2011年月県議会 雑賀光夫 一般質問 概要記録
2011年9月20日
1.地震・津波と台風・大雨災害にかかわって
(1)台風12号での被害にかかわって
 @ 避難指示・避難場所など今回の災害から引き出す教訓
 A 農林水産業被害と対策・被災者への支援について
 B 愛宕(あたご)池決壊について
(2)津波対策について
 @ 避難場所をよりきめ細かく決めていくことへの支援について
 A 医療機関の津波対策について

2.原発事故・放射能漏れと脱原発をめぐって
(1)脱原発をめぐっての関西広域連合での議論と仁坂知事の姿勢
(2)和歌山県内の環境や流通食品の放射能検査体制

3.自然エネルギーへの転換をめぐって
(1)メガソーラー発電と自然エネルギー協議会について
(2)ソーラー発電の用地・場所の確保について
(3)小水力・バイオマスの可能性について
(4)太陽光発電への補助引き上げ、太陽熱利用の可能性について
(5)風力発電と低周波公害被害者への救援(要望)

4.部課をこえた自然エネルギー推進の体制

5.戦争責任をめぐる仁坂知事の「国民総懺悔論」について

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1.地震・津波と台風・大雨災害にかかわって
《質問》 雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 第一の柱は、地震・津波と台風・大雨災害についてであります。
 3.11東日本大災害は、わたしたちに大きな衝撃を与えました。現地では、苦難のなかで復興が始まっています。その矢先、私たち和歌山県民の足元でおこった台風12号災害は、思いもしなかった被害を与え、多くの県民のみなさんが犠牲になり、行方不明の方も多数いらっしゃいます。
 二つの災害で犠牲になられたみなさんと被災されたみなさまに、お悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
 まだ災害の危険がつづいています。まずは、被災者の救援と復旧が第一です。同時に、私たちは、こうした災害から教訓を引き出し、今後に生かさなくてはなりません。

(1)台風12号での被害にかかわって
 まず第一は、このたびの、台風大雨での河川の氾濫などの問題です。
 今月、県議会の対策本部で状況をお聞きした次の日の6日、私たち県議団は、被災地にはいり、私は那智川に沿って、市野々地域にむかいました。流木が打ちあがり、乗用車が壁に張り付きという沿道の状況です。那智の滝にのぼる道路そのものが、流されているのに息を呑みました。川上から大きな石が流されてきて、その石が道路を削り取ったのでしょうか。
 そこで質問ですが
@ 避難指示・避難場所など今回の災害から引き出す教訓
 この度の災害でたくさんの犠牲者を出してしまったわけですが、避難指示・避難場所のあり方など、現時点でどういう問題があったとお考えなのか、知事にお伺いいたします。


《答弁》 知事
 今回は、各地で観測記録を更新するほどの豪雨であり、今まで災害発生が予測されていない地域での災害が発生しております。また、夜間に豪雨となり、急速に河川の水位が上昇し、避難が困難であった地域もあったと聞いております。
 県では、市町村に対して、風水害に備え、国のガイドラインに基づく判断基準を予め整備するように助言するとともに、気象台の発表する気象情報や土砂災害警戒情報、水位情報を活用するように助言してまいりました。
 今回、被災市町を先日回って来ました時に、複数の首長から県の情報、すなわち水位情報とか雨量情報などが非常に役に立ったとお礼がありました。しかし、その内の幾つかは、その後の大増水によって大きな被害を受けておりますし、避難している人も、あまりの水位上昇に避難先自体が危なかったというお話を被災地で聞いたところであります。
 今回のような予想を上回る豪雨においては、避難指示等の発令の判断が非常に難しかったと考えておりますが、市町村が適切な避難指示等を行えるよう、これは、何処へ行くかということも含めてですが、国においても発令判断基準見直しに取り組むと聞いておりますし、我々も雨量に応じてどの位まで水位がくるかという情報を入手したいという気持ちでおりまして、緊急復旧が一段落したら、じっくりとこの問題にも専門家の意見を聞きながら取り組んでいきたいと思っております。


A 農林水産業被害と対策・被災者への支援について
《質問》 雑賀光夫 県議
 あわせて、農林水産業への莫大な被害がでていますが、それをふくめて被災者支援についての決意をおきかせ下さい。


《答弁》 知事
 農林水産業関係の被害、これはたぶんまだ増えていくと思いますが、16日現在で133億円であります。被害は県内各地で発生しておりまして、大規模な山腹崩壊や農地流出、養殖施設の破損など甚大であります。私自身、現地を訪れるたびに、被害の大きさを痛感しております。
 この大きさから、先週の火曜日、13日に、国の方に要望に行った際に、例えば官房長官や、国土交通大臣、総務大臣、防災担当大臣にお会いして、激甚災害の指定とか、あるいは今後の復旧のための補助事業の認定とか、スピーディーにやってもらいたいというようなことを申して参りました。その結果、激甚災害については今日閣議決定があったと聞いておりますし、また、多くの対策もスピーディーにどんどん進めていけるようになっているところであります。
 被災対策としては、県では被災直後から職員が現場へ足を踏み入れて、被害状況の把握等を行って、迅速な仮復旧や、早期の本格的な復旧事業の着手のための準備を進めており、そのための予算の増額をお願いしたいと考えております。あわせて、農業施設、漁業施設の復旧助成についても予算措置を検討しておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 農業につきましては、農業施設の損壊とか、あるいはJAなどの共同利用施設の損害については、公的事業としてそれを行うことができますので、最大限これを行っていきたいと思っております。また、それに漏れた部分についても、被災された農林水産業者の経営の安定を、いち早く金融面で支えるために、従来の災害時以上に利子負担の軽減や融資枠の大幅な拡充を実施しまして、適用対象も被災した農業施設や農機具等の修繕、購入にも広げてやっていきたいと考えております。
 今後も、被災された方の気持ちに立って、状況に応じて必要な対策を速やかにとり、被災された皆様が、一日も早く元の生活に戻ることができるように総力を挙げて取り組んで参りたいと考えております。


B 愛宕(あたご)池決壊について
《質問》 雑賀光夫 県議
 また、この台風で、紀ノ川市の愛宕池が決壊いたしました。2008年の春には、おなじ紀の川筋の松池・桜池が、集中豪雨になかで、ひびが入ったことがあります。このたびは、それほどひどい雨ではない中での決壊です。
 松池・桜池についても、ため池の点検との関係で問題を指摘しました。このたびの愛宕池の場合は、第二次点検の対象になっていなかった池の、全面決壊です。「ため池点検」と安全対策について、見直す必要があるのではないでしょうか。農林水産部長の見解をお伺いいたします。


《答弁》 農林水産部長
 愛宕池では、平成16年度にため池耐震診断と、平成17年度に農業用ため池緊急点検を実施しております。
 耐震一次診断では、目視による堤体の調査や地形、下流の状況等を総合的に勘案し、危険度を判定いたしました。緊急点検も同様に、目視による現地調査に立地条件等を加えて、総合的に判定を行いました。
 耐震一次診断では、下流に民家が多い等危険度の高いため池から優先的に二次診断を実施することとしております。
 愛宕池は、地形や下流に民家が少ないことから、二次診断を行っておりません。
 日常管理において、ため池の変状を即座に把握することが、ため池の決壊及び2次被害の防止につながることから、これを充実させることが、安全確保につながると考えております。
 このため、ため池点検マニュアルを管理者に配布し、日常管理の充実を市町村を通じて指導していく所存でございます。
 また、愛宕池の決壊については、紀の川市役所が原因を調査中であり、今後の安全対策等の参考にしたいと考えております。


《意見》 雑賀光夫 県議
 「災害から引き出す教訓」と申しましたが、私自身も、まだ、教訓を引き出せるような状態ではないし、それも、この場で一言で言えるようなものではないことは、よくわかっています。
 那智川に沿って、二回、上り下りしましたが、町長さんの奥さんと娘さんがなくなったという現場では、「いったいどこに避難したら助かったといえるんだろう」と考えました。川があふれる、山がくずれるという状況だからです。
大田川周辺をまわると、川から離れた電線に、稲わらやゴミが引っかかっておりました。堤防を高くしても間に合わない。川幅を思い切ってひろげるほかはないのではないかなど言いながら、見て回りました。
 この度の災害で、知事はじめ県職員のみなさんが全力をあげておられることに感謝申し上げます。
 河川にかかわる予算が大幅にへらされているが、これでいいのかという問題などは、じっくりと検証してみなくてはなりません。


(2)津波対策について
@ 避難場所をよりきめ細かく決めていくことへの支援について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二は、津波から避難する問題です。いつ襲うかもしれない東南海・南海地震津波、東日本大震災は、従来考えられたのとはちがった、大きな津波が襲うかもしれないことを教えています。
 海南市入り口には、浮上式津波防災堤防の建設がはじまっていますが、それでも逃げなくてはなりません。
 このたび、県は、津波からの避難場所を3つのレベルに分けて指定することにしました。このことには賛成ですし、さらに充実する必要があると考えています。
 私は、海南市東浜というところで育ちました。昭和21年12月の南海地震津波のときは、二階建ての家屋の階段、上から3段をのこして水につかりました。
 津波浸水地域で育ってきただけに、津波から避難することがどれだけ大変なことかよくわかります。「行政は高台ににげろというけれども、寝たきりのお年寄りをつれて避難するのは大変だ。もっと現実的な逃げ方を考えなくてはならない」と申し上げてきました。
 今回、県がリードして市町村の避難場所を確定した作業は、高台だけでなく、浸水地域内にも「レベル1」の避難場所設置するなど、私が申し上げたことに応えていただいたものとして、評価するものです。
 同時に、「私がもっと現実的な避難方法を」と提案したのは、3,11大津波以前のことでしたから、私はこれほどの大きな津波を考えていませんでした。したがって、今回の呼び方でいえば「レベル1」の避難場所でも十分だ。「それ以上高いところに無理に移動しなくてもいい」と考えていたわけです。
 ところが、このたびの、県がリードした考えは、それとは違って、「レベル1に指定されている小学校の児童も、避難する時間があるならば、さらに安全な避難場所に逃げてほしい」というものです。私は、いったん首をかしげたのですが、「釜石の奇跡」といわれたケースをよくよく検討してみると、釜石の中学校は、従来のハザードマップでは、浸水が予想されていない場所にありながら津波に襲われ、中学生、小学生は、そこから1キロ以上も逃げて助かったのです。県の防災担当課の説明を聞いて、やっと納得いたしました。
 それでも東浜のような高齢化がすすみ避難場所まで距離がある地域の現実を前に、立ちすくむということもあります。
 日方保育園というところは、近くに7階建てのマンションがあるのでそこに逃げさせてもらえるように交渉しているともききますが、それは、このたびの発表にははいっていません。
 津波避難所指定の作業は、相当のところまできたと思いますが、行政が指定した避難場所がすべてではなく、民間のしっかりした建築物もふくめて、市民が自らの責任で避難場所をきめる、それを行政が支援する必要があると思います。そういう意味では、避難場所確保はまだまだ進めなくてはならないと思っています。当局のお考えは、いかがでしょうか。


《答弁》 危機管理監
 東日本大震災から得られた教訓とは、想定を信じ切ってはいけないこと、ハード対策を過信してはいけないこと、などがありますが、最も重要なことは、国土を形作ってきた自然と向き合って生きるうえでは、自然災害ではどんなことも起こり得るということを、改めて考えていただき、備えていただくことでございます。
 そこから導き出された考え方として、津波からの避難については、時間が許す限り高台へ逃げることが最も重要との認識のもと、4月から市町村と連携し、避難場所の緊急点検を進めてまいりました。
 見直され、安全レベルを分けた緊急避難先は、地域ごとに一覧で示されると共に、避難カードに自分で選択して記入し、家族で共有することをお願いしてございます。その後で避難経路を実際に歩いていただき、かかる時間やブロック塀などを確認する、家族での避難訓練のような取組を行うことや、新たな高台、裏山や避難ビルなどについて、地域の中で検討する取組を、是非進めていただくよう、助言しているところでございます。


A 医療機関の津波対策について
《質問》 雑賀光夫 県議
 また、病院などの津波対策も大きな課題になっています。海南市では、津波浸水地域に新しい市民病院の建設がはじまっており、市民から多くの意見が寄せられています。私は、だからといって市民病院の立地場所を変更して高台に移すべきだと断定的に主張するつもりはありません。町づくりの関係もある。よく論議して納得できる対策をとることが大事だと思っています。
 県の場合には、和歌山医科大学付属病院が、海岸近くにあり、対応が必要とされていると思いますが、どのような対策を検討されておられるのでしょうか。


《答弁》 福祉保健部長
 現在の津波浸水予測では、県立医科大学附属病院の東側にある中津川があふれ、約1メートル浸水するとの想定になっております。東日本大震災では、予測を超える大津波により甚大な被害を受けていることから、現在、想定を超える津波浸水対策も含め、県立医科大学の中に設置している災害対策委員会等で検討しております。
 また、県におきましても、庁内関係課及び県立医科大学でプロジェクトチームをつくり、一体となって検討を進めているところでございます。
 今後、国の想定見直しも考慮し、災害時においても病院機能を維持するよう防災・減災対策に取り組んでまいります。


《要望》 雑賀光夫 県議
 津波からの避難の問題では、「想定外を生き抜く力」という「釜石の奇跡」といわれた防災教育を指導された群馬大学大学院 片田教授の防災教育講演ビデオをみました。
 中学生が、まっさきに高台ににげ、小学生や地域のひとたちもそれにつづいたという感動的な話。もう足元まで津波が来たときには、「逃げちゃだめだ」といって、屋根裏で津波をかぶりながら生き抜いた兄弟の話。そのときの状況に合わせて最善をつくして、生き抜く判断力をつけるということが言われています。
 さらに、防災教育は、家族のきづなをつよめ、地域のつながりをつよめることが分かります。避難場所をきめるだけでなく、地域の方と一緒にこのビデオをみながら考えて生きたいとおもいます。行政としてもご支援をお願いします。
 以上、要望とします


2.原発事故・放射能漏れと脱原発をめぐって
《質問》 雑賀光夫 県議
 第2の柱として、原発事故・放射能もれと、脱原発への考えなどおうかがいいたします。
 福島原発事故、放射能汚染は、いまだに収束に至らず、不安が広がっています。
 原発というものは、安全性・廃棄物の処理技術が確立されていない未完成の技術です。かつては、和歌山県への原発設置計画も持ち上がりましたが、私たち多くの県民は、一致してそれに反対し、それを許しませんでした。
 しかし、福島原発事故が引き起こしたこのたびの事態を前にして、原発の危険性を指摘してきた私自身も、改めて「原発からの撤退」の必要性を痛感したところです。「原発ゼロ」に向かわなくてはならないと思います。昨日は東京で「さよなら原発」6万人集会が開かれました。
 私たちが「原発ゼロ」という意味は、明日からすべての原発を止めてしまえということではなく、期限を切って原発をゼロにする、その間に自然エネルギー・省エネルギー社会への転換をはかろうではないかということです。
 そこで質問です。

(1)脱原発をめぐっての関西広域連合での議論と仁坂知事の姿勢
 福井県の原発銀座といわれるところで事故があって、琵琶湖が汚染されるようなことになれば、ことは重大です。関西広域連合の場でも各府県知事のみなさんがいろいろ議論されているようですが、どういう論議がされているのか、仁坂知事は、脱原発と言う問題についてどういうお考えなのかをお伺いします。


《答弁》 知事
 関西広域連合の議論でありますが、東日本大震災を受けまして、府県知事で構成する「エネルギー検討会」というものを設置しまして、関西におけるエネルギーの需給見通し、エネルギー源の多様化、省エネ・節電のあり方等、関西の中長期的なエネルギー政策の考え方を検討しているところでございます。
 私は、二つの視点が大事だと思っています。全体として我々が生きていく、あるいは雇用を守っていくためにエネルギーの総量を確保しなければならないということと、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入を積極的に行って、多種多様なエネルギー源のバランスミックスを囲っていくことが重要であると、そんなふうに私は思っております。


《再質問》 雑賀光夫 県議
 知事にもうすこし聞きたいのですが、エネルギーを確保する、太陽光をひろげるというのはいいが、私は、原発事故に衝撃を受けました。私自身は原発の危険性ということを言っていたけれども、和歌山に原発を持ってくることには反対しました。しかし、いまから考えれば、原子力の平和利用について、多少の幻想をのこしていたのではないかという気持ちがございます。
 多くの国民のみなさんが、原発ゼロという立場のみなさんでも、原発を減らしていこうというみなさんでも、それぞれ衝撃を受けて、いろいろなことを考えられたと思うんです。
 知事は、6月県会で、「和歌山に原発をもってくるなという高田議員の質問に、現時点では和歌山に原発を立地する条件はない」説明された。知事は、原発ゼロという立場にたっていないことはよくわかっているんですが、知事は、3,11の原発事故をみて、考えがかわったのか変わらなかったのか。衝撃を受けたのか、それともそういうこともお見通しだったよということなのか。そこらによって、自然エネルギーの転換のスピードにもかかわってくると思う。知事は、いかがなのでしょうか。


《再答弁》 知事
 個人的な私の思いを述べます。私はずっと昔、科学技術庁の原子力安全課で係長として、原子力の防災対策をやっておりまして、その時、横に安全審査とか安全確保をやっているグループがいましたから、そういう人の言う事も聞いて、よく勉強しておりました。その時の知識からすると、今回、大変衝撃を受けました。それは地震は考えているけれども、津波ということの備えが全然できていなかったということは少なくとも確実だろうというふうに思います。そういう意味で人間のいろんな知恵というのは、やはり謙虚でなければいけないと思いまして、これは大変な事だからみんなでまた知恵を集めて、少なくとも同じ過ちを二度と繰り返してはいけないというふうに、今思っているところであります。


《要望》 雑賀光夫 県議
 知事も、衝撃を受けたということを聞いて安心しました。
 私も原発反対の立場だったけれども、衝撃を受けて認識を深めたわけですから、そして、いっそう自然エネルギーへの転換をいしがなくてはならない、期限を切って原発をゼロにしなくてはならないという立場に立っているわけでございます。その点では、知事とはスタンスが違うとおもうんですが、しかし、衝撃を受けたとしたら、これまでの延長線上で自然エネルギーを開発していったらいいのではない。私は、原発はゼロにしなくてはならないし、それなりの体制をとって、自然エネルギーの開発にむかわなくてはならないと思います。


(2)和歌山県内の環境や流通食品の放射能検査体制
《質問》 雑賀光夫 県議
 次に、福島原発放射能もれへの不安が広がっています。特に、子どもをもつお母さんたちの心配は深刻です。
 検査体制は、県民の不安に応えられるものになっているのでしょうか。流通食品の検査体制は、十分だと言えるのでしょうか。
 さらに、和歌山県全体では、放射能はそう高くはないとおもいますが、局地的に放射線量が高いホットスポットはないのかという懸念がきかれます。どうした対策をなされるのでしょうか。


《答弁》 環境生活部長
 現在、県では、和歌山市内にある県環境衛生研究センターにおいて、空間放射線量率の測定を一時間毎に、降下物及び蛇口水の放射線核種分析を毎日実施致しております。
 また、空間放射線量率の測定については、6月に県内10箇所でも実施したところです。
 これらの測定結果は、ホームページでも公表しておりますが、今のところ福島第一原子力発電所の事故以前の測定数値と変わってはございません。
 なお、空間放射線量率を毎時測定するモニタリングポストにつきましては、今議会に、増設する補正予算案をお願いしており、今以上にきめ細かな測定体制を整えてまいりたいと考えております。
 流通食品の検査については、放射能の影響が考えられる都県においては、農水産物の出荷前検査が徹底されていると考えていますが、基準値を超える食品が県内に流通した場合には直ちに流通から排除できるように検査機能を強化することが必要であるため、9月から各保健所にサーベイメータを配備し、頻繁にスクリーニング検査を実施できる体制を整備し、また、環境衛生研究センターにおいて食品事業者等からの依頼検査に対応できる体制を整備致しております。


《要望》 雑賀光夫 県議
 放射能検査体制について答弁をいただきました。これについては、検査ポイント、検査機器を増やしていただいたことは、たいへんありがたいと思います。
 それでも県としてすべての地点を測定することはできないとおもいます。私たち県議団でも、簡単な放射能測定器を購入いたしました。10万円のもので、ウクライナ製です。県がお買いになったものは、80万円だそうです。しかし、簡単な測定器で素人が測定した結果を公表するのでは、必要以上に不安をあおることになりはしないかと心配もしています。測定値が高いところがあれば、県に連絡しますので、本格的な測定をしていただきたいと思っています。県として希望者に測定器を貸し出すようにしてはどうかと思いますが、そういうことも検討を要望しておきます。


3.自然エネルギーへの転換をめぐって
《質問》 雑賀光夫 県議
 第三の柱として「自然エネルギー開発の可能性とその追求」についてお伺いいたします。
 自然エネルギーといえば、まず太陽光発電が言われ、バイオマス・風力・水力・潮力・地熱など、いろいろ研究中のものも含めてあります。
 先の県議会では、企業からメガソーラー発電の提案があること、また民家も含めて太陽光発電を推進することなども論議されました。私は、それらも積極的な提案だと思っています。
 ただ、「自然エネルギーといえば太陽光発電」というのもどうかなという思いもある。なぜかといえば、太陽光発電と言うのは、かならずしも効率がいいわけではないからです。私の家では、昔つけた太陽熱温水器が屋根についていて、春過ぎから天気の良い日は、ほとんどお風呂のお湯を沸かす必要がありません。太陽熱は、電気に変換せず熱として利用するのが、一番効率がいいのです。極端な話、太陽光発電でできた電気でオール電化といってお風呂のお湯まで沸かすとすれば、これほど無駄なことはありません。
 昼間でも、県議会議場には、電灯がついています。昔から日本の家屋では、天窓というものを開けていました。先日、私は、下津のキンチョウ蚊取り線香工場にお邪魔したのですが、天井に蛍光灯よりももっと明るいライトがついている。実は、太陽光をとりこんでいる、近代的天窓でありました。
 もちろん、電気は必要ですから、これまでの火力発電もふくめて太陽光発電や水力・風力・地熱・潮力発電などが必要です。
 ただ、太陽光発電というものは、一定の平面にあたった光の一部だけを電気に変換する。今後の変換効率の向上には期待したいですが、現時点では効率はよくありません。
 ところで、水力というものはどういうものか。太陽の熱で水が蒸発して雲になり雨が降ります。山に降った雨が、谷間に集まってきて河になります。太陽熱が生み出したエネルギーが、自然のいとなみによって凝縮されたものを人間が水力発電として利用する。だから、太陽光発電よりも効率がいいということになります。風力もバイオマスも、太陽光エネルギーの凝縮したものを利用するといっていいでしょう。こうしたことも踏まえながら、お伺いいたします。

(1)メガソーラー発電と自然エネルギー協議会について
 第一は、メガソーラー発電であります。
 孫社長の提案については、太陽光発電の可能性を提唱した点では積極的な提案だと受け止めました。しかし、6月県会での報告では、疑問を感じたのも事実です。
 関西広域連合に孫社長がおいでになって、提案をされた。関西広域連合というところは、個別企業の経営者がやってきて提案をできるところなのでしょうか。孫社長は、どういう経過があって、おいでになり、関西広域連合は、それを受け入れたのでしょうか。
 特定企業の利権のようなものにしてしまってはいけないと思うのですが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。


《答弁》 知事
 自然エネルギー協議会の話でありますが、ソフトバンク側からメガソーラー事業について大阪府に話がありまして、それを受けて橋下知事から関西広域連合として取り組んではどうかという提案がありましたので、5月下旬に開催された関西広域連合委員会終了後、ソフトバンクの孫社長から提案を聞くことになりました。その中身は、あり方を考える協議会と、ソフトバンクの資金を投じて行うプロジェクトの二つの側面があるわけであります。
 協議会については、和歌山県としては参加を表明しておりましたが、関西広域連合としてまとめて参加するということにその場でなりました。なお、自然エネルギー協議会へ参加する企業については、同協議会事務局のホームページ上で準会員としての法人の募集を9月から行っておりまして、ソフトバンク以外の企業も受け入れることになっております。
 一方、プロジェクトについては、当県としての立場とともに提案をしておりますが、まだ当県を含めて他の所もそうでしょうが、進展はございません。


(2)ソーラー発電の用地・場所の確保について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第二に、太陽光発電については、休耕地にまでふみこまなくても、太陽光パネルをつける場所は、たくさんあるのではないか。和歌山県でのその可能性について、当局のご見解をお伺いいたします。


《答弁者》 商工観光労働部長
 太陽光発電における太陽光パネルの設置場所についてですが、本県にはメガソーラーに適した未利用地が多いことから、これらの未利用地にメガソーラーが設置されれば、土地の有効活用に繋がるものと考えております。


(3)小水力・バイオマスの可能性について
《質問》 雑賀光夫
 第三に、太陽光エネルギーを凝縮したものとして申し上げた小水力発電やバイオマスであります。和歌山県での小水力発電やバイオマスの可能性について、どう見ておられるのか。商工観光労働部長のお考えをお伺いします。


《答弁》 商工観光労働部長
 小水力やバイオマスの可能性についてですが、本県は日射量だけでなく、水量や森林資源などにも恵まれており、バイオマスなどの自然エネルギーの取り組みには適した地域であると考えており、事業実施にあたり、諸制度との適合、景観や環境との調和など、事業者との間で条件が整えば、県としても積極的に推進していきたいと考えております。


(4)太陽光発電への補助引き上げ、太陽熱利用の可能性について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第四に、太陽光発電については、国、県としてそれを促進するための応援をさらに引き上げる必要があるとおもいます。
 また、太陽光発電以外の太陽熱利用があります。屋根におく太陽熱給湯器が必要でかつ有効ですが、こうしたものへの補助はどうなっているのか、これも応援していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。環境生活部長にお伺いします。


《答弁》 環境生活部長
 住宅用太陽光発電の導入に対しましては、国の補助制度と余剰電力買取制度とを組み合わせた支援体制が現在とられています。また、県では、単独で上乗せの補助制度を本年度から立ち上げており、県内には更なる上乗せ補助を行っている自治体もあります。
 今後の住宅用太陽光発電の普及に向けては、余剰買取制度の拡充や全量買取制度の創設など、より抜本的な支援体制の充実を求めて国に働きかけを行っているところです。
 なお、議員ご提言の家庭用太陽熱温水器につきましては、エネルギー変換効率が高いことは認識しておりますが、その活用範囲がお湯に限定されており、価格面も比較的に安価であることから、補助制度を創設することは難しいものと考えております。


(5)風力発電と低周波公害被害者への救援(要望)
《要望》 雑賀光夫 県議
 この項目の最後に、風力発電の問題にかかわって申し上げます。私は、この問題では、低周波被害が生じていることを指摘し、県担当課には、測定をお願いしました。しかし、国の基準が確立されていない中で、被害者の救済にはいたっていません。被害を訴える方は、離れた場所に住居をうつし、そこからミカン畑にかようという不自由な生活を強いられています。
 風力発電をすすめる企業は、たくさんの計画を持っていますが、このままでは、地域住民には受け入れられないでしょう。
 低周波被害を出さないようにするためには、専門家による研究や国の規制基準が必要ですが、それとともに、現に被害を訴え、転居して二重生活をしておられる方にも、企業がしらんふりというのは、いかにもだと思います。県として企業と被害者の間を取り持って、少しでも救済措置を進める必要がある、今後の風力発電の発展のためにも、おねがいしたい。これは要望とします。


4.部課をこえた自然エネルギー推進の体制
《質問》 雑賀光夫 県議
 先の項目のやりとりをふまえて、自然エネルギー開発にかかわって、知事にお伺いします。
 農業用水を利用した小水力発電は、農林水産部で管轄されている。南部町にある島ノ瀬ダムは農林水産省所管で、近畿でも先進的なこころみだそうです。
 有田川町が二川ダムを利用した省水力発電を検討中だと河川課からお伺いしました。しかし、河川課は、申請があった場合に、許可条件を示すのが仕事で、推進する立場にない。
 谷川を利用した小水力発電は、商工労働部で管轄されるが、申請があった場合の対応にしかなっていないように思います。
 バイオマスは、農林行政、多少の応援もしている。太陽光だけは、商工労働部で推進の方向にむかっている。
 しかし、いま、自然エネルギーの開発が急がれる特別な歴史的局面であります。技術開発は主として国の問題ですが、和歌山県でのその可能性を探求する必要があります。
 商工・農林・河川それぞれでなく、また、申請があれば受け付けるという待ちの姿勢でなく、自然エネルギーの開発、和歌山県でのその可能性を探るということが必要だと思うのです。私は、先日、小水力発電にとりくんでおられる和歌山大学のシステム工学部の中島教授にお会いしてきました。経済学部の中村教授は、まえからバイオマスを提唱しておられる。和歌山高専にも専門家の先生がいらっしゃるでしょう。こうしたチエをお借りすることも含めて、自然エネルギーの開発を考える場を作ってはどうかと考えますが、知事、いかがでしょうか。


《答弁者》 知事
 ただ今、議員は「縦割り行政的にてんでばらばら」とおっしゃいましたが、その各部局のボスは私でございまして、そのボスに対して、部局が勝手にやっているかのような言い方をされるのはいささか失礼な感じがいたします。ただ、私が全部束ねて自分一人で統括するというのも実は大変で、この問題が発生する前から、エネルギーは一元的に商工観光労働部で所管して、いろいろな所の機能も借りながら、総合調整をしたり業界とのお付き合いをしたり、あるいは企画をしたりしようということになっておりまして、その機能は今十分果たされています。さらに今おっしゃったような外部の方々のご意見もどんどん取り入れて、これからがんばっていきたいと考えております。


《要望》 雑賀光夫 県議
 ボスがしっかりと采配を振っていただきまして、また、「待ち」の姿勢ではなくて、積極的に進めていただけるように、期待いたします。


5.戦争責任をめぐる仁坂知事の「国民総懺悔論」について
《質問》 雑賀光夫 県議
 第五の柱は、戦争責任をめぐる問題です。
 仁坂知事が県民の友8月号の「知事メッセージ」で、「戦争責任」と題して、「当時のすべての国民にその責任があったと」と述べていることについて、戦争で家族や友人を失った方々など多くの県民から、憤りの声があがっています。
 知事は「戦争指導者達と一般の国民の責任は同列同等には論じられない」としつつも、「戦意を高揚させるような新聞が売れ、教育現場では軍国主義が鼓吹され、戦勝記念のパレードが行われ、兵士の出征の際には別離の涙のかわりに万歳が唱えられたことも事実です。」と述べています。
 戦前、教育勅語の下での教育統制が行われ、新聞や出版には検閲がおこなわれ、国民を軍国主義の方向にひきずっていったことをどう考えておられるのでしょうか。「同列ではない」という但し書きをつけたとしても、国民の責任だというのでしょうか。また、そんな体制の中でも、命がけで戦争に反対した人がいたという問題は、知事の視野には、全く入っていないように見受けられます。
 さらに「同じ多くの国民が敗戦の後はころりと変わったのです」と述べています。侵略戦争と戦争の惨禍への反省から、平和憲法を制定し、平和国家への道を歩もうと決意した国民を「ころりと変わった」とは、国民を愚弄し、日本国憲法を踏みにじる発言だといわなくてはなりません。
 もちろん、戦争中には時流に乗りながら、戦後は、くるりと変わったという変わり身の早い、要領のよい人間もいたでしょう。しかし、多くの国民を「くるりと変わった」などということは、絶対に許されません。
 知事の真意をお聞かせ下さい。


《答弁》 知事
 県民の友8月号のメッセージに「戦争責任について」というタイトルでエッセイを発表いたしました。少なからぬ人から賛意を受けましたが、一方で批判もされました。批判は主として2つございました。
 一つは「無謀な戦争」と私は書きました。それに対しては何事かという議論がありました。それは米国をはじめとする国々の謀略によって日本が戦争に追い込まれたのではないか、というような趣旨でありました。しかし戦争の正しい戦略はあったのか。現に敗戦して日本を滅亡の縁に追いやったではないか。
 多くの人々の命を失わせたではないか。仮に勝ったとしても敵味方多くの命を失わせるのが戦争でありますから何とか避ける国家戦略は無かったのかというように私は思っております。
 次に雑賀議員のような方がいらっしゃいます。多くの一般国民は無辜(むこ)で責任は戦争を指導した一握りの人々にある。だからそういうことを言われるのは嫌だということであります。それに対して私が申し上げたいのは、責任を一部の人だけのせいにして自分は無辜だったというのなら、また同じ失敗をいつか繰り返す可能性があるのではないか。そんな風に私は思いました。国民一人一人が、あるいは県政で言えば県民一人一人が、自分でしっかり勉強して、考えて、おかしいと思ったら多数意見やあるいは一見権威がありそうなものに乗せられないで、堂々と非を鳴らすことが大事だというふうに思う訳でございます。そういうことを申し上げたかったので、終戦記念日でもあるということもありまして、あのような文章を載せさせていただきました。


《再発言》 雑賀光夫 県議
 私たちは、また戦争前のようなことを繰り返さないために頑張らなくてはならないと思います。しかし、知事が「教育現場では軍国主義が鼓吹され、戦勝記念のパレードが行われ、兵士の出征の際に万歳が唱えられた」といわれている時代は、どういう時代だったのか、知事は、認識されているのでしょうか。認識されていないはずがないと思います。
 あの時、戦争に反対すれば、非国民といわれ、獄につながれ、獄中で亡くなった方も多くいらっしゃるわけでございます。そういうことがありながら、とにかく戦争に反対しなかったじゃないかという言い方は、実は、敗戦直後の内閣が主張した「一億総俄悔論」と共通する、政府指導者の戦争責任をあいまいにするものです。それは戦前の社会体制をまったく無視した議論だといえます。
 特に戦後の問題で、ころりと変わって戦争に反対になったという問題には、とくにこだわるわけです。
 戦争に協力した教師が、どのような苦痛の思いをもって戦後の教育に立ち向かったのか。
 高知県の教員・竹本源治さんの「戦死せる教え児よ」という詩があります。

  逝いて還らぬ教え児よ
  私の手は血まみれだ
  君を縊ったその綱の
  端を私も持っていた
  しかも人の子の師の名において
  嗚呼!
  「お互いにだまされていた」の言訳が
  なんでできよう
  懺愧 悔恨 懺悔を重ねても
  それがなんの償いになろう
  逝った君はもう還らない
  今ぞ私は汚濁の手をすすぎ
  涙をはらって君の墓標に誓う
  「繰り返さぬぞ絶対に!」

 戦争に協力してしまった教師たちは、ころりと変わったのではなくて、このような痛恨の思いをもちながら、「教え子を再び戦場に送らない」という決意をもって平和の教育にあたったわけでございます。そういうことを申し上げて、特に答弁は求めませんが、私の質問を終わります。

(ここで、答弁を求められていない知事が発言を要望)

《発言》 知事
 実は私は竹本源治さんと同じことを言いたいのであります。
 「君を縊ったその綱の 端を私も持っていた しかも人の子の師の名において 鳴呼! 『お互いにだまされていた』の言訳がなんでできよう」その竹本源治さんを評価する雑賀議員が、一部の政治家や軍部にのみに責任があって多くの国民は無辜であったと主張することが竹本さんの悲痛なる反省に反することにどうして気付かないのでありましょうか。
 政治や社会風潮にはムードや流れがあります。これに反すると戦前は社会的制裁を受ける、あるいはおっしゃったように肉体的にも弾圧される、そういう時代でありました。今日でも社会的に爪弾きにされるということは沢山あります。しかし、それに国民が無批判に乗れば取り返しのつかないこともまた繰り返されるのではないでしょうか。おかしいと思ったら是非言うべきであります。その為に一人一人が自分の目と頭で良く考えて、勉強すべきであろうと思います。そういうことを言っている訳であります
 私は、県民のために一番良いと思うことを県政で必死にやっております。しかし、間違うかもしれない。その中身が少しでもおかしいと思ったらどんどん問題提起されるべきであります。私はそれによって、県政に誤り無きが期されるのだと信じております。それが、県民すべてのいわば責任なのだと思います。そういう意味で、雑賀議員の今回の批判は断然間違っているとは思いますけれども、しかし、そういう問題を提起されて、こういう議論ができるということはいいことだと考えております。

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2011年9月県議会、雑賀光夫 一般質問=9月20日