2015年12月県議会 文教委員会 雑賀光夫副委員長の質問概要記録
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《質問》雑賀光夫 副委員長
 エルトゥールル号の映画と不登校の問題についてお聞きしたい。
 1つ目に、議案に映画を鑑賞するための補正予算を提案されているのは、大変ありがたい。年度途中でこうした計画が入り、学校の自主性、計画に沿って予算をつけ、そしていい映画なので見せることになったと思う。そのように理解しているが、それでよいか。

《答弁》 県立学校教育課長
 12月補正でということで、当初なかったことであるので、学校に無理を強いることがあってはならないと思っており、学校と十分話し合い、学校の希望をまず最優先にし、どのような形態がよいか、どのような場所で鑑賞したらよいかなど、学校と相談しながら進めている。

《意見》雑賀光夫 副委員長
 結構である。
 これは、串本の人たちの人道的な行動がめぐりめぐって、イラン・イラク戦争のときに日本人の命を救ってくれた物語である。軍事力がどうこうという話ではなく、人道的な行動が、結局、日本の安全保障につながったと本会議でも申し上げた。
 ところが、この映画を自衛官募集のポスターに使うという動きがあり、県内でも貼られている。これは教育委員会の問題ではないので答えてくれとは言わないが、少し戸惑いの声があることだけを申し上げておく。

《質問》雑賀光夫 副委員長
 それで、自衛官募集の関係になるが、陸上自衛隊高等工科学校という学校がある。これはもともと自衛隊員や自衛官の学校だったが、18歳未満の者に鉄砲を持たすわけにいかないということから、結局、自衛官としてそこに入るのではなく、防衛省の職員として入ることに変わったそうである。そして、毎月10万円足らずの手当が支給されるという学校である。この学校の案内が、県内のある学校で3年生の保護者宛てに配られたという話を聞いたが、そのような動きがあったことを教育委員会はご存知か。

《答弁》 義務教育課長
 確認したところ、田辺市において、自衛隊和歌山地方協力本部田辺地域事務所のほうから、田辺市内で行われる陸上自衛隊高等工科学校の生徒募集説明会の案内について、保護者への配布の依頼があり、田辺市としては進路情報の一環として学校を通じて中学3年生の希望者のみ保護者に向けて配布したように聞いている。

《意見》雑賀光夫 副委員長
 自衛隊についての考え方は脇に置いても、ほかの学校の案内で全ての保護者に配られるというのはちょっと異常ではないかと思ったが、今聞けば希望者だけという話であったので、もう少し事情をつかんでみたい。
 近ごろ、安保関連法の関係で、徴兵制をとることは絶対ないとの話があり、その一方で経済的徴兵制という心配も議論されている。そんな中で、こういう問題はどうだろうかと思ったということだけ申し上げておく。
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《質問》雑賀光夫 副委員長
 次に、不登校の問題について幾つかお聞きしたい。
 昨年は学力の問題が危機的だということで問題になった。いじめ、不登校、高校中退、これらはそれぞれ大事な問題である。ただ、不登校の問題など、数の問題、全国順位の問題として大変だとして議論するのはどうなのだろうかと疑問を持っている。不登校の問題がワースト1になったのは、決して今回が初めてではなく、不登校の数を減らすことだけが問題ではないと思う。最近、しんどければ図書館へいらっしゃいという取り組みが大きな反響を呼んだこともあり、そのことは11月の 総合教育会議でも委員のどなたかからもお話が出て話題になったようであるが、そういうことも含めて、学校に行けなくなっている子どものつらさに心を寄せることこそが大事であり、あまり数の問題として問題にするのはどうかと思う。教育長はどうお考えか。

《答弁》 宮下教育長
 全国と和歌山県の状況というものを比較しながら分析していくことは極めて大事だと思っている。わかりやすくということからすると順位が出てくるが、全国の学力をあらわしている国の基本的な全国学力・学習状況調査の中で和歌山県はどう位置づけされているのか、その中から私どもは問題点を把握して一人ひとりの子どもたちにしっかりとした学力をどうつけていくのかということになると思う。
 また、不登校についても、数字から見えてくるものもあると思っている。例えば不登校については、学校そのもののあり方とか、教育そのものを内包している。不登校の子どもたちの数というのは、数からすれば1,000人中何人ということであるが、これは極めて大きな教育の課題であると、私も就任当初から申し上げてきており、それは先ほどより委員の皆様方からお話しいただいているように、一人ひとりの状況というのは個々にかなり様子、理由が違っている。それゆえ、それぞれの子どもたちに対応していくことこそが大事であるので、それぞれどういうふうにこれからしていくのかということも含めて、有識者会議を立ち上げたところである。
 不登校の数を減らすことは目標ではなく、減らしていける部分もあるし、それについての努力もしていきたいと思っている。また、そのことから一人ひとりの将来に向けて、自立に向けて何ができるかということもあわせてということを考えている。

《質問》雑賀光夫 副委員長
 大変大事なことを言ってくれた。一人ひとりの子どもについてどのように対応するのかという問題、また学校のあり方が問われているという問題があった。他の委員からも根本の問題という話があったが、根本の問題、学校のあり方という問題に関わって、国連・子どもの権利委員会が何度か日本の教育について意見を言っており、大変大事なことだと思っている。教育長はそのことについて、どういうふうに受けとめているのか。

《答弁》 宮下教育長
 まず一つ、国連からの勧告については、国としてそれについてお答え申し上げているということである。ご指摘の部分というのは、例えば不登校の問題であったり、いじめの問題であったり、あるいは中退の問題であったりという、その関連のお話かと思うが、それについては、日本の教育制度に関わって、特に過度の競争というものが影響していないかと書かれているのではないかなと思う。しかし、過度な競争の「過度」についてどう捉えるかということがある。それについては国の考え方もあって、私のほうからお答えすべきことではないかもしれないが、教育制度それだけに求めるのは、それはまた遣うかなと思っている。
 過度な競争の「競争」というものについて、よしとすべきかとなってくると、私は、子どもたちが励まし合って切磋琢磨しながら伸びていくことは大事なことだと思っているので、しっかり応援していきたいということが前提にある。しかし、教育制度の中で過度かどうかということについては、個人的な見解で恐縮であるが、学校週5日制とか、あるいは道徳教育、特別活動を含めて、日本の教育として世界に誇るべき教育制度を私どもは行ってきたということは高く評価されているので、そのうちの1点をもって教育制度の責任であるということにはならないのかなと思っている。
 私としては、北から南から日本のどこに行っても教育が保障されているという日本のすばらしさを認めた上で、そこに出てくるさまざまな課題についていろんな手だてを講じていくということが大切であると思っている。

《意見》雑賀光夫 副委員長
 国連・子ども権利委員会から日本の子どもに対する発言が3回あった。最初は1998年で、一番最近では2010年だったと思う。その中身を見ても、決して日本の教育を一面的に見ているのではなくて、今、教育長が言われた北から南まで教育は行き届いているという日本の教育の積極性を認めながら、しかし、この過度な競争的な教育という制度が子どもにストレスを与えているのではないかと心配をしているということである。これは、国に対する勧告ということでなく、私ども教育現場に近い者がやはり真剣に考えていかなければならない問題だということを申し上げておきたい。そういうことが、いじめ、不登校につながる。
 私はこの前、学力テストの問題で議論をしたとき、子どもたちが学校現場でストレスを抱えている、そのストレスを抱えていることが、あるときにはそこから逃げるのが不登校であり、ストレスの発散がいじめであり、そして行き着く先が自殺になったり、少年犯罪だったりするのではないかと申し上げた。教育長自身も、学校そのもののあり方が問われていると、大変大事なことを言ってくれた。今、そういうことをしっかりと考えながら、いじめの問題にしても、不登校の問題にしても考えなくてはならないと思っている。

《質問》雑賀光夫 副委員長
 いじめについても立派なマニュアルを作ってくれているが、マニュアルというものは、誰でも同じように取り組めるといういい面はあるが、深く考えずに、手順の問題としてやられるという問題も生み出しやすい。
 例えば、いじめ問題対応マニュアルをずっと読んでみたが、いじめを発見したとき24時間以内にやらなくてはならないことが書かれている。そこで一番何が大事にされているかというと、事実をつかむことであると書かれている。そのことも大事であるが、現場の先生方にいじめの問題があったときの学習資料を作ってもらったことがある。そのときに、最初に書かれているのは子どもの気持ちに共感することであり、事実調べではない。子どもに「君はいじめられたのか。つらかっただろうね。先生は君の味方だよ」と共感することがまず第一で、そのことを通じて事実も明らかになると書かれている。ところが、いじめのアニュアルだけを見て「そうか、とにかく事実をつかむことが大事か。それでは、君はどこでどのようにいじめられたのか」ということから始まると、子どもたちは口を閉ざしてしまう場合もある。
 もちろん、教育委員会の名誉のため申し上げておくと、別のページには「どんな取組だったのか見直そう」というのがあって、そこには「いじめの相談や訴えに対して親身になって受けとめたか、自分で振り返ってみよう」と書かれている。私は、このこともちゃんと見ている。決して教育委員会のあら探しばかりして見ているのではないということも申し上げておきたい。
 しかし、マニュアルには、得てして手順の問題になってしまうという問題がある。子どもたちが今どういう状態に置かれているのかということが大事である。私が資料を作っていただいた先生方は、子どもたちは今学校で「あえいでいる」という言葉を使われたのが非常に印象に残っているが、今も変わりない。ストレスを抱えている状態をよく捉えて議論をすることが大変大事ではないか。
 その点、今度、不登校の問題でも数値目標を出して、どういう取り組みをしたか非常に膨大な報告書を書くようになり、これまたいっそう学校現場の忙しさか増してくるのではないかと心配もするが、教育長、そういう心配はないか。

《答弁》 宮下教育長
 まず、マニュアルということであるが、私どもは、全ての教員が的確に対応できることが最優先というふうに思っている。そのためのマニュアルである。しかし、そのマニュアルは、私どもは、事がいじめの問題であるとするならば、一番心のこもったマニュアルであると思っている。そのことを十分踏まえた上で、子どもたちに寄り添っていけることも含めて、私たちはマニュアルを作成したつもりなので、誤らないようにしていきたい。特にいじめについては、ご指摘のように大きな課題になってくると命に関わる問題にもなってくるので、24時間という一つの目安も出している。それだけ全ての先生方に速やかにしっかりとした対応をしていただきたいということを込めているので、ご理解いただきたい。
 また、調査ということであるが、子どもたちの状況については、各市町村で現実にかなりいろいろな形で対応してくれている。しかし、一方で、そういうことが行き届いていない学校現場もあった。私どもの課題として、5月に私から通知を出させていただき、この夏から県下一斉に、実はこんなことも大事ではないかということで見直しをしていただいた。子どもたち一人ひとりを見ていくのに、学校だけではかなり困難性がある。支援事務所、県・市町村教育委員会が同じ情報を持って子どもたち一人ひとりに対応していくことが大事であり、基本的ベースをしっかりとつくっていこうとしている。当座、そのための作業ということになるかもしれないが、先生方にもご理解いただいて、これを十分活用しながら子どもたち一人ひとりの状況をしっかりと見ていきたいと考えている。

《意見》雑賀光夫 副委員長
 先日、教育要求県民集会があり、長い間、いじめ、ひきこもり等の居場所づくりに取り組んでこられているNPO法人エルシティオの理事である金城先生から発言があって、その先生が、ある中学生の女の子の話を紹介された。先生が女の子に話を一生懸命聞くと、その女の子は「先生はいじめのことを心配しているが、私のことを心配していない」というふうに発言したという話を紹介された。私も、それを聞いて非常にショックだった。何も、このマニュアルがだめだと言うつもりはないが、現場から出される声に謙虚に耳を傾けてマニュアルをどんどん改善もしていただきたい。
 今度、有識者会議をつくられる。大学の先生で結構であるが、和歌山でこうした問題に取り組んでこられた先生の力をもっとかりてはどうか。大津のいじめ自殺問題のとき、和歌山大学におられた松浦先生が委員になっていた。大津の問題については、大津の問題に関係のない第三者が入ったほうがよかった。ところが、和歌山で今からいじめの問題について議論しようということになったときには、やはり和歌山のことをよく知っている先生に、もっといろいろ聞かれたらいいのではないか。有識者会議だけじゃなく、いろいろな場所で聞いたらいいのであって、今さら有識者会議に入れろとまで言わないが、そういう意味で、今紹介した金城先生がその1人でもあるし、例えば、教育委員会にいてずっと不登校の問題に取り組んでこられた先生でいえば、今大学に行っておられる藪添先生や和歌山大学にも先生もいらっしゃるので、そういう方の意見をどんどん聞けばいいのではないかと思う。


議案に対する採決
議案第152号 平成27年度和歌山県一般会計補正予算
議案第184号 和歌山県立体育館及び和歌山県立武道館の指定管理者の指定について
は、全会一致で原案可決


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