2014年12月県議会
雑賀光夫 一般質問 概要記録
 議会中継録画
 20141210

1.学力テストと教育問題
(1)教育とは何か
(2)中高一貫県立中学校をめぐって
(3)学力テスト結果をめぐって
  ・テスト結果を追い求めるゆがみの心配がないのか
  ・専門家による結果の分析をじっくりやること
  ・PISA調査への批判をどう考えるか
(4)教職員定数改善について
  ・県独自の教職員増員について
  ・「40人学級」にもどすという財務省の動向をどう考えるか

2.保健所の役割について
(1)保健所が果たす役割と最近の感染症の取り組み
(2)医師資格をもった所長を配置することの意義とその努力

3.浮上式津波防災堤防のその後
(1)その後の検討状況
(2)海南市民に対する国・県の説明責任
(3)国の責任で納得できる対策を



1.学力テストと教育問題
(1)教育とは何か
《質問》雑賀光夫 県議
 議長のお許しを得ましたので、質問にはいらせていただきます。
 9月県議会では、全国学力テスト結果を踏まえて、本会議でも、文教委員会でも議論がありました。その後の学校現場で起こっていることの一端を聞きながら、私は「大変な事態がおこっている」という心配をしています。
 この心配をとりのぞくためには、個々の問題をとりあげる前に、「教育とは何か」ということに立ち戻って考えなくてはならないと思います。
 教育というのは、いうまでもなく人間を育てるいとなみです。体をそだて、知識を身につけて、情操や道徳をみにつける、全面的・総合的なものでなくてはなりません。
 若い芽を早く大きくなあれと毎日引っ張っていたら、若芽を枯らしてしまったというたとえ話がありますが、笑っているわけにはいかない、実際にそんなことが、社会にも教育界にも決して少なくないのです。
 子どもをある面から追い立てたとき、どんな歪みが生じるのか。もっとも極端なものが、少年犯罪であります。幼児を殺すというような少年犯罪の報道を聞いて、私たちは戦慄します。親はどんな子育てをしていたのか、決して人殺しを育てようとしたわけではない。優秀な子供に育てようと主観的には思っていた場合が少なくないわけです。
 この場合は、極端な場合だといわれるかもしれません。それが、もっと大規模に行われているのが、管理と競争の教育が広がる中で多くなってくる不登校の問題であり「いじめ」の問題です。
 教育現場のプレッシャーから逃げるのが「不登校」であり、それを他に転嫁して憂さ晴らしをするのが「いじめ」だといってもよかろうかと思います。同時に、競争の教育の中で人権意識の希薄化という問題もあります。そして、その行き着く先が「子どもの自殺」であります。
 マスコミも教育行政も、子どもが自殺に追い込まれて、はじめて大騒ぎする。それでいて、「早く大きくなあれ」と若い芽を引っ張るような愚かなことをしているときには、そのことに気が付いていない場合がある。
 きわめて単純にスケッチしましたがいま、「学力テスト結果」をめぐっておこっている事態も、この構図の中で、考えてみる必要があると思います。
 教育長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 教育は、子どもたちが人生を豊かに生きるための基礎・基本となる力を育む営みであり、次代を担う人材を育てるという意味で、私は「未来へのかけはし」であると考えております。
 そのため、県教育委員会では、和歌山で育つすべての子どもに、今日の変化の激しい時代を視野に入れながら、個々の子どもの抱える様々な課題にもしっかりと向き合いながら、知・徳・体のバランスのとれた教育をていねいに推進していくことが大切であると考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 「バランスのとれた教育を丁寧に推進していく」とお答えになりました。「早く大きくなあれ」とひっぱってはいけないのです。

(2)中高一貫県立中学校をめぐって
《質問》雑賀光夫 県議
 教育行政がゆがみを生んで、是正せざるをえなくなった例を一つ上げておきましょう。
 教育委員会は来年度から橋本市・御坊市での中高一貫県立中学校の学級数を減らす方針だとお聞きしました。私は、10年前に和歌山市で中高一貫県立中学校が発足したときにも反対しました。
 その後、橋本市でこの学校がつくられるときに2005年の9月県議会文教委員会で、「和歌山市の県立中学校にはいる生徒は、60人に一人だが、橋本市の県立中学校は15人に一人だ。」と地元の中学校への否定的影響がかならずあると指摘しました。
 よくできる生徒を集めていい学校をつくるつもりでも、大きなゆがみを生む。案の定、公立中学校への打撃はきわめて大きかった。近くの中学校は、中高一貫校ができる以前の和歌山県学力テストでは、英語の正答率が88%以上あったものが、50%になった。別のある中学校では83%であったものが46%あまりになった。このころ文教委員会で各地域をまわったとき、地元の校長さんは「県立中学校は地元の中学校に良い刺激をあたえるといわれたが、受けたのは打撃です」と言われました。その後、このたび1学級減という方針を県教育委員会も固められました。
 どういう反省を持って、県立中学校定数縮小されるのでしょうか。

《答弁》 教育長
 県立中学校のあり方につきましては、これまで、様々な立場の委員からなる第9期きのくに教育協議会の報告で出された地域の公立中学校への影響等についての課題や、県議会をはじめそれぞれの地域からのご意見を踏まえ、検討してまいりました。
 県立中学校設立の意義は変わるものではありませんが、少子化の急激な進行の中で、公立中学校との共存も考慮して、来年度から古佐田丘中学校・日高高等学校附属中学校の募集定員を削減することといたしました。

(3)学力テスト結果をめぐって
・テスト結果を追い求めるゆがみの心配がないのか
《質問》雑賀光夫 県議
 「すばらしい学校をつくる」つもりが大きなゆがみを生んだと私は思います。
 ここから、「学力テスト」結果とその受け止め方、対策の問題です。
 私は、県教育委員会の対応は、平均点が低かったことにショックをうけて、「危機的だ」などといって短絡的な学力対策で、教育そのものをゆがめる危険性が大変大きいと心配をするものです。
 プレッシャーをうけるのは、学校現場の先生、とくに校長であります。
 海南市のある小学校で、校長がほっとした顔をしておっしゃったそうです。「うちの学校は全国平均より上でよかったなあ」
 ベテランの先生がいわれました。「でも、うちの学校にだって大変な子どもが大勢いるんですよ」
 ベテランの先生がおっしゃりたかったのは、平均点で「よかった」「わるかった」と考えるのは教育の本質を見落としてしまうおそれがある。一人一人の子どもがどうなっているのかをしっかり考える必要があるということでしょう。
 学力テスト結果が大幅にアップした県があります。その一つが沖縄県ですが、8月26日の「琉球新報」は「小学急上昇に驚きと手応え」という見出しとともに「快挙にも関係者冷静」という大見出しをつけ、「対策で授業遅れ」「学テ優先、行事は削減」「教育庁の訪問指導・学校現場に新たなひずみ」という見出しがあります。また「解説記事」があって、「背景に『過去問』徹底」という見出しがついています。
 「過去問」というのは、全国学力テストの「過去の問題」でテスト練習をして、その傾向になれさせるということです。夏休み中に県内の算数・数学教育サークルの先生が沖縄の先生を招いて話を聞く機会があったそうです。「『過去問』の練習で授業時間がけずられる。これでは本当に学力がつくはずがない」と語られたそうです。
 かつて、仁坂知事は、学力テストの成績問題について「私は、テストの成績を上げる方法を知っています。それは、同じようなテストで練習することです。しかし、そんなことは解決にならない」という意味のことを述べられ、私は卓見だと心の中で拍手しました。そして、後に私の質問のまえおきで高く評価したことがあります。
 県教育委員会は12月はじめに「和歌山県学力向上対策本部から短期計画の報告について」という記者発表文書をだされました。
 そこにあります「チャレンジ確認シート」というのは、「過去問」のことです。
 学校からは、「学力向上推進プラン(短期計画)」というものが、画一的に報告を求められています。その最初に「全国学力・学習状況調査結果」「県学習到達度結果」を記入するようになっている。「平均より何点低いか自覚せよ」というわけです。
 その少しあとに「平成27年度全国学力学習状況調査」に向けた数値目標を記入させる。
 チャレンジシート・「過去問」の練習をするなど、計画を記入して、来年2月段階でどこまでできたかを記入させる。
 息が詰まりそうな、目標・計画・結果達成が学校現場に求められています。こんなことをして、生き生きした創造的な教育活動が行われるとは考えられません。
 私は、教育というのは息の長いものだと思います。「もう待ちきれない」といって若い芽をひっぱるような学力対策にはしると、大きなひずみをうみます。私は大変心配していますが、教育長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 今回学力調査が深刻な結果であったことについては、誠に遺憾であると受け止めております。教育学界でもですね、学力の定義やその学力の評価につきましては、様々なものがございます。そういう中で、単に点数を上げればいいのかという点につきましては、それは明らかに間違いであると思います。心豊かにたくましく生きることのできる、真の学力をつけるということを、目指すべきであります。そのために、これまで教え方の研修や補充学習等を行ってきたところです。
 この度、作成した学力向上対策の短期計画は全国学力テストの成績を上げるためだけのものではなくて、真の学力を身に付けさせるためのものです。短期計画で示した取組が効果を上げているかを把握しながら、学力向上に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 一方で、教員はテストの結果のみを追い求める必要はありませんが、学力を定着させることに十分重きを置いていない教員がいれば、そうした教員の意識改革をしっかりと図っていく必要があります。教員が子どもに学力をつけることが自ら重要な責務であるということを自覚し、日々の授業を常に見直し、工夫改善に努め、子どもたちの学ぶ喜びをしっかりと胸に刻んで、分かる授業、伸びる授業、力のつく授業の実践に努めているかどうかを、市町村協力のもと、県としても徹底して把握させていただき、県、市町村、学校が一体となって学力向上対策を推進してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 教育長の答弁は、前半はたいへんいいことを言われたのですが、後半は、現場教職員へ不信感にたっている。「学力の定着に十分重きを置いていない教員」がどこにいるでしょうか。
 教員にかぎらず、どこの世界にも、職務にふさわしくない行動をとる不祥事はおこるでしょう。それを一般的な問題として「徹底して把握していく」などいうでしょうか?
 私は、西下教育長ともあろうものが、学力テストのプレッシャーでこんなことをいうところまで追い込まれたのかと唖然とします。
 私は、西下教育長は、立派な教育者だと思っていただけに、今も思っているのですが、学力テスト体制が教育現場にあたえる影響にいっそう危機感を感じるということを申し上げておきたいと思います。

・専門家による結果の分析をじっくりやること
《質問》雑賀光夫 県議
 なんらかの学力テストを行うとしても、まずその結果を時間をかけて分析する。単に平均点だけの比較だけではなく、それぞれの学校で、子どもの学力格差は、大きいのか小さいのか、二つこぶラクダ型になっていないのか、子どもの暮らし・単親家庭との関係、生活習慣・塾との関係、幼児期の読み聞かせ、さまざまな面から分析をしてみることです。
 それは、なによりも各学校でやるべきことですが、その模範として、県教育委員会が和歌山大学の先生の協力を得て分析すればいいと思います。
 ここに岩波ブックレット「調査報告『学力格差』の実態」というものがあります。これは大阪大学の教授らのグループが、1989年、2001年、2013年と12年に一回、大阪の14の中学校、25の小学校、計39校を対象に継続調査したものです。貴重な調査であり、大変参考になると考えて紹介しておきます。
 9月県議会の文教委員会で私は、教育委員会の幹部だけの対策会議でなく、「教育の専門家がはいった検討委員会をつくれ」ともうしあげ、教育局長は、そのことには同意されました。
 教育長は、わたしの提案をどうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 学力向上対策本部では、調査結果の詳細な分析を行うとともに、先進県を直接訪問し、学力のみならず、効果を上げている様々な取組について学んだことを踏まえ、先般、各学校で取り組むべき短期計画を発表したところです。来年度以降の中長期的なプランにつきましては、対策本部で検討を進め、年度内に市町村教育委員会を通じ、各学校へ伝えていきたいと考えております。
 本県がこれから進める学力向上対策を、より実効性のある、成果の出せるものとするためには、外部の有識者等の意見を参考にしていくことも重要であると考えており、今後、施策を進めていく中で、具体的な方策を検討してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 現在やられているのは、文部科学省の調査の紹介だけ。二つこぶラクダ型になっていないのか、子どもの貧困・単親家庭との関係などの分析はありません。
 かつて、和歌山県教育委員会が、当時の私たち教職員組合とも大論議をして、「学習状況調査」をしたことがあります。それなりの分析ができています。

・PISA調査への批判をどう考えるか
《質問》雑賀光夫 県議
 さらに私は、世界的にも「画一的学力調査」に対する批判が起こっていることを紹介しておきたいとおもいます。PISA調査というのは、OECDが3年ごとに実施する15歳の生徒の学力を調査です。フィンランドが高学力であることが話題になり、昔からの日本の学力テストとは問題の傾向が違うといわれてきました。
 そのPISA調査に対しても、弊害を訴える教育学者が「公開書簡」を発表しました。「公開書簡」は、「PISA調査は、教育の計測できる狭い面だけを強調することにより、身体的、道徳的、市民的、芸術的発達といった教育対象から関心がはなれてしまう」として「周期的な国際テストのために、より多くの時間がさかれ、教育をゆがめる」と指摘しています。この「公開書簡」には、2,800人もの教育関係者が賛同署名しそれがふえています。
 教育長にお伺いします。PISA調査についての「公開書簡」についてご存知でしょうか。どうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 OECDが実施しているPISA調査は、学校教育で身につけた知識や技能等が実生活の様々な場面で直面する課題に、どの程度活用できるのかを評価することを目的としたものであり、次代を担う子ども達に必要な能力を国際的に測るという重要な意味を持った調査であると受け止めています。
 議員御指摘の「公開書簡」において、本調査がもたらす影響や実施方法についての提言や意見等、様々な所見が出されていることは承知いたしております。
 このため、県としても、PISA調査に関する教育改革国際シンポジウムに職員を派遣するなど、本調査の内容や結果分析を注視しているところでございます。

《コメント》雑賀光夫 県議
 3年に1回のPISA調査にも、「公開書簡」では、次回サイクルを飛ばすことが提案されています。
 私たちのところでやられていることはどうでしょう。
 「全国学力・学習テスト」が毎年実施される。その上、昨日は県学習到達度調査が行われました。年に二回もの学力テストなどとんでもないことをしていると思います。そのことだけ申し上げて、次へ行きます。

(4)教職員定数改善について
・県独自の教職員増員について
《質問》雑賀光夫 県議
 次に、教育委員会がまずとりくむべきことは教育条件整備です。
 私は、これほど学力問題が大変だというなら、学力向上のための定数改善を県独自でやってはどうかと思います。文教委員会でそのことを提案したら、教育長は「定数改善はしたいが県の財政も大変だ」といわれます。私は、「500人もの定数内講師がいる。一般教員より14万円も平均賃金が低い。それがすぐに解消できないのなら、300人ぐらいは『学力向上のための臨時加配』ができるではないか」と申し上げました。
 教育長はこのさい、思い切って県単独加配教員を要求する気はないでしょうか。

《答弁》 教育長
 いわゆる「定数内講師」につきましては、将来の教職員の定数削減等に備えるため、一定数は必要であると考えており、その配置による人件費の削減を目的としたものではございません。
 しかしながら、議員ご指摘の状況を踏まえ、今後もその数を減らすよう努力してまいります。
 また、教職員定数につきましては、文部科学省が概算要求中でもあり、国の動向を注視しながら、1人でも多くの定数確保に努めるとともに、子どもたちに行き届いた教育ができるよう、様々な工夫をしてまいりたいと考えております。

《要望》雑賀光夫 県議
 「定数内講師」というのは、人件費削減のためではないということは信用しましょう。しかし、人件費は安上がりで済んでいることは事実です。
 そのことを今日は知事には横で聞いておいていただいて、教育長がいわれる「さまざまな工夫」に期待したいと思います。

・「40人学級」にもどすという財務省の動向をどう考えるか
《質問》雑賀光夫 県議
 そこで、とんでもない問題が聞こえてまいりました。
 文部科省もようやく合意した少人数学級が行き届いた教育のためには必要だという合意をひっくりかえして、「40人学級」にもどすという財務省の意向であります。
 教育長はどうお考えでしょうか。

《答弁》 教育長
 議員ご指摘の小学校1年生を40人学級に戻すという財務省の動向については、学年進行で35人学級になることを想定しておりましたので、驚いているところです。
 県としては、今後も国の動向を注視し、子どもの実情に応じて、個別指導、補充学習を行うなど、指導の充実に努めてまいりたいと考えております。

《コメント》雑賀光夫 県議
 教育長も驚いているといわれた。私は「とんでもない」と申し上げました。そんなことにならないように、力を合わせていきたいと思います。


2.保健所の役割について
(1)保健所が果たす役割と最近の感染症の取り組み
《質問》雑賀光夫 県議
 エボラ出血熱感染が世界的に広がり、アメリカではパニック状態さえ起こっています。日本では、水際作戦をとっていますが、いつ地域にはいりこんでいるかわかりません。また、最近地域で大問題になったのは、鳥インフルエンザの問題でした。
 昔からあった食中毒の問題、災害対応、環境保護などに加えてこうした新たな感染症の心配は、保健所の役割をますます大きくしています。
 地域における保健所の役割はどう踏まえておられるのでしょうか。とくに最近の感染症への対応などどういう取り組みがなされているでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 保健所は、地域保健法に基づく必置機関であり、地域保健の専門的、広域的な拠点として位置づけられています。
 その果たす役割は、健康課題を明確にし、関係機関との連携による課題解決への取り組み、新型インフルエンザなどの感染症や食中毒そして災害対応などの健康危機管理および地域での各医療体制の整備等多岐に渡っています。
 特に、最近世界的に関心が高まっているエボラ出血熱に対する保健所の取組についてですが、保健所は疑い患者への積極的疫学調査や感染症指定医療機関への移送、検体の確保と搬送、消毒やそれらに伴う医療機関への指導等を行い、第一線で感染拡大防止対策を実施します。県民の安全、安心を守るため、平時からその対応力の強化を目的に、本庁や医療機関と合同の訓練などに取り組んでいるところです。

(2)医師資格をもった所長を配置することの意義とその努力
《質問》雑賀光夫 県議
 こうした中で、医師資格を持った保健所長の役割は重要です。医師資格を持った保健所長がいるということは、たとえば、食中毒らしい事案が持ち込まれたときどう判断するかというような問題にとどまりません。むしろ、日常の地域の医療保険体制をつくっていくうえで、地域の医療機関をまとめていく役割でこそ医師資格を持った保健所長の役割が発揮されると思います。各医療機関の中心になっているのは、医師の方ですから、その中でリーダーシップを発揮するには、やはり医師でないとうまくいきません。
 しかし、病院でも医師不足がいわれている中で、保健所長に医師を確保するのも大変苦労されると思います。行政の中での医師資格をもった方の定年を延長する条例がこのたび提案されているのも、その一つの表れでしょう。
 保健所長に医師を確保するためにどういう努力をされているのでしょうか。その見通しはいかがでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 議員ご指摘のように、地域保健の専門的、広域的な拠点である保健所のトップとしての保健所長には、保健、医療さらには福祉の充実、向上のため、医師の専門性をもってリーダーシップを発揮することが期待されています。
 県内には7保健医療圏にそれぞれ県立保健所がありますが、現行では海南保健所長が兼務となっています。県としましては、保健所長の確保のために、青洲医師ネットなどホームページによる募集、国の公衆衛生医師確保推進登録事業への登録、和歌山県立医科大学同窓会員全員への個別文書での勧誘、和歌山県立医科大学をはじめ他府県医育機関等への働きかけなど全力を挙げて取り組んでいるところです。
 全国的にも約1割の保健所長が兼務となっており、大変厳しい状況ではありますが、引き続き保健所長の確保に努力してまいります。

《コメント》雑賀光夫 県議
 がんばっていただきたいと思います。


3.浮上式津波防災堤防のその後
(1)その後の検討状況
《質問》雑賀光夫 県議
 海南市の浮上式津波防災堤防について、6月県議会でもお聞きしました。
 昨年12月の国の技術検討会で、問題点が指摘されたという情報をキャッチしておりました。しかし、なんの説明もない。今年度予算で、「浮上式」の部分について予算がつかなかったことも踏まえて、「どうなっているのですか」と説明をもとめたわけです。
 それで県土整備部長から、「想定される地震・津波では、パイプが曲がって浮上しない危険がある」という問題が検討されているということが明らかにされ、その質問をきっかけにして、一般新聞でも報道されるようになりました。
 それからさらに半年たちました。来年度予算編成期にもはいってきています。ところが、何の説明もおこなわれません。海南市では毎年、「津波対策協議会」が開かれていたのですが、昨年の6月に開かれて以来、開かれていません。
 その後の検討はどうなっているのか、県土整備部長にお伺いいたします。

《答弁》 県土整備部長
 ご指摘の浮上式防波堤につきましては、6月の県議会で雑賀議員のご質問にお答えしましたように、国土交通省が開催した技術検討委員会において、南海トラフの巨大地震のような最大クラスの津波を起こす地震に対して、地中部の鋼管、これは浮上していく防波堤を海底の中に納めておく鉄の管でございます。これが曲がることにより、防波堤が浮上しなくなる可能性があるとの指摘がありました。
 もう少し詳しく説明させていただきますと、現状の鋼管は最大10cmから20cm変位すると予測されています。最大クラスの津波を起こす地震のような大きな外力が作用した場合、一度変形した地盤が元に戻らずに鋼管に変位が残る可能性がある。また、地盤の液状化による側方流動によって、防波堤の変位が大きくなる可能性がある等の指摘があったものでございます。
 また、委員会では、これらの指摘を踏まえ、防波堤周辺の地盤改良、鋼管の剛性強化等の追加対策を講じる必要があるとしております。
 いずれにしましても、現在、国土交通省において、引き続き、当該防波堤の整備方針の変更について検討を行っていると聞いております。

(2)海南市民に対する国・県の説明責任
《質問》雑賀光夫 県議
 まだ方針が検討中だとしても、説明責任を果たしていないと思います。私が県議会で質問したから、一定の説明はされた。しかし、「津波対策協議会」での説明がない。
 その一方で、あの堤防には、250億円でできる計画だったが、大変な費用がかかるらしい。もう無理ではないか。もともと無理で無駄な公共事業だったのではないかというような、うわさ・憶測・意見が海南市民のなかには広がっています。
 正確な情報を、正式なルートで海南市民に伝えるべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 県土整備部長
 先ほど述べましたように、現在、国土交通省において、技術検討委員会の結果を踏まえて、今後の整備方針を検討しているところでございます。
 国土交通省からは、整備方針の検討結果について、しかるべき時に、沿岸地区の自治会や企業、漁業組合等で構成される「和歌山下津港 海南地区 津波対策協議会」で説明できるように準備をしていると聞いており、県としましても、適切な説明ができるように協力していきたいと考えております。

(3)国の責任で納得できる対策を
《要望》雑賀光夫 県議
 技術的な問題があるとしても、ここまでやったものを放り出すことは許されません。
 関西電力の岸壁が高くなったのは結構なことです。しかし、そこは前からのハザードマップでは、浸水が大きくなかった部分です。肝心の中小産業や住宅が密集する海南市中心部はどうなるのか。
 もちろん、浮上式防災堤防ができてもそれで津波が防げるわけではない。逃げなくてはならないと私たちは言ってきました。しかし、堤防による「減災」も大事なことです。
 国の責任で、納得できる計画を示してもらいたい。要望とします。


  
  西下教育長のの答弁を聞く、雑賀光夫和歌山県議(左)
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