2014年9月県議会
松坂英樹 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 2014918




1.土砂災害対策と洪水対策
(1)土砂災害警戒区域指定の状況と見通し
(2)砂防事業予算の推移
(3)河川整備計画と土砂対策
(4)二川ダムサイト等、防災上要注意箇所の
   再点検・監視をすべきではないか

(5)今日的気象条件や知見をふまえた土砂災害防止対策を

2.学力テストについて
(1)全国学力テストの結果発表を受けての対応
(2)過度な反応による「学テ対策」偏重は慎むべきではないか

3.コスモパーク加太用地の活用と県民負担
(1)消防学校用地の売買による返済見通しと県民の
   将来負担について

(2)コスモパーク加太用地活用の現状と今後の見通し


1.土砂災害対策と洪水対策
《質問》松坂英樹 県議
 通告にもとづき、一般質問に入らせていただきます。まず、土砂災害対策と洪水対策についての質問です。
 先月の広島県における大規模な土砂災害には、全国が大きな衝撃を受けました。被災者、ご家族・関係者の皆様に、心からの哀悼の意とお見舞いを申し上げるものです。
 和歌山県は3年前の紀伊半島大水害でも、大きな洪水と土砂災害を経験し、災害からの復旧・復興とともに防災対策に力を入れてきました。今回の土砂災害を教訓に、地方からも更なる対応を求める要望が上げられ、政府も動き始めている状況です。
 また、一方の洪水対策の分野では、私の地元の有田川で、現在河川整備計画を策定中です。これに呼応して、住民目線で有田川を見つめなおそうと、現地調査や学習会を重ね、有田川の流れそのものに加えて、過去の災害の歴史、地質や地形、洪水対策への地元要望などを学び交流してまいりました。その中でも、河川の洪水対策と土砂災害対策は切っても切れない関係にあると痛感したところです。
 こうした問題意識のもと、以下順次質問をさせていただきたいと思います。
(1)土砂災害警戒区域指定の状況と見通し
 まず第一点目に、土砂災害警戒区域指定の状況と見通しについて伺います。先月の広島での土砂災害報道でも、「土砂災害警戒区域」の指定がなかなか進んでこなかった、ということが注目されています。また調査や指定ができあがるのにいつまでかかるのだろうという声も出されています。本県においては、この土砂災害警戒区域指定に向けての基礎調査や地域指定の状況はいかがでしょうか。また今後の進捗見通しはどうなのか。有田郡内での状況と合わせて、県土整備部長よりご答弁を願います。

《答弁》 県土整備部長
 和歌山県における土砂災害危険箇所は18,487箇所であり、平成26年8月末時点で6,363箇所の調査が完了いたしました。このうち、土砂災害警戒区域として5,636箇所が指定されており全体の約30.5%となっております。また、特別警戒区域は3,054箇所を指定しています。
 有田郡内の状況は、土砂災害危険箇所が1,636箇所で、631箇所の調査が完了しています。このうち、土砂災害警戒区域が、475箇所指定されており、全体の約29.0%となっております。また、特別警戒区域として430箇所が指定されております。
 土砂災害警戒区域の指定に関する予算は、平成26年度は5億9535万円であり、平成25年度より約76%増加させ、約1,200箇所の調査を実施する予定です。そのうち有田郡内では約170箇所の調査を実施する予定としています。
 今後も、土砂災害危険箇所に対する調査を推進するとともに、警戒区域等の早期指定に努めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 部長の答弁では、県内約18,500ヶ所という危険個所の内、調査や警戒区域指定が約3割強のところまできている等の具体的な数字も示されました。いつまでに完了というお答えはありませんでしたが、今年は予算が前年度比で8割増ということですから、今後一層スピードアップをはかりながら、住民の避難計画や情報提供につながるよう、しっかりと対策をすすめていただきたいと要望をしておきます。

(2)砂防事業予算の推移
《質問》松坂英樹 県議
 それでは次に、こうした土砂災害を防止する取り組み、砂防事業の予算について伺います。災害防止対策予算の充実は県民にとって今日的で切実な願いとなっています。私は今回の質問にあたり、この間の県予算における砂防事業費を当初予算ベースで調べてみました。配付資料1がそのグラフとなっています。
 左(資料1A)が、比較的規模の大きい国の補助事業が中心の予算額、そして右側(資料1B)が、国基準の規模に満たない比較的小規模な工事が中心の県単独事業の予算額のグラフです。国の補助事業のグラフを見ても、また県の単独事業のグラフを見ても、砂防事業の予算は、国の三位一体改革で地方交付税が削られ、予算がガクンと落ち込んだ時期以降、災害復旧などによる変動分を除くと、抑えられたままとなっているがどうお考えになりますか。限られた予算内でということでしょうが、県民・市町村からの要望に充分にこたえられているのでしょうか。県土整備部長よりご答弁願います。

《答弁》 県土整備部長
 砂防関係事業予算については国や県の厳しい財政事情もあり、平成12年度の約90億円をピークに平成26年度は約43億円と約52%の減となっております。
 土砂災害防止対策に関しましては、砂防ダムの整備などのハード対策と、土砂災害警戒情報の提供など住民の避難行動につなげるソフト対策を、総合的に実施していく必要があると考えております。
 今後もひきつづき県民や市町村からの要望をふまえて、必要な予算を確保し、ハード・ソフトの両面から土砂災害防止対策を進めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 部長からご答弁をいただきましたように、和歌山県の砂防事業予算は、国補助事業分でもピーク時の約半分、県単独事業分にいたっては5分の1のレベルであり、なおかつ低値安定という状況だと言えると思います。地域でお聞きする要望からみれば、これで十分ということではないと思います。山間部や中山間地の多いわが県にとっては、地域や集落を持続させるのに不可欠な、身近な災害対策として、しっかりと事業化をはかっていただくよう要望をしておきます。

(3)河川整備計画と土砂対策
《質問》松坂英樹 県議
 続きまして3点目、今度は河川の洪水対策との関係での質問に移らせていただきます。まず、この度の有田川の現地調査等を通じて、河川の洪水対策は、森林整備や土砂対策と切っても切れない関係にあるとの想いを強くしたいくつかの点についてご紹介したいと思います。
 資料2は、有田川に支流が合流する有田川町糸野地区の地図となっています。有田川本流は図の右下から左上へと流れています。これに対して、図の右側からの支流、国道424号線の走る五西月の谷から早月谷川が合流しています。本流への合流前には、図の上からの支流、県道海南金屋線の走る六川の谷から流れ込む玉川が合流しています。有田川本流を見ていただくと、合流地点の下流側右岸には、大きな三角形の砂州が発達し、河道を狭くせりあげていて、河川整備計画素案では、ここを引き堤して川幅を広げる計画が検討されています。
 私たちが現地を調査して注目したのは、この早月谷川が、まっすぐに有田川に合流せずに、一度北側へと逆に大きく曲がって玉川と合流した後に有田川へと流れる奇妙な形をしていることです。この曲がり方は、単なる蛇行というのではなく、早月谷川や付近の山腹から、いったん川をせき止めるぐらいの大量の土砂が流入し、それによって大きく流れを変えた過去の災害の痕跡とも考えられます。
 この早月谷川は、有田川の支流としては最大の流域面積をもつ川であるとともに、流域に多くの地すべり地帯をかかえている支流です。ここにはミカブ破砕帯という九州から関東まで続く大きな破砕帯が3キロメートルほどの幅で東西にずっと通っています。有田川の洪水対策を考えるとき、本線の流れだけにとどまらず、この支流からの土砂流入に大きな注意を払う必要があると感じました。
 次は上流部です。資料3は昭和28年水害における有田川上流部、旧花園村や旧清水町安諦地区での山腹崩壊の状況を記録した図です。山という山、谷という谷で大小様々な山腹崩壊がおこったことがよくわかると思います。梅雨の終わりの豪雨による雨水とともに、土砂と流木が沢や谷をふさぎ、土石流となって勢いよく出てくる。下流部では土砂が河床を上昇させ、流木や流出家屋の木材が橋でせき止められて水位を上げて堤防が決壊する。こうしたせき止めと一気に始まる流出を繰り返し、雪だるま式に洪水が威力を増していったと思います。豪雨による降水量も大きかったわけですが、地形的要因がその威力を大幅に増幅させた大洪水であったと思うわけです。
 また、後ほど詳しく述べますが、二川ダムのダム湖右岸は、ミカブ破砕帯が再び有田川と接近する地点です。ここで大きな地すべりを起こしてダム湖に突入すれば、たいへんな災害をもたらす危険があります。
 このように、有田川流域の地形や地質、そして有田川の災害の歴史から見ても、洪水対策を考える上では、川という細い線上の視野で「水」のことだけを考えるのではなく、土砂流入・土砂災害という土砂のことも視野に入れて、洪水対策の事業計画や住民への情報提供・啓発をすすめるべきだと考えます。
 現在、有田川河川整備計画が策定中でありますが、堤防の中の水を溢れないようにコントロールすることにとどまることなく、土砂の流入に対する対策をしっかりと位置付けて、目的意識的に取り組みを進めるべきではないでしょうか。県土整備部長のご答弁を願います。

《県土整備部長》
 有田川水系河川整備計画につきましては、これまで平成25年7月と11月に「有田川を考える会」を開催し、関係住民のご意見を伺うとともに、平成26年3月には和歌山県河川整備審議会河川整備計画部会を開催し、素案を公表したうえで学識経験者のご意見を伺ったところです。
 本素案の中で、河川の整備の実施に関する事項として、「土砂堆積等によって川の流れが阻害されないか点検した結果、治水上問題があると判断した場合には河床掘削等による流下阻害対策を行い、洪水や高潮時に河川の疎通機能を十分に発揮できるよう河道断面の維持に努める。」、「流域の森林が適正に保全されるよう、関係自治体、住民をはじめとする多様な主体が行う森林保全に向けた取り組み等と連携を図る。」など位置付けられているところです。
 今後、パブリックコメントを行い、住民の皆様に広くご意見を伺うとともに、関係市町からご意見を伺うなどの必要なプロセスを経て、有田川水系河川整備計画を早期に策定し、計画的な河川整備に努めたいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 部長のご答弁は、土砂対策についても位置付けているというものでした。具体的な改良事業などは下流の築堤区間となりますが、土砂対策は上流部まで流域全体が位置付けられているわけですから、これを機にさらに対策に力を入れるように要望しておきます。

(4)二川ダムサイト等、防災上要注意箇所の再点検・監視をすべきではないか
《質問》松坂英樹 県議
 次に4つ目の項目ですが、特に二川ダムサイトの地すべり地帯への対応について、もう少しつっこんで質問をさせていただきます。
 先ほどダムサイト右岸の山腹は、ミカブ破砕帯が通る大きな地すべり地帯となっていると申し上げました。資料4は、県のホームページの土砂災害マップで二川ダム湖の周辺を表示させたものです。
 図の左下に二川ダム本体があります。中央にはダム湖があります。図の右側が上流側となっています。ご覧のように、ダム湖右岸の斜面は、茶色い縁取りの地すべり防止区域が大きくひろがり、この中に、土石流や急傾斜、地すべりの警戒区域・特別警戒区域が各所に点在しています。もうまっ茶々、まっ赤々の状態であることがおわかりになると思います。
 ここでご注意いただきたいのは、こうした危険区域や警戒区域の指定箇所は、そこに民家があって、避難計画や対策事業の必要があるから指定されているわけで、ダムサイトの国道沿いなど人家のないところは、たとえ危険なところであっても指定外ということになります。過去に地すべりをおこした土塊、土砂の大きなかたまりが、足元をダム湖につっこんでいることが想像されます。記録的な豪雨や地震により、この地すべり土塊がダム湖に滑り落ちることとなれば、まさにイタリアのバイヨントダムのように、ダム津波によって下流に重大な被害をもたらす危険性があります。
 二川ダムサイトの地すべり斜面のように、ダム湖や緊急輸送路などに重大な被害や影響を与えかねない箇所については、人家のあるなしにかかわらず、今後しっかりと再点検・監視を行ってゆくべきではないでしょうか。県土整備部長にご答弁を願います。

《答弁》 県土整備部長
 二川ダムをはじめ、県管理ダムにおいては、「貯水池周辺の崩壊、測量杭並びに用地境界杭、その他の標示の移動等については、毎週1回巡視を行い、異常を認めたときには、すみやかに処置する」こととしております。
 また、緊急輸送道路を含む県管理道路においては、路面、路肩、法面及び構造物の状況等を月1回以上の頻度で点検し、異常を発見した場合は速やかに必要な措置を講ずることとしております。
 今後も、ダムや緊急輸送道路をはじめ、県民生活に必要不可欠な社会資本については、必要な点検やパトロールを実施してまいります。

《再質問》松坂英樹 県議
 答弁をいただきました。点検はすることになっております、といいますが、これまでの延長線で、遠くの「道路上から目視による点検をしました」というようなことではダメだと思うんですね。また、異常を発見したら速やかに対策するというのですが、何か起こってからでないと動かない、これではダメだと申し上げているわけです。
 県土整備部長に再質問をさせていただきます。
 この斜面全体として、従来の延長線上ではなく、目的意識をもった分析・監視をする視点が必要ではないかという点です。
 いざ災害がおこってしまえば、それに対する措置は、砂防も、道路も、森林も、それぞれ調整しながら動けるルールができています。たいへん有能です。しかし、災害がおこる前に目をつけて、対策が必要かどうかを考えるという仕事は、県という組織は縦割というかそれぞれが専門的すぎて、どうにも不得手なんですね。
 先ほどもふれましたが、斜面ほぼ全体が気を付けるべき地域ですが、あそこが危ないここが危ないという所はピンポイントでしか調査されていないわけですね。大きな山のような土の塊を見るというのではなく、こことここは気を付けようということにしか目が行っていない。豪雨災害や南海トラフ地震への備えもあるでしょう。今後注目すべき地形的ポイント、ダムの現場や市町村・住民がどこに気を付けるべきかを探ってほしいのです。
 この土砂災害マップの状態を見て、これまで以上のことを検討する必要性を感じませんか。再度答弁をお願いします。

《再答弁》 県土整備部長
 議員からご指摘もありましたように、笹子トンネルの崩落事故以降、我が国の社会資本の老朽化問題は非常に喫緊の課題になっております。これまでは、今ご指摘のありましたように物事、事件とか事故が起きてから対策をするという事後保全の考え方でしたが、これからは予防保全という考え方をとりいれて社会資本の管理をしていかなければならないと、このように考えております。
 しかしながら、橋梁とかトンネルのように、人工物はこういった予防保全の考え方がだいぶ出来上がってきましたが、法面とか今おっしゃったような山塊とかという自然物に対しては、なかなかこれまでの知見も蓄積もまだまだ不十分なところもあり、国でもこれから長寿命化に関する施策を講じていくと、こういった状況になっていると考えております。
 和歌山県におきましても、こうした動向も踏まえ、またこういった危険箇所も多くありますので、県土整備部技術職員も一緒に研究をして対策が講じられるよう努めてまいりたいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 今後は研究をしていく課題だというご答弁だったと思います。私は積極的に受け止めました。
 今回、提案させていただいたような問題点を、行政と地域の住民が一緒になって問題意識を持ち、日ごろの防災意識などを高めていくということになれば、本当に素晴らしい成果を発揮できると思うのです。住民のみなさんに、気づいた小さな異常でも知らせてもらうというようなことを地域と連携を密にしてすれば、住民からの通報は本当に頼りになります。これは高性能な地元密着型のアンテナであり、センサーだと思うのです。
 研究者も入ってもらい、ぜひ調査をするよう検討を要望したいと思います。
 今日は二川ダムサイトを取り上げましたが、県内の県営ダム、発電事業者のダム、それぞれに課題があると思います。ぜひこの機会に、県としての対応を検討されるよう要望をさせていただきます。

(5)今日的気象条件や知見をふまえた土砂災害防止対策を
《質問》松坂英樹 県議
 これまでの議論をふまえて、5つ目の質問に移ります。
 去る7月に那智勝浦町で開催された「大規模土砂災害対策研究機構」設立シンポジウムでは、土砂災害のメカニズムや防災対策研究の一端が紹介され興味深く聞かせていただきました。
 航空機からのレーザー測定によって山の地形データをとれば、樹木に左右されずに、より正確な地形を図ることができ、地すべり地形の発見や崩壊危険個所のモニタリングに活用できるというようなことも報告されていました。先ほどから議論になった「地すべり地形」の判読・指定は、現在航空写真判定でしかやっていないわけで、地形データで見れば、ぬけていたところも見えてくるはずです。
 今後さらに新しい視点や知見、データなどを生かして、土砂災害の危険個所についても、新たな危険個所の発見・指定をすることや、適切な住民避難・災害防止ために要注意・要監視箇所を分析し対策を検討してゆくことが求められると感じています。
 国と共同設置したこの研究機構とも連携と共同を深め、集中豪雨など今日的な気象条件や、最新のデータや知見をふまえた、監視・情報提供・防災対策などを、和歌山県として先駆的にすすめてゆくべきではないでしょうか。知事のご答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 大規模土砂災害対策研究機構は、紀伊半島大水害を教訓といたしまして、大規模な土砂災害をいかに避けるのかといった大きな課題を解決するために、国土交通省が中心となって設立したものでございます。
 本機構には、本年4月に設置されました国土交通省の「大規模土砂災害対策技術センター」、これを核といたしまして、県、那智勝浦町の他に、地元和歌山大学、三重大学、京都大学、北海道大学などの研究機関が参画をしております。
 県もこれを支援しなければならないと言うことで「土砂災害啓発センター」と言うのを、これは建物を伴って造りまして、啓発を負うとともに、この中に「技術センター」と「研究機構」を入っていただくというふうにアレンジしたところでございます。
 県としては、わが国では先駆けとなる国、県、町、研究機関が一体となった研究、技術開発、啓発活動を率先して取り組むことにより、和歌山県の防災対策が一層推進され、また、全国各地で頻発する土砂災害対策にも必ずや役立つものと期待しております。
 また同時に、職員もかなりの数をここに投入することにしておりまして、直接的な研究成果を上げるということだけではなくて、将来、防災対策などに携わるときにたくさんの知見を身につけて帰って来てもらうと言うようなことも考えている次第でございます。

《要望》松坂英樹 県議
 知事からは、国とも連携しながら対策をすすめてゆく旨の答弁をいただきました。
 和歌山県は中山間地・急峻な地形の多い県です。それは、豊かな自然環境と人間がうまく折り合いをつけて暮らしてきた歴史をもつ県であるということでもあります。県民の身近で切実な要望である、土砂災害対策や洪水対策にいっそう力を入れて取り組まれるよう要望をして、次の質問へと移らせていただきます。


2.学力テストについて
(1)全国学力テストの結果発表を受けての対応
《質問》松坂英樹 県議
 全国学力テストの結果発表をうけ、県教育委員会としてどのような受け止めをし、今後どのような対応をしてゆくのかということが、今議会において多くの議員から質問がされ、教育委員会の答弁がありました。
 私からも、学力テストについて教育長にお伺いをしたいと思います。学力ということで言えば、どの子にもたしかな学力をつけたい、他人の痛みのわかるやさしい心、そして体も心もたくましく育ってほしいという願いは、すべての親の願いであり、教育にたずさわる関係者の願いでもあります。
 本来の学力対策は、一人ひとりの子どもの実態からスタートし、わかる喜びを重ねながら、たしかなで豊かな学力をつけてゆくものです。学校教育では、わかる授業を何よりも大切にし、助け合い・励ましあって伸びてゆく仲間づくりが重要となります。そして、教育行政の条件整備としては、対処療法的指導ではなく、厚みのある学力対策への支援こそがもとめられていると思うのです。
 今回の発表で、その順位や正答率が注目されている「学力テスト」ですが、これはそもそも学力をつけるための課題をさぐる「状況調査」という性格をもつものです。ところが、このテスト結果に右往左往し、学力テストの点数アップと順位アップという結果を追うことが目標となったり、小手先の取り組みに熱を上げるようなことになれば、本来の学力をつけるという取り組みから考えても、目的と手段がひっくり返って、まさに本末転倒になると考えます。
 教育行政が果たすべき条件整備という点では、昨日の本会議でも、図書館司書の配置の問題が取り上げられました。教育長からは、現在5市町で配置がはじまったと控えめな答弁がありましたが、学校図書館担当職員の配置状況を調査した文科省の一昨年資料では、公立小学校への配置全国平均が47.9%であるのに対して和歌山県は全国ただ一つゼロパーセント、中学校の全国平均が47.6%であるのに対し、これも全国ただひとつゼロパーセントだったわけですね。5市町あわせて45校で配置が始まったのですが、計算してみると和歌山県の配置率としては小学校で約13%、中学校で約10%というレベルですから、全国平均の約5割という水準からは、まだまだ大きく立ち遅れているという状況です。市町村と協力して配置をすすめたいとの答弁でしたが、ぜひこうした面でこそ、教育行政としての役割をしっかり発揮していただきたいと、強く要望をしておくものです。
(2)過度な反応による「学テ対策」偏重は慎むべきではないか
 また一方で、いわゆる学テ「先進」県や順位急上昇県などにおける「テスト対策」のゆがみも指摘・報道されています。
 学力テストがおこなわれる4月末にむけて、様々な「テスト対策」が行われているという報告があります。テストにむけて学校行事のスリム化が方針として出され、3学期にしていた音楽会を年内にすませるとか、4月に予定していた家庭訪問を夏休みに後回しにするというようなこともあったようです。
 春休みには課題をたくさん出し、新学期に入れば過去問などのプリントづけ、直前になれば朝の読書時間や授業時間内にも過去問を徹底してやらせたところもあるようです。こうした類似問題を反復的に解く過去問対策で身についた「学力」は本当の学力とは言えません。
 こうした学テ優先のテスト対策に熱を上げることになれば、そのゆがみやひずみは、結局子どもたちにふりかかることになります。
 教育長は答弁の中で、学力テストで好結果を出している他県の効果的な方策を学んで具体策の実践を指導してゆくと表明されていますが、小手先のテスト対策にならないよう充分に留意するとともに、子どもがおろそかになるようなことは厳に慎むべきだと私は考えます。
 全国学力テストの結果発表を受けての対応、ならびに、過度な反応による「学テ対策」偏重は慎むべきではないかという点について、2点あわせて教育長よりご答弁を願います。

《答弁》 教育長
 今回の全国学力・学習状況調査の結果というのを大変厳しく受け止めておりまして、直ちに教育委員会内に学力向上対策本部を立ち上げ、結果分析とこれまでの学力向上対策の検証に取り組み、より効果的な方策について検討を開始したところでございます。
 対策本部では、県内外の学力向上で成果を上げている学校の情報収集を行うとともに、課題のある学校などに指導主事等を派遣し、学校の現状に対し、適切な指導助言をしてまいりたいと考えております。また、家庭や地域にも働きかけ、土曜学習の取組や家庭での学習習慣の確立を図ってまいります。
 全国学力・学習状況調査は、これからの社会をたくましく生きぬく上で必要な学力を測るもので、基礎的な知識を問うだけでなく、子どもたちが実生活において、課題を解決する力が身に付いているかどうかを把握するものでございます。
 子どもたちにしっかりとした学力を身につけさせ、子どもたちが、心豊かに自信をもって生きていく力を育むためにも、県内すべての学校で課題を把握し、指導方法の改善につとめ、学力向上対策を講じることは必要なことと考えております。今後とも、県民から信頼を得られるような成果が出せる教育の実現に向けて、市町村教育委員会とこれまで以上に協力して学力向上に向け積極的に取り組んでまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 教育長からご答弁をいただきました。私が心配しているようなことには直接的にはふれられませんでしたが、教育委員会の考え方をお示し頂きました。私は、子どもたちと学校・家庭がひざを交え、本当の学力って何だろう、どんな力が子どもたちに必要なんだろうと話し合えること、そして学習に課題をもつ子どもに対してじっくりと教師が向き合える、そんな学校づくりをめざして和歌山県の教育がすすんでゆくことを願ってやみません。日本の教育が、学テ依存体質の学力観から卒業してゆくべきだとの提起もされています。
 今後ともこの学力テスト問題はしっかりとチェックしながら追いかけてゆきたいと思います。


3.コスモパーク加太用地の活用と県民負担
(1)消防学校用地の売買による返済見通しと県民の将来負担について
《質問》松坂英樹 県議
 最後の質問の柱である、コスモパーク加太用地の活用と県民負担の項目に移ります。今議会にはコスモパーク加太用地を県消防学校用地として売買する関係議案が提案されています。
 私たちはこれまでも、コスモパーク加太の債務返済スキームについては、関西空港土取り事業失敗のツケを、先送りして、最後は県民にまわすものだと批判してまいりました。
 関西空港建設のための土取り事業では、438億円もの赤字を出して返済不能となりました。これを30年かけて返済するスキームをたて、借地料を毎年払い、オリックスの債権譲渡などを経て、今年2月議会では借入金残高は352億円、そのうち根抵当権は95億円、県の債務保証は231億円と報告されています。コスモパーク加太用地の売買としては、特定調停後11年たって初めてのケースとなるわけで、この売買により債務返済スキームがどうすすむのかを企画部長にお尋ねします。
 今回の売買価格は、返済スキーム策定時の土地評価と比べていかがですか。また、今回の売買によって借入金返済がどうすすみ、県の債務保証など、後の県民負担の軽減にどう反映されるのか。ご答弁を願います。

《答弁》 企画部長
 消防学校予定地につきましては、平成15年の「調停に代わる決定」当時は平米単価12,900円でございましたが、今回の売却に当たりまして、土地の造成を行いました。その結果、今議会上程の売買価格は平米単価13,000円となっております。
 土地代金の総額は約5億9400万円で、用地造成費等必要経費を差し引いた約4億5800万円のうち、収益弁済として約2億7500万円、根抵当分として約1億8300万円を返済することとなっております。
 この結果、当初の返済スキームよりも早期に返済できることとなり、今後、県民負担の軽減につながるとともに、土地開発公社が支払うべき利息も軽減されますので、公社の経営改善にも寄与するものと考えております。

《コメント》松坂英樹 県議
 答弁をいただきました。売買価格は平米単価13,000円で、返済スキームを策定した価格と大差ないように聞こえましたが、お答えになったように、土地の造成費用を入れて13,000円と、造成前の鑑定評価の12,900円ですから、2割ほど割り引いて考える必要があります。いずれにせよ、11年の間に土地の値打ちはさらに下がってきているということは明らかだと思います。
 また、収益弁済分と銀行根抵当分に返済があてられ、県民の将来負担である債務保証の額まではかわらないということです。
 仮に今回の売買単価で残りの土地が全部売れたと仮定しても、約100億円の銀行根抵当分程度にしかならず、県の債務負担分は県民へのツケとして払わなくてはならなくなる計算です。たいへんきびしい状況にかわりはないということだと思います。

(2)コスモパーク加太用地活用の現状と今後の見通し
《質問》松坂英樹 県議
 こうした状況をふまえ、最後に知事に質問をさせていただきます。コスモパーク加太用地の今後の方向性についてです。コスモパーク加太用地の活用については、現在どのような引き合いがあり、今後どのような方向性で利活用をすすめてゆくお考えでしょうか。また、将来の県民負担を軽減するための手法については、返済スキームの見直し等も含め検討する考えはおありかどうか。知事のご答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 コスモパーク加太については、企業誘致用地、公共施設用地、防災対策用地としての利活用に向け取り組んでおります。
 現在、企業誘致用地として、加太菜園、メガソーラー発電所が稼働中でございまして、引き合いがあればどんどん行きたいと思います。それから、公共施設用地としては、今後県消防学校の建設を予定しており、そのための用地取得議案を今議会に上程しているところでございます。
 また防災対策用地といたしましては、既にヘリポートを整備しておりまして、県の広域防災拠点それの第一番目、第一広域防災拠点として、緊急時のヘリの発着と共に災害時の活用のための各種防災訓練等に利活用しているわけでございます。
 コスモパーク加太をどういうふうに扱うかという点については、新行財政改革推進プランに対応を示しております。というよりも、県民に隠すことなく対応を公開しております。
 したがいまして、これに沿って「調停に代わる決定」の返済スキームについては、今後も確実に実行していきながら、大規模用地が確保できること、自然災害に強いこと、京奈和自動車道や第二阪和国道など今後のアクセス面の向上などをアピールいたしまして、より一層企業への働きかけをして、早期売却に努力していくつもりでございます。

《要望》松坂英樹 県議
 知事からは、現在の返済スキームを確実に実行し、早期売却をすすめてゆく旨の答弁だったと思います。
 私たちは、この返済スキーム自体が、銀行がほとんど損をかぶることなく押し付けられたものだと批判してまいりました。知事はこの決定と返済スキームについて、当時は他に解はなかったと述べておられますが、約10年経過してこの状況という中、県民の将来負担軽減のために、この返済スキームを見直してゆくという姿勢を示されなかったことはたいへん残念であります。失敗のツケである将来負担を軽減するために、今後とも議会でしっかりとチェックしてまいりたいということを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。


 
                                                                  仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹和歌山県議(右)
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