイケイケどんどんの時代の線引きをそのままひっぱって、全体の計画が完成する見込みもないのに、部分的に当初の計画どうりにすすめようとするからこんなことになるというのが、私の主張でした。
 その年の5月1日の新聞の1面に報道された「和歌山県・都市計画道路見直し・全国ではじめて」という施策に結びついたのです。
 いまひとつ、私が、「こんな大きな道路をつくらなくてもいい」と主張してきたのは、国道370号、阪井バイパスであります。2006年の予算委員会で、「阪井バイパスは必要であるし急いでほしいが、現道も使えるのだから、バイパスは2車線でいい。傾斜のあるところを切る道路なので、交差する道路との関係でも、幅20メートルを半分にすれば、道路設計もしやすくなる」という意味のことを申し上げたのです。海南市議会でも論議されていますが、4車線道路であるために当局も「交差部分だけをとれば使い勝手は悪くなる」とし、バリアフリー法との関係で改善が課題にされています。
 それでも、計画どおりの用地買収が始まった段階で、私は自分の主張は変えませんでしたが、完全に私の思い通りでなくても、バイパス計画が速く進むほうがいいと大筋で推進してきました。
 しかし、いま、政権交代で状況はかわりました。さまざまな分野で「事業仕分け」がおこなわれている。あらためて4車線が必要なのかを問い直さなくてはなりません。
 そこで質問です。

(1)地方の側から経費節減を積極的に提案してはどうか。その際、「正直者がばかを見る」ことのないような中央と地方の信頼関係をきずくことについて
 第一点、「地方として、国から予算をたくさんとってくればよい」ということでなく、実情がよくわかっている地方の側から精査する、無駄をけずる。そして、「正直者がバカを見る」ということにならないような地方と政府の信頼関係をつくれるように政府に対しては要求していくということが必要だというのが、私の考え方ですが、知事はどうお考えでしょうか。


《答弁者》 知事
   当県に関しましては、地域に合った、無駄のない計画とすることは、これは当然でありまして、幅員、構造の検討精査を行いコスト縮減を図った上で、国へ予算要求をしております。すなわち、ひょっとしたらどこかでそうかもしれないと世の中で言われていますが、補助金につられて、無駄な公共事業をお願いするとか、自分がやるとか、そういうことは無いようにしております。
   また、コスト縮減した経費については、実は制度的にも当該箇所や県内の他の箇所の事業促進が図られるようになっておりまして、それに努めております。
   今後とも、財政状況が厳しい中、実情がわかっている地方が、計画を策定する際には無駄な部分が生じないように精査をして、県民にとって一番必要な事業をより効率的、効果的に推進するよう努めてまいりたいと考えております。


(2)阪井バイパスについては2車線で十分だと考えるがどうか
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二点、「けずってもいいものと守らなくてはならないもの」のメリハリをつけていく。阪井バイパスは二車線でもいいと私は考えるものですが、知事はもういちど検討を命じてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 知事
   本県についてはご承知のように、財政状況が厳しい。どこでもそうでございますが、高速道路はもとより府県間道路、内陸部骨格道路などの幹線道路について、選択と集中により重点的に整備を進めなきゃいけないということでございます。
   このバイパスが2車線で十分だという御意見につきましては、一般論として言うと、それが客観的にもその通りであると言うことになれば、過去のいきがかりなどにこだわることなく、計画を見直すことを躊躇するものではありません。
   しかしながら、本件については、現実に、計画交通量がバイパスと現道を合わせまして2万台以上であるということが計算上出ております。従いまして、渋滞することのないよう、バイパスには4車線が、これは必要というふうに判断しているところでございます。
   なお、整備については、海南市や紀美野町及び市、町議会など、地元からも機会あるごとに要望を頂いておりまして、できるだけ早く供用が図られるように、引き続き取り組んで参りたいと考えております。


(3)「1.5車線道路」「都市計画道路の見直し」について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三に、公共事業の精査が求められる時代には、「1、5車線道路」という考え方が、大事だと思います。「都市計画道路の見直し」ということは、今も生きているのでしょうか。どういう見直しが検討されているのでしょうか。県土整備部長にお伺いいたします。


《答弁者》 県土整備部長
   従来の道路事業では、全国一律の構造基準で、必要以上の幅員や規格での道路整備が見受けられました。
   このために、地域の地形や交通量などの実情に応じた基準で道路整備を行う手法として、交通量の比較的少ない中山間部では、これまでの2車線での改良を改め、2車と1車を組み合わせた「1.5車線的道路整備」に取り組んでいるところでございます。
   現在、県内では、補助事業で国道371号、県道高野口野上線など4路線6箇所、また単独事業でも57路線69箇所で、この1.5車線的整備を行っているところでございます。
   このような整備は、限られた財源の中で、コスト縮減や効果の早期発現などの観点から有効であると考えておりますので、今後も引き続いて進めていきたいと考えております。
   次に「都市計画道路の見直し」についてでございますが、人口減少をはじめとする社会情勢の変化の中で、地域の実情に即した道路整備を進めることが必要であると考え、本格的な見直しに着手しているところでございます。
   見直しにあたりましては、都市計画道路を有するすべての市町に対し、県として、見直しの参考となるカルテなどの資料を提供して、現在、市町村において、検討されているところでございます。
   今後、具体的な見直しにあたりましては、まちづくりの主体である市町の考え方と十分に調整を致しまして、市町と連携をしたうえで、具体的な見直しの作業を進めて行くことと考えております。


(4)4車線化が実現する阪和自動車道海南有田間無料化による国道渋滞緩和について
《質問》 雑賀光夫 県議
 さらに、国道42号の海南市から有田市へのバイパス道路、400億円かけて10年かけて実現することをめざしていました。わたしはその推進の立場ですが、はたして計画どうりにすすむのでしょうか。これがさらにかかるとしたら完成したとき、交通量がどうなっているか分かりません。
 海南から有田への交通で言いますと、阪和自動車道海南有田間は、近く4車線化が完成いたします。有田から先は、時間がかかります。国道渋滞を少しでも緩和するために、ここに完成した社会資本を最大限度活用する道はなにか。それは、海南有田間を無料化することです。
 私は、高速道路などの無料化を急ぐべきではないと思っています。しかし、特定の道路を選択的に無料化することはやったらいい。その典型的なものが、この海南有田間だと思います。しかも、それは、前原国土交通大臣がいっていることとも矛盾しない。攻勢的・建設的な提案をしていくべきだと考えるものですが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。


《答弁者》 知事
   ご指摘のとおり今般の公共事業費の削減方針によりまして、有田海南道路の整備の進捗については、大変、実は正直申しまして懸念しているところでございます。
   有田海南道路は、国道42号の渋滞対策のために計画されたものでありまして、その渋滞は、主として有田市周辺から海南市、和歌山市へ至る比較的距離の短い交通によって生じております。
   阪和自動車道は、旧吉備、有田川町を通っておりまして、そういう意味では、議員ご提言の阪和自動車道海南有田間の無料化による渋滞緩和効果につきましては、有田市に関するとしますと、有田市と有田インターが離れているために現道の国道42号から阪和自動車道へ回り込む交通はある程度見込まれるものの、有田海南道路の整備が不要になるほどの渋滞緩和効果は期待できないなと思われます。また、私どもが望んだとしても、現在の国土交通省の幹部、政策を行っております方々は、非常に原理原則論を重んずる堅い政策方針に立ってると私は思っています。しばらく一部だけ無料にしてくれというような柔軟な発想はなかなかとおりにくいんじゃないかなというふうに私は思います。
   このことから、阪和自動車道海南有田間の無料化によって国道42号の渋滞緩和を図るというご提言につきましては、ただいま引き受けと言えない状況であります。


4.亀の川水系河川整備計画と大坪川の排水対策について
《質問》 雑賀光夫 県議
   第4の柱は、亀の川水系河川整備計画とその周辺の治水対策であります。
   先月、海南市の「亀の川を良くする会」で「県政お話講座」で亀の川の改修計画の説明をしていただきました。自治会の役員さんや亀の川の治水に関心を持っている方の参加がありました。「県政お話講座」というのは、大変いい施策だと思っています。
 ちょうど、先月11日の集中豪雨の直後でしたので、切実な浸水問題について実情が出されました。海南市の室山団地や岡田地区が浸水で通行禁止になったのです。それは一部県管理になっている大坪川の水が亀の川に十分流れないという問題でした。そのことを踏まえて、県土整備部長にお伺いいたします。
   「亀の川水系河川整備計画」で岡田地区、室山団地、紀三井寺団地などの浸水問題はどう解決されていくのでしょうか。
   また、岡田地区、室山団地を流れる排水の改善が急がれます。排水機場や遊水地など氾濫対策を急ぐ必要があると考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 県土整備部長
   亀の川の河川整備は、下流から順次河道拡幅や河床掘削を進めております。
   現在策定中の亀の川水系河川整備計画では、時間雨量約60mmを目標として、今後30年間で、河口から紺屋橋までの間、約4.8kmの河道拡幅や河床掘削を進める計画を検討しております。
   同計画では、亀の川の本川について、現在の約2倍の洪水を安全に流すことができます。
   沿川に岡田地区、室山団地等を抱える支川大坪川につきましても、同計画により、本川合流点付近の洪水時の水位が最大で約80cm下がることから、排水も現状より改善するものと考えております。
   また、大坪川につきましては、現在、海南市と連携して、流域内において、小学校・公園等を利用した貯留施設などの整備を検討しておりまして、今年度から事業化されているところです。
   なお、排水機場につきましては、河川計画との整合、下流への負荷等の課題がございますが、海南市から具体的な計画の提案があれば、河川管理者として協議に応じてまいりたいと考えております。


5.「小規模中学校」と学習・部活動の問題
(1)「ニュービジョン」報告の「適正規模」と教科学習
《質問》 雑賀光夫 県議
   第五の柱は、学校規模と学力・部活動での通学校区弾力化の問題です。
 「義務教育ニュービジョン研究会」報告というものが出されています。そこでは、中学校は1学年3学級、小学校は1学年2学級が適正規模だとして、統合を推進することを提言しました。
 私は、このような「統合ありき」の方向に誘導することには批判しますが、あまりにも学校規模が小さくなってしまった学校では、もうすこし大きな集団の中で子どもに学校生活をさせたいという要望もでてきます。
 小規模学校のメリット、デメリットなどを示した上で、学校統廃合は、保護者・地域住民の合意ですすめなくてはなりません。
 子どもの学習にとって、どの程度の学校規模が一番いいのだろうか。県教育委員会は、毎年、学習状況調査を実施して、その正答率を学校ごとに公表してきました。そのことについて私は批判してきましたが、現にデーターは公表されているわけですから、そのデーターをつかって検討してみました。お手元に※グラフがございます。
 中学校の3学級というのは、35人学級として、71人おれば3学級になるのです。この3学級以上が「適正規模」とされています。
 私は、1学年25人未満、25人以上70人まで、71人以上という3区分で、中学2年生の英語、数学、国語で正答率を比較したものをお示ししました。「県立中学校・付属中学校」は別にしています。グラフによりますと、適正規模といわれる3学級以上の学校より、小規模の中学校のほうが、教科学習の到達度が高いことがはっきりと示されます。もちろん、教育の評価は教科学習が全てではありませんが、大きな部分を占めることも否定できません。小規模校では、学校としてのまとまりとともに、1クラス20人というような少人数学級が多くなっていることも、こうした結果につながっていると思います。
 こうした学校規模と学力の関係についてどう認識しておられるでしょうか。
   教育長にお伺いいたします。


《答弁者》 教育長
   「和歌山県検証改善委員会」におきまして全国学力・学習状況調査の結果を分析・研究した報告では、「中学校においては、4学級以上の学校において全国平均正答率を下回る学校が、国語A、B問題及び数学B問題で約9割あることに注目する必要がある」と指摘をされておりまして、また、校種や教科により違いはありますものの適正規模を下回る学校で、全国平均正答率より必ずしも低いとはいえないという結果がうかがえます。
   適正規模化につきましては、当該地域の将来について、保護者や地域住民と行政がさまざまな観点から十分協議を重ねていただき、その中でよりよい学校のあり方について合意を形成していくことが大切であると考えてございます。


(2)部活動を理由にした通学区の弾力化への危惧
《質問》 雑賀光夫 県議
 ところで、小規模の中学校で、悩みとなり、また保護者からも不満として出されるのは、部活動、とくに運動部活動が十分にできないという問題です。
 中学校時代のスポーツは、特定のスポーツに特化しなくてもいいという考えもありますが、「やりたい」というスポーツは、できるだけ希望をかなえてやりたいという思いもあります。
 しかし、県教育委員会が、このたび導入した、部活のために義務教育の学区を弾力的に運用するという指針には、大きな懸念を抱くものです。「指針」の一部が一人歩きして、比較的小さい中学校が、一気に過小規模の中学校になってしまうのではないか。教育全体に大きなデメリットを生みはしないかと心配いたします。
 むしろこうした問題は、個々の学校の枠でなく、社会体育としての地域スポーツクラブでその要望に応えたほうがいいのではないか。あるいは、学校管理下の部活動にしても、いくつかの学校の連携で対応できないだろうかということも考えますが、いかがでしょうか。


《答弁者》 教育長
   中学校の部活動につきましては、これまでも子どもの希望するスポーツ種目を実施できるよう、外部指導者の積極的な活用、複数校による合同運動部活動等の取組を促進してきているところでございます。
   去る9月3日に県教育委員会が策定いたしました中学校の通学区域の弾力的運用に関する指針は、これらに加えて、地域のスポーツクラブにおける活動によっても、小学校時代に継続していたスポーツ種目を中学校で継続できない場合や、全国大会等で優秀な成績を収めた小学生が、専門的な指導が思うように受けられない場合に限り、通学区域の弾力化を市町村教育委員会において検討を願うものでございます。
   また、指針には、通学区域の弾力的運用にあたって、小規模校への配慮などを踏まえ、画一的な導入ではなく、地域の実情に応じて検討することも明記しているところでございます。

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