2014年9月県議会
奥村規子 一般質問 概要記録
議会中継録画
2014917

1.子どもの医療費無料化の拡充

2.子ども・子育て支援新制度について
(1)新制度はどういうもので、何が変わるのか
(2)財源の確保はどうなるのか
(3)へき地保育所はどのようになるのか
(4)保育料はどのようになるのか
(5)保育士の働く環境の整備について
(6)どのような市町村への支援を行うのか

3.地域包括ケアシステムの構築における
  高齢者向け住宅の確保について

4.生活困窮者の自立支援について


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1.子どもの医療費無料化の拡充
《質問》奥村規子 県議
 議長のお許しを得ましたので、通告に従い、4つの項目について質問いたします。
 一つ目は、子どもの医療費無料化の拡充についてです。
 昨年の6月、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が制定され、今年の1月に施行されました。この法律の目的は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策を総合的に推進するというものです。
 貧困層の子どもが非貧困層の子どもより、入院や喘息で通院する割合が高くなっていることが国立社会保障・人口問題研究所の分析で明らかになりました。分析した研究者は「日本においても、親の所得によって子どもの健康に格差が生まれていることが確認された」と述べ、貧困層の方が入院の発生率が高い背景について「貧困層は通院が困難な環境にある」と指摘し、「たとえば母子家庭では母親が仕事を休むと減収になるので、売薬を与えて済まさざるを得ない状況が生まれていること。子どもをケアする経済的、時間的余裕がなく、子どもの病気が悪化する要因となっていると考えられる」と述べられています。
 こうした状況から、こどもの健全育成のためには、貧困対策がきわめて重要になっていますが、同時に子育てへの経済的支援としてこどもの医療費無料制度が重要になっています。経済的にたいへんな家庭でもこどもが必要な医療を受けられるよう、せめてその部分を援助することが、求められているのではないでしょうか。
 現在県下30市町村のうち、1町除くすべての市町村で県制度を超えて助成が拡充されています。市長会・町村会からも、来年度の県予算編成等に関する要望書には、乳幼児等医療費助成制度の対象年齢を小学校卒業まで拡充するよう要望されています。
 都道府県段階では、福島県が高校卒業まで、中学校卒業までは群馬・東京・静岡・鳥取、小学校卒業までは兵庫・京都・三重・徳島・栃木・秋田の6府県、小学校3年までは茨城・千葉・福井の3県と広がってきました。(201341日)
 県においてもぜひ、乳幼児からさらに対象をひろげ、子育ての支援を強めていただきたいと思いますが、知事の答弁をお願いします。

《答弁》 仁坂知事
 少子化が進行する中、子育て家庭への総合的な支援は重要な課題であると認識しております。
 乳幼児医療費助成につきましては、乳幼児の健康の保持増進及び子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、乳幼児医療費を支給する市町村に対して補助を実施しております。
 就学前の乳幼児を対象としているのは、病気にかかりやすく、病気にかかった場合に重症化しやすいために、早期に医療機関で受診してもらえるよう、自己負担分を無料にしたものでございます。
 近年、市町村が対象年齢を拡充していることは認識しておりまして、また、そうしていない市町村もあり、やり方もばらばらであります。その面で手当が手厚くない、そういう市町村は別のやり方で支援を手厚くしておるということで、まさにですね、地方分権、地方主権のあらわれであると思います。
 議員ご発言の助成対象の拡充については、ベースになる部分、先ほど言いましたようにどんなときでも必ずすぐに医療手当をしてもらいたいと県が思っている部分はですね、県が下支えをし、上乗せの部分についてはそれぞれの必要性でそれぞれの主旨を考えてですね、それぞれの地域の実情に応じ施策の特色を出すために実施しているものでございます。
 県として、市町村において差があるものを全部揃えなきゃいけない、そういうものではないのではないかというふうに考えております。

《再質問》奥村規子 県議
 答弁では、各市町村では総合的に施策をすすめて人口減少に対応したり、子育て世代への支援を図っているといわれましたが、再度おたずねします。
 市長会や町村会から県への要望があがってきているということを、どのように受けとめられているのでしょうか。

《再答弁》 仁坂知事
 もとより県もですね、子育て支援施策を充実していきたいという思いはございます。
 市町村からですね、色々ばらばらだから、色々選挙民なんかに自分ところはよそに比べると手厚くないと言うんで、県で全部やってくれというようなことを、結構言われているということはよく認識しております。議員ご指摘のように、市長会とか町村会でもそういう議論があることはわかっております。
 その時に私が申し上げておりますのは、やっぱり先ほど申し上げましたように、県はやっぱり一律そういうことが絶対必要だ、というところはちゃんとやるけれども、それぞれの市町村民とのコンセンサスでですね、それぞれがやっているところ、これは一部は高いが一部は低いというのがあるんですね。そういうところを全部高い所に合わせ、かつ、県が肩代わりしてください、というのはですね、やっぱりあの、どうでしょうかね、と言うようなことを私はいつも申し上げてるわけです。
 県民の立場、あるいは当該市町村の立場からすれば、市町村民の立場からすれば、市町村の負担が県の負担になるということなもんですから、市町村にとって良いことかもしれませんけれども、県民、市町村民からすればですね、それは選択の問題ではないかというふうに思うわけでございます。

《再々質問》奥村規子 県議
 私は、市町村や市長会、町村会からの要望というのは、住民のみなさんの切実な意見だと思います。それを市長会や町村会を通してあげられているということを、本当に真剣に受けとめて、検討していただきたいと思います。
 以前、2011年の12月県議会で、他の議員が子どもの医療費の拡充を求めたことがありましたが、そのとき「財政状況を考慮すると拡充は難しい」、「県として必要性等を検討していく」という答弁がありました。その後の議員への「措置状況」には、「今後も財政状況を考慮しつつ、引き続き検討していく」と載せられています。その後、本当に検討していただけたのか、ぜひお聞きしたい。
 先だって、県民のみなさんがいろんな要求をかかげて県当局と交渉する国民要求実現和歌山県大運動実行委員会に私も同席しましたが、やはり子どもの医療費は少なくとも義務教育終了まで無料にしてほしいという話がありました。それに対してもやはり、財政が大変厳しいといわれていました。
 知事にお伺いしたいのですが、拡充できないのは財政が厳しいからなのか、それとも、市町村から要望は聞くが、県の施策として子育て支援を総合的に考えていく中で医療費無料化の拡充はできないといわれているのか、その点をもう少し詳しくお願いします。

《再々答弁》 仁坂知事
 もちろん財政は厳しいんです。で、厳しいんですけれども、もちろん財政はゼロではありませんので、収入がですね、何らかの支出を県議会の皆さんと相談をしてやっていくということになるわけです。
 その中で、子育て支援というのは大変重要な政策目標だということは変わりはないと思います。だけど、その中で何をやるか、子育て支援ということに分類されたら、何でもとにかく全部やっちゃうんだというわけにはいかんと思うんですね。したがって県としては、県全体を見たときに、例えば市町村が消極的でもやってもらわないといけない、というふうに考えていることについては積極的に乗り出し、それで残りの部分はですね、その市町村のそれぞれの政策のバランスですね、そういうものに任せてもいいんじゃないかと、そんなふうに思っているわけです。
 無尽蔵に予算があるならば、それはもちろんやればいいというふうに思いますが、そうでない限りにおいては、今のような配慮をして、それで何が必要か、県としてはこれだけはやらなきゃいけない、あとはお任せして市町村の肩代わりみたいなことをやる必要はないんじゃないか、あるいはあるか、そういうことを常に検討をしているということでございます。

《再々々質問》奥村規子 県議
 大運動実行委員会の県への交渉の中で、お母さん方は、子どもに熱があっても少しくらいガマンさせているといわれたり、3人っこ施策で3人目の子どもの保育料は無料ですが、3人目ともなるとその他にもいろいろと経費がかかるので、お医者さんにかかりたいときでもガマンさせてしまうといわれました。そういった、子どもの命にかかわる問題を未然に防いでいく施策を、もっとやっていくべきではないかと思います。
 県民のみなさんからお話を聞く中でいま特にある問題が、子どもたちが歯医者さんにあまりかかれていないことです。学校で歯科検診があっても、その受診率は、半数以上のところもあれば、3割程度のところとバラバラです。ある方は、いま子どもの歯がぼろぼろになっている状況を報告されていました。やはり、受診に一定の費用がかかることが大変負担になるという声も聞いています。
 また、ある事情で息子の子ども(孫)3人を育てている高齢の女性は、年金と少し仕事をして足しにしている生活の中では、子どもの靴がボロボロになっても買えない、子供の体の成長にそって靴が買えないと、涙を流して訴えられていました。今、そういう貧困の状況があるうえ、さらにくらしの負担が大変多くなっている中で、少しでも県として、子どもの命にかかわる医療費の無料化拡充を検討していただきたいと思います。
 先ほども紹介しましたが、「県として必要性等を検討していく」と答えられていますが、本当に県民のみなさんの要求がどう検討されて、どんなふうになっているのか、なかなかわかりません。検討していただけたのか、そうでないのか、いかかでしょうか。

《再々々答弁》 仁坂知事
 そこに出ておりましたものが検討した、検討するといったことについてはですね、私の発言でございます。当件と同じでございますので、それは検討しなきゃいけないということでございます。
 和歌山県はどういう検討をしているか、毎年毎年新政策というプロセスがありましてね、そこで今年はやっぱりどういう重点にしていこうじやないかと、この部分は欠けているんではないかと、この部分もお金があったらやりたいけどどうだろうか、とそういうような政策の重みづけみたいなこと、あるいは新しい着想についての議論、そういうことをやっているわけでございます。したがって、常にほとんど毎日、検討しているといってもよろしいかと思います。
 また、奥村議員が例えば、今日こういうようなご質問であるという時もですね、どういうような経緯で我々は答えたらいいのかというようなこともまた、検討してですね、それで私はここで答弁をしている次第でございます。

《要望》奥村規子 県議
 とにかく、みなさんが子育てする中で、医療費の負担があることにぜひ心をよせて、引き続き検討していただきたいと思うのです。
 知事から、今の暮らしや子育てしている経済的負担が大変だということに共感し、なぜそういう願いが出ているのかということを、しっかり聞いていただきたいと思います。
 和歌山県の長期総合計画では、人口減少や急激な少子高齢化社会の進展に伴う活力の低下が懸念される中、子どもを持ちたい人が安心して子どもを育てることができる社会を実現することが重要だとして、「『子育て環境No1わかやま』を実現します」としています。No1というなら、子どもの医療費無料制度においても、県として力を入れるという姿勢をぜひ示していただきたい、この点を要望しておきます。


2.子ども・子育て支援新制度について
《質問》奥村規子 県議
 2つ目は、子育て・保育の新制度について、福祉保健部長にお尋ねいたします。
 来年4月から「子ども・子育て支援新制度」(以下、新制度)が本格的に実施されます。新制度は、これまでの保育所、幼稚園の制度を大きく改変する「改革」であるにもかかわらず、保護者のみなさんはじめ県民のみなさんからよくわからないと不安の声が聞かれます。中には保育制度が変えられようとしていることをご存知ない方もいらっしゃいます。
 現在の保育は、戦後の1947年に制定された学校教育法により幼稚園は学校の一種とされ、3歳以上の幼児を保育するものとされました。同年、児童福祉法が制定され、保育所は児童福祉施設の一種とされ、乳児・幼児を保育するものとされました。
 児童福祉法は、保育にかける子どもには市町村が保育の実施義務を負うことを定めました。
 共働き家庭やひとり親家庭が増える中、保育に対する要求が拡大していますが、国は保育所不足対策として公的保育の拡充をすすめるのではなく、「民間活力」の利用や規制緩和でそれに対応しようとしています。
 そこで、新制度とはどういったものなのか、何が変わるのか。
 財源の確保はどうなるのか、へき地保育所はどのようになるのか、保育料はどのようになりますか、保育士の働く環境の改善への取り組みはいかがですか。県の役割と市町村への支援はどういったものか。以上6点についてお聞きいたします。

《答弁》 福祉保健部長
 子ども・子育て支援新制度につきましては、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていく制度であり、待機児童の解消や認定こども園制度の改善が図られるほか、子どもが減少傾向にある地域でも小規模な保育等を支援することができるようになります。
 新制度の実施には、消費税が10%に引き上げられた場合には、毎年7000億円程度が充てられますが、量・質の向上には、1兆円程度必要とされており、国において予算編成過程で確保に努めることとされております。
 県内のへき地保育所の状況ですが、21箇所あり、新制度では、小規模保育事業や地方裁量型認定こども園への移行が選択肢として考えられます。現在、市町村において、地域の実情を踏まえた施設形態の検討が行われているところです。
 次に、新制度における保育料につきましては、世帯の所得の状況等を勘案して定められますが、現行の保育料の水準を基に国が定める基準を上限として、実施主体である市町村が定めることとなっており、現在、各市町村において検討されているところです。
 また、保育士の働く環境の整備については、処遇の面では、現在実施されている職員の勤務年数に応じた給与加算への更なる上乗せが図られることとなっております。
 県としましては、新制度の実施主体である市町村が、新制度の給付や事業を円滑に運営できるよう、情報提供や必要な助言、広域的な調整等を行ってまいります。

《再質問》奥村規子 県議
 ご答弁をいただきました。
 子ども・子育て支援新制度が、幼児期教育や保育などの量の拡充や質の向上を進めていく制度だという説明がありました。
 しかし、新制度の最大の特徴は、児童福祉法24条1項で、これまでどおり、市町村の責任で保育するという施設・事業と、24条2項に位置づく、保育所外の認定こども園、小規模保育など、基本的には利用者と事業者が直接契約し、保育料も事業者が徴収する、この2つが併存するという問題です。
 この直接契約では、市町村は施設などをあっせんするとしていますが、あくまであっせんです。施設に対してあっせんしても保護者の希望どおり入所できるのかどうか、また障害があるなど特別に対応が必要な子どもが、入所を希望しても直接契約でそれが保障されるのかどうか、希望がかなわなかった場合に市町村はどうするのか、など、市町村の保育の責任が後退するもとで、こうした問題が危惧されます。
 また、子どもが減少傾向にある地域でも小規模な保育などを支援することができるようになる、という説明もありました。
 これは、新制度で新たに導入される地域型保育の各事業類型のことですが、これは定員規模が小さいことを理由に、保育所などに比べて保育者の資格要件の緩和などが国基準に盛り込まれ、その結果、施設・事業によって保育に格差が持ち込まれることになってしまいました。
 小規模保育のC型については国基準で研修を修了すれば、無資格者でも可などとしています。どんな施設・事業でも子どもの保育を等しく保障するために、本来すべての事業で保育者は保育士資格とするべきではないでしょうか。
 へき地保育所は、新制度でこの小規模保育事業や地方裁量認定こども園への移行が考えられているということですが、現在はすべて保育士が保育をしているという状況が、後退する心配はないでしょうか。
 そこで再質問いたします。
 まず、新制度そのものについての問題です。市町村に認定を申請することになりますが、この認定については申請からどの程度の期間でおこなわれることになるのでしょうか。緊急に保育が必要になった場合はどう対応されるのでしょうか。
 また、市町村が利用調整・あっせんすることになっていますが、希望にこたえた保育所などへの入所が保障されるのでしょうか。保育所を希望したが認定子ども園のあっせんになるということはないのでしょうか。
 また、保育料は現在、市町村が国基準より低く抑えており、全国的には国基準の73.6%(2010年)です。この保育料が新制度であがらないのかどうか、この点をお答えください。
 もう一点は、今議会に提案されている議案第133号「認定子ども園の認定の要件に関する条例の一部を改正する条例」案に関係することです。
 これは、これまでの幼保連携型認定こども園を新しい単一の施設とする、子ども園の認定基準を定めるものです。認定子ども園には、3歳以上の教育時間4時間の子ども(1号認定とされる)と、3歳以上で8時間ないし11時間の保育を必要とする子ども(2号認定)の子どもが一緒に教育・保育することになります。
 もちろん、3歳未満の8時間ないし11時間の保育を必要とする子ども(3号認定)も保育します。4時間、8時間、11時間という子どもたちを集団保育することはたいへん負担が大きく、この場合、国基準で学級定数が35人となっており、県条例もそのままとなっていますが、こうした子どもたちを一緒に保育する学級が35人というのは多すぎるのではないでしょうか。
 また国基準では、1号認定の子どもの食事提供は園の判断、2号認定の子どもの食事は外部搬入を容認するとなっていますが、すべての子どもの自園調理方式による給食を提供すべきではないでしょうか。
 この点、お答えください。

《再答弁》 福祉保健部長
 子ども・子育て支援新制度についてのご質問で、認定についての期間等でございますが、支給認定に係る結果通知につきましては、子ども・子育て支援法で、申請日から30日以内に行うこと、また、30日を超える場合には、処理見込み期間及びその理由を通知することとされております。
 なお、緊急に保育が必要になった場合には、支給認定を待たずに保育所等を利用できる扱いとなっております。
 希望する園への入所につきましては、保育所等を利用するにあたっては、市町村が申請者の希望や保育の必要性、施設の利用状況等に基づき調整し、施設に対して利用の要請を行い、施設としては、受け入れすることが前提となっております。
 また、保育料につきましては、市町村が、現行制度の保育料の水準をもとに、現在、検討されているところですが、最終的には市町村の予算編成の過程を経て決定されることとなります。
 次に、認定こども園に係る条例案についてでございますが、1学級が35人以下の基準につきましては、国の基準を準用しております。
 一方、職員の配置につきましては、3歳の子どもに対して、おおむね20人につき1人、4〜5歳の子どもに対しては、おおむね30人につき1人の職員が従事することとなっており、これは、現行の認定こども園より高い基準であり、適切な人数と考えております。
 なお、在園時間の違う中での教育・保育については、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の中で、配慮すべき事項として示されており、県としましては、要領に基づき、一日の生活リズムを整え保育内容を工夫していけるよう、従事職員に対する研修等を行っていきたいと考えております。
 また、自園調理による給食の提供についてですが、幼保連携型認定こども園には、基本的に調理室を備えなければならないとしております。満3歳以上の園児に対する食事については、衛生面、栄養面等業務上必要な体制及びアレルギー等への配慮がされていることなど、一定の条件を満たせば、園外で調理し搬入することができるとしたものであり、問題はないと考えております。

《要望》奥村規子 県議
 新制度が始まり、いろいろな施設・事業が複雑になり、保育料もまだ決まっていないなか、来年4月から実施されるわけですが、本当に保護者や県民のみなさんに混乱をきたしているのではないかと思います。
 そういう状況のもとでも、児童福祉法24条1項に基づく保育所公立も私立も含めてですが、市町村の保育実施責任のもとでの保育所を、太く貫くことこそが大事ではないでしょうか。また、さまざまな施設・事業のなかでも保育の格差を持ち込まず、子どもの権利を保障すること、この点から制度への対応を考えることが大事だと考えます。
 条例案については、国基準でよいという答弁でした。しかし、これは県条例で決められるわけで、いくつかの政令市などでは、基準を上乗せした条例、たとえば3歳児の1学級を20人以下や、25人以下などと定めるところ、また、食事の外部搬入は認めず自園調理とする、というところがあります。こうした条例にすべきだと考えます。この条例については委員会のなかでも議論していきたいと思います。


3.地域包括ケアシステムの構築における高齢者向け住宅の確保について
《質問》奥村規子 県議
 3つ目は、地域包括ケアシステムの構築における、高齢者向け住宅の確保についてお尋ねいたします。
 地域包括ケアは「住まいを基本に、医療・介護・予防・生活支援サービスが切れ目なく提供される体制」と定義されています。「『住み慣れた地域で、最期まで暮らし続けたい』という願いを実現するために、2025年まで中学校区を単位に整備する課題」とされています。この地域包括ケア構想には「二面性」があると考えます。
 「自助」や「互助」の考え方を基本に、「脱施設」・在宅偏重型のシステムとして設計されています。今、高齢化の進展、貧困、社会的孤立の広がりのもとで、地域の「自助」「互助」の機能そのものが弱体化し、住み慣れた地域で暮らし続けることそのものが困難になっています。医療・介護、社会保障の充実があってこそ、安心して住み続けることが出来ます。
 そこで、県土整備部長にお尋ねいたします。
 地域包括ケアシステムの中で、住まいの一つとしてサービス付き高齢者向け住宅が位置づけられていますが、それはどういったものでしょうか。入居すれば月々費用はどれくらい必要でしょうか。また、サービス付き高齢者向け住宅に入居できない所得の少ない方への対策について、どのように考えられていますか。県土整備部長お答えください。

《答弁》 県土整備部長
 サービス付き高齢者向け住宅は、床の段差解消や手すり設置などバリアフリー構造を備え、安否確認や生活相談のサービスを提供する高齢者向けの民間賃貸住宅等で、一定の基準を満たすものが登録されており、県内には83施設、2,100戸あります。
 費用については、民間事業者によって運営されるため各事業者により様々ですが、県内の登録施設では、家賃、共益費と必須のサービス費を含めて約3万円から12万円となっております。
 サービス付き高齢者向け住宅に入居できない所得の少ない方々については、公営住宅としてバリアフリー化されたものや、高齢者に特化したシルバーハウジングがあり、低廉な家賃で入居が可能です。
 また、自宅をバリアフリー化するための住宅金融支援機構の融資制度もあり、入居される方々の事情に応じて選択できるようになっております。

《質問》奥村規子 県議
 高齢者施策からみて、サービス付き高齢者向け住宅に入りたくても入れない場合、どのような支援がありますか。制度改正で要介護1・2の方の中には今後入所できなくなる人への対応をどのようにお考えですか。福祉保健部長にお聞きいたします。

《答弁》 福祉保健部長
 高齢者施設には、低所得の方が入所できる施設として、特別養護老人ホームのほかに、社会福祉法人が運営する「軽費老人ホーム」や、経済的理由及び環境上の理由により自宅での生活が困難な方が市町村を通じて入所できる措置施設の「養護老人ホーム」があります。
 議員ご指摘の、特別養護老人ホームの入所要件から外れる要介護1又は2の方は、現在、入所者全体のうち1割未満であり、やむを得ない事情があれば特例的に入所が認められることから、影響はほとんどないものと考えております。
 また、今後、介護が必要なひとり暮らしや認知症の高齢者の増加が見込まれることから、県としましては、高齢者が引き続き安心して暮らせるよう、経済条件や個々の希望等に沿った高齢者施設等の計画的な整備を進めてまいります。

《要望》奥村規子 県議
 高齢者施設整備を計画的にすすめていく、と福祉保健部長が答えていただきました。地域包括ケアシステムの中で、施設だけでなく在宅も含めて、住まいをどうしていくか考えた場合、県土整備部長が答えていただいたシルバーハウジングや、公営住宅に低い所得の高齢の方でも安心して入居できるような施策を広げていただきたいと思います。
 地域包括ケアシステムは住まいのことだけではなく、地域で医療や介護の提供体制を市町村単位で構築するとしていますが、非常に心配するのは、いろいろなサービス提供が、できたりできなかったり、市町村によっていろいろ状況があると思うのです。
 例えば、訪問看護事業所の人手不足や経営の問題があります。また、これまでずっと議会でも問題になってきましたが、介護職員の劣悪な待遇を主な原因とする深刻な人手不足が依然と続いています。ケアシステムが本当に機能していくのか、非常に心配です。介護職員の「地域包括ケア」の目玉とされている「24時間の定期巡回サービス」はやっていけるのか。
 国の予算削減ありきの在宅化でなく、住まいの確保含め、だれもが安心できる地域包括ケアシステムとなるよう、市町村といっしょに取り組んでいただきたい。「絵に描いたもち」に終わることのないようにしていただきたい。


4.生活困窮者の自立支援について
《質問》奥村規子 県議
 4つ目は、生活困窮者の自立支援についてです。
 2013年12月に、生活困窮者自立支援法が成立しました。保護に至る手前の困窮者に「就労支援」をおこない、生活保護からの脱却を促す仕組みです。厚労省は「生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確保給付金その他の支援を行なうための所要の措置を講ずる」としています。
 生活保護からの追い出し、水際作戦にならないか不安の大きいところです。県としてどのようにお考えですか。福祉保健部長にお聞きいたします。

《答弁》 福祉保健部長
 生活困窮者自立支援法につきましては、生活困窮者に対し、生活保護に至る前の段階で自立支援策を強化し、自立相談支援や就労支援等を実施することで、困窮状態からの早期脱却を図るものであり、平成27年4月1日から施行されることになっています。
 こうしたことから、県では、来年4月からの円滑な制度の施行に向けたモデル事業を実施するなど、体制整備を進めております。具体的には各振興局に相談員を配置し、町村にお住まいの経済的にお困りの方への相談対応を行うとともに、就労支援が必要な方には就労支援員がハローワークに同行するなど求職活動を支援しております。
 県としましては、町村や社会福祉協議会、民生委員等関係機関との連携を強化することで、生活困窮者の自立に向けた支援が確実かつ適正に実施されるよう取り組みたいと考えております。
 また、各市に対しては、制度の円滑な実施に向け、担当者会議等、様々な機会を通じて助言、指導を行っているところです。
 なお、生活が急迫している方が相談窓口に来られた場合は、速やかに生活保護制度に繋ぐよう、またその際は、生活保護の申請権を確保するよう保護の実施機関に指導を徹底しているところです。

《要望》奥村規子 県議
 各振興局に相談員を配置して取り組んでいくということですが、聞いたところでは、その相談員が各振興局に1名ずつで、週4日の非正規の方ということです。本当にその方を中心に親身な相談をしていくことでは、大変な仕事になるのではないかと思います。今後、実際にやっていくうえで、考えていただきたいと思います。
 滋賀県野洲市の資料には、この制度の意義として、生活保護に至っていない生活困窮者に対する「第2のセーフティネット」を全国に拡充し、包括的な支援体系を創設するものとあります。
 制度のめざす目標には、本人の内面から沸き起こる意欲や想いが主役となり、支援員がこれに寄り添って支援すること。本人の自己選択、自己決定を基本に経済的自立のみならず、日常生活自立や社会生活の自立など本人の状態に応じた自立を支援すること。生活困窮者の多くが自己肯定感、自尊感情を失っていることに留意し、尊厳の確保に特に配慮する。そして生活困窮者の早期把握見守りのための地域ネットワークを構築し、包括的な支援策を用意するとともに働く場や参加する場を広げていく。生活困窮者が社会とのつながりを実感しなければ主体的な参加に向かうことは難しい。「支える、支えられる」という一方的な関係ではなく、「相互に支えあう」地域を構築する。とかかれています。
 県としてもこのような立場で取り組まれていると思いますが、ぜひ県民へのわかりやすい周知徹底をよろしくお願いして、質問を終わります。


 
                                                                  仁坂知事の答弁を聞く、奥村規子和歌山県議(右)
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