2014年12月県議会
松坂英樹 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 2014129

1.みかん対策
(1)みかん価格の低迷について
(2)ジュース等加工品の取組み
(3)生産・流通対策の強化
(4)農業における食料生産とエネルギー生産の両立

2.消費税10%増税について
(1)消費税10%増税をめぐる経済・政治状況についての所見

3.産科医など医師不足対策について
(1)産科医不足対策
(2)有田市立病院における医師確保策について
(3)モデル事業が始まった「産後ケア」について






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《質問》松坂英樹 県議
 質問に入ります前に、仁坂知事、3期目の知事就任、お祝いを申し上げます。開会日のご挨拶にもありましたように、県内の様々な現場で切実な声を改めてお聞きになってこられたと思います。知事におかれましては、県民全体の奉仕者として県民福祉の向上、県勢の発展に尽力されるよう願うものであります。引き続き県議会の場で、県民生活のための真剣な議論に臨んでゆきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、通告に従い一般質問に入らせていただきます。

1.みかん対策
(1) みかん価格の低迷について
 まず最初に、みかん対策についてお伺いをします。2014年産のみかんは、極早生のスタートから価格の低迷が続き、11月の早生最盛期には大幅に値崩れし、有田産のみかん10キロ箱で市場価格が1500円前後という厳しい価格形成となっていて、みかん農家からは悲鳴が上がっています。先月末には東京の大田市場に18万ケースもの大量のみかんが滞留しているといい、産地では12月に入って各所で出荷ストップという調整が始まったといいます。
 市場関係者がここまで「荷物が動かない」というのは、消費の落ち込みが最大の原因だとされ、そこには消費税8%への増税が大きく影響していると、私は考えています。
 また一方で、天候不順による品質への影響も毎年のように生産者を悩ませています。昨年夏の雨不足からは一転して、今年の8月は雨ばかりが続き、みかんの生育と品質に影響が出ました。玉太りがすすんだため、今年は裏年にあたりますが、生産量は例年より多くなっています。秋には晴れの日が続いたので糖度などは回復したものの、比較的いつまでも暖かかった秋と初冬の気候は、みかんの購買意欲という点でも、またみかんの保存の点でもマイナスに働いたといいます。
 有田地方の経済は、このみかんの価格によって大きく左右されます。農家はもちろん、小売りの商売人も、サービス業も、勤め人にも、経済効果が何倍にもなって地元を回る生きたお金です。
 これまでも、関係者が一丸となって価格形成のために苦労されてきたわけですが、県として、今年のみかん価格の深刻な低迷状況についてどう考え、どう対策をしようとしているのでしょうか。ご答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 みかんの価格については、本年産極早生みかんは8月の多雨による品質低下などにより低迷いたしました。
 その中で、県オリジナル品種である「ゆら早生」は、極早生みかん全体の平均価格より3割程度高い1キログラム当たり207円と健闘いたしました。
 その後、早生みかんに切り替わった際に一時的に回復したものの、昨日12月8日までのみかん全体の平均単価は1キログラム当たり167円と、再生産価格を大きく下回っており、厳しい状況と認識しております。
 県といたしましては、極早生から早生・中生の優良品種への改植やマルチ栽培などの高品質対策を引き続き実施するとともに、販売対策に取り組んでまいる所存でございます。

(2)ジュース等加工品の取組み
《質問》 松坂英樹 県議
 続いて、ジュース等加工品の取組みについてお伺いします。和歌山県のみかん対策の重要なポイントとして、みかんの生果だけに集中するのではなく、ジュース等加工品のすそ野を広げ、その魅力を高めることが大切だと強調してきました。
 この間、JAのジュース工場でもバリエーションや生産量が拡大されたり、地元有田でも、新規に農業法人による加工品生産施設の整備が進むなど、一定規模のものから個人のプライベートブランドまで、積極的な取り組みのニュースも聞くようになってきました。これらの流れをいっそう強化すべきと考えるものですが、取組みの進行状況はいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 本県では、平成21年度から国に先駆けて6次産業化に着手し、県独自の「新農林水産業戦略プロジェクト事業」により、みかんについてはヒット商品となったポン酢やストレートジュース、ゼリーなど7つの新しい商品が開発されました。
 また、平成25年度からは国の交付金を活用し、6次産業化サポートセンターを設置して個別相談会や加工・流通業者との交流会などを開催するとともに、新商品開発や施設整備を支援しているところでございます。

(3)生産・流通対策の強化
《質問》松坂英樹 県議
 3点目は生産・流通対策の強化についてです。昨年9月県議会の質問でこの点を取り上げました。加工食品の付加価値を上げて加工用みかんの買い上げ価格を引き上げる、また一方で加工用にまわす比率を上げることで市場出荷品質を高めて単価と農家収入を上げてゆく、こうした好循環を生み出すため、県としても生産から加工・販売を幅広く見通した政策強化をと求めたところです。
 これに対し部長からは、厳選出荷による生果の市場価格の安定化と同時に、加工用果実の確保につながる仕組みづくりを、引き続き検討してゆく旨の答弁がありました。
 今日の質問の第1項目、第2項目ともかかわって、たいへん大事な意味をもつものとなってきています。このほど示された来年度の新政策と予算編成の方針において、県として高品質果実の生産・流通対策の拡充を打ち出されていますが、どのような方向性で進めてゆくお考えでしょうか。ご答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 県産みかんの市場評価を高めるために、JAグループと連携しての厳選出荷、完熟みかんなど特色のある商品の生産拡大や光センサー選果機の整備などの支援策を来年度の新政策として検討しているところでございます。

(4)農業における食料供給とエネルギー供給の両立
《質問》松坂英樹 県議
 4つめの質問として、農業における食料供給とエネルギー供給の両立についてお伺いします。
 私は、今年度からみかん畑の上にソーラーパネルを設置し、農地として高品質なみかんの生産を続けながら、発電事業に取り組む農家の方に、畑でお話を伺ってまいりました。10アールの畑にパイプで骨組みを立ち上げ、一定の間隔を空けて点々とソーラーパネルを設置しています。合計すると畑の約3分の1強の面積にパネルが設置された計算になりますが、常に陰になるところがないように非常にうまく配置されています。この畑で栽培されているのは、ゆら早生という優良な極早生品種ですが、収穫を終えて、収量や糖度といった品質も例年とまったくかわらなかったということですし、それどころか、品種の弱点でもあった夏の高温障害は、このパネル設置により克服され、樹冠部にも焼けがおこらずに、より高品質なみかんが収穫できたといいます。
 この畑でのみかん作りは、平たん地ですが園地内にゆるい傾斜をつけて水はけをよくするなど、たいへん研究熱心に栽培をされていました。地元の太陽光パネル施工業者の方からも合わせてお話しを伺いましたが、パイプの骨組みについては農家の方がご自身で施工されたとのことで、ハウスなど施設栽培で培った農業施設の設置技術とともに、有田のみかん農家の技術力の高さを再認識し感動しました。
 ソーラーパネル設置費用は金融機関からの融資で、毎月の返済分を優に超える売電収入を上げているそうです。若い農家ですが、自分の子どもたちの世代にひきつぐ経営基盤をしっかりと考えておられました。私は彼の農業の将来展望をしっかりと見据えたお話に心を打たれた次第です。
 次に紹介するのは、NPO団体と生産者団体が共同した市民参加型の取り組みです。生産者団体の施設屋上への太陽光パネル設置に賛同する出資を消費者に募り、1口5万円で出資していただいた方に、5万5千円分の環境保全型農産物を10年間にわたってお届けするという「てんとうむしプロジェクト」のお話を紀の川市で伺いました。
 消費者にとっては、出資を通じてエネルギーや温暖化問題への貢献、あわせて地域農業の維持に貢献する喜びとともに、出資金相当以上の安心安全な農産物を受け取ることができるというお得感があります。生産者にとっては、消費者とこうした取り組みを通じて結びつき、長期間にわたって農産物をお届けするお客さんを得ることができるメリットと、農業収入に加えて売電収入も期待できるのです。これはたいへん魅力的なプロジェクトだと感じました。
 生産者団体の代表者の方が、「売電については先行き不透明な部分もありますが、このプロジェクトは、私たちがこの10年間、環境保全型の農業をこの地域で続けてゆくんだという決意の表れです」とおっしゃっていたのが印象的でした。
 以上2つの事例を紹介しましたが、まだまだ実験的な取り組みとはいえ、こうした魅力的な動きが現実のものとして広がってきていることに大きな期待をよせるものです。また将来的には、農業用の灌水事業の電力や水利施設の維持管理コストを売電収入により補う仕組みづくりも、農家戸数が減る中での農業基盤の維持という点で、県としても関係者といっしょに研究することを提案するものです。
 和歌山県農業の未来を考えるとき、狭い耕地面積ではあるものの温暖な気象条件を生かし、高品質な食料生産と、太陽光発電などのエネルギー生産が共存共栄してゆくことが、未来への展望を切り開くことになると考えます。
 農地や未利用地、農業用施設の屋上への太陽光発電や、バイオマス利用など農山村におけるエネルギー生産の広がりを県としてしっかりと応援してゆくべきだと考えますがいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 県では従来から農業を重要な基幹産業と位置付け、優良農地の確保や担い手への農地集積等を推進しているところであり、農村での自然エネルギーの活用に際しては、こうした施策に影響が出ないかということを考慮する必要があります。
 その上で、議員ご提案のように、太陽光発電などのエネルギー生産を、農業基盤の維持に役立てることは良いことであると考えます。
 県では、これまで、農業における小水力発電やバイオマスエネルギーの活用の推進に取り組み、事例は少ないものの生産現場に導入され始めております。
 ただ、議員お話しの、みかん畑での太陽光発電につきましては、みかんは光を多く必要とする農作物であり、発電設備によってある程度光が遮蔽されることから、産地が高品質生産に取り組んでいる中で、高品質で安定した生産が継続できるかどうかという点で検討すべき課題があると考えます。
 今後も、生産・加工・流通・販売それぞれの段階での施策を通じて、みかん農家の経営安定を図るとともに、自然エネルギーを活用した農業農村の振興に取り組んでまいる所存でございます。

《要望》松坂英樹 県議
 これまでも、県や生産者団体、また流通関係者など、各方面のみなさんが力を合わせて、高品質なみかんの生産、販売促進や消費拡大、食育などに取り組んでこられました。その努力の積み重ねで、この数年間キロ200円台をキープしてきました。こうしたご苦労を思う時に、今年の価格低迷は本当にショックですし、これ何とか方向性をもって対策を強化しなければならないという思いです。
 10キロ箱で1500円といいますと、共撰などで約700円の出荷経費を差し引かれると、キロ80円とかしか手取りがないわけです。ここから肥料や農薬・人件費などの経費を払うと生活がたちゆきません。そしてジュース用みかんに至っては、キロ数円という世界ですから、軽トラックにどんどんイッパイ積んでいって1000円とか2000円とかいうことですから、これでは良質な加工用果実が集まりませんし、調整機能をはたすこともできません。
 機能性成分を生かした魅力的な新品種の育成など、各分野での取組みもスピードアップしているわけですから、県としても、価格対策、加工品の育成、また農業の未来を照らすエネルギー生産との共存共栄など、今日お尋ねしたそれぞれの課題で、いっそう効果的な取り組みをすすめていただきたいということを、重ねて要望をさせていただきます。


2.消費税10%増税について
(1)消費税10%増税をめぐる経済・政治情勢への所見
《質問》松坂英樹 県議
 続きまして、2つ目の柱である消費税10%増税について知事にお伺いします。
 このほど、消費税増税を「先送り実施」すると安倍政権は判断し、解散総選挙がたたかわれています。私ども日本共産党県議団はこれまでも、消費税の負担が県民生活に重くのしかかっている現状を示すとともに、増税不況といえる国・県経済の状況からも消費税10%増税は中止をと求めてまいりました。安倍首相は、1年半の先送りをした後は、景気がどうあろうと10%への増税を絶対に実施すると断言しています。この増税「先送り実施」の是非が、いまするどく問われていると考えています。
 私たちは、増税中止を主張すると同時に、それに代わる財源を示しています。負担能力に応じた税負担で20兆円、加えて大企業の内部留保を活用して国民の所得を増やす経済改革で10年後には20兆円、合わせて40兆円の財源案も示し、社会保障を充実しながら財政再建をはかることは可能だとして、政治の転換を訴えているところです。
 知事はこの間の県議会での消費税問題の質問に対し、社会保障制度の機能を維持するためには消費税を充てることは理解できると答弁し、10%増税については景気や財政運営への影響を考える必要があるが政府が適切に判断するだろうとの考えを示してこられました。
 私たちは、消費税10%増税は「先送り実施」ではなくキッパリと「中止」をすべきだと考えますが、9月議会以降続々と発表されている各種経済指標、安倍政権の判断、そして知事選挙を通じて感じてこられたであろう県内状況・県民意識について知事の所見をお伺いします。

《答弁》 仁坂知事
 私は、9月議会において、消費税の再増税についてのご質問に対し、次のように申し上げた訳でございます。
 第一に、消費税の再増税を行う場合には、景気に悪影響を及ぼさないかどうか、第二で、一方でですね、再増税が行われなかった場合には、国の財政運営に対する信頼が失われ、国債の信認が低下し、ひいては金融市場および経済に影響を与えないか、また、消費税増税分は、福祉、医療、少子化対策等の社会保障の財源に充てられることになっていることから、社会保障の維持可能性がどうなるのか、これら全てのことを考慮し、政府において適切に判断されることを期待したい、と申し上げた訳です。
 今回、安倍総理におかれましては、景気の状況を見た上で、財政再建や社会保障制度等を総合的に判断の上、消費税の再増税を18ヵ月延期する決断をされたものと考えておりまして、現状では、私はこの判断は妥当であると思います。
 和歌山県の経済に与える影響でございますけれども、先ほど午前中の議場で申し上げましたとおり、地方に対して、大いに利益を上げた大企業が、あまり製品の価格あるいはサービスの価格に転嫁をしてくれていない。その問題が地方における賃金の上昇や、あるいは、消費の勢いに水をかけてる、という問題があると申しまして、それには、強力な政府ができて、そして、財界に対して大いなるメッセージを発してですね、それで全体として、その利益分が地方に回るようにですね、してもらわないと困る、というふうに申し上げた訳でございますが、これをですね、ぜひ新政権には期待をしたい、というふうに思っております。

《要望》松坂英樹 県議
 知事からは、9月議会の答弁を示されながら、安倍政権の評価や判断の妥当性や、午前中(の他会派議員の質問)には軽減税率への考えなども示されましたが、全体としては政府与党の政策を歓迎するお話にとどまったのは残念であります。価格転嫁の問題にも触れられましたが、そこは私は本質ではないと思います。
 私たちは消費税8%への引き上げは深刻な事態をまねくと指摘したが、県民の実態はまさにそのとおりになっていると考えます。消費税は、所得の少ない人に重くのしかかり、消費を直接冷やす、最悪の「景気破壊税」です。
 県民のみなさん、県内企業や中小業者のみなさんは、きびしい経済情勢の中でも必死にがんばっておられます。その県民の暮らしに心寄せ、はげます県政でありたいと考えます。
 いまたたかわれている総選挙でも、おおいに論戦を続けてゆきたいということを申し上げておきます。


3.産科医などの医師不足対策
(1)産科医不足対策
《質問》松坂英樹 県議
 最後の3番目の柱である産科医などの医師不足対策の質問にうつらせていただきます。先日、「産科医不足9県で深刻」との新聞記事が報道されました。これは日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の報告によるもので、和歌山県などの9つの県が、産科医不足が深刻だというのです。これら9つの県では、お産を扱う産科医が不足し、若手が少ないため早急な改善もむずかしいとことから、現状と将来についての項目で、いずれも厳しいと判断されています。若手医師の半数を超える女性医師の勤務環境の改善が課題だとされ、支援の重要性が強調されています。
 少子化対策が叫ばれる中ですが、安心して子どもが産めない和歌山県の状況と、これらの分析を県としてどう受け止め、どのような対策を考えておられるのでしょうか。
 その中でも特に、この間何度か質問させていただきましたように、有田地方では出産を扱う産科医が民間クリニック1カ所だけとなっていて、産科医不足問題は、住民の大きな不安の一つです。遠くの病院での検診・出産を余儀なくされる方、里帰り出産が困難だという方などの声もお聞きします。また民間クリニックのベテラン医師にも相当の負担がかかっていることから、産科医師確保と養成の課題は急務であると考えます。有田保健医療圏での産科医不足への対応については、その後どう進められていますか。
 また、県立医大での定員増による効果が県内に表れるのを心待ちにしているわけですが、医師養成と医療現場への着任の見通しはいかがでしょうか。とりわけ産科医養成の状況はどうなっているのかをあわせてご答弁を願います。

《答弁》 福祉保健部長
 産科医師数について、和歌山保健医療圏を除く医療圏では、全国平均を下回る医師不足状況にあります。ご指摘のとおり、日本産婦人科医会の報告においても、将来の産科医師の不足が見込まれておりますが、県では、従前から、産科、小児科などの特定診療科の医師不足への対応策として、修学資金制度を設け、医療提供体制の維持に努めてきたところです。
 有田市立病院の産科医の退職に伴う分娩休止に対しては、妊婦検診は最寄りの医療機関で行い、分娩は圏域外の連携病院等で行うセミオープンシステムなど周産期医療体制の確保に取り組むとともに、引き続き、県の青洲医師ネット等を通じて、医師募集に努めてまいります。
 また、医師不足の抜本的な解消策として、県立医科大学の定員を大幅に増員しておりますが、ようやく、初年度の入学生が、本年4月から2年間の初期臨床研修についたところです。これら研修医や医学生に、産科の魅力を伝え、一人でも多くの研修医等が志すよう働きかけてまいります。

(2)有田市立病院における医師確保策について
《質問》松坂英樹 県議
 次に、有田市立病院における医師確保策についてお伺いします。県の提案により、県立医大と有田市立病院が連携し、指導的な医師の確保につながる「寄付講座」の設置をすることが発表されました。有田市立病院における緊急の課題であった、指導的な内科医確保につながることを期待するものですが、その内容と今後の取組についてお示しいただきたいと思います。

《答弁》 福祉保健部長
 寄附講座は、有田市立病院内に、和歌山県立医科大学のサテライト施設を設置し、公募した教員である指導医等を2名配置し、研修医等を指導するとともに、不足する内科の診療にも従事するもので、県が、有田市と和歌山県立医科大学に提案し、この11月に両者で協定が結ばれました。
 現在、寄附講座による大学での教員募集が始まっており、県としましても、各地の医育大学をはじめ多くの医療機関や関係者に、情報をお伝えし、意欲ある医師の応募を期待しているところです。

(3)モデル事業が始まった「産後ケア」について
《質問》松坂英樹 県議
 最後に、モデル事業として始まった「産後ケア」について伺います。厚生労働省の「妊娠・出産包括支援モデル事業」として有田市の事業が採択され、産後ケアを含む取組みがこの秋からスタートしました。妊婦を支援する今日的な取り組みとして大いに期待するものです。
 私は有田市立病院をたずね、母子保健コーディネーターとして活動をはじめた助産師さんからお話を伺ってまいりました。市立病院では産科医不足により分娩は中止されていますが、妊婦検診は病院の産科で行い、分娩は圏域外の連携病院等で行うセミオープンシステムに取り組みながら、このほど有田市としてモデル事業をスタートさせました。助産師さんがその専門性を大いに発揮されている元気な姿が印象的でした。利用料金などもモデル事業に採択されたおかげで、より利用しやすいものとなっていました。
 マスコミからの取材もあり、新聞報道などでも、「有田市、産科医不足で新制度」と紹介され、地元をはなれた出産や、その後の育児に不安をかかえる母親をサポートする事業として注目されています。助産師がコーディネーターであることや、病院施設が中核となるモデル事業は全国的にもめずらしく、検診が行えるなどの専門性や行政と病院の連携がとりやすいという、ここならではのメリットを大いに発揮していただきたいと期待しています。
 「産後ケア」については、これをいっそうすすめてゆくよう、9月県議会でも意見書を採択しています。県としてもこうしたモデル事業の経験を生かして、いっそう妊婦と子育てへの支援が広がるよう積極的に取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 妊娠・出産包括支援モデル事業につきましては、県としても有田市が採択されるように国に働きかけたものであり、平成26年10月から取り組んでいただいております。
 この事業は妊産婦等のニーズに応じ、必要な支援につなぐための母子保健コーディネーターの配置や妊産婦を孤立化させないために行う産前・産後サポート、また、出産直後の母子への心身ケアや育児サポートなどを行うものです。
 妊娠から出産、子育て期までの支援につきましては、市町村が実施主体となり、妊婦健診、妊婦教室や新生児家庭訪問などが行われておりますが、当該事業がさらに県内の市町村に広がっていくように周知してまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 産科医師確保の問題は非常に深刻で、簡単に解決することの難しい問題です。
 報道された数字をもう少し紹介しますと、人口10万人あたりの産科医数は、東京都の11人に対して和歌山県は7.6人しかありません。人口密度が低く広大な面積をカバーしなければなりませんから数字以上にたいへんです。
 また、医師一人当たりの年間分娩数は、最も少ない東京の66人と比べて和歌山県は116人となっています。約2倍という状況です。
 しかし、これを大幅に上回るのが有田地方です。ただ一カ所でがんばっていただいている民間クリニックの待合室には、今月誕生した赤ちゃんの可愛い写真が掲示されています。毎月30人近い赤ちゃんが並びます。ですから年間300人は優に超えているでしょう。2倍や3倍どころではないのです。それだけがんばっていただいていても、有田地方の年間出生数は約500人ですから多くのお母さんが遠く離れた医療施設での出産を余儀なくされています。
 若手産科医の養成には時間と条件整備が必要です。100人に定員を増やした県立医大から、産科医養成が実を結ぶよう一層の取組みをお願いいたします。
 最後にもう一度強調しますが、この産科医不足問題、出産する施設がないという問題は、絶対にこのまま放置できない問題です。
 結婚・子育て支援、少子化対策、人口減少社会で出生率を上げる、地域の活性化と、様々な角度から関係者のみなさんが努力されていますが、この和歌山県、地元で安心して子どもを産むことができないという状況は、一日も早く克服すべき課題です。有田市立病院も一日も早い分娩再開にむけて、現場もがんばっておられます。地域保健医療圏の医療体制確保は県の責務です。県として一層の取り組みを重ねて要望して質問を終わります。


 
                                                                仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹和歌山県議(右)
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