2011年2月県議会 松坂英樹 一般質問 概要記録
2011年2月25日

1.介護の充実をめざして
(1)介護老人保健施設利用者の重度化
(2)介護労働者の労働実態と待遇改善
(3)医療費等の施設負担

2.教育問題
(1)30人学級の実現に向けて
(2)発達障がいのある子どもへの対応
(3)急性アレルギー反応、いわゆる「アナフィラキシー」のある子どもへの対応

3.地デジ対策
(1)受信困難地域への支援の到達と課題
(2)県内地デジ未対応の世帯数とテレビ台数
(3)BS対応の問題点
(4)アナログ停波の延期について

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1.介護の充実をめざして
《質問》 松坂英樹 県議
 まずはじめに、介護の充実をめざしてという柱で質問をさせていただきます。今、地域で住民の皆さんのご要望を伺うと、介護にかかわる心配事やご家族のご苦労を、たいへん多くお聞きします。特別擁護老人ホームの順番待ちはなかなか減っていない状況ですし、認知症の家族の介護でのたいへんなご苦労、もうこれは家庭介護の域をこえていると思うし深刻です。過疎と高齢化が進むわが県では、在宅へもどっての介護がなかなかむずかしい状況も一方である、こんなことを感じる毎日です。
 そんな中、先日、介護施設で働く皆さんからお話を聞く機会がありました。職員の皆さんからは、利用者の方の介護度や医療ニーズの重度化がすすんでいること、排泄や入浴の介助、吸引をはじめ、2人がかりでの対応が必要となる特定疾患など、仕事の内容は多岐に渡り、きつくなってきている。夜勤は夕方4時からあくる日の9時まで17時間連続勤務、間に2時間の休憩を入れようとしても休憩がとれない、職員配置もギリギリで容態急変が複数出ると対応しきれない。有給や代休などの休みもとりにくい。福祉の仕事につく若い人は心のやさしい人が多いのだが、忙しさの中ですりきれかねない状況がある、こういったご苦労をされているお話を聞きました。
 県内労働組合などの調査によると、介護の職場では正規職員が4割にしかすぎず、非正規や登録職員が約6割を占めています。また現在の職場の勤続年数は、5年未満が半数を超えるなど、働き続けられない状況があるのではないでしょうか。
 働き続けられる賃金・労働条件を求める声は圧倒的です。介護職員の賃金がまだまだ低く、昇給の面でもなかなか上がってゆかない実態があります。
 また、夜勤の仕事の困難さもぜひわかってほしいといいます。夜勤の交代勤務が組みにくいので、変則2交代で夜勤が17時間とか16時間の連続勤務のところが多く、「夜勤者の人数が少なくて不安」「緊急事態に対応できない」「仮眠・休息が取れない」「夜勤時間が長すぎる」との声が出ているように、不安をかかえながら、休むこともできずに勤務している職場実態があります。
 しかし、こういった実態の中ではあっても、仕事に対する満足度という点では、「利用者・家族から感謝される」「人間的に成長できる」「社会の役に立てる」などが上位を占め、福祉の職場らしく生き生きとがんばっている姿があります。こういった「利用者のために」という使命感に燃えて、そしてささえられて、がんばってきたケアマネージャー・ヘルパー・すべての介護関係者の努力にむくいなければという気持ちでいっぱいになりました。
 私は、職員の皆さんの声に加えて、施設の管理者の方々、介護の専門学校へも伺ってまいりました。施設の管理者の方々からは職員確保への苦労話をはじめ、経営的には人件費負担がきびしく配置基準をはじめとする制度上の改善や、処遇改善の取り組みの継続を求める声が出されました。専門学校からは、介護職への雇用対策や、専門職としてのスキルアップの取り組み状況、また「介護職員の子どもさんが親の姿を見ながら入学してくれるのを見かけるようになり喜んでいます」とう心温まる話も聞かせていただきました。
高齢化と過疎化が急速に進む和歌山県として、介護の職場を地域の重要な雇用の場として位置づけ、待遇改善に特段の力を入れるべきではないかと考え、以下3点にわたってお伺いをしたいと思います。

(1)介護老人保健施設利用者の重度化
 まず第一に、介護老人保健施設利用者の重度化についてです。この問題は、特別養護老人ホームの施設不足で入所まちがどっさりあってなかなか入れずにいるということに加えて、病院からは3ヶ月たったからと退院を余儀なくされた患者さんの行き場がない。こういう問題が重なり、その間にある老健施設に利用者が集中し、しわよせ・負担がかかっているという構造的な要因があると考えます。ある施設の方は「感覚的には、うちでは2割ぐらいの利用者さんは本来特養ホームがふさわしい方々ではないかと思う」とおっしゃいます。また、病院を転々とし、退院してはきたものの、まだまだ医療のニーズが必要だ、こういう利用者さんの割合がたいへん多くなっています。看護師さんの感想としては、ひと昔前の一般病棟の患者さんが今は老健施設にいるという状況です。利用者ご本人や、ご家族も不安ですし、こういった重度化が職員の方々の腰痛など健康問題、人員配置不足の状況に結びついているのではないでしょうか。
 介護老人保健施設利用者の重度化について、県内の状況をどう認識し対応をしてゆこうとしているのかお示しください。


《答弁》 福祉保健部長
 介護老人保健施設利用者の要介護度の状況につきましては、本年2月17日に公表されました「介護サービス施設・事業所調査」の結果によりますと、平均要介護度は平成17年には3.17であったものが、平成21年には3.31と議員ご指摘のように高くなっており、特に要介護4以上の割合が年々高くなってきております。
 県では、要介護度が高い施設利用者の増加に対応するため、「わかやま長寿プラン」に基づく計画的な施設の整備に加えまして、国の介護基盤緊急整備等臨時特例交付金も活用しながら積極的に整備を行っているところであります。


(2)介護労働者の労働実態と待遇改善
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、介護労働者の労働実態と待遇改善について伺います。先に紹介したような介護労働者の労働実態を、県はリアルにつかもうとしているのでしょうか。大阪と和歌山では2万円ほどの賃金格差が依然としてあると聞きますし、働き続けても給料が上がらず将来の見通しがもてないという実態があります。
 和歌山県として、介護の職場を地域経済の中でも重要な雇用の場として位置づけ、待遇改善に特段の力を入れるべきではないでしょうか。国に対しても処遇改善の取り組み継続や、来年の介護報酬改定にむけてどんどん意見を上げるべきではないでしょうか。


《答弁》 福祉保健部長
 介護サービス分野が確固とした雇用の場として成長するためには、介護職員の給与水準の向上などの処遇改善を図ることが重要であることから、現在、介護職員処遇改善交付金を活用しまして、賃金の引き上げなど処遇の改善を図っているところです。
 また、交付金が終了する平成24年度以降の取扱いについては、昨年11月に社会保障審議会介護保険部会でとりまとめられました「介護保険制度の見直しに関する意見」では、「本来的には介護職員の処遇改善が継続できるよう、介護報酬改定により対応する方向で検討していくべきである」とされています。
 詳細な内容につきましては、平成24年4月の介護報酬改定に向けた議論の中で決定されることとなりますので、県としても介護職員の処遇改善が継続できるよう、引き続き国に対し要望して参ります。


(3)医療費等の施設負担
《質問》 松坂英樹 県議
 3点目に、医療費等の施設負担について伺います。介護老人保健施設において医療ニーズのある利用者が増えている一方で、検査や投薬費用、おむつ代などは介護報酬に含まれているとして施設は保険請求できず、実質的に施設の持ち出しとなっている部分がかなりあると聞きました。これは介護保険の制度設計が施設や利用者の実情にあっていない制度上の問題ではないでしょうか。この問題を解決することは施設の経営改善につながり、ひいては正規雇用を増やし人員配置改善につながると考えます。国に対し、医療費等の施設負担について改善を求めるべきだと考えますがいかがでしょうか。


《答弁》 福祉保健部長
 特別養護老人ホームに比べ介護老人保健施設では、医療ニーズのある方の割合が高くなる傾向にあると考えられます。
 介護老人保健施設の入所者が受けた医療費等については、介護報酬あるいは診療報酬において評価されていることとなっておりますが、適正な評価がなされていない項目もあると聞いていますので、平成24年4月の介護報酬・診療報酬の同時改定に向けまして、関係団体の意見もお聞きし、国に対し必要な事項を要望して参りたいと考えております。


教育問題
《質問》 松坂英樹 県議
 次に、教育問題で3点お伺いいたします。先日、急性アレルギー反応、いわゆる「アナフィラキシー」のある子どもへの対応について教職員の方々からお話を伺いました。私自身もアナフィラキシーという言葉自体は聴いたことがありましたが、その実情はよく知りませんでした。
 アレルギーは、体内に侵入した異物に対する防御反応がかえって体に不利に作用して、かゆみやくしゃみ、炎症や喘息などの症状をおこすものです。アナフィラキシーとは、アレルギーの原因物質に接触したり、摂取したあと、数分から数十分以内に、体の複数の臓器や全身に現れる、非常に激しい急性のアレルギー反応なのです。重症の場合は、呼吸困難や意識障害をおこし、命をおびやかすようなアナキフィラキシー・ショックとよばれるショック症状をおこすのです。ショック症状が出た場合には、一刻をあらそって「エピペン」と呼ばれる注射を打つことが重要になります。この注射は、医者の処方のもと、本人が打つのが基本とされていますが、本人の症状が重篤であったり、小さい子どもの場合、医療従事者、または家族、そしてだれもいないときには教師が打たなければならないときも考えられます。まさに命がかかった注射なのです。
 アレルギー一般については、最近は玉子や小麦粉、そばなどの食物アレルギーについて食品表示もされてきてよく知られていますが、アナフィラキシーとなるともっとたいへんです。たとえば牛乳のアナフィラキシーは、牛乳を飲むのはもちろんダメですが、牛乳が自分の手についただけでダメなのです。となりの子の牛乳がかかることだってあるわけですね。学校では小さな紙パックの牛乳なんかを飲み終わったら、「小さくきちんと折りたたんで片付けましょう」と指導するわけで、ちっちゃな子が一生懸命牛乳パックを折りたたもうとするとプチュッと牛乳が飛ぶことだってあるのです。こうなるとクラスの友達とはうんと離れて給食を食べなければなりませんし、また食後は運動禁止なので、このクラスは5時間目に体育の授業を計画できません。
 牛乳の例を上げましたが、ハチもあるし、複数の食物のアナフィラキシーのある場合も多いわけで、親も、担任の先生も、緊張の糸が張りつめっぱなしの状態。本当にたいへんな中、がんばっておられると思います。
 こういった子どもたちをふくめ、すべての子どもたち一人ひとりの成長をしっかりと保障してゆく、様々な対応が求められているのが今の学校現場の現状だと思います。今日の質問では「ゆきとどいた教育」を保障する観点から3点、教育長にお尋ねをいたします。

(1)30人学級の実現に向けて
 まず、「30人学級」、少人数学級の実現について伺います。一人ひとりの子どもたちの成長と発達を保障するため、30人学級など、少人数での「ゆきとどいた教育」の実現が強く望まれています。県としてもこの間、順次、少人数学級編成のための加配措置をひろげてきたところです。国もこの声にこたえるべく、35人学級への学級定数改善を、いよいよ来年度、小学校1年生からからスタートさせようとしています。今回の国の措置により県内小学校でどの程度の学級定数改善がすすむのでしょうか。見通しをお示しください。


《質問》 教育長
 現在、公立学校における標準学級編制基準は40人とされておりますが、本県では独自に国の指導方法工夫改善に係る加配教員を活用いたしまして、小学校及び中学校の全学年で、35人を基本として少人数学級編制を行い、子どもたち一人ひとりに対するきめ細かな指導を進めてきたところでございます。
 今般、文部科学省におきましては、30年ぶりに教職員定数改善を行うための関連法案が提出されているところでございます。
 これによりまして、来年度は小学校第1学年において35人学級編制が導入される見込みとなっておりまして、現在の標準である40人学級編制と比較した場合、本県におきましては15学級程度増加するというふうに見込まれてございます。
 今国会における審議の状況を見守り、適切に対応してまいりたいと存じます。


(2)発達障がいのある子どもへの対応
《質問》 松坂英樹 県議
 次に発達障がいのある子どもたちへの対応について伺います。LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障がい)など、発達障がいのある子どもの出現率が、ここ10年で100倍になったといわれている現状があります。これらは特別支援学級の対象外ですから、35人の普通学級には1名といわず、2名、3名と在籍する。もちろん診断されていない場合もありますから、そういうのが現状です。
 発達障がいのある子どもには、その子の状況を十分に把握したかかわりや言葉かけが求められます。そうでなければ「気になる子」が「困った子」だとしてあつかわれてしまいます。この子たちは、決して「困った子」ではなく、「困っている子」なんですね。「困った子」によって大人たちがどうしていいのか困っている。しかし、困った子と言われているその子どもが、自分が伝えられなくて、大人にわかってもらえなくて困っている子なんだと、そして、しっかりとその子によりそった対応ができれば、自分のことをわかってくれるという安心感が持て、落ち着いて学習をはじめ、学校生活がおくれる、人間的人格形成や学習権の保障ができるわけです。
 こうした個別対応がたいへん重要になるわけですが、学級に発達障がいの子どもが在籍している場合、学級全体の子どもたちへの支援との兼ね合いが、たいへんむずかしいのです。担任は、学級全体の子どもたちに対する課題をあたえ、その課題に一人ひとりの子どもたちがどう取組んでいるかを細かく観察しながら、適切な支援をすることが必要となります。しかし同時に、まず発達障がいのある子どもが課題を理解しているのか、取り組みの方法を考えられるのかを、その子どもに寄り添い、その子どもに応じた声かけが求められます。そうなると担任一人で学級全体をみることが困難になり、学級が安定しなくなってくる場合もおこってくるのです。
 私は4年前の2月県議会で、発達障がいのある子どもたち、親や教職員に対する相談体制の充実をと一般質問でとりあげました。これに加えて、教職員の人的配置、学校全体での協力体制、個別指導と全体指導との関係での学習内容や学級指導での工夫などがたいへん重要であることは言うまでもありません。和歌山県として、LDやADHDなど発達障がいのある子どもたちへの対応や取り組みは、この間どう進んできたのでしょうか。新年度には新規事業も予算化されていますが、子どもたちや現場の教職員・親たちの悩み・願いにこたえるものとなっているのでしょうか。


《質問》 教育長
 県教育委員会では、発達障害のある児童生徒が在籍する通常の学級における指導や支援を充実させるために、学校全体で取り組む特別支援教育の体制整備を推進するとともに、教員の指導力向上に係る研修会を実施してございます。
 また今年度、LD等の通級指導教室を14教室増設いたしまして22教室とし、発達障害のある児童生徒の学びの場を拡充いたしました。
 さらに、来年度は新たに「特別支援教育の視点を取り入れた新しい授業作り事業」を実施いたしまして、発達障害のある児童生徒を含めた、全ての子どもがわかりやすい授業づくりや一人一人を大切にしあう学級経営の在り方等について研究開発を行う予定にしており、その研究成果は、冊子として県内全ての学校に配付して、今後の各研修会等で活用してまいりたいと存じます。


(3)急性アレルギー反応、いわゆる「アナフィラキシー」のある子どもへの対応
《質問》 松坂英樹 県議
 3点目に、先ほど紹介しました、急性アレルギー反応、いわゆる「アナフィラキシー」のある子どもへの対応について伺います。 給食の時間における対応をふくめ、担任まかせにせず学校全体で取組むべき課題であるとともに、発作時の注射など医療との境目にもかかわる重要な問題を含んでいます。しっかりと保護者との意思疎通を深め、主治医など医療関係機関との連携を強化してゆく必要があると考えます。アナフィラキシーへの対応についてご答弁を願います。


《答弁》 教育長
 急性アレルギー反応、いわゆる「アナフィラキシー」を有する児童生徒への対応につきましては、児童生徒の命に関わる問題であると認識しており、国監修の「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に基づき、適切に対応するよう各学校を指導しているところです。
 特に、当該児童生徒の在籍する学校におきましては、保護者、本人、主治医及び教職員などが、緊急時の対応等について予め取り決めをしておくよう、また、当該児童生徒についての情報を教職員全員が共有するよう、強く指導しているところでございます。


3.地デジ対策
(1)受信困難地域への支援の到達と課題
(2)県内地デジ未対応の世帯数とテレビ台数
(3)BS対応の問題点
(4)アナログ停波の延期について
《質問》 松坂英樹 県議
 「広川町の広八幡神社のあたりが地デジ入りにくいんやて」という話をお聞きし、現地を歩いて状況をうかがいました。すでに地デジ対応テレビのある家でも、「テレビ和歌山などいくつかの局の電波が弱く時々画面が止まる」というお宅。「うちはちゃんと映っているよ」というお宅。「地デジのテレビを買ったときにアンテナも新品にしたが、やはり電波が弱いので大きいアンテナに買い換えたんや。2度手間だったわ」という声。また「家の中で1台だけ地デジテレビに買えたけど映りが悪い。子ども部屋やあと何台かアナログのテレビあるけど、対策はその時になってから考えようと思っている」とのお宅も。また、「電波が弱いので光ケーブルで地デジを見るようにできると思って、アンケートが来ていたがそのまま放ってある」こういった様々なケースがありました。
 アナログ放送ではギリギリ見えていたものが、デジタルだとその境界で見えたり画像が止まったりと大きく影響が出てしまうケースのようです。電波を受信している箕島局の出力がわずか1Wと、アマチュア無線のトランシーバよりも出力が小さくなってしまったのも要因の一つではないかと考えたりもします。
 地域全体が元々まったく電波の入らない難視聴地域への対策、また地デジになることによる新たな難視聴地域への対策は、国・県・市町村の努力により、県内では面的対策が大きく進んだと思います。しかし、ここにいたっても今回のケースようなグレーゾーンがあるという認識を新たにしました。そこで地デジ対策について以下4点、知事に質問をさせていただきます。
 1点目に、地域的・面的な地デジ対策としては、7月の期限まであとわずかですが、県内受信困難地域への支援の到達はどこまできていて、残された課題はどうなのかお答えください。加えて2点目に、個々の世帯に焦点をあてて、県内地デジ未対応の世帯数やテレビ台数はどのように把握しているのかもお示し下さい。
 次に、3点目にBS対応の問題点について伺います。当面の対策のめどが立たない地域には、BS放送機器の支給により地デジを見るという非常手段的な方法も用意されていますが、東京の局の放送しか見ることができません。和歌山のニュースや天気予報、特に台風情報や地震情報が見られないというのは非常に不便である以上に、こわいことだと思うのです。また、BS放送自体も2015年3月末までと期間がきられているなど、きわめて限定的・一時的な措置となっています。現状では、BS対応を選択せざるをえない世帯は県内でどれくらい出るのか、また放送期間終了時にむけての対策の見通しはどうなのか、お答え願いたいと思います。
 最後に、現行のアナログ派の停止時期の問題について見解を伺いたいと思います。地上派デジタル放送は、一番早い首都圏では2003年から放送が始まりました。それに比較して、県内では一番遅いところではやっとこの年末に放送が始まったばかりです。地上派デジタル放送の受信対策というのは、実際に地デジ放送が始まってみないと、電波の強さも、混信の具合などもわらないし、受信側・送信側の対応策の試行錯誤もこれからという段階です。
 また現実的には、実際にアナログ放送が止まらないと本格的対応にいたらない世帯もあるでしょう。「しばらくは、このままで辛抱するよ」という部分もずいぶん残されていると思うのです。「アナログ電波を止める」という実証実験も積み重ねる必要があったと思います。
 総務省から普及率の調査が昨年末に発表されましたが、調査はそもそも80歳以上の高齢者世帯、250万世帯が調査対象からはずされているという不完全なしろものです。また数字は受信機の普及率ベースですから、液晶テレビ・DVDレコーダーなど複数の機器を購入している場合、2重カウント・3重カウントされている場合もあるわけです。
 私が日ごろ地元のご家庭を訪問させていただく中でも、一人暮らし2人暮らしの高齢者世帯が多い中、総務省は和歌山の普及率は9割とはじいているそうですが、実感としてはとてもとてもいっていないという感じを受けます。その総務省調査でさえも、年収200万円未満の世帯では2割以上が地デジ未対応であると深刻な事態ですし、和歌山県は近畿の中でも対応率が一番低くなっています。
 この問題の根本は、デジタル放送開始時期に合わせたテレビの買い換えサイクル、これを無視した、極めて無理のある地デジ移行計画にそもそも問題があるということです。かといって計画は変更するつもりはないし、アナログ放送停止時期を伸ばすことはコストがかかる、後の使い道が待っている、といいますが、地デジ対応機器の普及数の絶対的な少なさからみても、番組やCMを見る対象者が今のままではガクンと減ってしまうわけで、テレビ局やスポンサーにとってもアナログ停波延期はデメリットばかりではないはずです。
 みなさん、今の状況では和歌山県内に「テレビ難民」を出さないと断言できるでしょうか。全国市長会でもアナログ停波の延期を提言しています。県内のご家庭の現状から見ても、低所得層や高齢者世帯での普及率の低さを見ても、国に対しアナログ停波の延期を求めるべきではないかと考えますが、知事の見解をおたずねいたします。


《答弁》 知事
 本県は山がちな地形でございますし、中山間に人がたくさん住んでいるというような地形的特徴があります。そういう意味で、この地デジが受信困難になりそうだというのは、自然にたくさん出てくるという点で問題のある県だと思います。
 そういう問題に関して、国の対応を私どもは約3年前から激しく追及をしてまいりました。本件は、電波の利用という国策によって出てきた話であり、また、アナログ波の停止を延期するというのは、テレビ局の経営の問題も起きることであります。
 ですから、本件は国の責任できちんとしなければいけない、いやしくも地域の視聴者に多大な負担をかけてはいけないということを強く要求してまいりました。
 何度も総務大臣室にまいりました。その都度、対策が手厚くなってまいりました。
 県でも国の問題だとはいえ、県民に大変影響の出る話でございますので、非常に熱心に努力をしてまいりました。和歌山県は全県中、最もうるさく、かつ最もまじめに取り組んでいる県だと思っております。
 詳しく申し上げますと、現状では共聴施設新設の補助拡充や、CATV対応する場合の支援措置など大きな改善がなされました。また県では、市町と連携して住民への説明会等を開催し、こうした制度の活用を進め、住民の負担の軽減を図ってまいりました。
 地デジ対応未定の世帯数は、だんだん減ってまいりました。1月時点の県集計で2,361世帯。昨年8月時点と比較いたしますと1,882世帯の減少となっております。
 県内における地上デジタル放送対応機器の普及率については、国の調査結果ですが、これによりますと平成22年9月で88.7%となっておりますが、国に要請し設置された「総務省和歌山県テレビ受信着支援センター」、いわゆるデジサポ和歌山が一般の方々への周知活動等に努めております。
 具体的には、デジサポが12月末時点で約7,500世帯への戸別訪問を実施いたしまして、今年6月からは各市町村への臨時相談窓口も設置するなど、移行に向けた対応が推進されております。
 次に、BSによる暫定的難視対策、いわゆるセーフティネットにつきましては、現在、117世帯において利用予定ですが、今後も共聴施設改修に高額な負担が必要となる世帯など、移行までに対策が完了しない世帯において利用頂くべく、国・市町と連携し、順次、住民への説明等の対応を進めて行きたいと考えております。
 しかし、議員ご指摘のとおり、こうした世帯には恒久的対策が必要であります。地元のテレビ局も見たいということでありますので、住民負担軽減のため、国に対し更なる対応を要望していく必要があると考えております。
 県は、移行時にテレビが見えない方をなくす取組として、市町と共に、共聴施設改修や、新たな難視の調査及び住民への説明など、できる限りの対策を取ってまいりました。今も一所懸命やっております。
 これを最後まで続けていきたいと考えております。
 しかし、そもそも地デジ移行は国策でありまして、県や市町も住民のために最善を尽くしますけれども、その遂行は国の責任において果たされるべきものであります。
 移行時に住民がテレビを見られなくなることがないよう、国に対して適切な対応を強く要求してまいりたいと考えております。


《要望》 松坂英樹 県議
 答弁をいただきました。今回の質問では、介護の職場や学校現場の声・実情を取り上げさせていただきましたが、どちらも、たいへんな状況の中ではあるものの、やりがいをもって一生懸命がんばっている職員のみなさんの声や実態なんですね。
 だからこそ、疲れた体にむちうって利用者のベッドに向かうのです。子どもの命にかかわることならと、とれる手立ては何でもやり注射もいとわないのす。ですから、県行政として、県教育委員会として、こういった状況に心をよせ、現場の状況や声をリアルにつかむ努力が、何よりもまず求められると思います。そして、法に基づく検査や上から目線の指導という形だけでなく、現場の苦労や悩みをわかって、いっしょになってがんばってゆく、解決の方向を探ってゆく、そういう姿勢をつらぬいていただきたいと思います。
 現場の皆さんとともに、力をあわせて、利用者やご家族、子どもたちや保護者、県民のみなさんの願いにこたえる一層の取り組みを強く要望するものです。

 地デジ対策については、国の調査で普及率88.7%、県の集計で対応方法未決定が2361世帯というお話がありました。
 各市町村別の地域や共聴組合をひとつづつ対応をつめてゆく、住民といっしょに、色々悩みながら対応をすすめる、その積み上げがここまで到達してきたという点では、県と県内市町村の取り組みに対して敬意を表するものです。
 しかし、国の数字で見ても、1割が未対応です。一口に1割といいますが、100万県民からみれば10万人の方がまだ対応できていないという数字なんですね。大量の「地デジ難民」、テレビが見られなくなる人が出かねないという現状です。
 ある日突然、まだ寿命でもない、使えるテレビがゴミになる。これがほんとうにいいのか。車についているテレビなんかも膨大な数のものが役立たずになります。
 7月24日の期限を前に、和歌山では、この年度末の段階でどこまできたのか、何が課題として残っているのか、そして大局的にみて、このまま突っ込んでいって本当に大丈夫なのか、このことを議論しておくべきだと思い質問したわけです。
 答弁ではテレビが見えない方をなくす取り組みを最後まで続ける、国に対しては適切な対応を求める、こういう答弁だったと思います。 今の時期としての限界もあるでしょうか、これから3月、4月、5月、6月と事態は一層緊迫してきます。
 今後とも、和歌山県ではテレビの見えない方は出さないという立場で取り組み、国に対してもしっかりモノ申していただくよう、重ねて要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

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再質問で要望する、松坂英樹県議=2月25日