2015年12月県議会 松坂英樹 一般質問 概要記録 議会中継録画
  
  
20151211
1.和歌山県の林業政策
(1)県内林業の現状と課題
  ・木材生産量の推移
  ・林業労働者の後継者・技術者養成
  ・低コスト林業
  ・再造林時のシカ害対策の強化
  ・公共事業への木材利用
(2)中小規模の木質バイオマスエネルギー利活用と地域の「協議会」
(3)架線集材の技術継承・技術開発で和歌山発のモデル事業を
(4)和歌山型の林業モデルを

2.TPP「大筋合意」について
(1)県内農林水産業への影響額試算について
(2)TPP「大筋合意」に対する所感と対応

3.みかん対策
(1)本年産みかんの生産販売状況と販売価格向上の取組
(2)農地流動化の取組
(3)現場の声にこたえた生産支援拡充を
(4)みかんのファンを増やそう


1.和歌山県の林業政策
《質問》松坂英樹 県議
 通告に従い、一般質問に入らせていただきます。まず和歌山県の林業政策についてです。
 私ども日本共産党県議団は、10月に党国会議員団との森林・林業調査をおこなったのをはじめ、この間、林業関係者との懇談や現地調査を重ねてまいりました。これらの調査を通じて感じた課題や出された要望などをもとに今回の質問をさせていただくものです。
 調査活動の中で県内6つの森林組合の組合長さんはじめ役員さん、民間業者の方々と懇談をさせていただき、現状や課題、ご要望を伺いました。その中では、材価の低迷により伐採がすすまない困難な中でも、後継者の育成、雇用の継続、木材利用の拡大や、低コストで安全な搬出方法の推進など、山間部の地域で森林組合としての責任をはたしてゆこうとする熱意を強く感じました。
 また、田辺市内の製材業者さんとの懇談では、品質のいい紀州材を育て、生産から製材・販売していることに誇りをもっておられることに強く胸をうたれました。ここでは、傾斜のきつい山で搬出用の架線を張る技術者がいなくなってきたことや、CLTなど集成材は伸びてゆくだろうが、製品利用の歩留まりが悪くシステムとしても複雑であり、いい木を作らずにこういうやり方や安い木ばかり追えば、和歌山の山は死んでしまうのではないかということ、また公共事業への木材利用では、分割発注や複数年度発注などの配慮が必要だというお話を伺いました。
 若い林業労働者の皆さんとも懇談の場をもっていただきました。日高川町旧美山村寒川地区の運動会では、子どもの半分がグリーンキーパーで来た人の子どもたちで、地域の活力をささえる力になっていることが紹介されました。それぞれが林業に従事するようになった動機を語り、長時間労働の都会から来て、家族と一緒の時間がもててうれしい、自然と向き合い、達成感のある仕事だというお話を伺い、私たちもうれしくなりました。
 そして同時に、もっと地元の若い人が入ってくるような取組が必要だということや、森林組合も補助事業だのみではモチベーションが上がらないのではといった意見も出されました。
 搬出間伐の現場へも足を運びました。白馬林道から作業道を20分から30分歩いた現場へ。チェーンソーで伐採し、グラップルで出材し、フォワーダで運搬搬出する現場です。かなり急な斜面でしたが、まだまだここは緩い方だということでした。ちょうど前日に林業機械が故障して入れ替えたとのことで、メンテナンスの苦労話などもお聞かせいただきました。
 町長さんからは、「山が伐期をむかえたが木材単価が安いため経済林として採算が合わずに生産が停滞していること、そしてこのまま続けば、山仕事の人や、木を切る技術、出す技術が途絶えてしまい需要が出ても出せない状況となってしまう。地方創生の大きな仕事として位置付けて計画をまとめつつあるところだ。国策として国産材の活用に力を入れてほしい」との要望をいただきました。
 こうした内容をもとに、以下順次質問をさせていただきます。
(1)県内林業の現状と課題
・木材生産量の推移
 まず1項目目の、県内林業の現状と課題について、何点かにわたって農林水産部長にお伺いいたします。最初に木材生産量の推移についてです。
 主要生産県の素材生産量推移を見れば、木材価格の低迷により底を打った15年前から比べると増加に転じている県が多くみられます。これは、国の林業政策が、民主党政権の時代もふくめて、補助金を入れながら年間10万立方メートルをこえるような大規模製材工場をつくり、そこを核にして低価格で安定した品質の木材供給をすすめてきたこと、また高知県のように木質バイオマス利用のボイラーや発電所を積極的にすすめて実績も上げている努力の表れだと考えます。
 木材の需給については、国際的な木材価格の高騰や円安等により相対的に国産材の競争力が高まったこともあり、木材の自給率は昨年で30%まで回復してきたといわれています。ただこれが本格的な自給率回復のきざしかといえば、単純にそう言えるものではないと思います。国産材の自給率を根本的に引き上げてゆくためには、森林所有者に再造林できる価格を保証することや、国産材価格の安定のために全国森林組合連合会や全国素材生産業協同組合連合会などが結成している「全国国産材安定供給協議会」を拡充し、需給調整を含めた価格安定対策に取り組めるようにするなど、政府が責任をもって再造林できる原木価格を保障する取組が必要です。
 そこでまず、和歌山県の状況についてうかがいます。和歌山県の木材生産は先ほど述べたような工場の大規模化や大規模バイオマス発電などは導入しないで来たわけですが、素材生産量はこの間微減を続けている状況です。県としてこの現状をどう分析しておられるのか答弁を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 本県の木材生産量は、昭和42年の74万立方メートルをピークに減少の一途をたどっていましたが、直近10年では、年間17万立方メートル前後で、ほぼ横ばいに推移しております。
 一方、宮崎県をはじめとする、木材生産量の多い県では、平成14年から平成17年を境に増加に転じております。
 本県の木材生産量が増えない原因につきましては、本県の林業地域の特徴である急峻な地形に加えて、林道・作業道等の整備が遅れ、出材コストが他県に比べて高くつき、昨今の廉価な木材価格に対応しきれなかったということが大きいと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁いただいたように、急峻な地形が基盤整備のネックになっているという条件があると思います。しかしここ和歌山には、その豊かな自然環境と条件にたちむかい、それを生かす、人の営み、努力が積み重ねられてきたと思います。二つ目の林業労働者の後継者・技術者養成の質問にうつります。

・林業労働者の後継者・技術者養成
《質問》松坂英樹 県議
 この間、原木の値段が少し上向いた時や、合板工場にたくさん原料を出そうとした時でも、なかなか山から木が出てこないという状況があったと聞きます。現場の力が広がらなければ山から木がでてこないのです。林業関係者は、県内の森林組合で始まったグリーンキーパー制度が、県の「緑の雇用」となり、国の取組にまで発展し、森林組合の作業班などで活躍していることに喜びと誇りを感じておられます。美山森林組合では20名の専属作業班のうち16名がアイターンで平均年齢44歳だそうです。今後、アイターン等からも、地元からも、持続的に後継者を育ててゆくことが求められています。就職説明会や高校への求人に林業の募集もぜひ必要ではないでしょうか。
 緑の雇用をはじめとするこの間の後継者・技術者養成の成果と、そして今後の課題についてお示しください。

《答弁》 農林水産部長
 まず、成果についてですが、国の緑の雇用事業等を活用し、平成14年度から平成26年度まで1,225名の方が林業に就業され168名が県内へ定着、その定着率は約14%となっておりますが、平成16年度までの短期雇用を主体とした期間を除く平成17年度以降の定着率は約52%となっております。
 また、県内へ定着されている168名の平均年齢は43歳、一方、県内林業就業者全体の平均年齢は47歳であることから、地域の若返りも図られ、初期に採用された緑の雇用者は現在、作業の中核を担う技術者となっております。
 課題としましては、高齢化による退職者等が増加する中での新規就業者の確保及び若年従業者の技術・技能のスキルアップが喫緊の課題となっております。
 新規就業者確保につきましては、わかやま林業労働力確保支援センター主催による林業就業相談会に加え今年度は、県内高校生を対象とした林業体験会の開催、わかやま移住・就職フェアへの林業就業相談ブースの出展など実施しているところであります。
 更に、新規就業希望者を対象とした川上から川下をトータルにサポートできる人材を育成するための新たな制度を、現在、検討中であります。
 また、技術・技能のスキルアップとしては県において将来の中核的リーダー養成のために、林業技能士育成研修、昨年度まではグリーンワーカー育成研修として実施していた制度ではありますが、昭和56年度以降実施しており、修了者は368名となっております。
 これに加え平成25年度からは本県特有の架線集材作業に特化した林業架線作業特別講習も実施しており、修了者は3名で、現在講習内容の拡充を検討中であります。

《要望》松坂英樹 県議
 この間の後継者養成の取組の中では、林業を志した若い後継者に高性能林業機械のオペレーターとしての技術を習得してもらい、これまでの高コスト構造を転換させる努力をされてきました。次にこの低コスト林業の到達点と課題を伺いたいと思います。

・低コスト林業
《質問》松坂英樹 県議
 この間、低コスト林業をめざして高性能林業機械の普及と活用をすすめてきました。和歌山県内の普及活用状況はどういう到達でしょうか。また、ある森林組合では、メンテナンス費用が導入当初は年間1000万円程度であったものが、最近は年間2000万円にも達していて経営を圧迫している状況が報告され、今後の支援を求める声が出されていますがどうお考えでしょうか。答弁願います。

《答弁》 農林水産部長
 平成26年度末の高性能林業機械の保有台数は、枝払いや玉切りを行うプロセッサ32台、簡易な架線集材に対応できるスイングヤーダ24台など、総台数が109台となっており、素材生産の生産性や安全性の向上が図られているところです。
 なお、素材生産量を現状より増加するという計画に対しては、耐用年数を過ぎ、修繕経費等がかさむ高性能林業機械の買換も国の支援対象となっております。

《要望》松坂英樹 県議
 低コスト林業をめざして入れ始めた高性能林業機械がやはり10年ぐらい経つんですよね。導入への支援やリースの活用など援助をしてこられたわけですから、今後の経費削減や更新などについてもしっかりとサポートされるよう要望しておきます。

・再造林時のシカ害対策の強化
《質問》松坂英樹 県議
 生産現場の苦労として、どこでも出されたのはシカ害の問題です。伐採後の再造林をしようにも、シカ害の対策にたいへんな苦労をされています。ある森林組合の役員さんからは、「1ヘクタールあたり皆伐後の再造林に120万円、シカ害対策にプラス120万円、育てて伐採して利益は80万円などというのではやっていられない」という声もお聞きしました。
 針葉樹の再造林だけでなく、企業の森などの環境林でおこなわれている広葉樹の再造林でも同様の悲鳴が上がっています。せっかく森を育てようと下草刈のイベントに来てくれているのに、肝心の苗木が食べられてしまってほとんど残っておらず、ただの広っぱの草刈りみたいな状態になっているという悩みもお聞きしました。シカの捕獲状況や再造林時のシカ害対策強化について、部長の答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 シカ害を減らすためには、当然のことですがシカの生息数を減少させることは最重要で不可欠です。
 このため、従来の狩猟や有害捕獲に加え、平成23年度から管理捕獲に取り組んでおり、平成26年度のこれらの捕獲総数は10,517頭となっております。
 再造林時のシカ害対策としましては、植林した苗木を守るための獣害防止ネットや獣害防止筒の設置に対して、支援を行っているところです。
 また、植林地においても効果的にシカを捕獲するため、今年度から林業試験場において、獣害防止ネットの周辺を徘徊するシカの行動特性を利用した捕獲技術の開発に取り組んでおり、今後とも関係課室と連携のうえシカ害対策を強化してまいります。

・公共事業への木材利用
《質問》松坂英樹 県議
 では、木材利用の拡大の分野にうつります。これまでも公共事業への木材利用を積極的にすすめるよう、建築分野にとどまらず土木工事への積極的な活用を提案してまいりました。今年度においては河川の工事に活用されるとの話も伺いました。どの程度活用が広がっているのかご答弁願います。

《答弁》 農林水産部長
 昨年6月に県土整備部と農林水産部が連携して「公共土木工事における木材利用推進指針」と「公共土木工事木材利用マニュアル」を策定したところです。
 公共土木工事では、これまでも農林水産部において治山工事で丸太筋工(すじこう)や、まく板型枠などを中心に施工しています。
 また、県土整備部では法面の保護対策として丸太伏工(ふせこう)の施工や、河川工事では護岸の根固(ねがため)対策として木工沈床工(ちんしょうこう)を本年度計画するなど木材の利用推進に取り組んでいます。
 今後とも引き続き、県土整備部と連携しながら、公共土木工事での木材の積極的な活用に努めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁いただいた河川整備の工事に木材をつかう設計をし実際に事業化していただいたのは県内では初めてではないかと思うのですが、農林水産部と県土整備部がぜひ力を合わせて、いっそうの拡大をしていただくよう要望するものです。

(2)中小規模の木質バイオマスエネルギー利活用と地域の「協議会」
《質問》松坂英樹 県議
 それでは、2番目の項目のバイオマスエネルギー活用の問題に移らせていただきます。木材のバイオマス利用は、熱利用や発電などにより、エネルギーの地産地消という好循環を生み出し、地域経済と雇用を支える大きな柱となりうる課題です。全国的には大規模なバイオマス発電所も建設されているようですが、5,000キロワット級の発電所では年間10万立方メートルもの木材原料が必要となり、和歌山県では現実的ではありません。こうした大規模発電所ではなく、身の丈に合った中小規模発電所であるとか、農業用ハウス・温泉施設等での熱源としての利活用など、エネルギー利用施設を地元に広げることが大切です。木材や木質バイオマス原料を遠くまで運ぶのはコスト面からみてもメリットはなく、遠距離輸送せずにできるだけ地元や県内で活用すべきであると考えます。
 こうした木質バイオマスエネルギー活用による地域活性化をめざす協議会が、先日田辺市でも始まりました。県内各地域での木質バイオマスエネルギー活用支援の今後の方向性について、また木質バイオマス利用のための「協議会」設置状況と方向性について、考え方をお示し下さい。

《答弁》 農林水産部長
 議員ご指摘の通り、地域の状況に応じた規模の木質バイオマスエネルギー利用施設を設置することは、これまで未利用のまま森林に放置されていた間伐材等の林地残材の利用促進につながり、たいへん有効であると考えます。
 しかしながら、2,000キロワットクラスの発電所においても4万立法メートル程度の原木確保が必要と言われており、このように中小規模の発電所を含めたエネルギー利用施設の立地には、一定量の原木を安定的に集荷し、継続して供給していくことが課題となります。
 県としてもこれら課題に対応しつつ、地域の各協議会や市町村と連携しながら、引き続き原木増産に向けた取組を進めてまいります。
 次に、協議会の設置状況についてでございますが、県内には、木質バイオマスの安定供給や利用推進を目的に、新宮・東牟婁と三重県内の18団体で構成する「バイオマス供給協議会」と田辺・西牟婁の製材業者や森林組合10団体で構成する「紀州木質バイオマス利用協議会」が設立されています。
 また、有田川町周辺においても同様の協議会設立に向け準備しているところです。
 これら協議会は、地域木材の安定供給の観点からも重要と考えるところであり、県としましても、各協議会にオブザーバーとして参加するなど積極的に連携し、木質バイオマスの有効利用をはじめとする地域の林業・木材産業の振興に努めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 県の来年度予算編成方針の中で、バイオマス発電所を建設する企業に対してスタートアップ支援を検討しているということですが、和歌山県では、どうバイオマス原料となる原木をスムーズに出してくるか、供給するかがカギになってくると思いますので、搬出への支援もしっかりと検討していただき、材を出す方、発電する方、両面での支援をすすめていただくよう要望しておきます。

(3)架線集材の技術継承・技術開発で和歌山発のモデル事業を
《質問》松坂英樹 県議
 次に木材を山から出してくる架線の技術についておたずねします。
 今回の調査の中では、各地で架線集材の技術継承の課題とともに技術開発の課題が出されました。架線集材の技術継承のための養成講習や研修にはどう取り組もうとしているのかお示し下さい。また加えて、中堅技術者養成のためには、研修だけでなく実際に様々な条件の現場を経験してゆくことが何より重要であることは言うまでもありません。架線集材の実践フィールドを増やすためにどう取組んでゆくのかお示しください。
 また、搬出間伐における架線集材の新たな手法として「魚骨状間伐」が提唱されています。傾斜がきつくて作業道開設による搬出間伐が困難な山において、この架線技術により中心線から枝状に集材する手法は、一般的な「列状間伐」よりも森林にダメージをあたえずに、「定性間伐」に近い効果を期待できるとのことです。こうした効果的な架線集材搬出方法の実用化や、油圧式集材機の普及による安全で効率的な架線集材普及を、和歌山県のモデル的な事業として取り組んではいかがでしょうか。答弁を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 架線集材の技術継承につきましては、平成25年度から林業試験場において林業架線作業特別講習を実施しており、今後民間林業事業体の協力も得ながら実践フィールドでの実地研修を現在検討中であります。
 技術開発関連につきましては、集材機を利用した架線集材は主伐への導入を主眼として考えており搬出間伐での利用はコスト面等から大変厳しい現状であります。議員ご提案の魚骨状間伐でのモデル化は困難と思われます。
 そのような中、主伐への利用として油圧式集材機の開発を平成25年度から取り組んでおり、今年度も輸送性を向上させた油圧式集材機を開発中であり、完成後は県内での現地講習会・研修会を実施し、油圧式集材機を利用した、無線操作による省力化モデルの普及に努めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 答弁をいただきましたが、部長は最初の質問への答弁で、和歌山の木材生産が進まない要因のひとつは急峻な地形だと言っているわけです。それならば、間伐についても作業道がつけられていない、あるいはつけるのが困難な山もある。それに対してどう利用間伐をすすめるのかというと、やはり架線技術の活用という話が出てくると思うのです。コストの問題ですぐにモデル化は困難というお話ですが、こうした新しい試みがそのハードルを越えて実用化できるよう持って行ってこそ、和歌山の林業の展望が出てくるのではないでしょうか。ぜひこうした研究や現場での積極的なチャレンジ、新型機械の試験導入に援助をしていただきたいと要望するものです。
 また、油圧集材機の開発については、かなりいい線まで開発がすすんでいるようです。ただこれについても普及はコストがかかってくるのは同じです。いま新型機をつくるのに3000万円かかるといわれていますが、普及させるには旧型の1000万円くらいまでコストを下げる必要があると言われています。こうしたことについても、今後開発が進んだ状況をとらえて県がしっかりと応援をするよう要望しておきます。
 また、こうした事業体の努力にこたえるためにも、搬出間伐の補助事業単価を一律の運用としないよう国に働きかけていただくという点も合わせて要望させていただきます。

(4)和歌山型の林業モデルを
《質問》松坂英樹 県議
 この項目の最後に、和歌山型の林業モデルについて知事におたずね致します。私は今回の調査を通じて、これまで「国策」としてすすめられてきた大規模生産・大規模消費による低コスト競争・自由主義的政策という画一的なモデルだけをあてはめたのでは、和歌山の森林と地域経済は守れないという想いを強く持ちました。和歌山県の地形と山に見合った、品質のよい素材生産を中心にすえつつ、なおかつ集成材やバイオマス利用のすそ野をうんと広げて地域経済を支える林業、効率的で安全な木材生産の技術を開発し、労働力確保と山村振興に力を入れ、環境保全・災害防止に貢献する、そんな新しい和歌山モデルというべき林業政策の展望が必要だと感じています。県内林業関係者からも評価されている「緑の雇用」のように、和歌山県が意欲的な取り組みで全国をけん引できる素地は十分にあると考えます。
 豊かな森林資源と自然条件が宝の持ち腐れとならないよう、今後、和歌山らしい新たな林業モデルの構築をすすめるべきではないでしょうか。知事の答弁をお願いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 まさに、議員ご提言のとおりであります。というとそれで終わってしまうわけですけども、本県の林業を活性化させるためには、従来からの無垢材の利用、これはむしろ和歌山の地形や気候を活かした旧の和歌山モデルだったかもしれませんが、実は和歌山県が誇りにしてきたところなんですけども、これに加えて、集成材や木質バイオマス利用へもすそ野を広げて、木材需要全体の底上げを図って、生産された木材を無駄なく活用することが重要であると、今は思っております。
 この考え方は、私が就任後すぐに「森林・林業アクションプラン」というものを一番初めに作ったときに、まさに取り入れて、集成材の工場などにもセールスをかけて、ちょっと生産を増やすことができたというところもあるんです。ただ、主伐のところが減ってしまって、全休としては、そんなに増えたことにはなっておりません。
 このため、低コスト林業の推進、森林組合と民間事業体の連携強化、紀州材の販路拡大等に最大限注力してきたところでございます。
 今後、紀州材の増産を図るためには、「基盤整備の促進」、「新たな供給先の開拓」、「優秀な人材の育成・確保」等に重点的に取り組んでいくことが必要であると思います。
 「基盤整備の促進」につきましては、限られた予算の中で、より効果的・集中的な素材生産支援を実施するため、ゾーニングという手法を使って、支援する区域の絞り込みを、これから行っていこうか、という検討をしているところであります。
 また、「新たな供給先の開拓」として、従来からの無垢材としての利用に加え、議員ご指摘のように、集成材や合板への活用、木質バイオマスエネルギー利用施設への原木の供給などについて検討を行っているところであります。
 特に木質バイオマスエネルギーの利用促進につきましては、本年4月に林業の専門職員を産業技術政策課、ここは、エネルギーもやるところなんですが、ここに配置いたしまして、先進各地の状況を学ばせながら、林業とエネルギーの両面から採算に合うシステムを検討させているところでございます。
 さらに「優秀な人材の育成・確保」として、農業大学校を再編し、即戦力となる技術者の育成や林業架線技術の習熟を中心としたカリキュラムに加え、林業経営のノウハウを学べるカリキュラムについても、更なる充実を図るべく検討を開始しております。
 こういうような考え方、メニューをそれぞれ頑張って進めて、林業を盛んにしていきたいと思っております。

《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁をいただきました。まさに和歌山県の豊かな森、人工林は、国策として植林され、公的な補助制度を活用して作り上げた県民の財産です。これをしっかりと活用すること、そして自然豊かで災害に強い森林を創造してゆく仕事、これが和歌山県の中山間地の地域経済をささえるカギとなります。
 県は総合戦略の中で、木材生産量を5年後には4割増の23万立方メートルにすることを目標に掲げました。ぜひ関係者の皆さんとも知恵を出し合い、和歌山らしい林業政策を練り上げ、具体的な県事業に反映させる中で、しっかりと和歌山県の林業再生をすすめられますよう要望させていただきます。


2.TPP「大筋合意」について
(1)県内農林水産業への影響額試算について
《質問》松坂英樹 県議
 次に、TPP「大筋合意」についての質問にうつらせていただきます。TPP交渉が「大筋合意」と発表され、県としても県内農林水産業への影響と取組を発表されました。県内農林水産業への影響を、県としてどのように試算し、どう考えているのでしょうか。政府は「TPPによる影響は限定的」などとしているが、とんでもない話だと思うのです。県も国と同様に考えているのか、それとも影響は大きいと考えているのかお答えください。
 また試算の中で、かんきつ類への影響額については、オレンジ牛肉自由化が強行されたときの影響を参考にしたとされていますが、当時の県内みかん農家にどのような結果がもたらされたと県は認識していますか。農林水産部長の答弁を願います。

《答弁》 農林水産部長
 TPPの大筋合意による県内農林水産業への影響についてでございますが、今後、数年から十数年にかけての関税撤廃等により、かんきつ類や米、畜産などにマイナス影響が出るのではないかと考えて、影響額の試算を行いました。
 本県農業の大きな部分を占めるかんきつ類への影響については、温州みかんは国においては、輸入オレンジと差別化が図られており、影響を限定的と分析しておりますが、県では、何も対策が講じられなければ、過去のオレンジ輸入自由化と同様に生産量が約10%減少すると見込んでおります。
 また、直接競合すると思われる中晩かんは、オレンジの関税率32%程度の価格低下が生じ、その結果、かんきつ類は年間産出額の12.7%、35.7億円が減少すると分析したところです。さらに、米や畜産などの影響額を合わせると、農林水産物では年間産出額の4.8%、54.8億円の減少となります。これは、本県農林水産業にとって大きなマイナスの影響であると考えております。
 また、オレンジの輸入自由化当時の県内みかん農家への影響については、輸入枠が撤廃される前の平成2年と、現行の関税率となった平成12年で温州みかんの栽培面積を比較すると、自由化による影響の程度は明らかではありませんが、約10%減少しました。
 一方で、JA扱いによる市場単価は、平成2年と平成12年でそれぞれを中心年として5年間の最高値と最低値を除いた平均単価は、1kg当たり174円と167円でほぼ同等であります。これは、高品質化等の取組により、価格面では自由化による影響をあまり受けなかったものと考えております。

《要望》松坂英樹 県議
 部長からは、主なかんきつ類、米・畜産の分野などのお話がありました。県の資料では野菜や水産物・林業への影響も計算されているようですが、いずれも一つの試算という域を出ないものだと思います。しかし、その試算の結果を見れば、部長からは「大きなマイナス影響だ」というお答えでした。それもそのはず、県の試算発表資料に出ているかんきつ生産農家への影響を見てみましょう。温州みかん1.5ha、中晩柑0.5haを経営する柑橘農家の例が挙げられていて、温州みかんの生産量が10%減少し、中晩柑の価格が32%低下するとどうなるか。この農家世帯家族みんかがかりの合計所得が、546万2千円から386万9千円まで落ち込むという結果です。TPPの影響がイメージしにくかった農家の方も、この数字を見ると、「こりゃ農家に死ねというんか」と感想をもらしておられました。この国の農業の未来に展望がもてなくなるというのが、実は一番影響が大きいと私は感じています。
 過去のオレンジ牛肉自由化の影響を振り返っても、部長が答弁されたような影響が実際に出ました。国レベルで合計1200億円もの国内対策をしても、結果として大きなダメージを受けたわけです。有田の山々にも、ハッサクの木を切って畑で燃やす、細い悲しい煙があちこちで立ち上ったのを私は覚えています。
 こうした試算と過去の経過をふまえて、知事におたずねをいたします。

(2)TPP「大筋合意」に対する所感と対応
《質問》松坂英樹 県議
 今回の県の試算でも示されたように、「大筋合意」の中身は重要品目だけにとどまらず、日本の果樹生産にも深刻な影響を与えるものとなっています。
 少し詳しく見てみましょう。現在、全国のみかん生産量は90万トン弱に減少していますが、これに対してオレンジの輸入は12万トンで、温州ミカンに対して81の割合に匹敵する量をしめています。このオレンジは、TPP参加国からはアメリカの8万3千トン、オーストラリアからの2万7千トン、あわせて11万トンが輸入されていて6月から11月には16%の関税、みかんやかんきつ類とシーズンが重なる12月から5月まではその倍の32%の関税をかけていたのが、この先ゼロになるわけです。
 食べやすく美味しいみかんは、果物としての値打ちは決して負けるものではないと思っていますが、しかし消費の動向には大きく影響するでしょう。店舗の売り場面積の一定部分をこれまで以上に安いオレンジが占めれば、どうしてもそちらに流れて、みかんの消費がより一層落ち込むことが心配されます。
 ジュース原料の関税撤廃も影響はあると考えます。国産果汁生産を見てみると、オレンジ自由化前の1990年は生果換算で24万トンだったものが2013年では6万トンまで減ってしまっています。それ対して輸入果汁は38万トンだったものが90万トンにまで増えて、ほぼ国産果汁にとってかわってしまったわけです。生果換算では現在の温州みかんの生産量とまるまる同じぐらいの輸入量となってしまったわけですね。国は、国産果汁は高級ですみ分けができているとか、輸入先はブラジルでTPP関係国は少ないから影響はごく少ないかのように言っていますが、私は違うと思います。現在、オレンジ果汁はブラジルから72%でTPP参加国からは9%ですが、その9%の量といっても生果換算で8万トンに匹敵し、国産果汁仕向けの5万5千トンの1.5倍の量なのです。これだけの量の果汁にかかっていた関税約25%がなくなるわけですから影響は出ないわけがないと思います。この影響が、生果の加工仕向けによる需給調整機能低下や、今日的課題となっている品質の良いジュース原料柑確保に影響すれば、行政の支援策は後手にまわるばかりです。
 安倍政権は「大筋合意」を大成果のようにアピールし、影響は限定的だと、たいしたことないと、そんな資料・説明・宣伝ばかりしていますが、早期妥結をめざしてアメリカへの譲歩を繰り返し、「重要品目の聖域は守る」とした公約違反、「交渉の情報は国会・国民に十分な情報提供し国民的議論を行う」とした国会決議違反であると指摘せざるをえません。
 この日本政府の譲歩により日本農業への壊滅的影響が心配され、JAからは「不安と怒りの声がひろがっている」と抗議の決議が上がっています。先日発表された農業サンセスでは農業就業者がこの5年で2割減ということが明らかにされていて、TPPどころではないというのが地方と農村の現状ではないでしょうか。
 この先、TPPがさらなる関税撤廃・貿易自由化への道をすすみ、アメリカと多国籍企業らの利益のために日本と和歌山の農林水産業が犠牲にされる、そんな道を進むことは許せません。日本の農林水産業と国民生活を守るにはTPP交渉からの撤退しかないと私は考えるものです。
 仁坂知事は、県内農林水産業への重大な影響や、県民の怒りや不安をどう受け止められておられるのでしょうか。知事のTPP「大筋合意」についての所感と対応をお伺いいたします。

《答弁》 仁坂知事
 TPPは、入ることによって悪影響を被る面もありますけれども、国が総合的に考え、入るほうが日本全休にとって利益が大きいと判断した結果だと思っています。
 先ほど、アメリカと他国籍企業の利益のためにTPPを無理矢理つくったというようなお話しがありましたが、それは少し穿った見方というふうに思います。
 議員お話しのように、入ることによるマイナス部分というのはあるわけです。しかし、それだけをみるのは若干一面的すぎて問題がある。なぜならば、逆に入らない場合には、TPPに限らずFTAというのは、WTO・GATTの無差別、多角的原則の例外ですから、いわばブロック経済で、入っていないと関税等で競争相手より不利に扱われて、その結果、輸出産業などが不利益を被って、その結果、雇用も減ってしまうなどということを十分心配しておかなければいけないわけです。
 実は、和歌山にも輸出企業はありますけれども、むしろ、和歌山の中小企業などのことを考えたら、輸出企業の部品をつくって頑張っている企業というのはたくさんあるわけでして、働く者の職場が失われてしまうというような議論もあるわけです。
 また、TPPは関税の削減・撤廃だけでなくて、幅広い分野で新しいルールが共通化されていくということになっていきます。例えば、TPP各国との貿易・投資が活発化するような方向に働くかもしれないし、これまで海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業が、いわば世界市場が拡大したのだから、そこへ参入するチャンスでもあるというような面もあります。したがって、マイナス面ばかり言うのはフェアではないというふうに私は思います。
 しかしながら、このようなプラス・マイナスを総合的に判断したのは国でございます。したがって、TPPに入ることにより、悪影響が出ると科学的に分析される農林水産業の、少なくとも特定の分野については、判断した国の責任において、必要な政策を講じるべきだと私は思っております。
 本県農林水産業では、何も対策が講じられなければ、米とか畜産で打撃を受けるということが想定されます。米・畜産は、どちらかというと和歌山県は他県に追随するようなかたちでいいかなというところもありますが、かんきつについてはリーダー県ですから、自分で分析をして、国に要求を出しているところでございます。
 TPPによる外的不利条件をはねのけて、我が農家が頑張れるには、生産性の向上や高品質化をさらに進め、農林水産業の体質強化が必要でありますので、これに対してちゃんと対策をしてくださいという申し入れをしているところでございます。
 また、国の責任とはいえ、県の政策も有効に活用して、かんきつをはじめ、米や畜産などの、打撃を受けるかもしれない農林漁業者を守っていくのが我々の仕事だと思っております。
 一方、TPPを新たな市場開拓のチャンスと捉えて、輸出を目指す農林漁業者、特に農業に関してはかなり有望だと思っておりますので、輸出の販路拡大対策等も一層支援して頑張っていきたいと思っております。

《要望》松坂英樹 県議
 ご答弁をいただきました。うがった見方だ、マイナス面だけ見るのはおかしいというご意見をお持ちのようです。
 知事はこれまでも、マイナス面・プラス面あってというスタンスでした。私は、プラスマイナスの電卓をたたくのではなく、マイナスを受けるその中身・本質が、日本の食料生産、中山間地での暮らし、日本の農林水産業を、軽んじ、泣かして平気という政府の姿勢と、向いている方向は一緒だと批判せざるを得ません。
 日本農業新聞の農政モニター調査で、回答者の69%が「国会決議違反」と答えています。これは、国全体の利益という看板のもと、貿易相手国の都合や経済界の利益を優先させて、農林水産業は泣かされても仕方がないんだという政治が続いていると農家は感じているのではないでしょうか。私は、今回の質問を通じて、政府の国民をあざむくようなTPP交渉の進め方と、十分な説明もしないまま対策へ駆け込もうとする姿勢をきびしく批判するものです。
 そして和歌山県としては、国に対して大筋合意の経緯や詳細、影響・今後の課題を国民県民に明らかにすることを求めつつ、柑橘のリーダー県にふさわしく、県民の怒りと不安にしっかりと寄り添った対応をするよう要望するものです。
 今回の「大筋合意」により、舞台は3ヶ月後以降に予定される加盟12ケ国による正式調印と議会承認手続きに移ることになります。しかし、アメリカでも議会承認は進まない可能性も高く、カナダも政権交代となりました。日本の国会も予算審議を終えた来年4月以降の審議となり、「国会決議無視」という中身からも、参議院選挙をひかえた会期内成立は簡単ではないと見られています。私ども日本共産党県議団は、「TPPからの撤退・調印中止」を求め、安倍政権の暴走を許さない運動をさらにすすめてゆくことを表明するものです。


3.みかん対策
(1)本年産みかんの生産販売状況と販売価格向上の取組
《質問》松坂英樹 県議
 最後の柱として、みかん対策の質問に移らせていただきます。昨夜から今朝にかけて、台風のような暴風雨が吹き荒れ、今朝の気温は20度を超えるという「ぬく雨」でした。収穫直前のみかんが風でもまれ、傷や腐敗の原因となることが心配です。県としても状況をよくつかみ、目配りをしていただくようお願いをしつつ、果樹王国和歌山県農業の展望を切り開くためにも、しっかりとしたみかん対策を求めて以下4点、順次農林水産部長にお伺いします。
 11月末に、私は東京の大田市場にでかけ、市場の状況などをお伺いしてきました。本年産みかんは高品質な仕上がりとなって歓迎され、好スタートを切ったものの、11月の雨の影響を受けた品質低下に全国どこも苦労していると聞きます。本年産みかんの生産販売状況と販売価格向上の取組はいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 まず、本年産みかんの生産販売状況と販売価格向上の取組についてでございます。本年産温州みかんは表年にあたりますが、5月の高温による生理落果がやや多かったため、生産量は対前年比98%の17万トン程度と予測しております。品質につきましては、9月中旬から10月下旬の少雨により極早生みかんは平年より糖度が高かったものの、11月は平年に比べて気温が1.7度高く、降水量も約1.6倍と多かったことから、早生や普通みかんでは糖度は平年並みで、腐敗果や浮皮果の発生が多くなっております。
 こうした中、12月10日の系統扱いの市場単価は、極早生みかんが対前年比116%の1キログラム当たり185円、早生みかんが対前年比127%の1キログラム当たり219円で取引されており、みかん全体では対前年比123%の1キログラム当たり205円となっております。
産地での価格向上の取組につきましては、本年度から新たに実施している「みかん厳選出荷促進事業」の取組に加え、マルチ栽培や優良品種への改植を推進しております。また、腐敗果や浮皮果の流通を防止するため、家庭選別を徹底するとともに、選果場整備の際には、腐敗果等を検出する機能を有した最新鋭の選果機への更新をすすめております。

(2)農地流動化の取組
《質問》松坂英樹 県議
 優良農地の流動化対策は、有田地方をみかん産地として維持発展させる上で非常に重要な問題だと考えています。農業を続けられなくなって、条件のいい畑を荒らしてしまう前に、若い後継者にバトンを引き継ぐ手立てがどうしても必要です。国や県でも取組を強化していますが、なかなか目にみえた取組となっていません。それどころか、取組に対する批判的な声の方が多いと感じています。
 有田のみかん農家では、耕作面積5反以下の農家の離農がすすんでいるものの、2ha以上の農家数は少しずつですが増えているんですね。がんばろうとしている地元後継者を応援し、優良な農地を荒らさずに流動化させ維持できる条件はあると思います。県と市町村、JAなどの一層の取組強化を求めるものですが、いかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 農地流動化の取組についてでございます。本県は、みかん等の樹園地を始めとした急傾斜で不整形な農地が多いため、流動化が難しい状況でございます。
 しかしながら、担い手の高齢化が進展するなか、産地を維持発展させるためには、意欲ある担い手への農地集積が重要であることから、農地の貸借を進める「農地中間管理事業」や、樹園地の長期活用を支援する「和歌山版農地活用総合支援事業」等の施策に取り組み、平成26年度は「農地中間管理事業」で約24ha、「和歌山版農地活用総合支援事業」で約70haの支援を行ったところでございます。

 県としましては、各地域へ設置した「農地活用協議会」を核に、市町やJA等との連携をより一層強化しながら農地流動化の取組を着実に推進してまいります。

(3)現場の声にこたえた生産支援拡充を
《質問》松坂英樹 県議
 今回県は、国への政策要望の中で、優良品種への改植や高品質化対策の機材・設備の導入などへの支援を求めています。同品種であっても老木からの改植や、モノレール運搬機の更新、作業道など、現場の声にこたえた生産支援拡充を、国待ちとならずに、市町村とも力を合わせて、県としてどんどん進めてゆくべきではないでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 「現場の声にこたえた生産支援拡充を」についてでございます。国庫補助事業において、モノレール運搬機の更新は大幅な積載量増加による運搬機能の向上が条件となっており、また、改植では優良品種であっても同一品種の改植は支援対象となっておりません。
 このため、TPP対策として、かんきつ農業の競争力を強化するため、生産性向上や高品質化対策等の新たな制度創設や事業の拡充について、先般、国に対して要望いたしたところでございます。
 一方、県では、果樹産地の競争力を高めるため、本年度よりこれまでの事業を拡充し、生産から流通、販売の取組を総合的に支援する「果樹産地競争力強化総合支援事業」を県単独事業で実施しており、この中で、議員お話しの同一品種への改植や作業道の整備について支援してございます。
 今後も、TPP対策の早期実施を国へ強く働きかけるとともに、市町村やJAと連携しながら、県単独事業等を効果的に展開し、本県農業の基幹品目である温州みかんの振興を図ってまいります。

(4)みかんのファンを増やそう
《質問》松坂英樹 県議
 これまでも、有田のみかん産地では、みかんの花街道ウォークや、みかん海道マラソン、モンテオウコスモスなど、産地にふれていただく魅力的なアイデア・取組が各地でひろがってきました。有田みかんや和歌山県産果実の市場価値を高めるには、消費者のニーズをつかんだ、収穫や栽培など農作業体験、果実加工体験、ワーキングホリデー等などによる産地との交流により、和歌山県産みかんのファンを増やすこと、産地の魅力を磨き広げることが必要であると考えます。空き家や遊休施設の活用により、農家レストランや宿泊や交流のための施設の条件も広げることも可能です。
 県としても、こうしたみかんのファンを増やす取組に市町村や地元個人・団体とともに一層力をいれるべきと考えますがいかがでしょうか。

《答弁》 農林水産部長
 続きまして、「みかんのファンを増やそう」についてでございます。議員ご指摘のとおり、農産物のファンづくりを進めるためには、品質の向上はもちろんのこと、都市部の消費者に産地を知ってもらうことが重要と考えております。
 このため農林水産部では、平成15年度から県単独のアグリビジネス支援事業等により、農家民泊や加工体験施設等の整備に加え、消費者を対象とした産地での交流活動を推進するグリーン・ツーリズムを進めております。
 また、近年、本県への観光客が増加する中、観光部局とともに、より一層の交流を促進するため、現在、農林水産資源を活用した新たな施策を検討しているところです。
 今後も、こうした様々な事業を活用し、市町村や関係団体と連携しながら、和歌山のファンづくりを積極的に進めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 今回、山の問題、TPP、みかん対策と農林水産業問題を取り上げさせていただきましたが、和歌山県の基幹産業としてしっかり位置づけをして、新年度予算編成に臨んでいただくよう重ねて要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。


 
                                              仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹和歌山県議(右)
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