2010年9月県議会 行政改革・基本計画等に関する特別委員会
  「関西広域連合の設立について
藤井健太郎委員の質問概要記録               2010年9月21日
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《説明》 仁坂 知事
   委員各位におかれては、昨年9月以来、6回にわたり、関西広域連合に関して熱心にご議論いただいていることに感謝申し上げる。
   その間、私も3回、委員会に出席させていただき、その際にいただいた貴重なご意見をもとに各府県知事と協議してきた。
   昨年6月議会で、小川議員から質問をいただいた際には、最速のケースでは昨年の9月議会で関連議案を提案する可能性があると申し上げたが、実際には、さらに1年間検討を続け、ようやく各府県の足並みが揃ったので、本9月議会に提案することになった次第である。
   これまでの説明の繰り返しとなるが、まず始めに本県が関西広域連合に参加する意義についてご説明する。
   本県は、地理的にも歴史的にも関西圏の各府県と強い結びつきを持っており、関西圏の発展が本県の発展を左右すると考えている。
   関西圏は、優れた歴史・文化遺産を持ち、人口やGDPでも東京圏に次ぐ規模を有するなど多くの特色を持つ地域であるが、現状は、それらを十分に連携して活かしきることができていないと考えている。私は、関西圏が地域の個性を連携しながらスケールを広げ、首都圏とは異なる多様な価値が集積する日本のもう一つの中心核として発展していくことが、和歌山県の発展につながると考えている。
   関西各府県は従来から、広域連携に積極的に取り組んできたが、関西広域連合は、これまでの広域連携の成果をさらに一歩進め、関西における広域的な行政課題に取り組むこと、行政の効率化を図ること、国の出先機関の受け皿となることを目指すものである。
   私は、県の区域を超えて取り組む必要のある課題に関西が一丸となって取り組む体制を作ることで、元気な関西圏づくりに資するものと評価している。
   本県近隣の奈良県、三重県は、広域連携の重要性は認めつつも、関西広域連合に関しては、実績を見てから参加を判断したいという立場をとっている。
   しかし、私は、設立当初から参加することで、本県の意見を反映させることができると考えて、取り組んできた。後から参加する場合には既に決まっているルールに従って、参加することになる。
   現に、今回提案した規約には本県の意見を受けて修正された部分が多数ある。
   たとえば、参加府県の知事で構成する広域連合委員会の位置づけについて、当初案では、広域連合長に意見を言うだけの機関とされていたので、広域連合の施策に係る重要事項に関する基本方針及び処理方針について合議する機関、いわば内閣のようなものであるということを明確にさせた。あわせて、広域連合長は、法律上は、各県の知事のような存在なのであるが、広域連合委員会の意見に基づき、必要な措置を講じなければならないことを規定し、広域連合長の独断で広域連合が活動することがないようにさせた。
   また、経済界の代表も参加する「広域連合協議会」については、あくまでも意見を言うための機関であり、意思決定に参画するものではないということを明確にさせている。
   さらに、本県が関西広域連合に参加した場合、本県のような人口の少ない県の意見が大阪や兵庫のような人口の多い府県の意見に引っ張られ、反映されなくなるのではないかというご意見を議会、県民の皆様からいただいていた。
   そこで、私から、@広域連合委員会の意思決定は、重要事項については全員一致とすること、A事業の実施に当たって、合意できない府県がある場合には、参加を強制せず、分賦金も徴収しない取扱いとすることを提案し、去る8月27日に関係知事間で合意がなされた。
   ただし、このことを規約に規定することは法律上の問題があるので、関西広域連合設立後、申し合わせなどの形で確認をすることとなる。
   次に、関西広域連合と道州制との関係ですが、これまでも説明したとおり、広域連合は府県との併存を前提としており、府県の廃止を前提とした道州制とは全く異なる制度であるので、広域連合がそのまま道州に転化することはない。
   このことは、関西州提唱者である橋下大阪府知事も、先日の会議で明言しており、関西広域連合が直接、関西州につながるものではないということは、関係知事間の共通認識となっている。
   さて、本委員会でも、不参加を表明されている三重県、奈良県に参加を働きかけるように意見をいただいたので、7月の紀伊半島知事会議の際に、私から直接両知事に働きかけをしたが、残念ながら、状況を見守りたいという返事であった。
   しかし、8月の関西広域機構分権改革推進本部会議では、両県ともこれまでと較べると、将来の参加に前向きな発言をされていた。
   まずは、関西広域連合を立ち上げ、成果をお見せすることで両県の参加を促していきたいと考えている。
   なお、関西広域連合設立後も、本県と三重、奈良両県とが、防災、観光、道路整備などの面で連携を続けていくことに変わりはない。
   次に、県民の皆様への周知状況ですが、県ホームページに掲載するほか、平成21年9月以降、県民の友で計6回記事を連載してきた。さらに、私自身、行政報告会の際に直接県民の皆様に必ず説明するとともに、県の広報番組でもこの話題をとりあげて話させていただいた。さらには、7月の全国知事会議のプレイベントとして開催したシンポジウムで、関西広域連合に本県が参加する意義などについて説明した。
   その甲斐あって、関西広域連合に対する県民の皆様の認知や理解が広まってきたと感じている。
   以上のようなことを踏まえて、今議会に関西広域連合設立に関する議案を提出させていただいたので、ご審議のほどよろしくお願い申し上げる。
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《質問》 藤井健太郎 委員
 これまでの経過と議論した中身でいくつか確認の意味も含め、今日は、採決なのでお聞きしたい。
 私は本会議でも議論させてもらったが、基礎自治体とか基礎自治体を補完する県が、権限なり財源を持って県民の暮らしを守っていくのが第1義である。
 それ以外に広域的に連携をしていかなければならないことも当然あるが、それはそれで、現在の連携を強化していくことでできないのかということで話しをさせてもらった。府県間を超える広域自治体、主体を造るということであるが、同時に道州制の議論がされている。直接、広域連合が道州制に生まれ変わるものではない、しかし、広域連合を造ることによって道州制が止まるものでもない。
 広域連合は広域連合でやっていて、一方で、県をなくす道州制という議論があるなかで、広域連合がどう位置づけられるのかということで議論してきた。おそらく、この議論の中では分からないということがたくさんあるので議論になりにくいが、一歩足を踏み入れることになると言ってきた。
 今、和歌山県は100万人、広域連合は2,000万人あるなかで、和歌山県の意見がどこまで通るのか。和歌山県の産業振興や観光、医療、様々な課題に広域連合をどう解決に結びつけていくのか。
 知事から重要事項については全会一致にしたということ、それから県民にとって良くない部分、賛成できない部分については参加をしない、負担はしないという話があったが、規約にそのことが謳われていない。
 第1回目の連合委員会で申し合わせ事項という形で明文化されることになるのか。

《答弁》 仁坂 知事
   ただ今の質問については、構造的にまず規約では広域連合委員会、知事の合議体であるが、ここの意思決定を尊重してやってください、と規約では書かれている。ここの合議体の中の意思決定は、今、書く段階ではない。広域連合委員会ができたときにこういうふうにしようということをあらかじめ知事間で合意した状態である。従って、一番はじめの、広域連合が発足したときに広域連合委員会が開かれ、先ほど言ったようなことをみんなで合意しましょうということになっている。

《質問》 藤井健太郎 委員
 もう一つ、県として参加しない事務については、今の段階で規約案に謳われている事務はないということか。
 事務を規約案に追加したり変更する場合は、構成団体の議会で議決をするということになっているが、事務の中味がすべて規約案に書かれているものではない。そのなかで、これは県民にとってよくないとか、県としては参加しないように、すなわち、規約案を触ることなしに参加しないとの表明ができて、その分の負担金も払わないで済むのか。


《答弁》 仁坂 知事
   その間題については、まず、規約ではどういう事業をみんなでやるか、分類とか大まかなものを決めている。その規約の中で、例えば、広域防災をやります。これは規約で決めている。例えば、鳥取県とかは全部参加しない。和歌山県は全部参加する。その中で広域防災はどんなことを具体的にするのか。例えば、拠出金でどこかに共同備蓄の倉庫を造ろうとか仮に案件があった場合、それはちょっとスルーするということであれば、私達は遠慮しておくというようなことが言える。イメージで言うとそうなる。

《質問》 藤井健太郎 委員
 今の備蓄の話であるが、確かに規約の中にはそこまでは踏み込んで、「共同備蓄」とは書かれていない。「資材の備蓄に関する事務」と書いてある。各府県でも各市町村でも備蓄はやっている。民間の事業者とも協定を結んで物資の提供をする。その上で「広域連合で全体の共同備蓄をする」と広域連合設立案に書かれているが、いま言われた中身について参加しないことを表明する場合には、県議会との関係はどうなるのか。

《答弁》 仁坂 知事
   まず、そこに書かれている備蓄の議論に参加しませんということを言っているわけではない。
   特定の倉庫を建てるとか。議論の結果、それは反対だとか、我々は言える。
   その中身については、もちろん広域連合委員会に知事の立場で議論に参加している。従って、大事な話であれば、知事が議会に相談をしてやっていくことになる。
   さらに、広域連合全体として、その予算を認めるかということで広域連合議会がもう1回チェックをする。若干、多勢に無勢なところはあるが。

《質問》 藤井健太郎 委員
 ここにある規約案は総論的なことで、具体的な中身に入ると意見はいろいろ分かれてくるということになる。審議するのは規約案しかないが、規約案の具体的なところがなかなか見えてこないところに、小さく産んで大きく育てるということがあり、よく分からない。
 細かな所は、広域連合議会と連合委員会を構成する知事に委任しなければならない、ということになるのではないか。通常、議会で細かな内容まで踏み込んでいくが、広域連合は1つの地方公共団体である他団体であることから、他団体の具体的な事務の中身についてまで、和歌山県の議会でどこまで質問をして意見を言うことができるのか。
 例えば、一部事務組合とか広域の連携の組織では、なかなか直接意見を言えない。広域連合については、それはどういう扱いになるのか。

《答弁》 仁坂 知事
   ただ今の点については、全体としては、分賦金というかたちで県として出していいですかと聞くことになる。それはパッケージになっている。パッケージの中に入っている一部について、和歌山県が気に入らないものについて、先に広域連合委員会の場で撤退しても良いかを諮ることになり、結果について、和歌山県として分賦金はいくらになるかを県議会に諮ることになる。県議会との関係はこういう感じである。

《質問》 藤井健太郎 委員
 広域になればなるほど住民の声がなかなか届きにくいということがあるので、広域連合の中で非常に細かなチェック機能を作ってもらっているが、通常的な議会の中で広域連合の在り方を議論できる道がなければ、だんだん住民から乖離(かいり)をしていく地方公共団体になる危惧を持っているので確認をさせてもらった。もちろん規約案の追加とか変更とか分賦金はごく限られた議案になってしまう。広く広域連合でやっている事務の中身について直接県民として議会の場で意見が言える、質問できる仕組みがいるのではないか。これは広域連合ができてからの話である。
 私は危倶する点がいくつかある。1つは、奈良県、三重県、福井県が近幾知事会のメンバーでありながら広域連合に加わってこない、様子見をしている。仁坂知事は後から入ったら意見が言えないのではないかという話であったが、オブザーバー参加の所はオブザーバー参加なりの見解を持って、広域連合に対して一歩下がって県民のメリットになるのかという様子見をしているのではないかと思う。
 今、連携しているところと協定があるが、防災協定は奈良県や三重県も入っている。協定は協定で動いて、広域連合は広域連合を構成する自治体の範囲内で広域連合の事務をする。この規約の中に連携団体があって、広域連合に加入をしていない団体が連携団体として広域連合委員会に参加して意見を聞くことができると規約にある。
 一方で、事務の範囲は広域連合を構成する団体の範囲となっているので、意見を聞いても、実際に広域連合の事業については協定を組んでいる団体には及ばないことになる。広域連合がやる事務は広域連合の構成団体の中の事務となるが、協定に基づく事務をしなければならないことになるので、そこは二重行政にならないか。
 もし、あってはならないが、大きな災害が広域連合外の連携協定を結んでいるところで起これば、協定に基づいて動くのか、使い分けをするのか。
 政令市である神戸市、大阪市、京都市、堺市は大きな消防力を持っている。そこが広域連合に入っていない。広域連合は府県間協定であるが、政令市の関わりが二重行政になるのではないか。協定の方が参加している団体も多い。

《答弁》 仁坂 知事
   質問の意味をきちんと把握できているかわからないところもあるが、今の理解のもとに答える。まず、第1の点について、議会との関係では、この特別委員会で議論をしてもらい、それをもとに、私は広域連合の準備をしている。準備委員会の中で皆さんの意見を代表している。いろいろ工夫をして先ほど言ってきたような仕掛けを造っている。いろいろな意見を聞きながら、知事としてやらなければならないと考えている。
   オブザーバー参加については、奈良県、三重県はオブザーバー参加の方がいいという考え方であろうが、私は、和歌山県は最初からオブザーバーとしか参加しませんと言ったときに、和歌山県のような小さい県の意見が聞いてもらえないのではないか。私たちは最初から入ると言って、入るという前提で他県に認めてもらった。これから小さく産んで大きく育てることでたくさん議論をしていく。そのときにオブザーバーはあくまでもオブザーバーであるから、はじめからきちっと意見を言えるようにしておいたほうがよい。
   それから連携団体であるが、連携団体とかオブザーバーとか第3者の意見であるからいいことがあれば採用される。
   広域連合の部分が奈良県が広域観光に入っていない。奈良県、和歌山県で何かをやるなら個別の連携で追加していくことになる。こういったプラスアルファの追加であるので、同じことではない。屋上屋ではない。

《意見》 藤井健太郎 委員
 この議会で、関西広域連合の規約案を可決することについて賛成の立場を取らないものであるが、先ほど「関西が一丸となって元気になるんだ」という話の中で、政令市や奈良県、三重県、福井県が入っていない問題を言ったが、防災にしても観光にしても、神戸市、大阪市、京都市、奈良市が入っていない中で、観光ルートをどう作るのかということを議論したって、それほど効果のあるものにはならないのではないか。結局、成果を見せないと、そういうところが入ってこないということだから、最初からそういうところに入ってもらってやらないと成果を見せられないということになる。広域連合の予算としても23年度でドクターヘリを除いて2億円か、3億円ぐらいでしょう。それの範囲内でできることというのは、限られているのではないか。
 ※ 附帯決議については、広域連合を作るということになると県議会としては意味がある決議だと思うが、これを前提に賛成はできない。

《質問》 松坂英樹 委員外議員
 知事の中には、道州制に対して積極的、反対、慎重の立場の方がいるなか、今回、関西広域連合の議案が足並み揃ったからといって提案されているが、奈良県等が不参加であり、足並みが揃わないなかでの提案となっている。やれるところからやっていくというのでは意味が薄いという指摘があるのも事実である。知事は奈良県等が不参加のなかで、無理してスタートするような状況についてどう考えているのか。

《答弁》 仁坂 知事
   私は、いつも100点を取らないと実行しないというのは、主義としてどうかと思っている。そういう意味では、良いことはやっていって仲間を揃えていけば良い。大阪市や堺市は、結構、積極的にこれから考えていくと言われている。そういう意味でも、初めから100点というのは中々難しいけれども、100点だけのものをやろうというのも、あまり良いことではないと思う。


◇ 議案に対する採決
議案第116号 関西広域連合の規約について
は、賛成多数で原案可決
議案第116号に対する附帯決議を賛成多数で可決

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