2012年6月県議会
奥村規子一般質問 概要記録
議会中継録画
2012年6月21日
1.消費税増税問題について
(1)国に対して、県経済と県民の暮らしに大きな影響を
もたらす消費税増税の中止を求めることについて
2.障害者の就労支援の取り組みについて
(1)障害者総合支援法案をどのように受け止めるか
(2)障害者の民間事業所への雇用促進の取り組み
(3)障害者の就労の現状と切れ目のない支援体制の構築
(4)市町村格差と県の役割
(5)工賃向上の取り組み
3.環境問題について
(1)共同火力発電所1号機のリプレース計画について
・県の環境影響評価審査会の答申と和歌山市からの意見への対応
・住民からの不安や要望についての受け止め
・大気汚染への改善の取り組み
・設置場所が民家に近づくことについて
(2)第3次和歌山県廃棄物処理計画について
・新たな産廃最終処分場の建設は必要か
・どこからの廃棄物の排出を受け入れるのか
1.消費税増税問題について
(1)国に対して、県経済と県民の暮らしに大きな影響をもたらす消費税増税の中止を求めることについて
《質問》奥村規子 県議
議長のお許しを得ましたので通告に従って3項目にわたって一般質問をさせていただきます。
1項目目は消費税増税問題についてであります。
野田内閣は民主、自民、公明3党の談合で、国民の6〜7割が反対している増税を何が何でも押し通そうとしています。こういった談合で決めるやり方は議会制民主主義を蹂躙するもので断じて許せるものではありません。また、民主党政権は「任期中は消費税を増税しない」という2009年の衆議院選挙の公約を投げ捨て、さらに社会保障の公約も根こそぎ、放り出そうとしていることに対し強く抗議することを最初に表明して知事にお伺いいたします。
質問は1点です。国に対して、県経済と県民のくらしに大きな影響をもたらす消費税増税の中止を求めることについてです。
まず、消費税を増税すれば、日本経済はどうなるかということです。
1997年、消費税を3%から5%に引き上げ、医療費負担増なども重なって9兆円の負担増が強行されました。このことで、せっかく上向きかけていた景気がいっきに冷え込みました。増え続けていた勤労者世帯の可処分所得、消費支出はこの年をさかいに下がりはじめ、現在までそれが続いています。
翌年の98年は経済成長率が−2%となり、失業者が4%を超えました。この年に自殺者が3万人をこえ、ここから14年連続で3万人を超えるという深刻な事態が続いています。
県内の経済はどうでしょうか。県内総生産額は97年から減少し始め、以後連続して減っていきます。経済成長率は国より1年遅れて99年に−2%になっています。製造品出荷額は1995年以降連続増加してきましたが、1998年から下降しました。1997年の9兆円の負担増が県経済にもおおきな打撃を与えたのです。
一人あたりの県民所得も97年には260万1千円ありましたが、年々減少しました。2009年には239万4千円となり、この12年間では、約21万円も平均所得が減っています。消費も長期に落ちこんでいます。
この時に、さらに消費税の大増税、そして介護保険料の値上げや年金改悪なども含めれば20兆円ものすさまじい負担増をおしつけようというのですから、これでは家計の底がぬけ、商売はとてもやっていけない、そういう事態になるのではないでしょうか。
もう一つ商店や中小企業の方にお聞きすると、消費税は売値に転嫁できず、身銭を切って納めなくてはならないという問題があります。
全国商工会連合会会長は「5%分もの負担がしわ寄せされれば、中小企業の利益は吹き飛ぶ。廃業が増え、国や地方の税収も逆に減るのではないか」と述べています。
私たちも和歌山市内の商店街で、商店のみなさんがどう心配しているのか、聞いてきました。
「10%になれば商売を続けられない」「廃業せざるを得ない」というのが、おおげさでなく本当に切実な多くの商売人さんの声です。ものが売れなくなるとともに、さらに身銭をきらなければならないのです。
和歌山県は小規模企業が90%を超える、全国一小規模企業の割合が高い県です。小規模企業ほど、消費税増税は商売や営業を直撃するわけで、県の経済にとっても消費税増税が甚大な影響を与えると考えますが、いかがでしょうか。消費税増税、また20兆円の負担増による県内経済への影響をぜひお考えいただきたいと思います。
また病院への影響も深刻です。全国自治体病院協議会が会員病院を対象に調査したところ、2010年度に負担した消費税(損税)は1病院あたり平均1億2414万円に上ったことがわかりました。消費税が10%になればその倍の負担になってしまいます。
私が聞いたある病院では100床あたり消費税分、年2000万円納めて、赤字ぎりぎりの経営状況ということで、10%になれば全く経営が成り立たないということでした。
消費税増税は病院存続の危機的な状況をひきおこし、地域医療の崩壊につながります。
このようにくらしも経済も破壊し財政危機をますます深刻化する消費税増税の中止を求めるべきではないでしょうか。知事お答え下さい。
《答弁》 仁坂知事
社会保障制度の機能を維持し、制度の持続可能性を確保するための改革が必要でありまして、そのためには、いわば、最後の財源である消費税を充てることは理解できるということを2月議会で申し上げました。
消費税は、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点や、安定的な財源であることから、社会保障制度を担う財源として相応しいと思います。
現在、国政の場において、議論がなされておりますけれども、消費税の増税については、最後の財源であるからこそ、国民の十分な理解を得つつ、進めていくことが大切であると考えています。
なお、増税がなされる場合には、経済や暮らしへの影響を踏まえ、経済状況の好転のための施策、低所得者対策、適正な価格転嫁への取組等の対策が適正になされるべきであると考えています。
《再質問》奥村規子 県議
知事の考え方をお聞きしました。
県内の商店・中小業者の方の声、病院の方の切実な危機感などを聞き、これは本当にたいへんなことになる。また県経済にも大きな打撃になる。こうした点で実態をよくつかんでもらいたい。その上で知事に消費税についての認識をもう一度お聞きします。
《再答弁》 仁坂知事
県民の暮らしとか制度についての妥当性とか、別に答弁のときだけ考えているわけではありません。常にそういうことを調べながら、このための調査だけではないですが、今どういうム状況かということを考えながら色々な行動をしております。そう答えたらいいんでありましょうか。
《再々質問》奥村規子 県議
知事は、社会保障を維持させるための最後の財源としての消費税とおっしゃられましたが、県民のくらしがこれからどうなっていくのかという点で、まだまだ明らかになっていないと思います。
これから2015年度までに予定されている負担増の一覧を申し上げると、2014年4月には3%引き上げ、その以後15年10月には2%引き上げ、年金減額が12年6月に0.3%、12月0.9%とすっと減額が続きます。こども手当の減額は12年2月から行われています。年少扶養控除廃止、復興増税、年金保険料引き上げ、そして先日は介護保険料が引き上げられた。そういった負担がどんどん増えていく大変な状況のときに、消費税増税が決してくらしを良くしていくものではないと思います。
最後におたずねしますが、こういった消費税でくらしが良くなると言えるでしょうか。
《再々答弁》 仁坂知事
消費税の増税というのは、増税でございますから、必ず景気の足を引っ張るという点は否定できないというふうに思います。
しかし、財政赤字をこのままでずっと垂れ流していくと、いつか財政破綻がおこって、国民あるいは議員が今おっしゃったような色々な方々へも影響が及び、暮らしを破壊してしまうということもまた懸念されます。同時に、だからといって大幅に福祉を切り捨てるわけにもいきません。
現在、そういう意味で、政府では、デフレ脱却とか、経済の活性化とか、財政の健全化による国際社会の信頼の碓保に加えて、経済や暮らしへの影響が生じないように、低所得者への配慮とか、円滑かつ適正な価格転嫁とか、様々な政策をこれから検討していく、一緒にやっていくと言っています。
そういうところを注視しながら、心配しながら、見守ってまいりたいと考えております。
《要望》奥村規子 県議
その点はしっかりと見ていただきたい。
知事はいつも実態をきちっと把握して政策を立てると言われていますので、3%から5%になったときにも中小企業のみなさんがなかなか価格に転嫁できない実態や、今の状況を掴んで適切な方向で考えていただきたいと思います。
国に向かってはなかなか中止が言えないということでした。国の財政の行き詰まりの原因が何なのか、十分県民のみなさんも分からないと思うのです。「今までの借金が膨らんできて財政が大変だから、増税はいやだけど仕方ないな」という思いの方も実際いらっしゃると思います。今の経済の行き詰まりがなぜ起こったかというあたりをしっかりと踏まえ、財政再建は国民や県民に負担がかからない方向で今後考えていただきたいと思います。
こういう状況のなかでは本当に耐えられなくなり、命まで危険な状況に追い込まれていくのではないかと思います。
2.障害者の就労支援の取り組みについて
(1)障害者総合支援法案をどのように受け止めるか
《質問》奥村規子 県議
次に2項目の障害者の就労支援の取り組みについて5点お聞きします。
1点目は障害者総合支援法案をどのように受け止めているかについて、知事にお伺いします。
障害者の皆さん、71人が全国14の地方裁判所に尊厳と生きる権利を奪われたとして違憲訴訟を起こすなど自立支援法廃止を求める国民的なたたかいが広がる中、民主党政権は、2010年、原告・弁護団と同法廃止と新法制定を約束する「基本合意」を交わし、訴訟は和解・終結しました。自立支援法が障害者の尊厳を深く傷つけたことを政府自身が認め、「反省」を表明したことは画期的なことです。
県議会でも平成20年の12月議会において障害者自立支援法の抜本的な見直しを求める意見書が全会一致で採択されています。
しかし民主党政権は廃止の約束を反故にして自立支援法を実質的に継続する「障害者総合支援法案」を民主党政権が今国会に提出しています。民主・自民・公明の3党が修正合意した改定案は障害者とその家族が願う新法からあまりにもかけ離れたものとなっていると思われます。障害を「自己責任」として、生きるために不可欠な支援に原則1割の「応益負担」を強いる過酷な仕組みは温存されました。利用の抑制につながる「障害程度区分」も存続します。障害者の範囲に「難病」を加えましたがすべての難病が対象にはならず、新たな差別が生まれるおそれがあります。
障害者の声を踏まえた新しい総合福祉法案が国会に出しなおされることを強く願うものですが知事は今回の政府の対応や障害者総合支援法案をどのように受け止めていますか。お答え下さい。
《答弁》 仁坂知事
障害者福祉制度につきましては、障害のある方の立場に立ったサービスが安定して提供される制度の構築が重要であります。
平成23年8月に国になされた制度の見直しに関する提言は、障害のある方の思いが込められたものと承知しています。
これまでも、利用者負担について応能負担であることが法律上明記されるなど、段階的に制度見直しが進められており、今回の障害者総合支援法についてもその一環であると認識しています。
法目的も変わりましたし、最後に検討規定3年間というのも置かれています。県としては、今後とも国の動きを注視し、障害のある方や事業者の方の意見を十分聞きながら、いろいろと考えてまいりたい。
《再質問》奥村規子 県議
もう一度知事におうかがいします。
この間、障害者の団体の皆さんが「私たちの声を聞いてほしい」と何度も基本合意と骨格提言をつくりあげてきた経過のなかで、今回の国会での審議はたった3時間であったと聞いています。
和歌山の障害のある皆さんも、そういった思いで新法を待ち望んでいたと思うその気持ちに対して、知事はどのようにお考えでしょうか。
《再答弁》 仁坂知事
障害のある方に対する配慮を、県政として怠ってはいけないということは、私の県政における基本原則の一つです。
そういう意味でも、障害のある方と頻繁に打合せをさせていただいております。
今回の法律改正は、自立支援ということを自己目的としている法律はいかがなものかという点では、法目的も変わったし、その精神も活かされています。
ただ、段階的でありますので、いろんなことはさらに検討して、3年後の見直しにかけようという法律でありました。
そういう意味で、気持ちに応え、かつ一歩前進であったと考えています。
(2)障害者の民間事業所への雇用促進の取り組み
《質問》奥村規子 県議
次に紀の国障害者プランでは今後の主な課題のひとつに就労支援の抜本的強化があげられていることから、2点目は障害者の民間事業所への雇用促進の取り組みについて商工観光労働部長にお尋ねします。
どのような障害があろうと「ゆたかで幸せな人生を送りたい、はたらきたい。そして、社会に役立ちたい」と思っています。長い入院生活を送っていたAさんは働くところが出来、笑顔が戻ってきました。わずかな収入ですがそれでも自由にものが買えることにとても喜びを感じています。
現憲法の下では、だれもが希望と条件、体力にあわせて働く権利があります。私は働く意思のあるすべての人に、所得保障を伴う職業訓練の確保が必要だとかんがえます。
政府は15日、民間企業に義務付けられている障害者の雇用率を現行の1.8%から2%に引きあげる法令改正を閣議決定しました。国や自治体も現行の2.1%から2.3%に、都道府県の教育委員会も2.0%から2.2%に来年度から引き上げられます。
障害者の一般雇用の定着と一般雇用に就くことが難しい人々にとっても雇用が広がるように県のいっそうの施策をすすめていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
《答弁》 商工観光労働部長
障害者の民間事業所における雇用促進につきましては、県としても労働局と連携して県内事業主への雇用の勧奨や県民への啓発に取り組んでいるところです。
また、就職に必要な知識・技能を習得するための職業訓練の実施や、障害者就業・生活支援センターを通じて就労支援者を養成し、民間事業所に派遣すること等により、障害者の就労及び職場への定着を支援しております。
今後とも、労働局と連携を密にして、取組を進めてまいります。
(3)障害者の就労の現状と切れ目のない支援体制の構築
《質問》奥村規子
次に以下3点にわたって、福祉保健部長にお聞きします。
特別支援学校高等部卒業者の進路状況を聞かせていただき、ほとんどの卒業生が進学や就職、障害者自立支援法による福祉サービスの就労移行支援や就労継続支援事業所を利用し、一般就労を目指す生徒が増えてきているということです。そこで3点目の障害者の就労の現状と切れ目のない支援体制の構築についておたずねします。
《答弁》 福祉保健部長
県では、障害のある方がその有する能力や適性に応じて自立した社会生活ができるよう、一般就労に向けた支援や福祉的就労など、障害のある方の就労ニーズに応じた支援体制の整備を推進しており、福祉的就労はもちろんのこと、一般就労への移行者数も着実に増加しております。
また、特別支援学校卒業生や一般就労していたが離職した方の再チャレンジなどニーズも様々であることから、各障害保健福祉圏域に自立支援協議会を設置し、雇用・福祉・教育等の各分野の関係機関が十分連携を図りながら、必要な支援を行う体制整備を推進しております。
(4)市町村格差と県の役割
《質問》奥村規子 県議
4点目は障害の種別にかかわらず県下どこに住んでいても一定の水準の支援が受けられることが重要です。
市町村毎の支援に格差が生じないようにするための県の役割はいかがですか。
《答弁》 福祉保健部長
県では、市町村間の連携を図るとともに広域的な観点から施策を進めるため、各障害保健福祉圏域ごとの課題解決を図る場である自立支援協議会に助言・指導を行うとともに、地域における障害のある方の生活を支援するため、各圏域における需要を的確に把握し、サービスの計画的な整備を進めております。
(5)工賃向上の取り組み
《質問》奥村規子 県議
最後は5点目 障害者や家族にとって、経済的に自立できることは喜びです。保護者の皆さんからよくお聞きします。「この子を残して死ねない」「一日でも子どもより長生きしたい」という痛切な声です。
どのような障害があっても自立して生きることが出来るためにも、工賃向上の取り組みは重要です。到達状況はいかがですか。
《答弁》 福祉保健部長
福祉施設における工賃向上の取り組みにつきましては、工賃倍増5箇年計画に基づき、官民一体となった工賃引き上げに資する取り組みを進めております。
具体的には、販路開拓・受注促進のため、障害福祉サービス事業所に対する専門家による指導や研修会で新商品の開発など成功事例の紹介を行ったり、即売会の開催などの取組みを進めており、平成18年度の平均月額工賃12,045円から年々工賃水準は向上し、平成22年度の平均月額工賃は14,414円で全国12位の水準となっております。
《要望》奥村規子 県議
紀の国プランでは就労支援の抜本的強化について「働くこと」は、それを通じて社会にかかわることが出来るとともに、生活の基盤となる重要な分野です。障害の状態に応じ、一般就労における職場環境等の整備や福祉的就労における工賃水準の向上など、さまざまな支援が求められているとかかれています。私は発達の状況や障害の状況によりきめ細かな個々人にあった環境を整えてゆくことが大事だと思います。
全国福祉保育労働組合は2007年に日本の障害雇用政策に関するILO159号条約違反に関する国際労働機関規約24条にもとづく申し立て書を提出しています。
ILO勧告は「一般雇用に就くことが可能でない」障害者のために「保護雇用」を確立するように政府に勧告しています。実際に大阪府の箕面市は障害者の社会的雇用モデル事業の実施を国に要望しています。「社会的雇用」制度とは一般就労には至らないが「働きたい思い」を持った障害者が、たとえ重度の障害があっても自らの能力・適性にあわせて働くことが出来、かつ自立して生活するに足る賃金を受け取ることが出来るようにする制度をいい、滋賀県や箕面市では、既にこの「社会的雇用」制度を実施しているということです。
ぜひ県においても今後研究課題としていただきたいと思います。要望しておきます。
3.環境問題について
(1)共同火力発電所1号機のリプレース計画について
・県の環境影響評価審査会の答申と和歌山市からの意見への対応
・住民からの不安や要望についての受け止め
・大気汚染への改善の取り組み
・設置場所が民家に近づくことについて
《質問》奥村規子 県議
3項目目の環境問題についてです。
まず住友金属構内にある共同火力発電所1号機のリプレース計画にかかわってお尋ねします。
共同火力1号機が運転開始48年経過し、更新が必要なこと、また住金和歌山製鉄所で新第一高炉が操業され、平成24年度に新第二高炉が操業を予定され、増加する高炉ガスを活用する発電所ということで、14.7万kWの発電所が建設されるものです。この新1号機ができれば、現在の3号機との2基を稼動させ、2号機は予備に、1号機は廃止するという計画です。
この新1号機建設をめぐって、近隣住民の方から不安の声があがっています。
もともと近隣地域は、住友金属による環境悪化があり、公害工場の沖出しの約束が反故にされてLNG火力発電所用地とされるなどの問題があり、また最近は新高炉の稼動などにより生産量が増大し、「粉塵が増えた」「臭気がひどい」などの苦情がたえない状況があります。
こうしたなかでの新1号機建設であり、住民の懸念が強まるのも当然です。
住民の方が心配しているのは、1つは新1号機が現施設より100メートル民家よりに設置されるということ、またその煙突が85メートルと現在のものより35メートルも低く大気汚染がひどくなるのではないか、現在の1、2、3号機を稼働させながら新1号機を建設することで、より粉塵や振動、騒音がひどくなるのではないか、ということなどです。
建設にあたって県は、共同火力の環境影響評価に対し、県の環境影響評価審査会に諮問し、答申を受けて県としての意見を述べました。
審査会の答申はどういうものだったか。
○ 新1号機の設置位置について、既設1号機の跡地や海側の土地についても候補地とした中から現計画地に決定した検討の経緯を生活環境の保全の観点から検討した内容も含め、環境影響評価書に記載すること。
○ 大気質については、大気監視局における二酸化硫黄濃度は環境基準を達成されているものの、気象条件によって高レベルになるときが認められるので、より一層の環境負荷の低減に努めること。
○ 低周波音については、1/3オクターブバンド別の低周波音レベルの予測値について記載すること。
○ 海生生物への影響を予測するためのデータ、知見が十分でないため、「影響は極めて小さい」と評価することは適切ではない。
などが指摘され、その他として、
○ 周辺の生活環境については、現状において環境基準は概ね達成されているが、大気質の調査結果や風向・風速のデータ等によれば、住友金属工業株式会社和歌山製鉄所を起因とする決して低レベルでない汚染が認められることから、今後も環境負荷の低減に取り組んでいくことが必要。
などとしています。
ところがこの答申を受けたうえで、県が共同火力に対して環境影響評価準備書に対する環境保全の見地からの意見として述べたのは、設備の色彩設計の検討、景観への影響評価を記載すること、だけでした。
和歌山市からは「新設備が民家に近くなることに対し、住民の不安があることから、十分な環境保全対策を講じ、これを確実に実施し、周辺への環境影響を現状と同等以下とするよう要望します」という意見が出されましたが、これについても県から事業者への意見には反映されていません。
・ 県が諮問した審査会からの答申の内容や和歌山市からの意見を反映しなかったのはなぜなのか。審査会の意見にはどのように対応したのか。特に、大気質の汚染の低減をはかること、低周波レベルの予測、海生生物調査について、お答えください。
・ また住民からの不安や要望が県にも届いていると思うが、どう受け止めたのか。
お答えください。
また審査会が指摘したように、大気質などではけっして低レベルでない汚染があります。
現況の大気汚染物質については、一般環境大気測定局と環境保全協定にもとづく周辺の調査地点4箇所で、二酸化硫黄の短期的評価で基準を上回る地点があり、また浮遊粒子状物質では平成21年度ではすべての地点で短期的評価が基準に適合していません。
共同火力の新1号機は現1号機に比べれば硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんのいずれも排出量は低減されるということですが、それで煙突が低くてもよい、とするのでなく、最大限汚染物質を低減するという姿勢で、煙突もさらに高いものを要請すべきではないでしょうか。
・ 審査会が指摘したように、低レベルでない大気汚染があり、その改善にむけてどうとりくもうとしているのか。
住金との環境保全協定、覚書には、平成25年4月以降で二酸化窒素総排出量を476?N/h以下にすること、和歌山共同火力の排煙脱硝装置をそれまでに設置するものとする、と確認されていますが、これはどうなっていますか。
・ 設置場所が民家に近づいたことで、工事中や供用開始後の振動、騒音も大きくなることが心配されます。そうした問題については、どう対応するのか。お答えください。
《答弁》 環境生活部長
審査会の答申内容や和歌山市からの意見につきましては、修文等により事前に評価書に反映したもの及び環境影響評価対象外のものなどは知事意見とはしておりませんが、知事意見に反映すべきものは、適正に反映していると考えております。
個別にご質問のありました大気質の汚染の低減については、隣接事業所を起因とするものであることから、また、水生生物調査の意見については、条例に基づいて環境保全措置を求めるものではないということから、環境影響評価対象外という判断で知事意見としておりません。
また、低周波レベルの意見につきましては、既に修文され評価書に反映させていることから知事意見としておりません。
和歌山共同発電所新1号機のリプレースに関して住民から寄せられました意見等につきましては、その影響評価手続きの中で、審査会にも諮り、科学的な見地から適切な判断をいただいたと考えております。
和歌山共同発電所新1号機リプレースによる大気質の変化に関しましては、排ガス脱硝装置等の設置や燃料の変更等により発電所全体で、汚染物質の排出量が低減される計画となっております。
なお、住友金属工業との環境保全協定等に記述された二酸化窒素総排出量の削減や和歌山共同発電所への排煙脱硝装置の設置につきましては、関西電力和歌山発電所の稼働を前提としたものであり、今後の推移を注視して参ります。
最後に、煙突が低くなり民家に近くなることなどによる環境影響につきましては、審査会の答申には盛り込まれておりませんが、科学的な見地から適切な判断をいただいたと考えております。
《要望》奥村規子 県議
共同火力発電所新1号機に関しては、この地域の環境改善については、県・市・住友金属で、関連企業も含んで、環境保全協定を結んでいるわけです。それでも大気汚染などの汚染がある。協定の範囲内だから、とか現状より悪くならないから、ということでなく、より環境を改善するよう、とりくみを指導するべきだと思います。
平成25年4月までの排煙脱硝装置の問題も関西電力和歌山発電所の稼働を前提としたもの、ということでしたが、たとえ和歌山発電所がなくても可能なかぎり二酸化窒素排出を抑えるために設置すべきではないでしょうか。また煙突の高さも汚染物質の排出が少ないから低くてよい、というのではなくて、より環境改善をはかるよう、設定すべきではないでしょうか。こういう立場で臨んでいただきたい、ということを求めておきます。
またこれから現3基が稼働しているうえに、新1号機の工事が始まるわけですから、環境影響評価審査会の答申でも指摘されていますが、環境の状況を把握し、必要に応じて適切な環境保全措置を講ずることが必要です。ぜひ周辺住民のみなさんからの苦情や声を受け止め、事業者に反映させていただくよう、つよく要望します。
(2)第3次和歌山県廃棄物処理計画について
・新たな産廃最終処分場の建設は必要か
・どこからの廃棄物の排出を受け入れるのか
《質問》奥村規子 県議
次に、第3次和歌山県廃棄物処理計画にかかわって、産業廃棄物最終処分場計画について、お尋ねします。
国は2000年に循環型社会形成推進基本法をはじめとするリサイクル関連法を整備するとともに廃棄物処理法を改正し、一般廃棄物と産業廃棄物を併せた処理計画の策定を都道府県に義務づけました。和歌山県はこれに基づき、2002年に第1次和歌山県廃棄物処理計画を策定し、2006年には第2次計画に引き継ぎ、これらの計画の実施、到達状況をふまえ2009年度の実態調査をもとに2011年から2015年度までの目標を定めた第3次計画を策定しました。
産業廃棄物の最終処分量についてみますと、2009年度は15.9万トンでした。その内訳は、12.2万トンを大阪湾フェニックスに、県内処分は2.0万トン、県外処分は1.7トンとなっています。
処理計画はこの最終処分量の目標を2015年度には10.0万トンに削減する計画になっています。現状からおよそ3分の2に減らしていく。また最終処分場は、大阪湾フェニックスは2027年度まで延伸されていること、紀南地域の産廃については、公共関与の最終処分場整備事業を進める、とされています。また和歌山県越境移動に関する指導要綱に基づき「産業廃棄物を持ち込ませない。なるべく持ち出さない」の方針で指導するとしています。
この計画でいけば、現在フェニックスで処分している量より、県内で発生する最終処分量の総量の方が少なくなるわけです。また現在フェニックスを除き県外で最終処分しているのは1.7万トンです。この量も削減し、紀南環境整備公社での最終処分が計画されれば、それ以外に、御坊市や和歌山市で計画されているような、新たな最終処分場は必要ないと考えますが、いかがでしょうか。
また御坊市の管理型最終処分場計画は、規模が1日315トン、年間94500トンが処分できるものです。受け入れ8種類の産廃(廃プラスチック、ガラス陶器クズ、がれき類など)で、今県外処分されているのは、年間1万5千トンであり、この量の6倍もの処分ができる容量となっています。これはあまりにも処理計画とかけはなれたものではありませんか。これはどこからの廃棄物の最終処分を受け入れることを想定しているのでしょうか。
《答弁》 環境生活部長
県内で発生した廃棄物の種類別処分量を見ますと、がれき類や廃プラスチック類等で、毎年6万トンから10万トンが処理されております。
他に、リサイクル等中間処理を目的として県外から搬入された廃棄物で、その処理残渣が県内で最終処分されているものもございます。
また、現在、県内で稼働中の最終処分場は3施設で、残容量を全て合わせても約2年で満杯になるという状況にあります。
こうしたことから、御坊市におきます最終処分場の設置計画については決して容量が大きすぎる計画でないと考えております。
なお、和歌山市滝畑に計画されております最終処分場については、事業者が関係機関との事前協議を行っている段階でありまして、現在、議論できる状況にはないと考えております。
《再質問》奥村規子 県議
今の処分場があと2年でいっぱいになるという答弁でした。しかし全体として処分量を3分の2に減らすわけですから、今の処分場の残余も伸びるでしょうし、2015年度にはフェニックスと紀南環境整備公社で処分する量になるというのが、処理計画ではないでしょうか。
2015年度、目標の10万トン、鉱さい以外では6万1千トン。フェニックスでの処分量というのは、どの程度考えているのでしょうか。お答えください。
御坊市の計画が年間9万4500トンもの容量があり、鉱さい以外の年間総量の1.5倍にもなる規模です。さらに和歌山市にはその倍の規模の最終処分場計画があります。こうした処分場計画は第3次処理計画とはかかわりなく計画されるものでしょうか。
県外からの廃棄物が中間処理のために運びこまれる、という答弁がありました。民間処分場ができれば、それは経営としておこなわれるものであり、容量いっぱいの処分量を確保しようとするのが当然です。そのために当初計画にない品目を追加したり、各地から廃棄物をかき集めるようになるのではないでしょうか。これは第3次処理計画の理念にも反することになると考えますが、環境生活部長の見解をお聞きします。
《再答弁》 環境生活部長
まず、大阪湾フェニックスにおきます処分量のご質問でございますが、第3次和歌山県廃棄物処理計画におきましては、目標とする最終処分量は定めておりますけれども、具体的な処分先につきましては想定しておりません。
次に、御坊市や和歌山市におきます民間事業者による処分場計画は、第3次和歌山県廃棄物処理計画の理念に反するのではないかとのご質問がございました。
和歌山県廃棄物処理計画では、県内や発生した廃棄物を県内において適正処理する体制の構築を目指し、大阪湾フェニックス計画の推進、紀南地域における公共関与による最終処分場整備事業の推進、そして廃棄物処理施設の確保を必要な取組として位置付けております。
民間事業者が自らの経営計画に基づきまして最終処分場を建設することについて、何か規制を設けているという訳ではございません。
《要望》奥村規子 県議
民間が処分場をつくる際に許・認可するということをだけであれば、どんどん、処分場をつくっていく、処分量もどんどん増えていくということになるのではないか。処理計画で目標とする処分量にみあう処分場を設けるということを、民間の計画にゆだねるのではなく、県の方針として、もつべきではないでしょうか。そうでなければ、処分量の減量という処理計画に反することになっていくことを指摘しておきます。