2011年12月県議会 奥村規子一般質問 概要記録
2011年12月12日

1.獣害対策について
(1)農作物被害の状況と対策の現状について
(2)住民の生活被害への対応について

2.和歌山北高等学校の西校舎と
  新設和歌山さくら支援学校の併置について

(1)和歌山北高校と和歌山西高校の教育理念が
   統合の中でどのように生かされているか

(2)統合後の高校と和歌山さくら支援学校との教育のあり方について
(3)和歌山さくら支援学校の開校により紀伊コスモス支援学校、
   紀伊コスモス支援学校園部分校の過大規模化は解消されるか

(4)教員配置について

3.介護保険制度と後期高齢者医療制度について
(1)県の財政安定化基金の取り崩しと活用について
(2)介護労働者処遇改善と介護保険料について
(3)要支援認定の高齢者数と介護予防・日常生活支援総合事業
   について市町村の状況

(4)特別養護老人ホームの待機状況と第5期事業での基盤整備
(5)後期高齢者医療制度の保険料改定の見通しについて

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《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので、今回3項目にわたって全て分割方式で質問いたします。
 その前に、台風12号の豪雨災害が起こって初めての登壇であります。東日本大震災からはちょうど昨日で9ヶ月たちました。そしてその後、紀伊半島には大変な被害がもたらされました。この場をお借りいたしまして、県民のみなさんや被災されたみなさん、ご家族のみなさんに深い哀悼の意とお見舞いを申し上げたいと思います。
 それでは一般質問に入らせていただきます。

1.獣害対策について
 安心して農業を続けるためにも、また安心して生活でできる地域づくりのためにも、農業に未来と希望を子どもたちにも持ってもらえるためにも、獣害対策を強めなければという思いで質問させていただきます。
 これは和歌山の農林水産業編集委員会編で毎年、資料提供で送られてくる小学校5年生の社会化副読本です(写真上)。一人でも多く将来第一次産業を担って行く人間に成長してくれればいいなと思いながらいつも読ませていただいています。調べてみよう和歌山の農業というページに、子どもたちの素直な農業への思いが自筆で書かれています。この中のひとつですが、「私たちの学校ではみんなでたくさんの野菜を育てています。みんなで収穫して調理して食べたり、調理員さんにお願いして給食を作っていただいたりしています。自分たちで野菜を育てることで農家の人たちのご苦労や願いがほんの少しですが分かってきたような気がします。また食べ物やそれを育んだ自然に対する感謝の気持ちがわいてきます」こういったことが生き生きと書かれています。子どもたちの目の輝きが本当に伝わってきます。将来社会を担って行く子どもたちに答えていくためにも、農家のみなさんはがんばっていらっしゃると思います。
 近年、獣被害が市街化区域にも広がってきています。
 私の住む和歌山市においてもいくつか里山があります。特にさくらの名所として訪れる人も多い、和歌浦湾を望む絶景の寺院、紀三井寺のある標高228.6mの名草山周辺地域にも、イノシシ被害に悲鳴が上がっています。地元の方はイノシシではなくイノブタだと言っていますが、ここでは一応「イノシシ」ということでお聞きしていただきたいと思います。
 そのあたりは果樹栽培や米作りなどの農業を営む人や、新興住宅もあります。農作物をはじめ、日常生活が脅かされています。名草山の東側の広原地区から少し登ってみると、鉄の柵が張り巡らされ、道には鉄柵の扉が取り付けられていました。所々ボコボコに土が掘り返され、墓石までひっくり返されています。地元の人は、以前はこのような獣被害はなかったと言われています。
 10月には地区公民館で、県政出前講座「イノシシ被害の学習会」が行なわれたと聞いています。和歌山市のイノシシの地区編隊別有害捕獲頭数を見ると、7・8年前の平成15年度・16年度は名草などの地区は捕獲頭数ゼロでしたが急激に増え、捕獲頭数は地区別で一番多く、平成22年度では163頭捕獲されています。そこで農林水産部長にお伺いします。

(1)農作物被害の状況と対策の現状について
 県下の野生鳥獣による農作物の被害額はどれくらいですか。また、対策はどのようにされていますか。


《答弁》農林水産部長
 県下の野生鳥獣による農作物被害額は、平成22年度で3億5000万円。特に、イノシシ被害額が最大で約半分の1億8000万円あまり。次いで、サル、シカ、アライグマの順となっております。
 種々の対策にもかかわらず、被害金額は、ここ数年、3億円前後で推移しております。
 また、それ以外にもシカによる林業被害や報告にあがってこない被害もあると考えております。議員お話のとおり、10月の県政お話講座でも住民の方々から深刻な被害の状況をお聞きしております。
 こうした状況に対応し、抜本的な解決を図るために、今年度から捕獲に対する取り組みを強化し、「捕獲」「防護」「環境整備」の3本柱で鳥獣害対策を総合的に推進しているところでございます。
 県下全市町村が有害鳥獣捕獲に取り組んでおり、今年度から県はイノシシ、シカ、サルの捕獲に対しての報償金を拡充するとともに、アライグマも新たに報償金の対象にいたしました。
 また、今年度初めてニホンジカの管理捕獲を4月から5月中旬にかけて実施し、県下全域で1,462頭を捕獲いたしました。
 農家が、わな免許を取得する際の事前講習会費用の補助金も今年から拡充しております。
 防護につきましては、柵の設置について、現在、5の市と町が国の補助事業を実施しており、県単独の事業につきましては今年度から農家が利用しやすいように採択要件を緩和いたしました。その結果、21の市と町で事業を実施していただいております。
 野生鳥獣を寄せ付けない環境づくりについては、今年度から集落全体での取り組みに対し、補助制度を新設し、7つの市と町で事業を実施しております。
 また、本年2月に和歌山県鳥獣被害対策本部を設置するとともに各振興局にも地域本部を設置したところであり、今後とも市町村その他の関係機関と連携して、一層、鳥獣害対策に取り組んでいく所存でございます。


《再質問》奥村規子 県議
 鳥獣被害がたいへん広がっていることも含めて、今年度からいろんな対策が強化されたという答弁をいただきました。
 県としても被害の状況を把握していただき、直接、出前講座で住民の方からもご意見を聞いていただいたということですが、どういった深刻な状況を聞かれているのか、もう一度お答えいただきたいと思います。


《再答弁》農林水産部長
 「イノシシの被害で耕作意欲を無くす」とか、あるいは「家庭菜園や庭を荒らされる」といった声を聞いております。
 けれども、私自身のことを申し上げますと、今年の3月まで有田振興局におりました。丁度、1年前の12月の今頃、本みかんの収穫真っ最中なんですが、ある会合に出た際に、会合の終了後、農家の方から、とにかくどんなに酷い状況であるか現場に来てくれ、案内すると申し出を頂きました。12月は、本みかんの最中で、農家の方には大変失礼というんですか、恐縮ですから、私、振興局の職員と一緒に現場に参りましたけれども、私どもサラリーマンと違いまして、農家、特に果樹の収穫は年に1回です。ですから、本当に切実かつ深刻な問題と、私はかように受け止めております。


《再々質問》奥村規子 県議
 防護柵の県単独補助制度は農家が利用しやすいように採択要件を緩和したということですが、和歌山市での活用件数はどうでしょうか。


《再々答弁》農林水産部長
 和歌山市の防護柵の設置なんですけれども、制度の概要を説明させていただきますと、県単独の事業は昨年度までは2戸以上の農家の農地のまとまりとなっておりましたが、今年からは1戸でも出来るようにと要件を緩和いたしました。和歌山市は県単独の事業につきましては、防護柵設置支援事業の活用はございません。
 ただ、平成23年度に、国庫事業、国の方でも柵を設置する補助事業がございまして、そちらの方で、事業を行われております。


(2)住民の生活被害への対応について
《質問》奥村規子 県議
 次に 環境生活部長にお伺いします。
 住民の生活被害の対応についてお答え下さい。


《答弁》環境生活部長
 生活被害への対応についてですが、イノシシ等が市街地に出没し、人に危害を加えたり、工作物を壊すことにより、住民はその都度、防護対策等に苦労するとともに不安を感じていることは十分承知いたしております。
 出没の原因は、耕作放棄地の増加や餌付けなどが考えられ、農地に放置した果実や生ゴミ等は、無意識の餌付けにつながる恐れがあるため、県のホームページにおいて「餌付け防止について」を啓発しているところです。また、住民の方からの電話相談等の対応も行っています。
 野生鳥獣による生活被害対策の直接窓口は市町村が担当し、住民の方々の避難、あるいは原則追い払いの措置をとっており、状況によっては、県も現場に出動し、人命等に危害がおよぶ恐れがある場合は、警察と連携して対応することもあります。
 県としましては、今後とも生活被害の減少に向け、関係の市町村及び関係機関との連携を強化してまいります。


《再質問》奥村規子 県議
 「生活被害の減少に向け、関係の市町村及び関係機関との連携を強化」とは具体的にどのようなことですか。


《再答弁》環境生活部長
 関係する市町村との連携を強化するため、警察も含めながら対策会議を開催しているところです。野生鳥獣の出没する状況にもよりますが、より迅速な情報連絡と現場への出動、そしてまた現場での対応がより効果的となるよう、関係機関と今後とも協力してまいりたいというふうに考えております。


《要望》奥村規子 県議
 本当に何とかしなければということで、今後もぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 最後に要望ですが、狩猟関係者も捕獲したさいには命がけの仕事です。イノシシも必死に抵抗しますし、大変な仕事をやっていいただいています。
 昨年12月の一般質問で、松坂英樹県議からも鳥獣対策の抜本的強化を求めていますが(※参照)、捕獲委託金がワナの場合は6,000円とありますが、実際にはワナの代金約4,000円やガソリン代、その他の経費などを含めるとほとんど消えてしまいます。労力も大変な中ですが、農家のことを思うとやめるわけにもいかないと狩猟関係の方は言われています。
 農家の方も、夜が明ける前から箱ワナを見回るなど、被害を減らそうと必死になっています。補助があるとはいえ、捕獲のためのさまざまな費用・労力が要ります。
 私は、農家の人がワナ免許を取らないといけないこと自体が大変なことだと思っています。取りたくて取っているのではないと思います。やむを得ず、仕方なく取らざるを得ない事態を、一日も早く改善していただけますよう期待しています。
 委託金の引き上げなど、農家に負担のない対策をさらに推し進めていただきたいと思います。
 答弁の中で、農作物被害は届けられているだけで平成22年度は3億5000万円ということです。10年間で計算してみると、被害総額は31億5000万円以上に上ります。イノシシ捕獲頭数の推移を見ますと、平成14年の272頭から平成22年は6,851頭に大きく伸びているにも係らず、被害額はなかなか変わりません。もっと根本的に、捕獲と併せて生態系の実態調査についても全力を傾けていただきたいと思います。
 先ほど、和歌山市は県の防護柵の補助事業の活用はないと言われましたが、市の申請がないというのは県の制度が使いにくいのではないかという問題も含めて、事業が活用できるよう支援し連携をとっていただきたいと思います。
 最後に、名草山周辺の人は「イノシシ」ではなく「イノブタ」と言っています。県からDNA調査を見せていただきましたが、それには名草山周辺は入っていませんので、突然変異なのかどうか、ぜひ調査をしていただきたいと要望します。


2.和歌山北高等学校の西校舎と新設和歌山さくら支援学校の併置について
《質問》奥村規子 県議
 来年度、和歌山北高等学校と和歌山西高等学校が統合し和歌山北高等学校になり、現在の和歌山西高には体育科2学級、普通科2学級と和歌山さくら支援学校が併置されます。現和歌山北高には普通科7学級設置されるということで、統合整備が進められています。
 これは和歌山西高の生徒数の減少に対応することや、和歌山北高の体育科としての条件整備をすることと、特別支援学校の過大規模化解消を考慮して進められているものです。
 和歌山北高校は1963年に開校されています。教育目標は、自ら考え、行動し、学ぶ意欲的な生徒を育成するとあります。一方、和歌山西高校は1984年に開校され、教育目標として、命の尊厳に対する基本的理解の確立、実践力の涵養、新しい時代を創造する人間としての資質の向上を目指しています。そして、一人ひとりの進路や興味・関心などに応じて科目選択ができる、2学期制単位制が導入されました。
 それぞれ歴史と伝統があります。しかし、このたびの統合整備についてさまざまな疑問が出されています。
 統合後の校名が和歌山北高校となることから、和歌山西高校の校名がなくなり学校がなくなってしまうように思う、西高はどうなって行くのか、単位制がなくなるがどう評価しているのか、新北高の西校舎についてはどんな普通科になるのか、全員クラブ制と聞いたがどんなクラブがあるのか、クラブ活動はどこの校舎でするのか、クラブの選び方によって北校舎と西校舎を行ったり来たりしなければ行けないのではないか、その時の交通手段はどうなるのかなど、分からないままです。
 和歌山西校の開設されたころの卒業生も、今は大学や高校受験生のお母さんになっています。出来れば近くの西校舎に通わせたいが、分からないことが多く子どもの進路をいっしょに考える上でもしっかりした相談に乗れない、曖昧なことしか言えないと悩んでいます。子どもにはとにかく勉強するようにしか言えず、困っているという話です。充分な議論や、子どもや保護者に説明をし、不安に応えることが必要です。そこで以下、教育長にお尋ねいたします。

(1)和歌山北高校と和歌山西高校の教育理念が統合の中でどのように生かされているか
 和歌山北高校と和歌山西高校の教育理念が、統合の中でどのように生かされているか。特に大きな改変になっている、和歌山西高のこれまでの伝統や理念をどう生かすのか。教育長にお尋ねします。


《答弁》教育長
 来春統合する和歌山北高等学校に関しましては、和歌山西高校と現和歌山北高校の思いを十分に受けとめながら、双方の良き伝統を引き継いだ学校づくりに向けて、昨年度から両校の教職員が協議を重ねてきているところであります。
 現在、和歌山北高校は、スポーツを核として心技体を磨き、自らを律し向上させようとする生徒を育ててきました。また、和歌山西高校は、単位制を採ることで、興味関心に応じて多様な科目を学び、自らの進路を切り開いていこうとする生徒を育成してまいりました。
 このたびの統合校におきましては、これまで両校が校訓としてきた「知・徳・体」に加え、和歌山西高校が大切にしてきた高い「志」を併せ持った社会に貢献できる人間形成の育成を教育の基本理念といたしております。
 また、両校舎において、健康や福祉の視点を取り入れながらスポーツに力を入れた教育を推進するとともに、生徒の進路希望を実現するためのきめ細かな支援を行い、心豊かにたくましく、社会を切り拓くことのできる人材を育てる教育に努めてまいります。


(2)統合後の高校と和歌山さくら支援学校との教育のあり方について
《質問》奥村規子 県議
 お手元の※資料をご覧下さい。これは現和歌山西高校の略図です。来年度開校する「和歌山さくら支援学校」の校舎が、和歌山西高校のどの位置に校舎整備が計画されているかの配置図です。支援学校の知的障害のある生徒に対応した高等部の校舎については、和歌山西高校の教室を転用されます。現在、和歌山西高校の右側に円でかこんだところが改修されています。平成26年度には、支援学校の小・中等部校舎2棟と体育館が左の円で囲んだテニスコートのあたりに新築され、フルオープンになるということです。
 そこで、統合後の高校と和歌山さくら支援学校との教育のあり方をどのように考えているかをお示し下さい。


《答弁》教育長
 統合校の高等学校と和歌山さくら支援学校は、文化祭、体育祭をはじめとした学校行事や生徒会活動等において、互いに理解を深め、共に助け合い、支え合っていくことの大切さを学ばせるため、生徒同士の交流や共同学習を積極的に推進していきたいと考えてございます。
 また、和歌山さくら支援学校では、作業学習において福祉施設や事業所等での実習を取り入れ、働くために必要な意欲・技能・態度を培い、地域において主体的に生きる力を育成するなど職業教育の充実に努めてまいります。


(3)和歌山さくら支援学校の開校により紀伊コスモス支援学校、紀伊コスモス支援学校園部分校の過大規模化は解消されるか
《質問》奥村規子 県議
 和歌山さくら支援学校は、特別支援学校の過大規模化と児童生徒の現状に即して設置されるというもので、知的障害・肢体不自由の児童生徒を対象とした小中高等部をあわせ持つ学校と聞いています。子どもや保護者、教職員のみなさんの強い要望に応えて実現するものであり、関係者のご努力に敬意を表したいと思います。いっそう充実した教育活動を期待する立場からお聞きします。
 和歌山さくら支援学校の開校により、紀伊コスモス支援学校、紀伊コスモス支援学校園部分校の過大規模化は解消されるのでしょうか。


《答弁》教育長
 和歌山さくら支援学校は紀伊コスモス支援学校の校区を分ける形で開校しますので、紀伊コスモス支援学校は児童生徒数が減少することになり、学習環境は改善されます。
 また、紀伊コスモス支援学校園部分校については、平成25年度末をもって、すべての児童生徒が和歌山さくら支援学校に移籍することになりますので、子どもたちは、ゆとりある学習環境で学べることになります。


《再質問》奥村規子 県議
 具体的にどういった点で学習環境が良くなるのか、また過大規模化は解消されるのか、もう一度お答えいただきたいと思います。


《再答弁》教育長
 具体的にはですね、現在の普通教室の不足がございます。その普通教室の不足や過密な使用となっている音楽教室だとか、あるいは美術教室などの特別教室というのがございますが、そういう美術教室などの特別教室の状況等が改善されて、過大規模化の解消が進んでいくものというふうに受け止めております。


(4)教員配置について
《質問》奥村規 県議
 これまでにない統合の上、支援学校が併置される中で複雑な問題や課題への対応が予想されます。
 いろんな配慮も求められると思いますが、両校の教員配置をどう考えていますか。


《答弁》教育長
 教員配置についてですが、標準法に基づき、生徒の実態やカリキュラムの内容等も考慮しながら適切に対応してまいりたいと思ってございます。


再質問》奥村規子 県議
 今回は、高校の統合校に支援学校が併置されるわけですが、私は最初、隣接というイメージがあったので、今日は略図を示させていただきました。
 これから交流などを重視し、障害があろうとなかろうと共生していく社会理念など、いろんなことがあるのだろうと思いますが、やはりそれは県民、住民、地域のみなさん、そして保護者のみなさん、何よりも生徒や先生たちの現場で作り上げていくものだと思うのです。
 県下としては今まで取り組んだことのない、非常に大きなことをやっていくわけですが、何が起こって、どんな問題や課題が出てくるかも含め、十分な教員配置の加配が大事ではないかと思いますが、その点でもう一度質問させていただきます。


《再答弁》教育長
 議員ご指摘の教員の配置につきましては、標準法に基づいた加配を含めて適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。


《要望》奥村規子 県議
 北・西高統合そのものが、様々な課題を生むこともあるかと思います。
 施設整備の遅れなど、統合への経過の上でも様々な問題がある中で、これからも色々な議論が必要になってくると思います。その時に子どもたちや保護者のみなさんから理解してもらえるように、説明会やいろんな疑問に答える機会をしっかりと増やし工夫をしていただきたいと思います。
 より良い教育環境を作っていけるよう、私たちもがんばっていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。


3.介護保険制度と後期高齢者医療制度について
《質問》奥村規子 県議
 11年前の2000年4月に「介護の社会化」を合言葉に介護保険制度が始まりました。
 しかし今日の現状はどうでしょうか。特別養護老人ホームの入所を希望しても入れない、家族の介護を理由に仕事をやめざるをえない「介護退職」は全国で毎年10万人以上あると聞いています。
 また介護現場の人材不足は深刻で「介護の危機」というべき状態にあります。一方で高齢者の介護保険料は上がり続けてきました。来年度からは全国平均の基準月額が5,000円をこえるといわれ、高齢者の負担は限界となっています。
 現在の第4期保険料でもどれだけ高負担になっているでしょうか。和歌山市の保険料を見ますと、市民税非課税世帯で本人も非課税(第3段階)で年4万4,520円です。課税世帯で本人の年金収入が80万円以下で年5万3,430円です。年金支給額がおおむねの平均である50万円だと、その1割を超える保険料となっています。しかも県内で要介護や要支援と認定された方は65歳以上人口の20.8%となっていますので8割の方は掛け捨てとなります。
 その中での介護保険が見直されようとしています。
 今年6月に可決・成立された介護保険法改正は高すぎる保険料問題について、必要な公費負担金割合の改定を行ないませんでした。介護保険制度は公費負担5割となっていますが、前回の見直し時、特例交付金を投入し、また介護職員の処遇改善も別枠の交付金で行い、実質的には57〜58%ぐらいの負担になっています。しかし今回はこの問題に手をつけず、さらに別枠の処遇改善の交付金を延長して国から交付するのか、介護報酬化して保険料や利用料に転嫁するのか、その結論も出ていません。
 ただ改定介護保険法は、このままでは第5期保険料が大幅に上昇することから、県に積み立てられている「財政安定化基金」の取り崩しだけを条文化しました。県の「財政安定化基金」を取り崩して、3分の1を市町村に返還し保険料の低減にあてること、また県、国に返還するそれぞれ3分の1についても、介護保険に関する事業に要する経費に当てるよう努めるとしています。
 県の第4期保険料の平均基準額は月額4,625円で国の平均4,160円をはるかに上回っています。国平均並みの値上げとなれば月額5,600円もの保険料になってしまいます。
 県の基金だけでは、到底保険料引き上げを止めることは出来ない状況です。しかし県としてもこの介護保険料の上昇をどう考えるのか、基金取り崩しで、出来る限りの低減を行なうべきと考えます。「財政安定化基金」取り崩しは、国が過去の最大貸付率で基金を残すなどの考え方を示していますが、どの程度の額を取り崩すのかは県を中心に地域で検討するものとしており、県の考え方が大きく左右すると考えます。
 そこで福祉保健部長と知事にお伺いします。

(1)県の財政安定化基金の取り崩しと活用について
 これまでの県の財政安定化基金の積立総額と支出額の推移、今年度の見通しはどうなっていますか。今回見直しにあたっては、全額を取り崩して保険料低減にあてるべきと考えますがいかがですか。


《答弁》福祉保健部長
 まず最初に、これまでの財政安定化基金の積立総額と支出額の推移、今年度の見通し等についてお答えをいたします。
 介護保険制度が始まった平成12年度からこれまでの財政安定化基金の積立総額は約32億4500万円になります。
 なお、全国的に財政安定化基金の積立額が、交付・貸付需要を大きく上回る状況であり、本県でも第4期介護保険事業計画期間の平成21年度以降積立は行っておりません。
 また、支出額ですが、平成12年度から14年度の第1期では貸付が約5億2700万円、交付が約2200万円、平成15年度から17年度の第2期では貸付が約8億7000万円、交付が約2億5500万円、それから、平成18年度から20年度の第3期では貸付が約9400万円、交付が約1300万円、第4期における平成21年度、平成22年度で貸付が約6600万円となってございます。
 平成23年度におきましては、現在市町村に対して照会中でございます。
 財政安定化基金を全額取り崩すべきとのご意見につきましては、仮に全てを取り崩すと、平成24年度以降において市町村の介護保険財政に赤字が生じた場合、貸付や交付を行うことが困難となることや、介護保険法上「一部を取り崩すことができる。」と規定されていることから、適切ではないと考えてございます。


《質問》奥村規子 県議
 県返還分も市町村に交付し、第5期の保険料軽減に充てるべきと考えますが、ぜひ知事のお考えを聞かせていただきたいと思います。


《答弁》知事
 介護保険制度は、国の制度でありまして、私も持続可能性という点で色々問題点があるというふうには認識しております。
 ただ、ご指摘のようにですね、国で決まっているこの制度がおかしいというんであればですね、そもそも国のレベルで制度の在り方を議論すべきであって、それで市町村が苦しいからといって、その県が全部埋めなきゃいかんというのもですね、これは、そういうことをやっていると、国の制度の尻ぬぐいを全部県が引き受けるということになって、ちょっとおかしいなというふうにも思います。
 この基金はですね、財政安定化基金は、国、県、市町村からそれぞれ出されたわけでございますが、国や県については一般会計で出されておりまして、この将来の財政の不足的な事態に備えるために基金を持っていたのが、多すぎるということで取り崩すのであれば、元のところへ戻すというのが主旨であろうと思います。
 ただ、同時にこの法律では、国や県は取り崩し分を介護保険に関する事業の経費に充てるように努めるべきだというふうに書いておりますので、私どももそのような考えに立ってですね、これから介護保険については色々な制度の改変がなされていくと思いますので、それに役立たせていいサービスができるようにしていきたいと、そんなふうに考えております。


(2)介護労働者処遇改善と介護保険料について
《質問》奥村規子 県議
 別枠で交付される介護労働者処遇改善交付金は継続されるのかどうかについてです。これが介護報酬化された場合、平均保険料はどの程度上昇するのでしょうか。また県平均の介護保険料は第1期から第4期まで、どのように上昇してきたかお答え下さい。


《答弁》福祉保健部長
 まず、介護職員処遇改善交付金につきましては、平成23年度未で終了することになっておりますが、その後の介護職員処遇改善については、国において社会保障審議会介護保険部会等で審議されてきたところです。
 現在実施されている交付金を廃止し、介護報酬に反映した場合、同額の財源を確保するには2%の介護報酬アップに相当する旨が介護保険部会等で説明されておりますが、実際どのような形で行われるか未定であるため、県の第1号保険料基準額平均にどの程度影響があるかということを現時点で申し上げることは困難でございます。
 次に、第1号保険料基準額月額の推移は、第1期は2,911円、第2期は3,527円、第3期は4,513円、第4期は4,625円となっております。


(3)要支援認定の高齢者数と介護予防・日常生活支援総合事業について市町村の状況
《質問》奥村規子 県議
 改正介護保険法では、市町村の判断で「介護予防・日常生活支援総合事業」(以後「総合事業」)を導入し、要支援1・2と認定された人は地域包括支援センターが予防給付か「総合事業」で対応するのかを判断するとしました。
 これは、要支援の人を介護保険の給付からはずそうとするもので、きわめて不十分なサービスになるのではと危惧されています。現在、市町村で第5期事業計画の策定が議論されています。県内で要支援認定の高齢者は何人いますか。この「総合事業」導入についての市町村の状況はどうでしょうか。


《答弁》福祉保健部長
 要支援の認定を受けている高齢者数は、平成23年10月末現在で18,073人となっております。
 また、本年6月の介護保険法改正により、地域支援事業の中に「介護予防・日常生活支援総合事業」が新たに創設されております。
 この事業は、要支援者の方や介護認定までには至っていないが、予防の必要性が高い2次予防事業対象者の方に対して介護予防事業や配食・見守り等の生活支援サービスを総合的に提供することができる事業です。
 この事業の実施につきましては、市町村が利用者の意向を尊重し必要なサービスを検討し、導入するものですが、国から事業実施に当たって参考となる手引きが市町村に示されていないこともあり、現段階では、市町村も導入の適否について検討しているという状況であります。


(4)特別養護老人ホームの待機状況と第5期事業での基盤整備
《質問》奥村規子 県議
 特別養護老人ホームの待機者はどうですか。どう見ていますか。第5期事業で施設・在宅サービスの拡充で解決の方向に進むのかどうかお答え下さい。


《答弁》福祉保健部長
 平成23年3月31日時点の特別養護老人ホームにおける在宅の待機者数は2,824人で、そのうち要介護4以上の方が1,013人となっており、高齢化率の上昇により待機者数は年々増加する傾向にあります。
 平成21年度から23年度末までに、特別養護老人ホーム等の介護保険施設や認知症高齢者グループホーム等が併せて約1,400床整備される予定になっております。
 また、平成24年度から26年度までの第5期におきましても、一人でも待機者が少なくなるよう、特別養護老人ホームを中心に積極的に、計画的に整備を進めるべく、現在、市町村と協議を行っているところでございます。


(5)後期高齢者医療制度の保険料改定の見通しについて
《質問》奥村規子 県議
 最後に、後期高齢者医療制度の保険料改定について質問します。
 後期高齢者医療制度は、民主党が廃止すると公約したにもかかわらず先延ばしされ、来年度、保険料改定が行なわれます。新制度として議論されている制度は、国保の中で75歳以上を別勘定にして、高齢者医療費と保険料負担が直結するという現制度の問題点をそのまま引き継ぐ内容で、到底認めるわけにはいきません。しかし今回問題にしたいのは、廃止が決まっている医療制度なのに、保険料が値上げされるという問題です。この点について県の対応をお聞きします。
 来年度の保険料改定の見通しはどうなっているのでしょうか。また前回改定では、広域連合の剰余金と県の後期高齢者医療財政安定化基金を投入し、保険料率が引き下げられましたが、今回も県の基金を投入して、せめて保険料が引き上がらないようにすべきと考えますがいかがでしょうか。


《答弁》福祉保健部長
 後期高齢者医療制度の保険料改定の見通しは、和歌山県後期高齢者医療広域連合が試算中であり、まだ公表できる段階ではありませんが、平成22年度の前回改定では保険料をやや引き下げたことなどにより、広域連合の保険財政は厳しさを増しており、剰余金を活用しても、ある程度の保険料の引き上げが必要であると見込まれます。
 県としましては、保険料の増加抑制を図るため、給付費の増大や保険料の減収リスクに備えて県が造成している後期高齢者医療財政安定化基金、約13億円の一部を必要に応じて特例として取り崩し、広域連合に交付して、高齢者の負担が軽減されるように努めてまいりたいと考えております。


《再質問》奥村規子 県議
 私は、介護保険料引き下げに基金の取り崩しを思っているのですが、暮らしが大変なことなど高齢者の状況について、知事も本当に痛いほど分かっていただいていると思います。
 部長の答弁にもありましたが、第1期から第4期まで年々、保険料は非常に上がってきています。もともとの問題は、国の費用負担をもっと増やさないといけないとろがありますが、県として何とか引き上げを食い止める、また引き下げる考えはないかという点で再度お聞きします。
 第5期の保険料改定については、介護保険事業(支援)計画の策定に係る全国会議での文章が出ています。第5期保険料設定についてという資料の中で、「財政安定化基金を取り崩したときは、国及び都道府県がその取り崩した額の3分の1に相当する額を介護保険に関する事業に要する経費に充てるよう努めることとされているところである。国においてはその活用方法を検討しているところであるが、各都道府県においても、当該取り崩した額が介護保険に関する事業に要する経費に充てられるようご配慮方よろしくお願いする」と出ています。第5期保険料設定についてとしてこの文章があるわけですから、ぜひそれを考えて何とか引き下げていただきたいと思います。再度、答弁をお願いします。


《再答弁》知事
 奥村議員のご質問の中には二つたいへん大事な点が、多分無意識であると思いますが、強調されていない。
 ひとつはですね、この財政安定化基金はですね、国と県と市町村とで3分の1積み立てておるわけでありますけど、国と県が一般財源で出しているのに対して、市町村の方は、実は介護保険料の一部を持ってきて積み立てているわけですね。
 ですから、余ったときは市町村の方は必ず介護保険料に返すのが当たり前であり、それで国や県については一般会計に返すのが当たり前だけども、先ほどご指摘のようなそういう考え方があるので、われわれは、二つ目の問題ですが、介護保険に何か充てようというふうに思っておるわけです。
 だけど介護保険に充てようというのが、積立から介護保険料にですね、戻しなさいというふうに、直結するというところまで、そこは県に任されていると思うんです。ですからわれわれは少し戻すよりは、介護保険があるいは介護がうまくいくように、そういうことを考えて、これから国もそうですけど、検討していったらいいと、そんなふうに思っております。


《要望》奥村規子 県議
 どう使うかということでは、保険料に充ててはいけないということではないと思いますので、ぜひ考えていただきたいと思います。
 最後に、後期高齢者医療制度の保険料改定については広域連合との協議で「財政安定化基金」の拠出、さらに県からの独自の補助金交付についても協力するようにという厚生労働省からの通知もあるようです。ぜひこの点でも検討して保険料引き上げとならないよう強く要望します。


 知事の答弁を聞く、奥村規子県議(右側)=12月12日

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2011年12月県議会、奥村規子 一般質問=12月12日
2011年12月県議会、奥村規子 一般質問=12月12日