2014年12月県議会
奥村規子 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 20141211

1.アベノミクスについて
(1)県内勤労者の雇用、賃金、
   倒産件数の推移の状況、県経済への効果

(2)実質賃金の状況について
(3)景気や県民のくらしはよくなるか
(4)地方の経済がよくなるために何が必要か

2.自治体の非正規職員の待遇について
(1)知事部局における事務補助職員の状況
(2)産前産後・育児休業の取得状況

3.南海和歌山市駅前の公衆トイレ設置について





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《質問》奥村規子
県議
 一般質問の前に、仁坂知事、知事選挙大変お疲れ様でした。私も来期、この場に立てるように、ぜひがんばってまいりたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

1.アベノミクスについて
(1)県内勤労者の雇用、賃金、倒産件数の推移の状況、県経済への効果
 議長のお許しを得ましたので、一般質問に入らせていただきます。
 1つめは、「アベノミクス」についてお尋ねいたします。
 みなさんもご存知なように、「アベノミクス」という言葉は造語で、安倍首相が行っている経済政策の総称をそのように言っているわけですが、具体的には3本の矢といわれる「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の3つの政策によって、日本の景気を浮上させようとするものです。
 安部政権は「アベノミクスで日本経済はうまくいき始めている」といっていますが、私の周りでは消費税の増税が引き金になり閉店が相次ぐなど、先行きの不安を持っている方ばかりです。
 安倍首相は記者会見などで、「アベノミクスは雇用が増え、賃金も上がっているから確実に成果をあげている」といっています。そこで、お尋ねいたします。雇用は100万人以上増えたということですが、県内の雇用状況はいかがですか。また、正社員の求人倍率はいかがですか。首相は賃金も2%上がったと言われていますが、県内の勤労者の賃金は上がっていますか。また、倒産件数の推移、県経済への効果について、商工観光労働部長にお尋ねいたします。

《答弁》 商工観光労働部長
 経済指標については、国の経済施策の影響だけでなく天候や為替相場の動きなど様々な要因により変動するものですが、議員お尋ねの項目について、直近の数字と2年前の安倍政権発足時の数字と比較すると、まず、県内の雇用者数について、平成26年8月には、277,794人であり、平成24年12月には270,664人であることから、約7,000人の増となっております。
 次に、正社員の有効求人倍率を見ますと、平成26年10月には0.57倍であり、平成24年12月の0.48倍と比較すると、0.09ポイントの改善となっております。
 さらに、県内の勤労者の貸金について、名目貸金指数では、平成22年の平均を100とした場合に、平成26年8月の数字は、87.5であり、平成24年8月の86.5と比較して、1ポイントの増加となっております。
 最後に、倒産件数について、民間信用調査会社のデータによると、平成24年が112件、平成25年が94件、平成26年は10月までで82件と、減少傾向にあります。

(2)実質賃金の状況について
《質問》奥村規子 県議
 今、商工観光労働部長から答弁いただいた数字では、やや緩やかに上向きということなんですが、厚生労働省が12月2日に発表した10月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価上昇を加味した実質賃金指数は消費税増税などの影響で前年同月比2.8%減と、16ヶ月連続でマイナスと報じられています。「アベノミクス」による物価上昇に賃金が追いつかない状況が続いているということですが、県では実質賃金はどのようになっていますか。

《答弁》 商工観光労働部長
 物価上昇率を考慮した実質賃金指数を見ますと、平成22年の平均を100とした場合に、平成26年8月の数字は、83.3であり、平成24年8月の86.3と比較して、3ポイントの減少となっております。

(3)景気や県民のくらしはよくなるか
《質問》奥村規子 県議
 全体として、生活が中々よくならないとか、「アベノミクス」の実感がないといったことがいわれていますが、それは、実質賃金が上向きになっていかないことなどがあるのではないかと思います。
 次に、安倍政権が進める「アベノミクス」は先にも述べたように、異常な金融緩和と財政拡大、「世界で最も企業が活躍しやすい国」をめざす規制緩和が3本柱です。大企業がもうかれば、賃金も上がり消費も増えるという「トリクルダウン」といわれる政策です。国民の所得を増やして消費を増やすという対策ではありません。大企業は儲けを増やしてため込み、大資産家は株高で潤っても、国民の暮らしはよくならないんじゃないですか。「アベノミクス」がうまくいっているというのは、大企業や大資産家のことしか首相の眼中にないということではないでしょうか。
 9月1日に発表された法人企業統計では、2013年度の大企業(資本金10億円以上)の経常利益は前年度比で8.8兆円増え、34.8兆円と、史上最高の利益となっています。リーマンショック前の2008年度、2007年度を超えたことになります。
 一方で、従業員給与は前年比で6200億円増えただけで、1人あたりでみると0.3%、月に1,500円程度ふえただけであり、物価の上昇にとても追いついていないと思います。
 こういった状況の中で、このまま「アベノミクス」を続けて和歌山県にとって景気がよくなりますか。賃金が上がり、県民のくらしはよくなるとお考えでしょうか。知事にお伺いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 長くデフレ下にありました我が国の経済情勢は、安倍政権発足以来の経済施策がうんと変わったということで、輸出型企業を中心に全体として量的な拡大をし、そして、また、株高とか輸出型企業の採算向上等、その従業員の給料上昇など、いいところも結構出てきているというところだと思います。
 デフレを続けておりますと、全ての経済主体が消極的にやっていった方が得だということになるわけですから、経済発展などとんでもない、という話になってしまうので、経済は緩やかな死を迎えるということになる。従って、政策の基本はデフレ退治であるということについては、私は間違いないと思います。
 一方、現状では、地方の経済は大してふるっていないと思います。それは、持ち直しの利益が輸出型企業に貯まっておりますが、こういう企業が依然として、例えば、部品供給先、あるいは下請け企業、あるいは運送その他の先などには、まだまだ厳しい値下げの要求を出していて、そういう貯まった利益をあまり均てんしていない、そういう所が大きいのではないかなと思うわけです。
 一方、つらい方の企業は、原料高でございますね、それから電気代も上がったし、など色々直撃するところにきて、従業員の給料を上げるのも、なかなか難しいということだと思います。
 そうすると、そういう企業が多い地域は、全体として消費があんまり伸びないので、経済がふるうはずがないということになるわけでございます。
 そういうように、本県のような輸出関連企業が少なくて中小企業が多いところはですね、あるいは中小企業といっても部品供給企業や下請けが多いところは、個々のケースでは量的な拡大が結構あるところもありますので調子の上がってきている面はあっても、地域経済全体としてはあまりぱっとしない。回復が遅れていると感じているところは、議員だけではなくて、正しいわけです。
 そのために政府は何をするべきか、ということなんですけれど、奥村議員のように、政策の基本を元に戻せと言っている政党が結構あります。
 それは、とても危険な事だと私は思うわけであります。政策の基本を元に戻したら、また、日本経済は停滞して、結局は人々の暮らしがしょぼくれてくる、となると思うのであります。
 したがって、政府が強力に、このような価格転嫁ですね、こういうものを慫慂(しょうよう)して産業界に働きかけていくことが大事ではないか、と思います。
 これによって、地方の企業が儲かり、その延長上で職員の給料が上がり、それで、県民の暮らしがよくなって、県経済の調子がよくなるということを期待したい、そのように私は思います。
 また、現政権で言えば、地方創生というものを謳い文句にして、今の価格転嫁だけではなくて、地方経済発揚のための梃子入れ、これも期待する状況にあるので、大いに期待したいと思います。
 あまりにも長く続き過ぎた過剰な円高によって、企業が過剰に資産を海外に移している。だから、金融政策の転換の効果が、直ぐにあらわれる筈がないので、多少時間がかかるのは我慢しなきゃいけないのではないかと、ずっと私は言い続けてきましたけれども、今もその考えは変わりがございません。したがって、基本の堅持をしながら、産業界に価格転嫁の梃子入れをして、そして、早期に効果があらわれることを期待してまいりたいと考えております。

(4)地方の経済がよくなるために何が必要か
《質問》奥村規子 県議
 和歌山県の状況が大変厳しいという点は、認識されているということです。
 次にお聞きしたいのは、「アベノミクス」の円安誘導策が、中小企業を次々と破綻に追い込んでいます。帝国データーバンクの調査によると、10月の円安関連倒産は39件に達し、現政権の発足以降で月間最多を記録、累計259件にのぼり、前年同期と比べると2.8倍の大幅増と報じられました。
 和歌山県は、小規模業者の割合が全国1高く、第3次産業の平均規模も全国1小さくなっています。
 県として、県経済がよくなるためには、じっとがまんではなくて積極的にどうやっていったらいいかということを、知事がどのようにお考えなのかお聞かせいただきたいと思います。

《答弁》 仁坂知事
 先ほど、確か、お答えをしてしまったと思います。先ほど、申し上げた通りであります。

《再質問》奥村規子 県議
 私は前の質問項目で「景気や県民の暮らしがよくなるか」ということをお尋ねして、その後の質問で「地方の経済がよくなるために何が必要か」ということをお尋ねしているので、その時に答えていただいたらよかったんですが、一緒に言っていただいたなと思いながら聞かせていただきました。
 知事が議会の冒頭であいさつされた中で、「景気や雇用といった県民生活に深くかかわる切実な声を数多くいただきました」と言われました。構造的な不利な条件の中でもみなさんがんばっているのには知事も共感し、知事自身もがんばらんとアカンということで、ごあいさついただいたと思います。
 私は、和歌山県の厳しい状況の中で、中小業者が大変多いなか、そういった切実な声というのを、具体的にどう聞かれたのかなと思いました。知事は「企業誘致をいっそう推進してまいります」と言われ、「働く場をさらに増やしてまいります」とも言われました。
 そこで私が言いたいのは、安倍首相は雇用が100万人増えたと言いますが、実際には非正規雇用の方が増えているのではないかということです。
 小規模事業者が元気になることこそ、地域経済活性化への道だと思います。しかし、小規模事業者にとっては「アベノミクス」の効果どころか、円安による燃料、電気料金、原材料の高騰、そのうえ消費税増税で消費が後退するなど、厳しい状況が続くばかりです。事業所数は、3年間で7%減っています。特に、小規模事業者の減少が目立っています。
 県の商工予算は、2014年度で1000億円を超えていますが、その92%は金融対策費です。一部企業の海外進出や成長分野を応援する施策は目立っていますが、商店街や小規模事業者への応援策は削減されているのではないでしょうか。商業振興費は、24億5千万円(2005年決算)から年々減り、13億4千万円(2014年予算)とほぼ半減しています。
 今総選挙が戦われていますが、「アベノミクス」からの転換が必要です。正規雇用を増やし、消費税増税を中止し、大金持ちや大企業に応分の負担を求める税制改革で、社会保障充実と財政再建をはかるということが大事だと考えます。
 一点だけ、再質問します。知事として、「企業誘致の推進」や「働く場をさらに増やしていく」というところで、正社員を増やすという働きかけをぜひしていただきたいのですが、お答えをお願いいたします。

《再答弁》 仁坂知事
 一点だけとおっしゃられましたが、先ほどの商工関係経費が減ったというのは、力を入れていないと思われるかもしれませんが、たぶん、奥村議員はわかっておられると思いますが、基金の出入りによって、そんな数字になってますが、別に商工関係の政策を緩めたわけではありません。
 正社員の問題に関し、自分の考えを申しますと、かつて、今から10年、あるいは20年前でございますが、終身雇用は日本の制度としてあまり望ましくない、アメリカ型でどんどん職を変わっていくようなのがいいんだ、という声が経済界の主流となったことがありました。それが、労働関係の規制緩和の原点になっているところもあります。
 私は、実は自分の好みを言うと終身雇用は賛成です。会社のために一生懸命に仕事をする、正社員として会社のために尽くす、それが報われるということは、非常にいいことではないかと思います。
 ただ、あの時、今もそういう状況ですが、会社の経営自体が成り立たない、という側面があって、もうちょっと労働関係を円滑にフレキシブルにできるようにしなければ、会社として日本に投資できない、という話があったので、やむを得ないのかなと思いました。
 非正規雇用と正規雇用について言えば、正規雇用の方が良いに決まっている。しかし、正規雇用でなければいけない、とあんまり言い過ぎると、そういう言い過ぎる国、あるいは地方では投資がまったく進まない、ということになってしまって、かえって職を求めている人が損をする、ということになるのが論理的帰結です。
 したがって、労働の需給が逼迫してくるということが、実は正規化の近道かと私は思います。なぜならば、需給が逼迫すると、どうしても労働者を離したくない、それならば、いつでも離れていくような非正規雇用よりも、ずっと長く働いてくれる正規雇用に切り替えた方が良いという、インセンティブが必ず発生するわけです。したがって、雇用の場をとりあえず増やすということを念頭において、その結果、正規雇用が増えてくればいいなと、私は思っている次第です。

《要望》奥村規子 県議
 県民のみなさんの声も聞いていただいたと思いますが、特に、若者も含めて非正規雇用の方たちは不安な毎日を過ごしていると思います。結局は自立を妨げていくという側面も多くあると思います。
 今後も各企業などに、雇用の場を増やすことと合わせて、正規雇用を増やす働きかけをぜひしていただきたいと思います。


2.自治体の非正規職員の待遇について
(1)知事部局における事務補助職員の状況
(2)産前産後・育児休業の取得状況
《質問》奥村規子 県議
 次の項目は、自治体の非正規職員の待遇について、お尋ねいたします。
 今日、国際社会は、ディ−セント・ワーク(人間らしい労働)の実現を各国に呼びかけていますが、日本の場合は現在、労働者の3人に1人、若者や女性の2人に1人が非正規雇用労働者となっています。近年は、国や自治体が、多くの部門・業務で公務員を、期限付きの不安定な非正規の形態の下で使用しています。一方で、公的業務や公的サービスが派遣や請負の形式を利用して、民間業者に委託される例が増えています。
 そして今、政府は盛んに「女性が活躍しやすい社会をめざす」と言い、「全ての女性が輝く政策パッケージ」を発表しています。その第一の柱である「安心して妊娠・出産・子育て・介護をしたい」の一つ目の「切れ目のない妊娠・出産支援の強化」の中で、「結婚・妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援の先駆的な取組を行うことを支援する」と述べられています。
 県の場合も、知事部局に事務補助職員などの非正規雇用の職員さんがいらっしゃいます。その事務補助職員の占める割合は、6.2%と聞いています。そこでお尋ねいたしますが、知事部局における事務補助職員の方は、現在何名でしょうか。そのうち、女性の占める数、割合をお教えください。また、産前産後休業・育児休業の取得状況もあわせて、総務部長にお聞きいたします。

《答弁》 総務部長
 12月1日現在、知事部局における事務補助職員は246名であり、そのうち女性は240名で、97.6%を占めております。
 また、産前産後休暇の申請、取得実績は、12月1日時点で1名です。なお、育児休業については、取得実績は今のところありません。

《要望》奥村規子 県議
 事務補助職員の方は、圧倒的に女性が多いということになります。年齢的にも20代から60代と幅広くいらっしゃることも聞いています。働き続けていくなかで、妊娠・出産・子育てのことや、介護の問題も切実になってくると思います。
 総務省より本年7月に、「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」という通知が出されています。「(平成)21年通知の趣旨が未だ必ずしも徹底されていない実態が見受けられ」るので、それを徹底していただきたいということで、「各都道府県知事におかれては、貴都道府県内の市区町村に対してもこの旨周知いただきますようお願いいたします」とあります。県からも、各市町村の実態を掴んで、臨時・非常勤職員のみなさんの労働環境を、ぜひ改善していっていただくよう要望します。
 最後に、女性が活躍しやすい社会に向けた環境整備を、民間企業も含めた社会全体で進めるため、まずは県が率先してその範を示していただきたいと思います。
 そのため、正規職員のみならず、非正規職員も含めた女性職員全体の処遇改善について引き続き努力していただき、繰り返しになりますが、特に非正規職員については、先ほどの通知を生かして、各市町村に働く職員の状況も把握し、助言やアドバイスすることもあわせて要望します。


3.南海和歌山市駅前の公衆トイレ設置について
《要望》奥村規子 県議
 最後の項目は、南海和歌山市駅前の公衆トイレ設置についての要望です。
 まず、みなさまにお礼を申し上げます。昨年の暮れに、南海和歌山市駅ビルの高島屋撤退のニュースに多くの方がショックを受けられました。私は、日本共産党和歌山市議団の方といっしょに、駅を利用されている方や駅周辺に住まわれている方々からアンケートに御協力いただき、日常の買い物に大変困ることなど、生の声を高島屋さんや県、市に届けさせていただきました。残念なことに高島屋は撤退となりましたが、その後にスーパーが開店しホッとしているところです。ご尽力いただいた関係者のみなさまに感謝申し上げます。
 アンケートの聞き取りなどで、約100人近くの方からご意見をいただきましたが、「駅前にトイレがなく困っている」という話がありました。もともと、南海ビルには1階にトイレはありましたが、現在閉鎖されています。スーパーの店内と地下食堂横にあるだけで、開店している時間帯しか使用できません。
 このような状況の中で、あるお店の方は毎日「トイレはどこか」と聞かれ、多いときには1日10回も尋ねられるということです。来年は国体と障害者スポーツ大会があり、県外から多くの方を迎える玄関口としては、あまりにもお恥ずかしい状況です。
 和歌山市には、公衆トイレ設置の要望署名約900筆をお渡ししました。
 観光振興の立場からも、また、高齢者や障がい者のみなさんにとって利用しやすい駅前にするために、ぜひ県としてもお考えいただきたいと思います。中長期的なまちづくりを考えることとあわせて、住民がいま困っていることに答えながら、まちづくりを進めて行っていただきたいと思います。今回はトイレの問題を取り上げましたが、他にもお困りのことがたくさんあります。高齢者の方が腰を下すところがない、タクシー乗り場の段差を解消してほしい、市営駐車場の利用料の問題などなど、解決できるところからでも、どんどん取り組んでいただきたいと思います。これは市の問題でもありますが、県も一緒になって解決できるよう、ご支援をよろしくお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。


 
                                                              仁坂知事の答弁を聞く、奥村規子和歌山県議(右)
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