2012年6月県議会 高田由一 一般質問 概要記録   議会中継録画
  2012年6月20日


1.大飯原発再稼働に関して
(1)大飯原発再稼働の評価と原発に対する考え
(2)電力不足に対する関西電力の取り組み
(3)県民や地元経済界からの声
(4)原発ゼロを目指して

2.梅生育不良について
(1)御坊発電所の稼働状況
(2)梅生育不良の現状と今後の対策
(3)大気汚染測定結果の評価

3.河川の防災対策
(1)県管理河川の土砂撤去について
(2)利水ダムの治水的運用について

4.学校給食の放射能測定について
(1)具体的な実施方法


1.大飯原発再稼働に関して
《質問》高田由一 県議
 最初に大飯原発再稼働の問題についてうかがいます。北海道電力泊原発3号機が5月5日、定期検査のために発電を停止し、42年ぶりに日本は「原発稼働ゼロ」になりました。昨年3月の福島原発事故以来、全国で繰り広げられてきた「原発ゼロ」をめざす草の根の運動と世論が日本を動かしていることを実感しました。
 そもそも民主党は原発の大幅な増設をもくろんでいた政党です。それを阻んできたのは世論の力にほかなりません。民主党は2年前の閣議決定で、2030年までに14基以上の原発を新増設するというエネルギー基本計画を決定していました。しかし、原発事故後、当時の菅首相が日本共産党志位委員長と会談するなかで「白紙見直し」を表明しました。また、福島の原発事故後、最初に再稼働させようとした九州電力玄海原発の2,3号機は、県民説明会が九電や関係社員による「やらせ」だったことを「しんぶん赤旗」にすっぱぬかれ、国会でも追及され当面、再稼働は断念せざるをえない状態になっています。
 そして現在、問題になっている関西電力大飯原発では、直近の世論調査でも半数以上が再稼働反対であり、稼働を認める人も含めて70%以上が「急ぐ必要はない」と言っています。まさにこの時期に再稼働を決定したことはこれらの世論と真っ向から対決するものと言わざるをえません。
 野田総理大臣は、IAEAや原子力安全委員会を含め専門家の議論を重ね、安全性を確認したと言っています。しかし、福島原発事故の原因究明もなされてないなかで、政府自らがとりあえずの対策として指示した30項目の安全対策、たとえば免震事務棟とかフィルター付きベントなどが設置されるのは3年先です。防波堤のかさ上げは2年後です。また、大飯原発では敷地内を走る断層が活断層の可能性があることも指摘されており、これでどうして事故を防止できるといえるでしょうか。これこそ安全神話の最悪の形での復活ではないでしょうか。
 ここにいたるストレステストも問題です。大飯原発ではその原子炉を納入した三菱重工そのものがストレステストを行っています。自分の納入した原子炉を自分で検査して大丈夫という、こういうのを世間ではお手盛りというのではないでしょうか。
 こうしたなか国会の事故調査委員会の黒川清委員長(元日本学術会議会長)は「必要な対策が先送りされ、想定を超える災害が来た際の対応ができていない。国民の健康を優先した安全規制が実施されるのか不安だ」と苦言を呈しています。さらに原子力安全委員会の斑目委員長でさえ、原発の敷地内を走る断層の問題について「評価をしっかりやりなおすべきだ」と言っています。科学者や専門家からもダメだしをくらっているのが実情であります。
 私も驚いたのは今度、再稼働にあたって副大臣がつめるというオフサイトセンターです。もし原発に事故が起こった場合に国や自治体の関係者が集まる拠点となるのがオフサイトセンターという建物ですが、大飯原発ではこのオフサイトセンターも見直さなければならないと言われています。なぜなら、海抜2メートル、海から100メートルという釣りをするにはうってつけの場所にあるからです。
 ここに「特別な監視体制」をとり、経済産業副大臣をトップに国や県、関電、原子炉メーカー、学識経験者らから約20名でこのセンターに常駐するそうです。せいぜいがんばっていただきたいと思いますが、いざ、地震、津波といったときこのセンターで対応できるのでしょうか。それとも新たな安全対策が終わるまで地震や津波はおこらないというのでしょうか。
 もっと根本的な問題として野田首相は再稼働表明のなかで「国の重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも、原発は重要な電源」とのべ、原発への依存度を可能な限り減らすとはいうものの、引き続き原発を国の重要電源として位置付けることを明確に表明しています。
 私はこのことほど、今度の福島原発事故で被害にあわれた方々の気持ちを踏みにじる発言はないと思います。「原発さえなければ」と牛舎に書き残して自殺された酪農家がいました。被災者の気持ち、国民世論を考えるなら今後すみやかに原発から撤退するということこそいま政治に求められていることではないでしょうか。そこで以下、知事に質問いたします。

(1)大飯原発再稼働の評価と原発に対する考え
 仁坂知事は、野田首相の再稼働表明を「評価したい」、「首相は動かさないリスクの方が大きいと判断されたと思う」と述べました。私は知事のこれまでの発言を聞きながら、専門家が安全性を確認するまでは再稼働はすべきでないという立場だと思っておりました。知事として首相の再稼働表明のどこをどう評価されたのか、今後も原子力を基幹電源としていくことを是とするのか。また、動かすリスク、動かさないリスクとは何なのか具体的にお答え願いたいと思います。
 また関連して、先日、関西広域連合が国への予算編成に対する提案書を出したようですが、そのなかで広域連合としても「関西における中長期的なエネルギー政策の考え方」を検討しているとしています。知事として原発をどのように位置づけて、このエネルギー政策に関わっていかれるのか答弁をお願いします。


《答弁》 仁坂知事
 第1問は、首相の再稼働表明の評価ということですが、大飯原発の再稼働については国民生活を守るという観点から動かすべきだと判断したというふうに言われたことは適当だと認識しております。
 第2ですが、原子力を基幹電源としていくことについての考え方であります。私はこの点については、大事なことは全体として、エネルギーを量的にも価格にもきちんと国民に提供していくことだというふうに思います。実現できないことを予想していては無責任であります。
 その際にそれぞれ色々な不都合が、あるいは不都合なリスクがあります。原子力については福島第一原子力発電所の事故のようなリスクがあることはもう全員がご存じだと思います。
 火力や水力にないかと言うとやっぱりあります。多分亡くなられた方の数はそっちのほうが大きいと思います。
 それから、原子力絶対反対というと必然的に排ガスが増えます。それは規制できちんとコントロールしているとはいえ、梅に心配はないかとか色々なまた懸念が生じます。
 それから、化石燃料に頼っておりますと安全保障上問題が大きいということは言われております。
 それから、地球温暖化の防止という観点では、どちらがいいかという議論が出てまいります。
 それから、風力や太陽でどのぐらい稼げるかというような問題もあります。そういうリスクの管理も含めて、どういう組み合わせで量的にも価格的にもリーズナブルなものを提供していくかということが大事だと思います。
 そういうことを考えると、ずっと先のことはともかくとして、当面は今ある原発に頼らざるを得ないのではないか、というふうに私は思います。
 例えばご指摘のあったドイツは脱原発を決めたというふうに報道されております。正確には、決めていたのをまた戻そうとしていたのを止めたということであります。しかし、まったくマスコミ報道では出ませんけれども、私が1ヶ月ぐらい前に調べたら、17基ある原発のうちの9基はまだ動いております。しかも、ドイツはエネルギーを純輸出しております。原発で作ったエネルギーを他国に売っているというくらい余裕があるなかで動かしております。それが真実であります。
 3番目に、動かすリスクと動かさないリスクとは何かということでありますが、巨大技術にはリスクが付きものだと思います。原子力を動かすリスクについては、今回の事故で顕在化しております。
 電力不足で停電があったようなときに、動かさないリスクが発生します。停電が急にあったということはもちろんでありますけれども、計画停電であっても例えば病気があって色々な装置に頼っておられるような方が、どこにどういうふうにいらっしゃるか、実は我々は15%が不可避かもしれないという心配をしていましたから、それを県庁あげて全力で把握するように努めました。しかし、全部について把握することは責任が持てません。その時に把握漏れがあると直ちに生命の危機に瀕するというようなことになります。
 また、それほど深刻でなくても信号が動かないとか電車が動かないので通勤や通学に不都合が出るとか色々な不都合が生じます。それを避けるためには節電が要りますが、昨年あれだけ必死で節電を呼びかけてまいりましたけれども、実は関西全体では、和歌山は1%ポイント高いんですけれども、関西全体では生活で3%、オフィスで5%の節電しかできませんでした。これを仮に倍にして下さっても、産業活動に残りをしわ寄せをしようとすると27%に和歌山ではなります。
 これで所得が減らないで済むとか、あるいは失業がでないで済むとか言う人がいたら私は顔を見たいというふうに思います。既に問題となっている非正規雇用の方々は真っ先に犠牲になると私は思います。
 さらに長期的にも関西の空洞化が余計進むのではないかと。そういう意味で政府とか首長のみならず全ての政治家はこの双方のリスクに責任があると私は思います。
 次に、関西広域連合の話であります。考え方はいま述べたとおりでありますけれども、関西広域連合のエネルギー検討会においても、2020年から30年ぐらいを想定いたしました「関西における中長期的なエネルギー政策の考え方」を検討することになっておりまして、その中で原発への過度の依存を見直し、あらたなエネルギー社会の構築等について十分議論していくということで、私も先ほど述べた考え方に基づきまして参加してまいりたいと思っております。


(2)電力不足に対する関西電力の取り組み
《質問》高田由一 県議
 つぎに電力不足に対する関西電力の取り組みについてうかがいます。夏の電力不足をいう関電ですが、大飯原発が使えなくなる可能性があることは1年以上前からわかっていました。この間、停止していた火力発電所の再稼働に向けての取り組みはある程度されたように思いますが、節電ということではどんな対策をしてきたでしょうか。これまでとかわらずオール電化の推進はそのままではなかったですか。はぴeポイントクラブといってオール電化をした世帯を中心に電気を使えば使うほどポイントがたまる制度を今でも行っているではありませんか。ためたポイントはプリンなどのスイーツやホテルの宿泊券などと交換できるというのです。まったくもって不見識です。こんな制度は関電以外の電力会社ではやられていません。
 これまで関電では供給力の不足は昨年夏にも今年の冬場にも危険だと言われていました。しかし現実はどうだったか。官民協力しての節電努力で乗り越えてきたではありませんか。たとえばこの冬の供給力は昨年11月時点では2412万キロワットと言っていましたが、実際供給できたのは2730万キロワットと予測を1割以上、上回りました。電気事業法によって地域独占を許された関電には電力供給責任があります。供給力が不足するなら節電要請もする、また最近になってようやくネガワットといって電気が足りなさそうなときに大口の需要家が節電する分を逆に買い取る制度をつくりましたが、こうした努力をなぜ昨年から行ってこなかったのかと思います。これまでの関電の取り組みについての評価を知事にうかがいたいと思います。


《答弁》 仁坂知事
 関西電力については、需給調整契約のメニューの新設、拡充とか、これにより需要を抑制しようとか、あるいは、供給側でいうと海南発電所2号機の運転再開のためにかなり投資をするとか、そういう経営判断をして電力供給能力の増強に努めてきたことは評価をいたします。
 一方、かくも電力需給が逼迫している現時点でもまだオール電化システムの販売を止めないというのは、私は全然評価しません。これについは問題ではないかというふうに事務的に言うようにという指令を出しております。


(3)県民や地元経済界からの声
《質問》高田由一 県議
 つぎに実際、県民や地元の経済界からどのような心配の声があがっているのかうかがいます。先日、和歌山県は電力不足、停電になった場合の経済損失の試算をされ発表されましたが、この試算では県内で製造される物はすべて電力を使って生産をする仮定をしています。また、電力不足が心配されるのはピーク時の電力が不足するせいぜい5日から2週間くらいまでの間であるのに、2ヶ月にわたって節電が続いたときを仮定しているなど、影響を過剰にあおるものであり、原発再稼働への世論誘導ではないかと思うぐらいです。
 そこでうかがいたいのは、夏の電力不足を前に、実際、県民や地元経済界からどのような具体的な心配の声が上がってきたのか、県の把握している県民の声を具体的にお示し願いたいと思います。


《答弁》 仁坂知事
 県民や地元経済界からの声ですが、これは沢山あります。生産部門等の節電は製造加工の最盛期での生産調整となり困難でありますよ、顧客サービスの低下につながりますよという声があります。
 また計画停電となったときは、その影響は多方面に及び、例えば機械を一旦止まればプラント再立ち上げに一週間程度必要なんだぞと、分かっているのかというようなことを言われる方もいましたし、製造業界はじめとした各業界から経営に支障が出るという話は沢山あります。
 また、医療機関や、あるいは福祉施設あるいは乳幼児や高齢者のいる家庭の方からも、どうしてくれるのという話も沢山あります。
 例えば、小さな病院、診療所は非常用電源もないのだから、入院患者あるいは救急医療はどうしたらいいんだという声を具体的に直接聞いたこともあります。


(4)原発ゼロを目指して
《質問》高田由一 県議
 最後に私は原発ゼロを目指し、新しい経済の枠組みを作る方向でこそ、デフレ不況を脱し、雇用を創出するあらたな経済発展、設備投資も見えてくると思います。アメリカの経済学者でノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ教授は原子力産業におけるリスク管理について次のように発言しています。「失敗のコストを他人が負担する場合には、インセンティブは自己欺瞞に有利に働く。損失を社会に支払わせ、利益が私有化されるようなシステムは誤ったリスク管理にあると言わなければならない」と指摘しています。私も同感です。
 これまで日本の電気事業法では、電力会社による地域独占のもと、供給責任を負わされている電力会社が、過大な需要予測のもとで、どんどん設備投資をして余力を持つ、そしてその投資にかかる費用は総括原価方式で電気料金に上乗せする。これが繰り返されてきました。電力会社は電気という効率の悪いエネルギーを使ってもらえばもらうほど儲かる仕組みになっているのです。その結果、どうなったか。日本の家庭用電気料金は実質ベースで世界でも高い水準にありますし、エネルギーの浪費大国になっています。
 今後の電力供給はどうあるべきでしょうか。環境へも負担が少なく、しかも効率よく配電できることが求められると思います。小規模分散型、電気の地産地消ということです。原発のような巨大な発電所だのみの電力供給こそ事故やトラブルの際、停電のリスクが高いものです。それを小規模分散型にかえていく。その具体例はこの県議会でも何人もの方が提案していただいている自然エネルギーの活用や燃料電池の普及などです。とくに和歌山県は自然条件といい、先進県になれる県だと思います。
 それを促進するためには、私はやはり、政府がドイツやスイスのように期限を切って原発ゼロを目指すことです。ドイツではエネルギーシフトが経済と技術の両面においてもたらす効果について「さらなる発展へのチャンスを脱原子力政策がもたらしうるということを国際社会に身をもってしめす」と未来への展望を語っています。こうしたなかでこそ新たな投資を迷いなくできるし、本当の展望ややる気がでてくると思うのです。ぜひ原発ゼロを目指すという点で知事が先頭になって国へも働きかけてほしいと思いますが、知事の考えをお答えください。


《答弁》 仁坂知事
 原発ゼロを目指して声をあげて、ということでありますが、それがもし実現したとき生じる数々の不都合な現実に目をつむれというような無責任な態度は、私はとりたくないというふうに思います。


《要望》高田由一 県議
 知事から答弁をいただきましたが、動かすリスクと動かさないリスク双方があり、首長というのは双方に責任を持たなければならないというご見解でした。
 しかし、一方の原発事故のリスクというのは福島であった例をあげるまでもなく、地域と社会、そして歴史的にも地域全体が立ちいかなくなるような被害を与えるということはご承知の通りです。
 福井でも事故が起これば、関西の中心地はおおかた100キロ圏内に入るわけですから、関西の経済活動が立ちいかなくなることを心配するわけです。私はこのリスクと、いま知事が県民から寄せられたいろいろな声をのべられたリスクとを同列に考えて比べるのはいかがなものかと思います。
 原発を動かす事故のリスクは現在の我々の世代の選択ではありますが、その事故の影響は将来の世代にわたって引き継がれる大変な命のリスクになると思います。このリスクを考えるなら「原発を動かさない」というまず大前提をおいて、そのなかで経済やあるいは福祉、くらしへの影響をどうなくすかという建設的な議論をしていくことが大事ではないかと思います。
 私はその点では、政府に大変疑問を持っています。計画停電という無計画な停電でおどすのではなしに、なぜ昨年やったような大口の需要に限った電力使用制限令も限られた期間、発動を検討しないのかと思います。最初の頃は言っていましたが、5月の頭あたりからはさっぱり聞こえなくなりました。
 しかしそうはいうものの、すでに経済界では大企業を中心に対策をとっているなと感心した事例があります。
 6月17日の朝日新聞にのった全国主要100社へのアンケートをみて、企業はやはりしたたかな対策をしているなと思いました。電力不足が経営へ与える影響についてのアンケートでは影響はないが26社、多少のコスト増だが影響は限定的が38社、くわえて節電でコスト削減になると答えた会社も22社ありました。大幅コスト増で利益圧迫というところは2社だけした。また、同じ紙面で関西の企業は、原発再稼働を歓迎しながらも、自家発電に50億円投資だとか、研究施設の勤務時間を夜間や土日にかえる、など具体的な対策をつぎつぎ打っているようです。関西は電力需給が不安定になるからよそへいこうなんて意見はなさそうです。
 停電のリスクは何も供給力不足ばかりではありません。きのうの台風でも一部停電がありましたが、地震、送電線の事故などいつでも起こりえます。この機会にそのリスクをきちんと受け止めるインフラ整備を進めることこそ大切です。
 原発による破壊的なリスクで孫の代というよりも万年先の人類につけをまわすよりも、停電による社会的なリスクにどう具体的に対応するか、政府の議論がそうなっていくように今後とも県政から働きかけていただきたい。私も働きかけていきたいと思います。
 それと首長の立場にもいろいろ違いがあるわけですが、静岡県の浜名湖の横にある湖西市の市長さんが全国の市町村長や首長に呼びかけて、「脱原発を目指す首長会議」を立ち上げられております。会員は7十数名になったそうです。この湖西市長の三上元(みかみはじめ)さんは経済人です。湖西市にはスズキ自動車の工場をはじめ、自動車や電気関連などたくさんの企業があるとのべられています。この市長さんが最初に「脱原発」発言をした昨年4月、工業のまち湖西市でこんなことを言っていいのかという人がいたそうですが、この市長さんは経済界を説得できる自信があると言っておられます。「原発が結局は大きなリスクのもとで、決して安くないことが分かれば経済界の人も支持しませんよ」ということを新聞記事のなかでのべられていることも紹介しておきます。
 今後もそういう動きをしっかりしていただきたいと要望します。


2.梅生育不良について
(1)御坊発電所の稼働状況
《質問》高田由一 県議
 つぎに梅生育不良にかんしていくつか質問いたします。
 最初に、関西電力御坊発電所の稼働状況についてうかがいます。いま梅農家の心配はこの発電所が今後フル稼働に近くなってくるという予想のもとで光化学オキシダントなど大気汚染の増加が心配されるからであります。
 この発電所は平成18年から20年の間に比較的、稼働率が高い時期がありました。そのときは30%前後の稼働率です。最高で19年度の36%です。地元の方の話だと、今年は最初に梅衰弱症といわれる生育不良が発生した田辺市秋津川、上芳養、稲成などで新しく生育不良が発生しているようで、心配は高まっています。
 そこでうかがいます。平成23年度の年間稼働率はどうなっているでしょうか。また、月別では最高稼働率はどうなっていますか。答弁をお願いします。


《答弁》 商工観光労働部長
 関西電力御坊発電所の稼働率は、関西電力では利用率と言っておりますが、平成23年度の年間利用率は36%、月別の最高利用率は平成24年2月の62%であったとの情報を得ております。


(2)梅生育不良の現状と今後の対策
《質問》高田由一 県議
 つぎに梅生育不良の現状と今後の対策についてうかがいます。
 まず、梅の生育不良の発生状況を県としてどのように把握されているでしょうか。また、今後とっていく対策はどのようになっているのか答弁をお願いします。
 さらに、さきほど述べましたように、田辺やみなべの梅農家はこの衰弱症といわれる生育不良が以前のように大量に発生するのではないかと心配しております。この梅生育不良は未だこれが原因だというところまでつきとめられてはないわけで、土壌水分の不足が問題だというのはありますが、まだまだ研究途上です。現在、県にはうめ研究所がありますが、そもそもこの研究所自体、梅の生育不良が多発している状況のなか梅の基礎研究をする試験場がないではないかという農家の声を反映して作られてきたものです。その役割はますます重要になってくると思います。
 うめ研究所では、現在、生育不良の簡易診断に使える技術の開発に努めておられます。ただ診断も大切ですが、やはり、生育不良の発生メカニズムを解明していくという基礎研究の部分も大事にしないといけないのではと思います。こうした研究のさらなる充実を求めますが、答弁をお願いします。


《答弁》 農林水産部長
 梅の生育不良につきましては、植物生理や大気環境等の専門家で構成する和歌山県うめ対策研究会において、栽培要因、気象要因、土壌要因などが複合的に絡み合って引き起こされたものと報告されております。
 これを受け、県では、産地の方々と一体となり、生産安定を図るための改植や土壌改良に取り組み、現在、生育不良樹の栽培面積に占める割合は、ピーク時に11.6%であったものが、1%未満にまで減少しているところです。
 今後も、梅産地の維持発展を図るため、生育不良の発生状況を注視しつつ、地域にとって必要な対策を引き続き実施してまいります。
 また、試験研究につきましては、研究会報告における残された課題を中心に、生理生態面での基礎研究や水分ストレス、適正着果量などの研究を行い、その成果をウメ栽培管理マニュアルに反映させて、現地指導に活かしてきたところであり、今後も引き続き、ウメの高品質安定生産に向け、研究を継続してまいる所存でございます。


(3)大気汚染測定結果の評価
《質問》高田由一 県議
 最後に、うめ研究所ではオキシダントによる大気汚染を2004年、平成16年から観測しています。先日、データをもらったところ非常に高い状態が続いています。→ 資料
 これは昨年度の4月の一か月分のデータですが、あの自然豊かなみなべ町にあるうめ研究所でのデータが和歌山市内のデータを上回っています。しかも環境基準をオーバーしている日数が30日のうち26日もある。一か月の平均でも環境基準の0,06ppmに近い。そして一日の平均値で環境基準を超えている日が6日あります。のべつまくなしに環境基準をオーバーしている。こんな観測データはほかにはありません。ちょっと私、参考に調べたのですが、大工業地帯のある堺市でもこんな汚染の状態はないですよ。県環境衛生研究所での測定データでも、1年を通じてみても一日平均値が環境基準を超えているというデータは一日もありません。最近は全国的に春先のオキシダント濃度が高い傾向があるとはいえ、この数字は明らかに異常です。
 この測定結果について梅への影響をどう考えておられるのか部長の認識をお答えください。


《答弁》 農林水産部長
 うめ研究所でのオゾン測定結果では、議員お話のとおり、昨年度において、4月一ヶ月間の測定期間中、環境基準を超える1時間あたり測定値を示す日数は26日あり、また、一日のうち20時間、基準を超えている日もあるなど、4月に高い測定値を示しているのは、平成24年今年と同様の傾向でございます。
 また、昨年も今年も、日平均で環境基準(0.06ppm)を超える日が測定されておりますが、うめ研究所内において、うめの樹に対する生育不良やオゾンの影響と思われる症状は認められておりません。
 県では、平成11年に、オゾンと二酸化硫黄および二酸化窒素の複合ガスによる、うめの樹への連続暴露試験を行い、落葉や、あるいは葉に斑点症状が確認されましたが、生育不良と同様の症状ではないと研究会から報告をうけております。
 オキシダント濃度の年平均値は、ほぼ全国的に上昇しておりますが、特に平成12年度以降、九州や東海、近畿の西日本を中心に急上昇しており、大気汚染を心配される声もあることから、今後も測定を継続し、ウメへの影響を注視してまいりたいと考えております。


《再質問》高田由一 県議
 環境基準はそもそも人体にたいする基準であって、梅など植物に対するものではないということを前提にしておきたいと思います。
 昨年も今年も、うめ研究所のデータは同様ですという答弁でしたが、うめ研究所の地点では変化はなくても、いま紹介したような一般の測定局である環境衛生研究所などと比べたら本当に異常に高い数字だと思います。異常なデータを異常なデータとして認識できていないのではないかと思います。やはり、うめ研究所を抱えている農林水産部だけで問題をとらえるのではなく、必要ならば県にも専門家がおられる環境衛生研究所や、あるいは国の国立環境研究所などでもオキシダントを全国的に詳細な調査もされていますから、アドバイスももらいながら研究を進めていってはどうかと思うのです。
 これについてはもう一度答弁をお願いします。


《再答弁》 農林水産部長
 議員ご指摘のように、環境基準は人間に関する基準、人間の健康を維持する上で、守ることが望ましい基準でございます。オゾンが植物体に及ぼす影響につきましては、関係機関に意見を求める等、情報収集に努めてまいります。


3.河川の防災対策
(1)県管理河川の土砂撤去について
《質問》高田由一 県議
 つぎに県管理河川に堆積している土砂の撤去についてうかがいます。
 昨年の紀伊半島大水害で紀南地方の河川に堆積した土砂は、出水期に入った現在でもその撤去が十分、進んでいないのが実情です。県議会でも私もふくめて何人もの方がこの問題で発言をされてきました。これまで県は、災害復旧や市町の取り組む河川法20条に基づく土砂の採取などを使って土砂の撤去に取り組んできましたが、でてきた土砂のボリュームに対して工事の量、予算の額が圧倒的に少ない状況です。例えば熊野川の和歌山県に関係する部分では堆積土砂は推定430万立方メートルと言われていますが、いま取り掛かっている工事を合計してもせいぜい20万立方メートルです。これでは時間がかかりすぎます。その背景のひとつに災害の査定基準があまりにも厳しいことがあります。川にたまった土砂が川の断面の3割以上をふさがないと災害として採択しないという基準です。これについては知事も先日、紀伊半島知事会議の提案ということで国土交通省副大臣に3割埋まった区間だけでなくそれに連なる区間については災害として認めてほしいという提案をしていただきました。これについては私たちもかねてから県河川課、国土交通省とも話し合ってきたテーマですから、今後、柔軟な運用となり、昨年の災害部分についても新たに採択されるよう願っております。
 そこでまず、新たな災害採択もふくめて土砂撤去に対する国の財政上の援助の見通しについて、知事にうかがいます。
 また、事業の推進にあたっては熊野川では三重県側と協調して工事をすすめなくてはなりません。この点では新宮市長さんは国が直轄管理する河口の5キロ部分だけでなくその上流の和歌山県、三重県が共同管理する部分についても国の直轄事業として実施してもらえないかという要望ですが、このことについてもしっかり国に要望してほしいと思うのですが、知事のお考えをお聞かせください。


《答弁》 仁坂知事
 河川の埋そくに係る災害復旧事業のように、安全・安心に関わる事業については、採択基準を画一的に適用するのではなくて、被害や復旧費の大きさ等個々の実情に合わせ、柔軟に判断すべきものだと考えております。
 先日の紀伊半島知事会議でも、河道断面の3割未満の埋そく区間を含めた一連の区間で必要となる対策については、補助対象とするよう提案をいたしました。これは解説をいたしますと、実はこの3割未満はですね、災害復旧の対象にならないということになっとるわけです。こういう点について、問題だと思っております。
 また、熊野川における県管理区間の土砂撤去については、市の協力を得るなどの工夫をしながらも県で進めておりますけれども、堆積土砂が余りにも多くて、時間も費用もかかることから、政府堤案の中でも県管理区間の国直轄区間への変更や、流下を阻害している堆積土砂を緊急に撤去するために必要な予算の確保をお願いしているところです。
 この間、紀伊半島の三県と国の、この間の12号台風に関する合同本部がありましたが、その時にもこういう問題を提起いたしまして、特に一番初めに申し上げました30%の話などはですね、個別の相談の中でぜひ協議をさしてもらいたい、というお話がありましたので、引き続きいろいろと国の支援が何か得られないかと、いうことを考えてですね、出来るだけ早く問題の解決に資するように努力してまいりたいと考えております。


(2)利水ダムの治水的運用について
《質問》高田由一 県議
 私は昨年の9月議会で治水機能をもたない利水ダムについても、大規模な出水が予想される場合には治水機能をもたせられないか知事と議論しましたが、この点については今日まで具体的な努力をしていただき、県営ダムだけでなく関電の殿山ダム、電源開発のダムについても一定の運用改善をしていただけることとなりました。この場をお借りして県当局のご努力に感謝申し上げたいと思います。そこで今回、うかがいたいのは新宮川水系のことです。電源開発は学識者や国、そして関係3県による「ダム操作に関する技術検討会」を開催してきましたが、その議論のなかで県の主張してきたこと、議論の状況と成果、今後の取り組みを県土整備部長にお答え願いたいと思います。
 また、私は昨年9月議会のなかで、そういう運用の改善だけではなく、ダムの堤体の改良などハード面での対策も検討することを求めましたが、今後、その可能性はあるのかどうか、答弁をお願いします。


《答弁》 県土整備部長
 「ダム操作に関する技術検討会」は、電源開発株式会社が新宮川水系に所有するダムの操作等について、台風12号を対象に様々な視点から意見を聴取し検討するとともに、ダム操作に関する現状確認・改善等を継続的に検討することを目的として、同社が設置したものでございます。
 県も委員として参画し、より大きな治水効果を得るため、さらなる水位低下の可能性を求める意見等をしたところ、降雨予測に基づく水位低下の限界や、下流利水者への影響の可能性も踏まえ、今回の暫定運用内容がまとめられました。
 暫定運用による効果は、洪水によっても異なりますが、現行運用に対して、放流量を最大で約25%程度低減させる効果があると試算されています。
 今後、技術検討会では、気象予測技術の動向を把握するとともに、運用の妥当性や下流利水者への影響を検証し、運用方法を適宜見直していくこととしています。
 更なる水位低下を求めていくには、本県が二級河川で実施しているように、一級河川においてダムの設置を許可する国がリスクを負って電源開発株式会社に要請していくことが必要と考えており、県としては、今回の暫定運用の効果を見極めて参ります。
 また、台風12号において熊野川では、国が策定した新宮川水系河川整備基本方針の計画流量を超える洪水が発生しました。
 このことから、現在、県では、国に河川整備基本方針の見直しを求めているところです。
 ダム堤体の改良によるハード対策については、それら熊野川の総合的な治水対策を考える中で処理される課題と認識しております。


《要望》高田由一 県議
 先日も熊野川へは現地調査に行きました。見て回っても168号線はだいぶん改修もすすんでいますが、対岸の三重県側に目をやりますと崩れた道がそのままになっているんです。この議場であまりよその県のことを言えないわけですが、しかし、いざという時には川の両岸に道路があるかないかで被災時の対応のとき運命をわけることになると思います。災害に強い幹線道路プラスそれを補完する道路を3県の間でも協力をあちらの県にも要請していただけたらと思います。


4.学校給食の放射能測定について
(1)具体的な実施方法
《質問》高田由一 県議
 最後に学校給食の放射能測定についてうかがいます。このことは昨年の12月議会で質問しました。当時はいい返事がなかったので、いずれ全国で測らなければならなくなりますよと言って終わったのですが、この度、国の方で予算措置をされて、全国で測定するようになりました。県ではこの6月補正のなかで対応していくということであります。
 そこで今後、この測定をどのように実施していくのか答弁をお願いします。


《答弁》 教育長
 一般に流通している食品につきましては、本県では放射性物質の検査を計画的に実施しており、他府県においても同様に検査が行われていることから、安全なものと考えております。
 学校給食に使用する食材についても、それらの流通食品を使用しており、安全であると認識しておりますが、この度、国から学校給食のモニタリングを行うよう委託があったところであり、ダブルチェックを行うことは児童生徒等のより一層の安全・安心の確保に資するということから、今定例会において、国の事業を活用する「学校給食モニタリング事業」を補正予算にお願いをしているところであります。
 この事業は、実際に提供された学校給食の放射性物質の有無や量を検査するものであり、2学期以降、今年度中に県内各地域の学校等で合計70回の調査を実施するなど、継続的な実態把握に努めてまいります。


《要望》高田由一 県議
 年間70回測っていただける予定だとうかがいました。
 だとすると、国はどうも和歌山県のようにだだっ広い地域にぽつぽつと学校があっちにある、こっちにあるという状態を想定していないのではないか。測定回数や対象となる学校が国の基準では少なすぎるのではないかと思います。県におかれてはぜひ国の制度を使ううえで上乗せをしてもらって学校数と測定回数を充実させてほしいと思います。


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2012年6月県議会 高田由一 一般質問=6月20日