2014年9月県議会 文教委員会 雑賀光夫委員の質問概要記録         2014922
    文教委員会で質問する、雑賀光夫委員


森 文教委員長
○ 県内小中学生の全国学力テストの結果に対する質問

《質問》雑賀光夫 委員
 私も今回の問題は、真剣に考えなければならないと思っている。ただ、あまり平均点と比較して、「よかった」とか「危機的」とかという議論をするのはどうかという気もする。
 ある学校で校長先生が、ほっとした顔をして「うちの学校はよかった」と言ったそうである。そのとき、ベテランの先生が「校長先生、そんな問題ではないのではないか。うちの学校にも大変な子供が大勢いる」という話をしたというエピソードを聞いたことがある。
 和歌山県では、全国に先駈けて学力テストの悉皆調査を行った。私は、テストについては反対したものの、その結果を分析したことがある。例えば、中身を見ると、大規模校よりも小規模校のほうが学力は高い。逆のことを心配する質問もあったが、結果はそうであった。これは、教育委員会も「そうである」と言われた。「和歌山県は低い」、「何点下がった」と言うが、県内の各学校間でどういう傾斜があるのか。県立中学校で例えば80点ぐらいとすれば、一般の中学校で高いところは70点、低い中学校は40点ぐらいという傾斜があった。その学校は1学年150人という結構大きな学校であった。そのとき、学校給食の問題もあったので、私は学校現場へ聞き取りに入った。その学校とよく似た学校に行くと、弁当を持ってこられない子がいる、教室に入らない子がいるという大変な状況が起こっていた。私は元々教師であったので、もし私が教師であれば、この学校でまともに授業ができただろうかと自分に問い返してみた。そういう思いを持って、今回はまさに危機的であると思った。
 もちろん、平均点は一つの側面であり、平均点をもって議論することは否定しないが、しかし、その中で、小規模校と大規模校の問題、県内での学力格差、さらにその学校の中での学力格差、さらに生徒の生活水準との関係等、さまざまな分析をしなくてはならないと思う。
 文科省では聞き取り調査をしてクロス集計しているので、スマホとか朝食の問題とかいろいろな点は分析しているが、今言ったような、全体の格差の問題とか生活の関係とかについて、教育委員会では分析をしたのか。

《答弁》 学校指導課長
 まず、市町村間の格差については、先ほど言われたように、児童生徒数によって一概に比較するわけにはいかない。また、大変少ない学年しかない小さな市町村に関しては、学年により大きな変動があることも否めない。
 先ほど言ったように、格差という話はあるが、今回の県平均の分析をすると、大まかな話であるが、中央値付近に20市町村が入っている。その前後に特に高い市町、低い市町というような形で分散している状態である。ただ、その差というのは、そんなに顕著にはあらわれていない。中学校に関しては、格差は若干広がっている状態になっており、去年も一昨年も同じような傾向があった。
 各学校や各市町村で一定の傾向が見られるが、学校内の格差というものもあるかと思う。学校としてできることは、この格差が広がってきたのはいつ頃からであろうかということを自問自答する中で、もう少し学校が子供たちにかかわって、平均点を見るのではなく、授業についていけない子供たち、もしくはいわゆる学力がついていない子供たちに目を当てて、一人ひとりの課題を見つけ、その課題の幅の狭いうちからつみ取っていくような作業を丁寧に進めることが必要ではないかと思っている。小学校6年生になるとかなり課題が広がるので、それまでに全職員が一丸になってやるということも大事であるが、2年生、3年生の段階でその課題格差を埋めていくような取組が学校にも求められていると考えている。学校でできるだけ丁寧に埋めていくというのがまず我々の使命であると考えているので、そういった部分を進めていきたい。
 また、家庭においてもいろいろ課題がある。和歌山県では共育コミュニティという取組をしているが、できるだけ地域の方々の手をかりて子供たちにまんべんなく力がつけられるような取組を進めていきたいと考えている。

《質問》雑賀光夫 委員
 今、答弁にあったように、学力の問題を平均点で見るのではなく、個々の子供が一体どんな状況にあるのか、個々の学校がどうなっているのかをリアルに見て、それを分析して対策をとることが非常に大事ではないかと思う。
 その点、庁内に対策本部を立ち上げてくれたが、専門家を含めてそういう問題を分析するようなものが必要である。かつて小規模校と大規模校の学力格差の問題を質問したとき、教育長から「国の学力テストについての検討委員会の中でもそういう結果が出ている」という答弁があったので、そういう検討委員会があるかと思った。今のところ、庁内の担当部課で検討しているようであるが、教育の専門家も含めて検討委員会というものをつくる必要があるのではないか。

《答弁》 学校教育局長
 私たちも、即時性、スピード感を重視したので、まず庁内で本部を立ち上げて動き出そうということで対策・検討を開始した。ただ、学力の問題は非常に長いスパンで見ていかなければならないものもあるし、その背景には複雑な問題をはらんでいる面がある。そういう意味では、より専門性の高い方々からの助言も必要ではないかという意見も庁内では出ている。
 現在、対策本部では、有識者を交えた検討会議が必要かどうか検討しているところであり、今後、意見をいただきながら検討を深めていきたい。

《要望》雑賀光夫 委員
 教育委員会もよくわかっているので安心した。
 この議会での教育委員会の対応を見ていると、新聞でも全国最低ということが出て、いろいろな意見が出るだろう、とにかく早く対応しているという姿勢を県民にも議会にも示さなければならないと、大変急いでいるような気がした。しかし、問題を平均点だけで見てはいけないとか、あるいは庁内だけでなく専門家の意見をしっかり聞かなければいけないとかということについては、今聞いたところわかっているので安心した。ぜひともそういうふうにしてほしい。

森 文教委員長
○ 教育委員に対する意見要請

《意見》 山本教育委員会委員長
 先ほどから委員の意見を伺っていると、皆さん、ごもっともな意見を述べていただいているので、それは真摯に受けとめたい。
 実は、テスト結果に関してもいろいろな見方がある。多かれ少なかれ、世の中に競争原理が働いているとしたら、出てしまった結果については真摯に受けとめなければ仕方ない。
 「責任」ということをよく言われるが、子供に責任はない。私をはじめ教育に関係する者、大人の責任ではないかという考え方をすれば、ますます責任は重いという思いを持っている。
 私ども、県にある教育の基本方針、いろいろなプロジェクト、あるいは事業の整理をなかなか思うようにできないでいた。実は非常に単純な考え方であるが、教育振興基本方針という10年間にわたるあの方針は、例えてみると2段ロケットのようなものではないか。もう既に第1期が終わって平成26年度から第2期になっているが、それは本体の2段ロケットとすれば、そのほかのいろいろな対策、あるいは事業、プロジェクト、そういうものは補助ロケットではないかという気がする。とりわけ、いろいろな補助ロケットの中で、毎年毎年の点検評価を経た後でのアクションプランと「動く!和歌山の教育の創造」は補助エンジンの中でも強力なものとして働かせていかないといけないと考える。それに加えて、今回の学力テストも補助ロケットの中に入れて先へ進んでいかなければならないという思いがする。
 一言で言うと、本会議でも申し上げたが、教育のレベルを上げるには、最終的には現場の一人ひとりの先生方に責任を持ってもらわないといけない。このことが一番肝心ではないかと思う。とすれば、県の立場から言うと、現場の先生方に我々の気持ちが素直に伝わるよう、日ごろの連携が必要である。
 最近、私も気になっていろいろなところで話を聞いているが、もう少し小中学校に足を向けてもらいたいという意見もある。最近は非常に事務が繁雑になって、例えば県の指導主事が小中の現場へ赴くのも難しくなっている。現場からは、「以前ほど指導主事に来てもらえない」という話も耳に入ってくる。忙しい中ではあるが、もっと市町村との連携を強めるという意味でも、我々県の立場にいる者が現場を知るような施策が必要ではないかと考える。
 それから、先生方にいろいろな教育を現場で担ってもらうということについてであるが、実は、先日、ある中学校へ行った。そこは、家庭的にも恵まれていて、家庭教育といっても塾通いがずいぶんと大きな比重を占めている、そんな地域である。校長先生から一言、「うちは秋田県並み」という話があったが、それはそうとして、「では、塾に行けないような子はどうするのか」という話をすると、最下位の学校で勤められた経験がある教頭先生がたまたまいて、「最下位を何とかしないといけないと教師同士で話をした。頑張ったら3位まで上がった」と言われた。こういうふうになれば、やり方はどうあれ、とにかく子供たちに対するある種の自信というのを持たせることができるし、教員側でもある種の達成感も得られると思う。いろいろな工夫をして全体のレベルアップに努めてもらいたい。
 学力テストの結果の公表にもかかわってくるが、地域的に、あるいは学校として非常にレベルは低いところも、結果をうまく利用すれば引き上がってくる。特に県としては、思わしい結果が出ない地域や学校への重点的な支援も今後必要になってくると感じた。

森 文教委員長
○ 教育長に対する決意要請

《決意》 西下教育長
 本日は、学力に関して、子供を持つ保護者の切実な願いをもとに大変厳しいご意見、ご提言、ご要望等をいただいた。それに応えられるように、また県民の皆様方から信頼を得られるように、成果が出せる教育の実現に全力を尽くしてまいるので、今後とも文教委員の皆様方のご理解、ご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げたい。
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森 文教委員長
○ 学力テストの結果以外に対する質問

《質問》雑賀光夫 委員
 朝から学力テストの問題でいろいろ議論したが、教育委員会の第一義的な仕事は教育条件の整備である。そういう点から言うと、教職員定数の改善の問題がある。
 私も、最近の議会でも、学校現場があまりにも忙しく、先生が子供と向き合う時間をとれないという悩みがあると紹介した。かつて和歌山県では、同和教育を進めていたころ、150人ぐらい県単独で教員を持っていて、35人学級などを全国に先行して実施していた時期がある。同和の課題がなくなったので、それをなくすのはよいが、さまざまな教育課題がある。そんな中で、県単独教員は少なくなっているが、現在、国の基準以外に県単独で配置している教員は何人いるか。

《答弁》 学校人事課長
 委員ご指摘のように、和歌山県でも地域改善対策の一環として、国加配に加えて単独の教員を配置していた。
 しかしながら、いわゆる地対財特法の失効により、平成14年度から地域改善対策に係る全ての国加配は廃止された。県単独加配については、6年間の経過措置を講じることとし、徐々に削減し、平成19年度には地域改善対策に係る全ての県単独の加配教員も廃止した。
 現在、本県においては、統合に伴う諸問題解消のための県単独加配措置として、平成26年度は9名の加配教員を配置している。

《質問》雑賀光夫 委員
 答弁があったように100数十名あったものが、名目は違うが、現在は9名しかいない。
 朝からの議論でも、学力問題が大変であると認識したこの機会に、いろいろな面で頑張るべきではないかというのが皆さんの意見であった。学校現場にももちろん頑張ってもらうが、教育長としてもこの際、思い切って県単独で学力を引き上げるためにも、教員定数を増やしたいと予算要求したらどうか。

《答弁》 西下教育長
 今、学校人事課長が申し上げたように、いろいろな経緯もあるが、我々としては子供たちの学力だけではなく、教育条件の改善なども総合的に考えて検討したい。
 財政的な面もあり、即答はいたしかねるが、本県の教育条件の改善として必要なことであると捉えている。

《質問》雑賀光夫 委員
 次に、本会議でも議論になり、私も繰り返し質問しているが、定数内講師の問題である。
 本会議では300人という話があったが、高校も入れると500人ぐらい定数内講師がいる。地方交付税で措置されている、また3分の1の国庫負担になっている、つまり国で財政措置がなされ、そして条例で決められている定数内の教員でありながら、採用検査に合格していないからという理由で、講師という身分の先生が小中高を合わせて約500人あるという意味であると思う。
 本会議では、「教育上、いろいろ困難をもたらす」との話があったが、財政論としてお聞きする。
 講師という身分の方は、最近は多少昇給もするようになったが、どんどん入れ替わっていくので、一般の教員より安い給与で雇われている。一般教員の賃金水準と定数内講師の平均賃金はどのくらいか。

《答弁》 給与課長
 教育職員の平均給与についてであるが、校長・教頭を除く教諭等については、平均年齢が44.1歳で約37万円になる。講師等の臨時的任用教員については、産休等の代替教員を含むが、平均年齢が31.7歳で約23万円である。

《質問》雑賀光夫 委員
 国のシステムではきっちり見てくれているか難しいが、地方交付税と国庫負担で37万円に近い額が予算化されている。しかし、そのうち500人の定数内講師が平均23万円で雇われている。つまり3分の1が財政的に節約されているが、こういう定数内講師を置くのは財政上の理由か。

《答弁》 学校人事課長
 委員ご指摘のような、予算の節約ではない。

《質問》雑賀光夫 委員
 そう答弁すると思っていた。まさか予算の節約のためなどと答弁するわけはない。
 そうすると一方で、教育長としては、1人でも教員を採用したい思いはあるが、財政上の都合で苦労している。一方、県の財政全体で言うと、別のところでは、一般教員を講師に置きかえることで財政上の節約をしている。しかし、「決して節約する気はない。採用検査で合格していないからそうなっているだけだ」と言う。
 私は採用検査の合格者数を増やすように言っているが、一度に増やすと優秀な人材が得られるかどうかわからない等の理由で、これまで何度も言っているが聞いてもらえなかったという経過がある。これだけ学力テストの結果が危機的と言われるのであれば、教員をもっと増やして学力問題の解決に当ててはどうか。

《答弁》 西下教育長
 心情的には、私としてもわからないことはないが、定数内講師というのは、退職教員の見通しの問題もあるし、教員の資質向上という観点の課題もある。それと、人数がふえればそれでいいのかということもある。本当の意味で、教員の資質向上と子供たちにどう直接かかわっていくのかを総合的に検討して、そのことの理解をいろいろなところへ求めていかなければならないのではないかと思う。正採教員をふやせばよいというだけではなくて、総合的に和歌山の教育を充実させるための一つの方策であると思うが、今後検討していく。

《要望》雑賀光夫 委員
 私は、本筋は定数内講師を増やせと言っているのではなく、正式採用の教員を国の基準を上回って増やしてもらいたいと言っている。また、財政上の理由で困難というのは、定数内講師で節約しているではないかと申し上げている。その点は、12月議会は予算編成前の議会なので、知事の見解も含めて聞いてみたいと思う。これだけ学力問題が大変なときなので、教員の数を増やしたいという気持ちを教育長から知事に伝えるよう要望しておく。
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《質問》雑賀光夫 委員
 学力問題で、学力推進教員というものが配置されている。小学校で49人、中学校で51人の100人が教育困難校に配置されていると言われているが、これはどういう基準で配置されているか。

《答弁》 学校人事課長
 学習支援推進教員のことかと思うが、配置については市町村教育委員会と十分協議をして、児童生徒の状況及び教育課題等を精査し、学習指導、生徒指導、進路指導等に関して特に支援が認められる学校に対して必要に応じて配置をしている。

《質問》雑賀光夫 委員
 本当に必要なところに配置されているのか。
 一つ申し上げると、県下に100人いるなか、海南・海草という地域にそういう先生が配置されているか。

《答弁》 学校人事課長
 配置されていない。

《質問》雑賀光夫 委員
 県下で100人配置されているのに、海南・海草では1人も配置されていない。そんなに海南・海草というのは学力問題での苦労は少ないのだろうか。私は決してそのようには思わない。配置されている学校の一覧表もいただき、各学校に照らしてみた。確かに、大変困難な学校に2人3人と配置されているところもある。ところが、海南・海草ではないが、給食問題で実際に学校へ行ってみると、大変であると思った学校には配置されていなかった。これは適正な配置ではないのではないか。海南・海草ではそんな困難な学校はないというふうに見られているのかどうか。このことを含め、どう考えているのか。

《答弁》 西下教育長
 基本的に、市町村教育委員会と十分協議した上で、さまざまな意見や要望があるので、総合的に考えて配置をするというのが原則である。要望がなかったからとかあったからではなくて、教育委員会は教育委員会としていろいろな課題の状況把握に努めているし、それを踏まえて市町村教育長、教育委員会とも状況を十分聞きながら総合的に考えて配置をしているという状況である。

《質問》雑賀光夫 委員
 「総合的」というのは便利な言葉である。どんなときでも具合が悪くなったら「総合的」と言ったら申しわけが立つような感じがする。
 海南・海草の場合、紀美野町なり海南市の教育委員会からそういう配置が欲しいという要望はなかったのか。

《答弁》 学校人事課長
 今のところ、そのことについての強い要望はいただいていないというのが現状である。

《要望》雑賀光夫 委員
 学習支援推進教員の配置基準は非常に不透明であると思っている。私の結論を言えば、これは教育委員会が担当ではないものの、私は子ども会の予算問題などをよく問題にする。この古い同和教育を引きずっているのではないかということを申し上げると、教育委員会が「いや、そんなことはない」と言うのはわかっているので、もうこれ以上ここでは聞かないが、私はこの学力問題にきちっと取り組むためにも、それに必要な教員の数を増やしてもらいたいし、そして配置されている教員は本当に必要なところで、学習を支援できる、この低学力の問題に立ち向かえるような形で配置をしていただきたい。また、改めてどこかの場で議論をしたいとだけ申し上げておく。

議案に対する採決
議案第132号 平成26年度和歌山県一般会計補正予算
は、全会一致で原案可決



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