2011年9月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
2011年月21日

1.台風12号による被災者支援について
(1)被災者が利用できる制度の周知
(2)り災証明の発行と支援
(3)医療や介護など市町村への指導と財源支援
(4)被災者に対する県税の軽減措置等について
(5)相談窓口の設置(要望)
(6)高校生の通学困難者と支援について

2.河川改修
(1)河川整備計画の策定状況
(2)排水ポンプの配備
(3)一級河川の総合管理と「河川水位シミュレーション」

3.ダム問題
(1)県管理以外のダムの防災機能
(2)利水専用ダムにも防災機能を
(3)県営ダムの改良
(4)ダム操作のリアルタイムでの情報公開
(5)地震に対するダムの安全性
(6)ダムの水利権更新時期
(7)水利権更新にあたって

4.過去の災害から学ぶ「防災パンフレット」の発行

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《質問》 高田由一 県議
 このたびの台風12号による災害は、台風や豪雨災害としては、明治22年や昭和28年の大水害に匹敵する被害を和歌山県内はもとより隣接県にも及ぼしました。災害で亡くなられたみなさまやご家族にこころからお悔やみを申し上げますとともに、被災されたみなさまをお見舞い申し上げます。
 また、この災害では豪雨が長時間つづくなか、県職員はもとより市町村職員、消防団員の不眠不休の活動や、国や他府県からの支援に心から敬意を表します。また、ライフラインの確保や介護サービスの提供などで奮闘された民間企業の活動にも感謝申し上げたいと思います。
 なんと言っても今回の災害の特徴は、豪雨によって痛めつけられた箇所がいまだに落ち着かず、その被害が継続しているという点であります。長期戦の様相になっております。どうか職員のみなさんも適切な交代などをされながら休むときは休んでこの災害への適切な対応にがんばっていただきたいと願っております。
 さっそく一般質問に入ります。

1.台風12号による被災者支援について
(1)被災者が利用できる制度の周知
 まず、1点目、台風12号による被災者支援についてうかがいます。
 最初に被災されたみなさんが利用できる制度の周知についてうかがいます。内閣府が発行している「被災者支援に関する各種制度の概要」というパンフレットをいただきました。それをみると本当に多種多様な制度がありますが、けっしてわかりやすくはありません。そこでうかがいたいのは、被災者支援制度の周知、これをどのようにしていくのか。答弁をお願いします。


《答弁》 福祉保健部長
 今回の台風12号の災害では、本年9月2日付けで田辺市、新宮市、日高川町、那智勝浦町、古座川町に災害救助法の適用を決定しました。また、同日付で被災者生活再建支援制度を適用したところであります。
 こうした被災後の生活面の支援や住まいの確保・再建のための支援制度等の概要を取りまとめた内閣府が作成いたしましたリーフレットを各振興局を通じて市町村に配布し、被災者の皆様に周知を図っているところであります。
 今後はさらに、市町村への支援を強化し、自治会や民生・児童委員の協力も得ながら、被災された方々に直接パンフレットを配布して、制度の内容を説明してもらうなど、更なる周知徹底を図ってまいたいと考えております。


(2)り災証明の発行と支援
《質問》 高田由一 県議
 つぎに罹災(りさい)証明の発行と支援についてうかがいます。これから市町村にとって一番たいへんになってくるのが罹災証明の発行事務だと思います。現場へいって一軒、一軒、住居の状態を確認し証明書を発行する。本当にたいへんな作業になると思います。そこで県としてどのような支援ができるのか、場合によっては直接支援もあっていいと思うのですが、答弁をお願いします。


《答弁》 福祉保健部長
 り災証明書の発行につきましては、住家の被害を調査して、被害の程度を認定する作業が必要となるため、9月13日に内閣府の担当官を招いて、県内市町村職員等を対象として住家の被害認定に関する説明会を開催をいたしました。
 また、9月14日から2日間、関西広域連合のご協力を得て、現地研修会を開催するなど、市町村の体制強化を支援しているところであります。
 さらに、県としては被災市町村からの要請を受けて、住家の被害認定業務について、職員を派遣するなど最大限支援することとしています。
 今後、社団法人和歌山県建築士会、社団法人和歌山県建築士事務所協会、社団法人建築家協会近畿支部和歌山地域会の協力も得ながら、早期に被害認定業務が完了し、り災証明書がスムーズに発行できるように支援していきたいと考えております。


(3)医療や介護など市町村への指導と財源支援
《質問》 高田由一 県議
 つぎに医療や介護など市町村への指導と財政支援についてうかがいます。被災者に対して市町村が実施する制度では、国保の保険料や医療費の窓口負担を減免する制度や介護保険料や利用料、後期高齢者医療の保険料や自己負担の減免などがあります。このような制度を市町村が積極的に活用をするよう県が指導を強化されたいと思いますがいかがでしょうか。
 また、そうした減免を実施した場合、市町村の財政負担に対して県もしっかり支援をするべきだと思うのですがいかがでしょうか。答弁をお願いします。


《答弁》 福祉保健部長
 災害により市町村や和歌山県後期高齢者医療広域連合が医療に係る保険料や一部負担金を減免した場合には、国の財政調整交付金による一定の支援が講じられていることから、被害状況に応じて適切な措置を講じるよう指導しております。
 保険料減免は広域連合と全市町村が取り組んでいますが、一部負担金減免は広域連合と6市5町にとどまっております。
 今回災害救助法が適用された2市3町は、一部負担金減免に対応できていませんので、速やかに減免要綱を策定するよう必要な指導を行っているところであります。その他の市町村に対しても、速やかに策定するよう指導してまいります。
 市町村には、県においても国保財政調整交付金による一定の支援を既に講じておりますが、現在、被害状況の収集に努めており、その結果をふまえて交付基準を検討したいと考えております。
 介護保険につきましても同様に、各市町村が保険料や1割自己負担の減免が可能で、減免額が一定以上になった場合、当該市町村に対して特別調整交付金が交付される旨を既に通知し、助言しているところであります。


(4)被災者に対する県税の軽減措置等について
《質問》 高田由一 県議
 つぎに県税の軽減措置等についてうかがいます。県の制度としては各種県税の減免や徴収の猶予などの制度があります。こうした県税の制度についてどのように運用し周知していくのか総務部長の答弁をお願いします。


《答弁》 総務部長
 被災者の皆様方の被災状況等に十分配慮し、県税については、申告等の期限の延長、減免、徴収猶予などの措置を講じることとしております。
 また、制度の内容につきましては、県ホームページへの掲載等により、周知広報を図るとともに、相談窓口を設置し、個別に被災者の皆様方の相談に応じることとしております。


(5)相談窓口の設置
《要望》 高田由一 県議
 次に、被災者に対する相談窓口についての要望でございます。
 県庁へ電話をされた方が困らないで「ああよし、納得した」という心持ちになれるように、しっかりとした対応をしていただきたいと強く要望します。


(6)高校生の通学困難者と支援について
《質問》 高田由一 県議
 この問題の最後に高校生の通学困難者とその支援について県教育委員会にうかがいます。各地で道路が寸断され復旧には長期間かかるところもあるなかで、高校生の通学困難者がでています。現時点で通学困難者の数をどのように把握されているのかお示し願いたいと思います。
 また、自宅は被災していなくても道路の事情で学校にいけないということは被災者と言うべきかもしれません。なかにはすでに自宅からの通学をあきらめ、あらたに入寮手続きをしたり、近くにアパートを借りて対応しているご家庭もあるようですが、その経済的な負担は重いものがあります。そこで県教委として今回の台風被害にともなう生徒への支援や通学困難を解消するため、これまでどのような手立てをうってきたのか答弁をお願いします。


《答弁》 教育長
 台風12号の災害によって、通学困難になっている生徒数は、9月20日の時点で11高校177名であり、保護者の送迎や寄宿舎への入寮、親類宅への同居などで対応しているケースもありますが、未だ通学できていない生徒もございます。
 各学校では、災害直後から教員が家庭訪問を行うなどして生徒の安否を確認するとともに、生徒や保護者からの学校生活に関わる相談に乗るなど、きめ細かな支援を行ってございます。
 教育委員会といたしましては、JR等の運休に対してバスをチャーターし、通学手段を確保するとともに、通学路の復旧に時間を要すると思われる生徒に対しましては、寄宿舎等、県が保有する施設の活用を働きかけるなど、学校と連携をとりながら、鋭意対応しているところでございます。
 また、特に配慮を要する生徒については、スクールカウンセラーを活用し、生徒の心のケアを丁寧に行うとともに、教科書等の学用品を喪失した生徒には支給手続きを行うなど、できるだけ早く通常の学校生活に戻れるよう支援に努めているところでございます。
 今後とも、被災した生徒たちが、安心して学校生活を送ることができるよう、最大限の支援を行ってまいります。


《要望》 高田由一 県議
 いま県の発表でも田辺市や新宮市など5市町が被災者生活再建支援法の適用になっています。これが適用されるのとそうでないのでは本当に天と地ほどの支援内容に差が出てきます。ところが私の地域でも上富田町でもあきらかに全壊した世帯があります。白浜町でも家を増築していた矢先に土石流でやられたお宅もあります。こうした方々は何の支援もうけられないのかと心配しています。私は今回の災害規模からいって県全体として近いうちにこの支援法の適用になると思っているのですが、どうかこうした少数の方たちへも配慮した周知の仕方をしていただきたいと思います。そうでなければ行政から見捨てられたように思われている方もいましたので、福祉保健部長、この点、よろしくお願いします。


2.河川改修
(1)河川整備計画の策定状況
《質問》 高田由一 県議
 第2項目の河川改修についてうかがいます。
 最初に河川整備計画の策定状況についてうかがいます。県内の二つの一級河川と85水系ある二級河川についての河川整備計画の策定状況をおしめしください。また、全国的にはどのような状況になっているのかあわせてお答えください。


《答弁》 県土整備部長
 現在、二級水系85水系の内6水系、一級水系では策定予定の5圏域の内2圏域で河川整備計画を策定しております。
 また、全国の策定状況ですが、一級水系について取りまとめられたものはございませんが、二級水系につきましては、平成21年4月1日現在、38都道府県で計画が策定されております。最多は山口県の26、全国平均は7となっております。
 今後とも、河川整備計画の早期策定に努めてまいります。


(2)排水ポンプの配備
《質問》 高田由一 県議
 次に河川への排水ポンプの配備についてうかがいます。今回の台風被害で県内の主要河川で氾濫がおこりました。こうした本流の氾濫についてはさきほどの整備計画をしっかり推進していく必要があるのですが、今回は雨量が大きかったこともあり本流にいたるまでの支流や排水路があふれた事例というのが多々あると思います。そのなかでも新宮市で被害の大きかった相筋地区や日置川の田野井地区では排水ポンプの設置が切望されています。実際、今年の6号台風のときも今回の12号台風でも民間業者の排水ポンプを動員して排水した訳です。こういう大事なことが民間まかせでいいのでしょうか。やはり行政が責任をもって排水ポンプをつけるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。そこでうかがいます。機動的な浸水対策としての排水ポンプ車や排水ポンプの現在の保有状況と今後の配備・設置計画をおしめしください。また、市町村が排水ポンプを設置した場合、それに対しては県も財政支援してはどうでしょうか。答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 県では、現在のところ排水ポンプ車や排水ポンプは保有しておりません。
 議員ご指摘のとおり、内水氾濫には、機動的に対応できる排水ポンプ車が有効であると考えております。
 県といたしましては、排水ポンプ車を3台、順次配備する予定としておりまして、海草振興局と西牟婁振興局には今年度中に排水ポンプ車各1台の配備を行う予定としております。
 市町村が行う内水対策への支援については、財政的な支援は困難ですが、排水ポンプ車を広域的かつ機動的に運用することにより支援してまいります。


(3)一級河川の総合管理と「河川水位シミュレーション」
《質問》 高田由一 県議
 次に紀ノ川や熊野川など県内の一級河川の管理についてうかがいます。たとえば熊野川では、その管理は国、和歌山県、三重県、奈良県と流域によって管理者が異なっています。そのうち国が管理するいわゆる直轄区間は下流の5キロのみで、和歌山県が管理する区間の流路延長は本川、支川をあわせて約181キロと長大なものになっています。また、この水系には全部で11のダムがあり、その管理も国、関西電力、電源開発と複数にわかれています。このように熊野川ではダム管理もふくめるとたいへん複雑な管理になっており、情報も一元化されておらず今回のような大洪水に対処するには問題が多いわけです。たとえば、国は水防法にもとづいて直轄管理する下流の5キロ区間については「洪水予報河川」と指定して、豪雨などの際には水位予測をしています。しかし、いかんせん、下流5キロだけの対策なのです。熊野川の大部分を管理する和歌山県や奈良県、ダム管理者と連携がとれていません。たとえば今回の洪水でも国や電源開発のダムの放流予想もわからないまま、対応をしようとしても無理だと思います。そこで県土整備部長にうかがいます。一級河川の統合的な管理を目指すべきだと考えますがいかがでしょうか。答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 防災力を高めるうえで、関係機関で連携しまして情報を共有することは大変重要だと考えております。
 雨量や河川水位、ダム情報等の必要な情報は既に関係機関で共有が図られているところでございます。
 また、国と和歌山県、奈良県、三重県の河川水位、雨量、ダム情報等は、一部を除き国土交通省のホームページで一元的に公表をしております。
 一元的に公表されていない利水ダムの情報についても、一般へのわかりやすい情報提供の観点から、一元的公表を提案してまいります。


《質問》 高田由一 県議
 また、知事は先日、毎日新聞のインタビューのなかで豪雨時の河川の水位変動を細かく予報する「河川水位シミュレーション」を導入するといわれたそうですが、このことについて詳しく知事のお考えをお聞かせください。


《答弁》 知事
 これはですね、世の中のどこにもないということだと思います。
 私は被害地を見ておりましてですね、被災者の方のお話をお伺いしていたら、避難指示はあったけれども、逃げても逃げても水が来たとかですね、そういう今回はほんとに異常な事態がありました。
 普段の水害の時だったら避難して所定のところに行って大丈夫だったと思うんですが、これはちょっと大変だったというふうに思いました。
 そこで、こういうことができるかどうかは分かりませんが、降雨量の実際に降った量と、それから今後の予測というものを足し合わせるとですね、水系全体でどのくらいの水の体積ができて、これが川に流れて行くとどのくらいの地域ではどれくらいの水位になるというような分析ツールができれば、これは随分役に立つなと思いました。
 そこで、その時申し上げましたが、今は緊急・応急対策に大あらわですから、こういうじっくりとしたやつは今はできません。
 しかし、落ち着いたらですね、こういうことはできないものか、国とも相談しながら研究してみたい。こういうのができてればですね、また違う対策が打てるんじゃないかと、こんなふうに思いました。


3.ダム問題
《質問》 高田由一 県議
 つぎにダム問題についてうかがいます。これは一問一答形式でお願いします。
 今回の水害をうけてあちこちでダムについての意見が噴出しています。私はダムの防災力を少しでも高めるために、施設や運用の改善をすることをこの質問で求めたいと思います。
(1)県管理以外のダムの防災機能
 最初にダムの防災機能についてうかがいます。今回、大水害となった新宮川水系に民間事業者や国が管理するダムが11あります。また、日置川には関西電力のダムが1つあります。併せて12です。まず最初に質問するのは、私がいま取り上げた12のダム。このうち洪水を調整する機能をもったダムはいくつあるのですか。答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 新宮川水系に所在するダム11基、日置川に所在するダム1基は全て利水ダムでございまして、洪水を調節する機能をもつダムはございません。


(2)利水専用ダムにも防災機能を
《質問》 高田由一 県議
 熊野川にはあれだけダムがあっても治水の機能をもったものがないわけです。だから先日から新聞報道もあるように、下流で水害があってもダムは上流から流れてきた水をそのまま流しているだけです、規定どおりです。というような対応になるわけです。
 そこで2つ目にうかがいたいのは、利水専用ダムにも防災機能をもたせるべきだということです。これだけ防災や想定外の大雨が心配されているときに、利水ダムのあり方もこのままでいいのかという問題です。利水専用のダムとして水利権の許可をもらっているんだから防災は二の次でいいんだというのではなくて、さきほど問題提起した河川の統合管理ということと一体に、県と事業者といっしょのテーブルについて、防災機能を高めるための改良や改善を求めるということをやってはどうでしょうか。これは知事の答弁をお願いします。


《答弁》 知事
 洪水等の緊急時において、公共用物である河川を大規模に利用する権利を有する者が当該河川の災害防除に積極的に協力をするということは、私は社会的な責務であると思います。
 県が許可したダムについては、実はこれを強制的に聞かせるような手段があります。これは、河川法第52条に基づいて緊急時の洪水調節を指示することもできます。しかし、別に最後の手段の法律の発動をしなくても、十分説得をすれば、今回のように雨が大量に降るということが予想されるときはあらかじめ調整をしておいてもらうことをお願いをしてやっていただくことは望ましいと思います。我々もそういうことについての事前の話し合いをきちんとやっておくべきであると思いますし、国については同じことが、国管理のところについては言えると思います。


《要望》 高田由一 県議
 知事の重要なご回答だったと思います。そうした立場で河川行政をすすめていただきたいと思います。
 ただ問題としては、いくら早く放流を始めて早く水を出そうとしても、物理的にあるいは構造的にダムが水を出しきれないということが現実の問題としてあるわけです。そこで次の質問です。
  2011年9月県議会、高田由一 一般質問=9月21日
(3)県営ダムの改良
《質問》 高田由一 県議
 つぎに、私は、県営ダムについても改良が必要だと考えています。実は農林水産部が管理する那智勝浦町の太田川流域にある小匠(こだくみ)ダムというのがあります。これは防災専用のダムです。いまから10年前、平成13年8月の台風11号のときかなりの下流域の被害がでてその後、もっと防災機能が高められるような運用ができないか検討をされています。その研究成果がいくつかのレポートにまとまっていますが、結論はいまのままでは過去の洪水でも、計画どおりには対応できていないから人為的な操作のいらない自然流下式の穴あきダムにするというものです。そしてそのためには下流のこの部分で河川改修をしなければならないとか本当に具体的です。
 そこで私は県土整備部の管理する県営ダムでもこのような具体的な改良をするよう求めるものであります。たとえば古座川の七川ダムですが、昭和31年に完成したものです。設計や洪水についての考え方自体がいまでは古すぎるものになっています。→(資料)
 私は平成13年の予算委員会でもこの問題で議論したのですが、例えば98年9月の洪水では計画した洪水の7割くらいしか流入量がないのに放流は計画の2倍しているということを申し上げました。今回の12号台風の洪水でもダムへの最大の流入量は計画を下回っているのに、放流量はなんと計画の4倍も放っているんです。これは想定外の洪水だからしかたがないと言って済まされる問題ではありません。なぜかといえばこのダムの過大に評価された能力でもって古座川の治水計画が立てられているからです。ダムで1300トンのうち1000トンは引き受けるから大丈夫という計画ですが、さきほどパネルでしめしましたが、場合によってはそういうことは可能かもしれないが、現実はまさに絵に描いた餅になっているんです。これでは下流はたまったものではありません。
 また、今回は椿山ダム下流でも「人災ではないか」と言われるほどの放流となってしまいました。椿山ダムについていえば(パネル)お配りしている資料にもありますように、この部分の放流が急増しているんです。ダムへの自然の流入量よりいっきに下流へ流している。地元ではだからあの川原河の立派な県道もこの水の勢いでやられたんだと言われています。流れる水の量も恐ろしいですが、もっと怖いのは一気に水かさが増したときの水の破壊力であります。
 そこでうかがいます。この際、県土整備部で管理しているダムについても早急に運用を改善したり、ダム本体の改良について研究するよう求めたいと思いますが答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 ダム計画における洪水の規模は、ピーク流量のみではなく、流出ボリュームが大きく関与しております。
 洪水は雨の降り方によりまして形態が様々であり、例えば今回の台風12号のように最大流入量は計画洪水量より少ないが、長時間継続したため、洪水調節容量を超えてしまうものがあります。
 逆に、最大流入量が計画洪水量を大幅に超えても、短時間であった場合は、ダムが満水にならず調節可能な場合も想定できます。
 このような洪水に対応するには、ゲートの改造でありますとか、堤体の嵩上げなどのダムの改良も対策の一つとして考えられますが、運用しながらの改良となりますと技術的に可能なのかどうか、あるいはダム構造的に問題無くできるのかどうか、また、事業費も相当な額になるであろうこと、あるいは湛水域が拡大すればですね、新たな用地取得が必要となることなど、様々な課題が想定されますので容易なことではありません。
 したがいまして、ソフト対策、河川改修も含めまして、今回のような記録的な大雨を踏まえた、より効果的な対策を検討してまいりたいと思います。


《再質問》 高田由一 県議
 ダムの治水については計画洪水のピークではなしに雨全体のボリュームが影響するからパンクすることもあるということだと思いますが、そもそもボリュームを考慮した計画になっていないんです。
 ここに昭和29年に当時の小野知事が出された「古座川総合開発事業の全体計画」というものがあります。当時の限界があると思いますが、そもそも雨の流出ボリューム、量自体が考慮されていない計画になっております。ですからやはりダムの改良が必要ではないかと思います。
 いま部長は、改良はなかなか難しいと答弁されたと思いますが、例えばここに国交省が出した資料があります。そのなかの「堰堤改良事業の拡充」という項目を読みますと、
「特に過去に建設されたダムでは、建設当時の技術レベルから放流量をきめ細かく調整できない放流施設をもつものも多く、洪水の発生が予測される時に事前放流を行なうなどの柔軟なダム運用が物理的に困難なダムもある。このようなダムにおいては小規模な放流管を新たに設置することにより、事前放流への対応をしやすくし、より多くの洪水調節容量を確保するなど…」
と、平成17年の国交省の事業の中でもこうしたダム機能向上をやっていきましょうといっています。
 ですから、ダム本体の改良を逃げずにまず研究を始めると。農林のほうではそれにかかっているわけですから、県土のほうでもぜひ研究されたいと思います。この点は再質問です。


《再答弁》 県土整備部長
 農林さんの方で小匠ダムですか、検討されているということでございますが、設置されている河川の規模でありますとか、相当、七川ダムとかですね、椿山ダムとは違うところもございますので、一律には検討できないとは思いますが、先ほど申しましたように、ハード、ソフト様々な面からですね、どういった対策をとっていくのが効果的なのかということを幅広く検討させて頂きたいと思います。


《要望》 高田由一 県議
 ぜひそういう研究をされていくことを要望します。


(4)ダム操作のリアルタイムでの情報公開
《質問》 高田由一 県議
 時間がございませんので、4番の項目を飛ばさせていただきます。申し訳ございません。


(5)地震に対するダムの安全性
《質問》 高田由一 県議
 つぎに地震に対するダムの安全性についてうかがいます。
 さきの6月県議会でわが党の松坂県議がダムの地震に対する安全性についての質問をしました。それに対し、知事は「当時の安全設計などを現在の知見で再度、チェックしておくように指示した」と答弁されました。「現在の知見で再度チェックする」という、このことは非常に重要であり、その具体化はこれからだと思いますが、私はいくつかの提案をしたいと思います。
 これはさきほども取り上げた農林水産部管理の小匠ダムの事例なんですが、防災機能を高めるための研究と同時にダム本体の地震に対するシミュレーションも行っています。それによると簡単なダム本体の強度調査とパソコンによる解析でだいたいの強度がでてくるのです。私はこうした簡易な手法があるなら県内あるいは県外でも和歌山県に影響があるダムについては総点検するよう求めたいと思いますがいかがでしょうか。また、その際は、たとえば民間のダムについても事業者自身が調査するのではなしに、ダムの安全性を評価する第3者委員会みたいなものを作ってそこできちんと検証することが大事だと思いますがこの点についても答弁をお願いします。


《答弁》 知事
 この問題につきましてはですね、色々心配な事がたくさんありますので、ずっと昔は大丈夫だったんだけど今は大丈夫だろうかとかですね、そういうようなことを全部について考えようということで、指令を出して検討してまいりました。
 それからまた、現在の知見というのは知見が一番ありそうな人に聞くということも大事でありますので、そういうことも自分自身の行為としてもやってまいりました。
 例えば、今度地震・津波の専門家会議をつくっておりますが、河田先生などはですね、大体彼は色んなところで危ないところは全部指摘してくれていて、そういう点ではどちらかというと安全サイドに偏った意見を持っておられる人だと思いますが、ダムに関してはですね、特に重力ダムに関しては絶対大丈夫だというふうに言っておられました。
 私どもの今の知見ですね、技術的な能力のあるもの達もおりますが、そういう点でも大丈夫だということでありましたんで、私は今それを支持しております。
 もちろん違うという議論が出たら真摯に受け止めて、それについて対応していきたいと思いますが、今はダムについては大丈夫だと、ついでに言いますとため池はこの限りではないということです。


《要望》 高田由一 県議
 ダムの安全性の問題については、阪神淡路大震災が起こったときにもあちこちの議会で議論がありました。
 白浜町の議会では、日置川の殿山ダムについて本当に安全なのかと聞いた議員がいました。そのとき配られたのが、こちらの関西電力が出したパンフレットです。「地震がきたって大丈夫!!」と大きな字で書いていただいているのですが、自分自身のところのダムを「大丈夫!!」と、いくらビックリマークを2つ付けられても、ちょっと私たちは首をかしげるところがあります。
 やはり第三者の目、あるいは行政の公平な目で見ていただき判断をしていくことが大事だと思いますので、今後こうした立場で取り組んでいただけることを要望します。


(6)ダムの水利権更新時期
《質問》 高田由一 県議
 6番目の質問はダムの水利権の問題ですが、質問時間がたいへん押しています。
 和歌山県知事が許可したもので、近々水利権の更新がくるダムについて部長にうかがうはずでしたが、これは日置川の殿山ダムということで私のほうで言わしていただき、この項目を飛ばさせていただきます。


(7)水利権更新にあたって
《質問》 高田由一 県議
 水利権は知事が許可を与える大きな権限だと考えますが、さきほど言いましたダムの改良や運用の改善をダムの水利権更新のさいに業者に求めていくことを知事としてぜひやっていただきたいと思います。
 また、許可期間についてもこれまでのように30年とかじゃなしにせめて10年くらいに短縮してそのときどきの問題に対応できるようにするというのが大切だとおもうのですが、いかがでしょうか。
 知事の答弁をお願いします。


《答弁》 知事
 高田議員のご発想は、推測をさせていただきますが、多分、水利権というところで縛らないと民間の大企業は、きっと、いうことを聞かないであろうと、利益ばかりを追求するに相違ないと、こういう前提であれば水利権のところで、今のようなことを聞いていただくということは大事だと思います。しかし、そんなことまでいわなくても、理を尽くして議論することは、今だってできるわけですから、そういうことは、早速、始めたいと思います。というのは、水利権は数年後ですからすぐにそういう点については話をし、それで仮に意見の徹底的な対立があって、正しいと我々が思うことがあったら、水利権の問題を利用するということではないかと思います。


《要望》 高田由一 県議
 ダムの水利権の問題については、実は当県議会でもたいへん古い歴史をもって論争がされております。昭和33年に日置川では大水害がおこり、ダムの放流について大問題になって、この県議会に残っている古い議事録でも大論争がされております。そのときに水利権をこれからどうするのか、このまま許可してもいいのか、そういった本当に真摯な議論がたたかわれ、また住民の運動でも関電のダムの発電所まで何百人も押しかけるまでにいたりました。
 知事が言うように、説得的に働きかけていくこともたいへん大事なことだと思います。ただ、また翻ってこうした県議会でのダム問題での闘争の歴史も見ていただき、どれだけ地元が苦労をしてきたのかを知っていただきたいということを要望します。


4.過去の災害から学ぶ「防災パンフレット」の発行
《質問》 高田由一 県議
 最後に過去の災害から学ぶ「防災パンフレット」の発行についてうかがいます。
 今回の台風12号による被害は、私にとってもまた、多くの県民にとっても想定外のものでした。しかし、私は河川改修についての質問を準備するなかで今回の水害が、明治22年8月の「十津川大水害」とよばれる災害と非常に似ていることに気づきました。この120年前の水害のときも今回の台風12号とまったく同じようなコースを、台風が非常にゆっくりとした速度で進んだことが京都大学防災研究所の研究であきらかになっています。
 
その研究のなかでは明治水害では、紀伊半島南東部では日雨量1000ミリを超える記録的な雨量があったことが推測されています。また、災害の特性として、大規模崩壊の多さと、それによる崩土が河川をふさぎ、天然ダムをつくり、それが後に決壊して下流に2次被害をもたらしていることをあげています。
 被害状況も明治水害では十津川村では山の崩壊が1200カ所におよび、168名もの死者がでました。本宮でも熊野本宮大社が破損したことや、新宮では流出や全壊した戸数が591戸におよぶなど本当に今回と共通しています。私の地元、富田川流域でも565名がなくなられたと言われ、なかでも現在の、上富田町の朝来村、生馬村、岩田村で326名がなくなりました。この被害の大きな原因は富田川上流部でのいわゆる天然ダム、せき止め湖の崩壊により一気に大水が下流に押し寄せ、ところによっては18メートルもの水位になったことにあります。今回、中辺路の滝尻の土砂崩壊が起こりましたが、明治の水害の経験から言えば起こって当然だったのです。このせき止め湖ができたのが遅かったことと、崩壊しなかったことで何とか助かったものの、富田川流域の人はまさに紙一重のところで難を逃れたといっても言い過ぎではないと思います。富田川流域に住む者にとっては、河川の増水に注意することはもちろんですが、それ以上に土砂崩壊による天然ダムの決壊にこそもっとも注意を払わなければならなかったのです。あの台風のさなかにそのことに注意をしていた人は残念ながら少数だったのではないでしょうか。
 私はこうした過去の災害や研究に学ぶためにも、台風がこのコースをたどったときにはこんな被害が起こったことがあるとか、高潮がおこった地域とか、ほんとうにわかりやすい「防災パンフレット」のような小冊子を作成し配布することが大切だと考えています。県として取り組むことを求めますが答弁をお願いします。


《答弁》 危機管理監
 過去の災害は、今後の対策や行動の指針となるものであり、この体験を防災の知恵として生かしていくことは大変重要であると認識してございます。
 ただし、過去の災害のパターンをそのまま啓発に使う場合には、今回もこの程度との思い込みを招く恐れがございます。防災啓発資料としては慎重に扱っていく必要があると考えてございます。
 今後これらの点に配慮しながら、災害を具体的にイメージし、災害から逃れる知識を身につけていただけるよう、防災啓発パンフレットの作成に努めてまいります。
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2011年9月県議会、高田由一 一般質問=9月21日