2012年6月県議会
松坂英樹一般質問 概要記録
2012年6月25日

1.「あらぎ島」を生かした地域づくり
(1)あらぎ島の「重要文化的景観」選定にむけて
(2)「西八幡」「安諦」地域の過疎集落支援総合対策
(3)あらぎ島など地域資源を生かした魅力的な地域づくり

2.県営ダム操作改善
(1)利水容量を活用した操作改善による洪水対策効果
(2)今回の操作改善と「操作規則」、これまでの改善との関係
(3)降雨予想や洪水予想の信頼性向上と住民への周知

3.「避難路沿い建築物条例」案
(1)条例案による廃屋対策の実効性
(2)避難路沿い建築物の耐震化・撤去促進事業が必要ではないか

4.県内における軍事訓練計画
(1)県立自然公園煙樹ヶ浜での自衛隊軍事訓練計画について
  ・水際地雷訓練の全貌について
  ・県立自然公園での軍事訓練実施例
  ・県立自然公園での軍事訓練への姿勢
(2)米軍オスプレイ配備による低空飛行訓練計画について

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1.「あらぎ島」を生かした地域づくり
《質問》松坂英樹 県議
 通告に従い一般質問をさせていただきます。第一の柱として、あらぎ島を生かした地域づくりということでお尋ねします。
 議場にはあらぎ島の写真を資料配付させていただいております。まさにこれからの夏、力強いあらぎ島です。この写真は、あらぎ島景観保全保存会の西林会長さんが撮影されたものです。ここあらぎ島で田んぼ作っておられる方で、地元ならではの作品、カメラ技術もプロ並みです。一年の四季ごとに表情をかえる、また一日の内でも刻々とその表情を変えるあらぎ島を、愛おしく見つめておられる姿が浮かびます。
 この、有田川町の「あらぎ島」は、日本の棚田風景を代表するもので、これまでも社会の教科書の表紙や各種ポスター、著名な書物・写真集でも紹介されてきました。
 この美しい「あらぎ島」ですが、デザイン的にきれいな風景というだけでなく、今、「文化的景観」としての評価が高まり、地元有田川町が国の「重要文化的景観」選定にむけて準備をすすめています。
 この「文化的景観」とは、景観の重要文化財・国宝のようなものです。2005年に改正された文化財保護法に新しく位置付けられ、特に重要で保護の措置が講じられているものが「重要文化的景観」として選定される仕組みとなっています。
 さる3月に、地元清水で「あらぎ島」に関するフォーラムが開かれ、様々な専門家がそれぞれの角度からあらぎ島を熱くかたっていただき、たいへん感動いたしました。その内容を紹介させていただきながらあらぎ島の価値、その厚みについてふれてみたいと思います。
 このあらぎ島をふくめ清水地域は、古く鎌倉時代には阿?河荘(あてがわのしょう)と呼ばれる荘園でしたが、農民たちが地頭の横暴に耐えかねて、領主にさし出したカタカナ書きの訴状が、貴重な歴史資料として中学校や高校の教科書に掲載されています。このほかにも和歌山県内でもこの有田川流域は文化財の数が抜群に多い地域です。
 このように古くから、山間部の耕地面積の少ないところで苦労を重ねてきた住民が、新田を広げていったのが棚田となっていった。厳しい労働に耐えながら、田んぼを守ってきた歴史というわけです。
 このあらぎ島は近世、江戸時代初期の地元大庄屋、笠松佐太夫の開発によるもので、田んぼの用水は約3キロ上流の有田川支流から、険しい山の中を切り開いて水路を引いてきています。目の前を流れる有田川の水はずっと低い位置を流れていますから、この棚田の高さに水を引くことは容易なことではなかったわけです。
 この山一帯には城跡があり古戦場がありと、史跡が数多く存在するとともに、現在の番地表示でも有田川町大字清水の1番地は、街中ではなくこのあらぎ島から始まっていることからも、歴史あるシンボルとして地元住民の中にしっかりと位置付けられてきたのです。
 この歴史ある棚田あらぎ島は、貴重な自然環境にもめぐまれています。山の中にある豊かな自然というだけでなく、そこに田という人間の営みがあるからこそ生息できているという、貴重なものが見られ、今回和歌山県のレッドデータブックに新登録されたオオチャバネセセリというチョウも確認されています。
 そして何よりも、この棚田景観が、ただ造形的に美しい、形がキレイだということではなく、文化的景観としての価値が非常に高いと評価されていました。
 普通一般に有名な棚田風景というと、ズラーッと見事な棚田が連続するのですが、ご覧いただけますように、あらぎ島というのは、流れるような広がりをもつ棚田があり、連なる山々があり、目の前を流れる川があり、そして民家の並ぶ集落がある。そしてこの写真は空もいいですね。ここには豊かな自然と人々の営みがある、そして歴史がある、この風景は他ではなかなか見られない独特のまとまりがある、インパクトがあるというわけです。
 この清水地域の集落には茅葺屋根の民家が数多くのこっています。この茅葺屋根の民家というのは、けっして紀伊半島全体に分布しているのではなく、有田・貴志川ぞい・奈良の野迫川地域などに特徴的に分布していて、どうやら茅葺屋根が腐らないぐらいの降水量と冬の寒さが関係しているとのことでした。こうした茅葺屋根の民家が、この清水地域のいたるところに残っていて景観のシンボル的存在になっています。
 またこの地域は、保田紙という和紙の生産が盛んな地域でありました。戦後にこの清水地域をはじめ国内ほとんどの産地がなくなりましたが、地域の努力で復活し、今では原材料のコウゾを外国産ではなく地元のものだけを使っているのはここだけだといわれているそうです。この紙漉きや材料のコウゾの木も、清水地域の生活の風景の一部を形づくってきました。写真で写っている左側の集落も紙すきを生業とする住民によって形成された歴史をもっています。
 ほんの一端を紹介させていただいたわけですが、このあらぎ島は、棚田だけでなく、山、川、そして周辺の家並みもふくめた、日本の農村景観の原風景ともいうべき価値がある、そこに人の心にしみいる魅力があるのです。

(1)あらぎ島の「重要文化的景観」選定にむけて
 そこで教育長にお尋ねします。このあらぎ島が国の「重要文化的景観」に選定されれば、和歌山県内では初めての選定となり、たいへん期待されているわけですが、県としてあらぎ島の文化的景観の価値についてどう考えているか、まず最初にご答弁を願います。


《答弁》 教育長
 蘭島は、議員ご指摘のように有田川町清水地区において有田川が大きく蛇行した河岸段丘上に、江戸時代初期から開発された扇形の棚田が築かれているものであり、他地域にはない独特の景観を形成しており、山間地域の水田開発として、近世の土木技術や農耕水利の研究上でも大変重要な歴史遺産です。
 また、同地域周辺では、今なお、茅葺きの古民家も残されている等、中世から近世以来の村落景観が良好に保たれており、人と自然による長い間の営みによって造られた文化的価値を有する優れた景観が形成されています。
 県教育委員会としても、この様な、蘭島のかけがえのない水田景観は、文化財保護法に基づき大切に保存し、後世に伝えていく必要がある貴重な文化遺産であると考えています。


(2)「西八幡」「安諦」地域の過疎集落支援総合対策
《質問》松坂英樹 県議
 引き続いて、この同じ清水地域で取り組まれている県の過疎対策事業について質問をさせていただきます。この度、わかやま版「過疎集落支援総合対策」事業として、あらぎ島の下流、上流部にあたる「西八幡」「安諦」地域において、それぞれ「棚田を活用した元気な集落づくり」「畑わさびと保田紙で地域再生への挑戦」とのキャッチフレーズで事業計画が決定されました。これらの地域での取り組みの特徴と地域おこしの手ごたえを、企画部長よりお示しいただきたいと思います。


《答弁》 企画部長
 平成22年度から全国に先駆けて取り組んでおります過疎集落支援総合対策事業におきまして、有田川町の西八幡生活圏と安諦生活圏で住民が主体となり、5月に事業計画が策定されております。西八幡生活圏では、耕作放棄地となっている棚田を復活させ菊芋を栽培し加工品として販売、また食用タニシの養殖も計画されております。安諦生活圏では、地域伝統の「わさび寿司」に使うわさびの葉を畑で生産し、同じく伝統ある保田紙の材料、楮(こうぞ)の生産にも取り組まれる予定であります。それぞれ、地域の特徴を生かした取り組みであり、地域の方々はすでに一部の事業に着手されるなど大変意欲的でございます。県としても、こうした事業を通して過疎地域が元気になればと考えております。


(3)あらぎ島など地域資源を生かした魅力的な地域づくり
《質問》松坂英樹 県議
 ひきつづき知事にお伺いします。こうしたあらぎ島の景観、清水地域の歴史や文化、食や観光などを生かした地域おこしの努力、そして国の重要文化的景観選定にむけた努力がすすめられていること呼応して、来年秋に第19回全国棚田サミットがあらぎ島を中心に有田川町で開催されます。また、宿泊棟や体験施設などの整備も進められているところです。
 この棚田サミットは、あらぎ島と和歌山県、また有田川町、清水地域を売り出す絶好の機会です。このチャンスを十分に生かすとともに、これを一過性に終わらせないことが大事だと考えています。
 棚田や地域の食・文化など取り組みの地域的な広がりを展望するとともに、単発でない持続的な地域の取り組みとして定着・発展してゆけるような努力と工夫が求められます。これまで地域の中で各分野それぞれに取り組まれていたことを、あらぎ島の景観保全の取り組みを太い柱にすえて、広がりのある事業として、地域の活力を向上させゆけたらと期待しています。
 教育や農林水産、企画、観光など県としても各分野連携した積極的な支援を求めるものですが、知事の考えをお示しください。


《答弁》 仁坂知事
 有田川町清水地区の「蘭島」の景観は国内外に誇り得る重要な地域の資源であり、県内初の重要文化的景観に選定されることになれば、清水地域の活性化にとっても大きな起爆剤になるものと期待しておりまして、今後努力していきたいと考えております。
 また、御指摘にはございませんでしたけれども、ここでは秋篠宮の悠仁親王の御生誕をお祝いして「紀清の集い」という、特に若手の方々の住民の会が毎年無償奉仕をしてキャンドルライトイルミネーションをしておられます。そういう意味ではですね、地元の方々の大変な努力によってこの素晴らしい景観を売り出そうと、あるいは伝えようという努力が続いていまして、私も励ますために毎年参加をさせていただいております。そういう時に中山町長が発案されたと思いますけれども、来年11月になってまいりましたけれども、全国棚田サミットを誘致しようという試みがございまして、これが上手くいきまして、全国から多くの方々に清水地域を訪れていただいて、蘭島等の棚田を大切に守り育んできた地域の方々の生活や歴史文化を実感していただけるような、そういうまたとないチャンスが出来たと考えております。
 県といたしましてもこのような機会も活かさないといけませんし、また地域の動きにも積極的に参加しながら、そのほか部長などが説明いたしましたように、地域資源の活用にも目を向けて持続的な広がりのある立派な地域をつくっていきたい、そんな風に考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 知事ならびに関係部長・教育長からそれぞれご答弁をいただきました。ご答弁いただいたように、ぜひこの「あらぎ島」を太い軸としながら、一過性のものにならない、広がりや持続性のある地域づくりをめざして支援をお願いするものです。
 一点要望を申し上げます。過疎集落支援事業の関係で、今回のメニューには間に合わなかった課題ですが、地域住民の事業化の要望が一番切実なもの。それは地域住民の交通手段の確保の問題です。過疎地有償運送など、様々な計画が検討されているようです、ぜひ各方面の協力のもと、実現に向けて、県としても引き続き支援をしていただけますよう要望をさせていただきます。


2.県営ダム操作改善
(1)利水容量を活用した操作改善による洪水対策効果
《質問》松坂英樹 県議
 次に二つ目の柱として、県営ダムの操作改善について、以下3点まとめて県土整備部長に質問させていただきます。
 このほど関西電力との間で、発電用利水の洪水対策としての活用が合意され運用が開始されました。住民向けのリーフレットもダムごとに準備されています。この操作改善により、関西電力殿山ダムはもとより、県営3ダム(二川・椿山・七川)において一定の洪水対策効果が期待されています。一方で昨年の台風豪雨にあてはめたシミュレーションでは、二川ダムや七川ダムでの効果は、限定的であると試算されているようです。今回の運用改善で期待できる洪水対策効果についてお示し下さい。


《答弁》 県土整備部長
 県から関西電力に働きかけてきた結果、各ダムがいわゆる「ただし書き操作」をせざるを得ないような大規模な洪水が予想される際に、あらかじめ発電のための利水容量部分も最大限水位低下を図り、治水に活用することについて、関西電力と合意し、運用を開始しました。
 これにより、ダムで洪水調節可能な時間を延ばし、避難時間を確保するとともに、最大放流量を低減し、下流河川の洪水被害を軽減することが期待されます。
 昨年の台風12号で試算した場合、ただし書き操作へ移行する時間を、七川ダムでは1時間20分、椿山ダムでは1時間40分遅らせることなどが見込まれます。
 こうした治水効果は、雨の降り方などによって、効果がより大きくなることも小さくなることもありますが、県としましては、今回の運用だけでなく、引き続き河道の改修や防災情報の充実など、ハード・ソフト対策を併せた洪水被害の軽減に取り組んで参ります。


(2)今回の操作改善と「操作規則」、これまでの改善との関係
《質問》松坂英樹 県議
 2点目に、今回の操作改善と「操作規則」、これまでの操作改善との関係についてお尋ねします。
 二川ダムではダム建設当時のままの約50年前の「操作規則」を使い続けています。この操作規則は、平素はできるだけ多くの水をダムに貯めて発電し、洪水時には、水をぬいて空き容量を確保し洪水調整をおこなうという発電優先ともいうべき多目的ダムの典型的な設計思想のものです。
 私はこれまでも、このダム操作規則を、集中豪雨など近年の雨の降り方に対応して、発電優先から治水優先に改善すべきだと提案してまいりました。県営ダムの発電施設が関西電力に売却される折には、民間に売却されると発電優先になるのではという地元住民の不安の声を代弁し、これに反対しました。県は売却を強行しましたが、この折には一定のダム操作改善とダム水位を低く保つ協定が交わされたのは大きな成果であったと考えています。
 それに加えて今回の操作改善で、大洪水が予想される時には利水容量を治水のために活用することが合意され、そういう面では大きな改善だと評価するものです。
 そこでお尋ねしますが、今回のダム操作改善と「ダム操作規則」との関係はどうなっているのでしょうか。旧来の操作規則まで見直したのかどうか。また、これまでも県営ダムでは、過去の洪水被害をふまえた七川ダムでの改善、先ほど紹介しました二川ダムでの操作改善がなされてきましたが、こうした操作改善とバラバラにはならずに統一的に整備がされているのかどうか。これらの点についてお答え願います。


《答弁》 県土整備部長
 今回のダムの運用は、各ダムが「ただし書き操作」をせざるを得ないような、計画を超える大規模な洪水が予想される場合に適用するものでございます。
 このため、計画規模の洪水を対象として定めた操作規則の範囲外であり、別途実施要領を策定し運用しております。
 また、七川ダム、二川ダムで台風の接近等によりあらかじめダムの水位を低下させることを定めた過去の運用規程につきましては、今回の実施要領に統合し、整理をしたところでございます。
 また、操作規則については、各ダムの洪水調節計画に基づき定められており、下流の河川改修の進捗状況等を勘案しながら、必要に応じて見直して参ります。


(3)降雨予想や洪水予想の信頼性向上と住民への周知
《質問》松坂英樹 県議
 3点目に、今回のダム操作改善は、いざという時に事前にダム放流で水位を下げて効果を発揮させる仕組みですが、そうするためには、計画を超えるような大雨を、「想定外」といわずに見通しを持って予測できるかどうかにかかっている、こういっても過言ではありません。また、計画を超えるような大雨だけでなく、最近は度々襲ってくる集中豪雨や台風に対し、平素の安全なダム操作のためにも、降雨予想・洪水予想の信頼性向上は欠かせない課題です。
 より高度な信頼性の高い予報などの活用と、これを生かした住民への周知をどのように進めてゆくのか、ご答弁を願います。


《答弁》 県士整備部長
 今回の運用にあたり、事前放流を判断する降雨予測については、気象庁の気象情報や数値予報結果等を用いております。
 利用にあたっては、予測時間帯別に精度が高いものを組み合わせるなど、現在の知見においてできる限り予測精度を高める工夫をしております。
 今後運用を実施するなかで精度を検証し、ダムの運用改善につなげていくこととしております。
 また、今回の事前放流は、大規模な出水が予想される際に実施するものです。従って、関係市町等が避難勧告等の準備、発令等の行動を迅速にとれるように、事前放流を実施する際にあらかじめ通知し、その主旨を確実に伝達することとしております。
 今後とも、関係市町が住民への周知等、適確な対応を図れるよう、必要な連絡を密にして参ります。


《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁をいただきました。今回のダム操作改善である利水容量の活用は、ダムの治水能力を上げる画期的な一歩であったと評価しています。と同時に、これとても限りある能力アップですから、今後ともダムの安全性向上とともに、河川整備全体の課題、そしてより高度な予報体制と住民への情報提供に引き続き努力を続けていただきたいと思います。
 この問題でも1点要望をさせていただきます。気象庁や気象協会から得た最新鋭の予測データを活用するとのことですが、県のホームページやテレビのデータ放送では、各地の雨量や河川の水位の実測データがリアルタイムで見ることができます。加えて土砂災害情報のページには、県内をメッシュにわけて、数時間先の降雨予想と土砂災害危険度が見られます。ここで、ダムや河川単位の降雨予想を加えて、わかりやすい形で住民や地元自治体に提供できれば、防災にたいへん役に立つと思います。国に対して気象データをしっかり求めると同時に、住民に対する情報提供についてもぜひ検討されるよう要望しておきます。


3.「避難路沿い建築物条例」案
《質問》松坂英樹 県議
 3つ目の柱の質問に移らせていただきます。今議会に上程されました議案第92号、「津波からの円滑な避難に係る避難路沿いの建築物等の制限に関する条例」についてお尋ねします。たいへん長い名前なので、以下、「避難路沿い建築物条例」と略して質問させていただきます。
 昨年6月に条例化された「景観支障防止条例」は、いわゆる「廃屋対策」への県民からの要望に応えるべく提案されたものでした。私は一般質問で、空家・廃屋対策のモノサシが景観というのはいかがなものか、防災や安全というのが当たり前ではないかと質問しました。また、対策の実効性や、権利侵害になりはしないかという点についても議論をさせていただいました。
 議会各方面から出された意見にもとづき、今回の「避難路沿い建築物条例」案の提案となりました。私は、昨年の質問の上に立ち、今回の条例案について、2つの点で質問をさせていただきます。

(1)条例案による廃屋対策の実効性
 まず第一点は条例案による廃屋対策の実効性についてです。昨年の「景観支障防止条例」加えて今回の「避難路沿い建築物条例」、この2つの県条例が県民の要望にこたえた実効あるものとして機能するかどうかが問われているのではないでしょうか。今回の条例案の実効性についてどう考えておられますか。

(2)避難路沿い建築物の耐震化・撤去促進事業が必要ではないか
 2点目に、前回もずいぶん強調させていただいたのですが、対象物件に対する支援制度についてです。今回の条例案でうたわれた、建築物所有者の義務や責任を明確化するのは一つの方策だと考えますが、条例で義務付ける・命令するというだけでなく、避難路の確保は公的かつ喫緊の課題であることから、避難路沿い建築物の耐震化・撤去を促進する支援事業こそが必要ではないかという点についてお答え願います。
 以上2点を県土整備部長よりご答弁願います。


《答弁》 県土整備部長
 本条例は、地震時の津波からの避難路を確保し、人々の命を守る対策の一つとして、避難路沿いの建築物等に一定の制限を設け、勧告や命令等の措置を定めたものでございます。
 所有者等が命令を履行しない場合で、避難路に及ぼす影響が重大なものには、行政代執行法を適用し、対処することとなります。
 県といたしましては、今後市町村と連携し、本条例を効果的に運用することにより、避難路沿いの建築物等の耐震化と共に、議員ご指摘の廃屋対策についてもこれまで以上に進んでいくものと考えております。
 また、耐震化につきましては、現行の補助制度を活用していくとともに、撤去につきましては、公共の利益に反する場合、景観支障防止条例や建築基準法の規制において厳格に対応してまいりたいと考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 「廃屋対策」としての実効性ですが、むずかしい問題です。昨年の景観支障防止条例と合わせて、なかなか抜けない伝家の宝刀を2本腰に差しただけとならないよう、市町村とともに、住民からの具体的な相談にしっかり乗っていただきたいと思います。
 また、補助制度、支援制度の問題ですが、なかなかすぐにはいい返事が返ってきません。しかし、この津波浸水地域をどうするか、避難路どうするかという問題は、今年から来年にかけての大きな行政課題となってきます。しっかりと県庁全体で議論し、市町村の意見もよく聞いて、今後の事業化・予算化にむけて、しっかりとご検討いただけるよう要望させていただきます。


4.県内における軍事訓練計画
(1)県立自然公園煙樹ヶ浜での自衛隊軍事訓練計画について
・水際地雷訓練の全貌について
《質問》松坂英樹 県議
 最後に4番目の柱、県内における軍事訓練計画についての質問に移らせていただきます。まずは県立自然公園煙樹ヶ浜での自衛隊軍事訓練計画についてです。
 これまで美浜町にあった陸上自衛隊施設部隊が、突如「第304水際障害中隊」に改編され、水際地雷敷設訓練の計画が打診されたのは9年前のことでした。私ども日本共産党県議団は、2003年12月議会に藤井健太郎議員が当時の木村知事に、そして私が2009年6月議会で仁坂知事に対して、県立自然公園での軍事訓練はすべきではないと迫ってまいりました。
 この水際地雷敷設訓練については、3月に漁協の同意が取り付けられたことにより、このほど議会開会中の19日に、国に対して訓練に同意をしたとのことでありますが、このことについて私は強く抗議をするものであります。
 県民の憩いの場である県立自然公園煙樹ヶ浜で、どのような訓練が、どのような規模で実際に行われようとしているのか。まず危機管理監に説明を求めます。


《答弁》 危機管理監
 煙樹ヶ浜で実施を予定している水際障害訓練は、海上部分30日間を含む約40日間の訓練を、今年7月から来年2月にかけ6回に分けて行い、防災航行訓練は8月、12月、3月にそれぞれ2日間実施する計画であると聞いています。水際障害訓練の内容は、煙樹ヶ浜の陸上部分で模擬水際地雷の敷設機への装填、水際地雷敷設装置すなわち水陸両用車への積載、その前面水域において、水陸両用車による模擬水際地雷を敷設するもので、敷設する海域は、幅約2km、奥行き約1kmの範囲と聞いています。
 来年度以降の訓練は、他の部隊も参加し、海上部分60日間を含む約80日間の訓練を実施する計画であると聞いております。


《再質問》松坂英樹 県議
 説明をいただきましたが、確認のため、当初9年前に説明された訓練内容や模擬訓練からの変更点はあるのか、あるとすればどういう点なのか再度答弁を願います。


《再答弁》 危機管理監
 平成15年度末に和歌山駐屯地施設隊から水際障害中隊に組織改編され、その時の水際障害訓練計画では、ヘリコプターの使用や煙樹ヶ浜キャンプ場での野営の計画はありましたが、今回はヘリコプターの使用や野営の計画はないと聞いております。基本的には平成18年度に実施しました模擬訓練以上の訓練はないものと聞いています。


・県立自然公園での軍事訓練実施例
《質問》松坂英樹 県議
 ご説明いただきましたが、当初予定されていたキャンプ場での野営や訓練確認用ヘリコプターの使用がなくなったのは、県民からの批判の声が一定の制約を加えたものだと私は考えます。
 しかし、それでもこんな軍事訓練が、基地や演習場ではなくて県立自然公園内で行われるというような例は、他県にあるのか、ないのか。この点はいかがですか。危機管理監にご答弁願います。


《答弁》 危機管理監
 自衛隊による水際障害訓練は、今年度から日本全国で美浜町と北海道天塩町の2箇所で行われることになります。天塩町の訓練場の方は自然公園内ではありません。


・県立自然公園での軍事訓練への姿勢
《質問》松坂英樹 県議
 以上、危機管理監から答弁いただいた点はいずれも重要なものです。
 まず計画の変更点ですが、これらはいずれも住民からも不安と批判の声の大きかった問題です。キャンプ場での野営、これは観光面から大きなマイナスだという指摘がありました。また、ヘリコプターの使用ですが、当初は訓練状況確認のためにヘリコプターを使用することがあるとの説明でしたが、北海道の天塩では、水陸両用車だけでなくヘリコプターによる水際地雷敷設訓練が行われているんです。先々で、なし崩し的に訓練拡大とならないか心配されていたところです。また、模擬訓練以上のことはしないというのも、町との約束合意事項になっている点です。これらの点は、住民の世論が、一定計画に歯止めをかけた面があると言えるでしょう。
 しかし、いずれにせよ、今、答弁のありました訓練が実際にはじまろうとしています。7月にはじまって、8月は趣旨・中身は違いますが防災訓練で水陸両用車が訓練をします。9月に2回、10月に1回訓練、11月がなくて、12月は防災訓練、1月に1回、2月に1回の訓練、3月は防災訓練という日程表です。来年度は、これに加えて他県の部隊がきて、別に一か月ほどのまとまった訓練を行うわけですから、結果として、ほぼ毎月のように訓練がおこなわれる。まるで自分の庭のように煙樹ケ浜を使うという状態になるのではないでしょうか。
 そもそも陸上自衛隊の軍事作戦訓練、実弾や模擬弾を使うような訓練は、基地や演習場の中でやってきたものです。一般の土地で、そこを占用して行う訓練は基本的にないんです。唯一例外が水際地雷訓練なんです。北海道の天塩は自然公園ではありません。自然公園区域かかっている演習場もありますが、そこは一般の住民は入れないところでやっているわけです。
 今度の訓練は、この和歌山県で、全国に例のない、一般の住民や観光客が自由に出入りできる自然公園を訓練地にしてしまう、全国に今まで例のないことをやろうとしているわけです。
 この先、実際に煙樹ヶ浜で訓練が始まれば、自然公園での軍事訓練に対する批判の世論が、より高まってくるでしょう。
 私は、貴重な自然環境を有し、県民・観光客の憩いの場であり、県立自然公園の中でも特に貴重な第一種県立自然公園である煙樹ヶ浜に、このような軍事訓練はなじまないと訴えてきました。
 このような計画に県は同意すべきではなかったと考えますが、知事の答弁を求めます。


《答弁》 仁坂知事
 煙樹ケ浜のすばらしい海岸美は、観光客や住民にとっては憩いの場でありまして、本県にとって重要な観光資源であると認識しております。
 一方、防衛施策は、国民にとって大変大事な国の仕事でありまして、地方自治体も協力するのが当たり前だと思います。
 美浜町で水際障害訓練ができなくなった場合を考えますと、美浜町に自衛隊が駐屯する意義がかなり少なくなって参ります。自衛隊がそういうところを求めて県外に移転してしまう恐れもありまして、そうなれば和歌山県の貴重な人口の流出につながってしまうと私は思います。
 また、昨年3月の東日本大震災の時には、全国の自衛隊による大規模な被災地救助活動がなされ、さらに、9月の紀伊半島大水害の際には、地元和歌山駐屯地の部隊が、いち早く被災地に入り、救援活動を実施しました。地元の自衛隊の存在は、まことに心強いものとみなさんが実感したと思います。地元に自衛隊がいてくれることが貴重なことだと思います。
 一方、水際障害訓練は、住民の生活や漁業、観光等への影響も考えられることから、これまでにも、防衛局に対して、地元と十分協議して下さいというようなことをお願いして参りました。その結果、水産業とも合意できたし、また時期はですね、キャンプの時期は避けて行うとなったと聞いております。
 自然公園でございますけれども、自然公園を破壊されるような事があっては、自然を守るという点で悪影響ができたらもちろんいかんわけでございますが。
 自然公園というよりも、私は全国で昆虫採集をやっておりますので、自衛隊の基地が国立公園の中にあるというような所があって、そこに立ち入ってですね、採集をさせて頂いたり、楽しませて頂いたり、そういうことは日曜日ですが、ございます。目的とよく整合性にですね、考えてやっていくべきだと考えております。


《要望》松坂英樹 県議
 知事の答弁をいただいたわけですが、3年前の進めてゆくという答弁を基本的に踏襲したものでした。この延長線上で、自衛隊の計画に県はゴーサインを出してしまったわけですが、私はこの計画合意に強く抗議をするものです。
 しかし、県民・住民の運動はこれからだと思っています。毎年、毎年、新しい年度の同意を更新する手順が続くでしょう。「煙樹ヶ浜での軍事訓練やめよ」の世論を広げてゆく、声を上げ続けてゆくことを、改めて表明するものです。


(2)米軍オスプレイ配備による低空飛行訓練計画について
《質問》松坂英樹 県議
 最後に、米軍オスプレイ配備による低空飛行訓練について知事に伺います。事故多発の欠陥機と指摘される米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの低空飛行訓練計画が明らかになりました。全国の飛行ルートが公表され、その中の「オレンジ」ルートは四国から紀伊半島にかけてのルートを使用するものです。
 このオスプレイは、着陸時にはヘリとして、水平飛行時はプロペラ機として飛行する最新鋭機ですが、開発段階から数多くの事故をおこしているばかりか、すでに運用段階だというのに、この4月にはモロッコで墜落し4人が死傷、6月13日にも米フロリダ州で墜落事故が報道されました。わずか2ヶ月の間に2回も墜落事故をおこしている異常な欠陥機です。
 オスプレイは、飛行中にエンジンが止まった時に機体の降下による空気の流れでプロペラを回して非常着陸する「オートローテーション機能」(自動回転能力)というのがありません。エンジンが止まればコントロールできずにそのまま墜落するという代物で、日本の航空法ではこの「オートローテーション機能」のない航空機は飛行自体が禁止されているのです。それをアメリカ軍用機だから日米地位協定で適用外だ、飛んでかまわないというのです。
 これまでも県内の山間部を飛ぶ米軍低空飛行訓練には県民から抗議の声が上がってきました、これをやめるどころか、この危険なオスプレイが危険な低空飛行訓練をする、これは絶対に許すことはできません。沖縄県も「県として反対」との姿勢です。和歌山県としても抗議・拒否すべきだと考えます、県はどう対応しようとしているのか。知事のご答弁を願います。


《答弁》 仁坂知事
 オスプレイ配備に向け米国が作成した環境審査報告書によりますと、低空飛行訓練のため日本の国内各地に6ルートが設定され、和歌山県が含まれるということが判明しました。
 これまでも、米軍機の低空飛行による騒音被害の報告に対しまして、防衛省を通じて米軍に訓練の中止を強く申し入れて参りました。
 今回発表されたオスプレイによる低空飛行訓練は、このような問題も当然あります。また、本県の上空を飛ぶ必然性が説明されておりません。従って、現在の案には私は反対であります。


《要望》松坂英樹 県議
 知事から「訓練には反対だ」との答弁をいただきました。この危険きわまりないオスプレイ配備と低空飛行訓練には、国内関係各自治体や議会から反対の声が次々に上がっています。県としても、関係他府県と連携し、国並びに在日米軍に対してキッパリとした態度で臨んでいただくよう、強く要望いたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。


    仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹県議=6月25日

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2012年6月県議会、松坂英樹 一般質問=6月25日
2012年6月県議会、松坂英樹 一般質問=6月25日