2016年2月県議会 松坂英樹 一般質問 概要記録   議会中継録画




201634
1.雇用促進住宅の「譲渡・廃止」への対応について
(1)県内雇用促進住宅の状況と市町村の対応
(2)市町村と民間に譲渡された住宅での運営入居状況
(3)国の交付金などを活用し公的住宅等に
(4)公営住宅への優先的入居について

2.農地転用をめぐる混乱について
(1)農地法や農振法の制定・改正の経過と対応
(2)市町村のまちづくりの計画について
(3)「市町村と相談しながらすすめる」となっているのか


1.雇用促進住宅の「譲渡・廃止」への対応について
(1)県内雇用促進住宅の状況と市町村の対応
《質問》松坂英樹 県議
 通告に従い一般質問をさせていただきます。
 まず一つ目に、雇用促進住宅の「譲渡・廃止」問題への対応について、順次お伺いします。
 雇用促進住宅は、1990年代に「官から民へ」という政府の構造改革路線のもと、雇用促進事業団が解散、2001年の「できるだけ早期に廃止」という閣議決定にもとづいて、2021年までに譲渡・廃止をするという方向ですすめられてきました。事業を継承した「雇用・能力開発機構」は、当時その廃止方針にそって、定期借家契約者の再契約を中止する案内を出すなどして問題となりました。
 ところがその後、リーマンショックによる派遣切りで、約12万人もの非正規労働者が職を失う事態となり、政府は解雇による住居喪失者のためにと、既に廃止決定した雇用促進住宅も活用することとし、また、2011年の東日本大震災による被災者の住宅確保のためにも大いに活用されました。こうした経過により、雇用促進住宅の廃止と入居者追い出しの動きは止まっていたわけですが、昨年、「雇用促進住宅の売却等について」という文書とアンケートを配布し、期限通りの2021年までの廃止へと一気に走り出したのです。
 当初、国と「機構」は、現に入居者がいることを踏まえ、できる限り現住宅に住み続けられるようにと、自治体への譲渡をすすめましたが、自治体の多くは財政難等を理由に譲渡に応じず、民間への売却、それができなければ廃止という方向へ加速させたのです。
 「この住宅がなくなったらどこへ行けばいいのか」と、入居者からは不安の声が聞こえてきます。
 私が調査に伺った地元湯浅町の雇用促進住宅でも、特に長くお住まいになられている高齢の方から不安の声が出されました。ある方は、「40年以上住んでいて、ここを追い出されても行くところがない。年金暮らしだがパートに出てがんばっている。ここは買い物にも便利なところで、ずっと住み続けたい」とおっしゃいました。一人住まいの女性の方からは、「この歳では民間で貸してくれるところないのではと心配」との声。子育て世代のお母さんからも不安の声が出されます。また、昨年入居したばかりという若い方は、「民間に売られるなんて話はよく知らなかった。民間に売られるなら出ていくつもりとアンケートで答えた」など、昨年の通知文書とアンケートにより、それぞれに不安や心配を募らせていると実感しました。また、この住宅は外階段であることから津波避難ビルとして指定されており、廃止して取り壊されてしまえば、付近住民の避難行動にも影響する問題です。
 そこでまず第一点目に、県内雇用促進住宅の状況と県内市町村の対応についてお伺いいたします。県として、県内雇用促進住宅での状況をどう把握しておられるのか。また、譲渡を打診された県内市町村の対応はどうであったのか。商工観光労働部長に答弁を求めます。

《答弁》 商工観光労働部長
 雇用促進住宅は、国の特殊法人であった「雇用促進事業団」が移転・転職を余儀なくされた人々の住宅確保を目的に昭和30年代から整備を行ったもので、県内には16市町に23住宅が設置され、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に管理が引き継がれております。
 機構にこれまでの経緯を確認したところ、平成13年12月に雇用促進住宅についてはできるだけ早期に廃止する、平成19年6月には遅くとも平成33年度までにすべての処理を完了するとの閣議決定がなされております。それに基づき、所在する市町へ機構が譲渡意向の確認を行っております。その結果、希望のあった新宮市、かつらぎ町、上富田町の3住宅は、平成22年から平成24年にかけて市町に譲渡され、希望のなかった住宅のうち海南市、田辺市、紀の川市、由良町、串本町にある6住宅は、一般競争入札により平成27年に民間事業者へ売却されております。
 現在、機構で管理されている11市町14住宅についても、所在市町からは受入れの希望がなかったと聞いております。

《意見》松坂英樹 県議
 部長より、県内23ヵ所あった住宅の今の状況をご説明いただきました。和歌山県内でも、譲渡の打診を受けた自治体の多くにとって、国が運営を放棄したことによる降ってわいてきた話だったわけですし、きびしい財政事情等を理由として譲り受けることを躊躇した結果だと思います。
 この雇用促進住宅を全国的に見れば、最高時には38万人、今も約10万人が暮らしています。家賃収入により、295億円の利益剰余金という黒字をもっていて、5年前にも約400億円を国庫に入れている優良な住宅事業です。現在も、県内14住宅には834戸に約2,000人の方々が生活をされています。
 県内の雇用促進住宅では、すべて耐震診断と耐震改修がすまされていて、当面の大きな改修費用は必要ない状況となっています。結構古い住宅が多いなど、個々の住宅の条件は様々ですが、雇用促進住宅の建設を地元自治体が誘致してきた経過等からみても、立地条件などは、利便性もあり政策的に必要性のあるところに建てられていて、それぞれが十分活用できる条件をもった住宅ではないかというふうに見ています。

(2)市町村と民間に譲渡された住宅での運営入居状況
《質問》松坂英樹 県議
 では次に、23ヵ所あったうち、すでに譲渡されてしまった9ヵ所の雇用促進住宅の現状についておたずねします。
 県内でも3市町が譲渡を受けて活用していることが答弁でありましたが、全国的な状況を見ましても、自治体が引き受けて定住促進住宅として所得制限をなくすなど、入居基準を緩和し活用しやすくしている例が数多く見られます。その一方で、民間譲渡された住宅では、入居率の高い住宅もある一方で、空き家の増加やメンテナンスへの不安が聞こえてくるケースもあると聞いております。すでに市町村と民間に譲渡された住宅での運営入居状況はどうかという点について、商工観光労働部長よりご答弁を願います。

《答弁》 商工観光労働部長
 雇用促進住宅の譲渡を受け入れた新宮市、かつらぎ町、上富田町の住宅は219戸で、入居戸数は譲渡時の120戸から、現時点では185戸になっていると聞いております。
 また平成27年に民間事業者に売却された5市町6住宅については、8年間入居者の家賃を上げないことや他者への転売を禁止するなど、入居者に不利益とならないよう条件が付されておりますが、機構では現在の入居戸数を把握していないと聞いております。

《意見》松坂英樹 県議
 ご答弁の中で、県内で自治体が譲渡された3つの住宅は、いずれも定住促進住宅等の公的住宅として、公営住宅よりも政策的な運営をしていて、入居者も増えているという数字が示されました。
 かつらぎ町では、40歳以下の若い世代に安い家賃設定で入居を促し、入居から3年間は家賃補助もしています。上富田町や新宮市熊野川町でも、従前より安い家賃設定として定住促進をはかっています。住宅購入費用については10年間の分割オーケーなので、上富田町では毎年の家賃収入でもって支払いを済ませているようです。「機構」が発行している全国の事例集にも、こうした多くの魅力的な事例が紹介されていますが、このように市町村に譲渡された住宅は、定住対策等それぞれの役割を発揮し、運営も好調だということが言えると思います。
 ところが一方で、民間に売却された住宅については、部長からは、民間に移っているので入居状況については把握できていないとの答弁でした。県内6ヵ所の住宅はいずれも昨年に売却されていますが、私どもが調査したところでは、新たな入居はなくて維持管理をあまりしてくれないようだとの心配の声が出されていたり、また、ある住宅では、譲渡を機に退去者が続出し、入居募集をかけているものの、まるごと空き家状態になっているケースもありました。
 こうした状況を見れば、いくら一定期間は家賃を上げないという約束がされていても、民間への売却は、先々への不安というものが影響していると思うのです。そして、残っている14団地の今後を考える上でも、よくこうした実態から見えてくるものを踏まえて対応を考えなければと思うのです。

(3)国の交付金などを活用し公的住宅等に
《質問》松坂英樹 県議
 以上のことから、すでに「譲渡・売却」された住宅における、自治体での活用事例などをみれば、民間売却直前という困難な条件の中ではあっても、ぜひ自治体による譲渡を再考すべきだと考えるわけです。雇用促進住宅の譲渡にあたっては、国の事業として公的にすすめられてきたという趣旨と歴史からみても、またこういう譲渡後の現状からみても、自治体への譲渡という形が入居者にとっても、また地域にとっても望ましいのではないかと考えます。
 そこで3点目の質問として、国の交付金などを活用し公的住宅等に活用できるようにという観点から質問をいたします。
 「機構」は期日までに民間への売却・廃止を強引にすすめようと前のめりになっていますが、私は、住民の声や現在の状況をふまえ、いま一度、自治体に対して住宅の買い上げと住宅としての活用を再考すべき時だと考えるものです。機構が紹介している全国的な事例集を見ても、市町村が国の交付金等を活用して住宅の譲渡を受けた例が数多くあります。政府として「まち・ひと・しごと創生」をかかげて様々な取り組みや財政支援をしているのであれば、県や市町村としても、その政策に呼応した人口増対策・若者定住対策等の今日的な課題として活用を再検討すべきだと考えます。
 以前に、県としては雇用促進住宅の譲渡を機構から打診されても引き受けなかったわけですが、その理由は何であったのか。その上で、今日的課題として、県としても「総合戦略」などに位置づけて、住宅としての活用することを再検討すべきだと思いますがいかがでしょうか。
 また、県内市町村に対して国からの交付金などの支援措置を受けられるようにすることも含め、市町村に活用・検討を働きかけるべきではないでしょうか。県土整備部長からご答弁を願います。

《答弁》 県土整備部長
 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から平成25年6月に雇用促進住宅の取得に関する依頼がありましたが、県営住宅については本県の人口及び世帯数の減少傾向並びに建物の老朽化の状況を踏まえ、現在の戸数を維持しつつ現行建物の建替事業に取り組む方針としており、取得の意向がない旨を回答しております。
 その後、平成27年6月に策定した和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略の「地域を支える公共インフラの整備」の項目に、県営住宅の計画的な維持管理・更新を行動指標と定めた際にも、その方針を変更しておりません。
 市町村に対しては、雇用促進住宅を公営住宅として買い取りする場合、国の社会資本整備総合交付金の対象となることから、例えば老朽化した公営住宅の住み替え用の住宅として活用することなども含めて検討するよう働きかけてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 県としては、現時点では住宅政策上再考する考えはないという答弁は残念ですが、引き続き検討を求めてまいりたいと思います。
 一方で、市町村が譲渡を検討する場合には財政支援や活用方法など相談に乗るし、検討を働きかけるという答弁をいただきました。
 機構の説明では、民間売却は鑑定価格からの競争入札ですが、自治体が譲渡を受ける場合は鑑定価格の2分の1まで譲渡価格を下げるという方針ですし、譲渡を受けることを検討する自治体に対しては、新たな現時点での鑑定価格を算出するといいます。以前に打診を受けた、約10年前の鑑定価格よりもずいぶん下がっていると思いますから、政策的位置づけとともにぜひ検討すべきだと思いますのでよろしくお願いします。

(4)公営住宅への優先的入居について
《質問》松坂英樹 県議
 この問題での最後に、公営住宅への優先的入居についての質問です。
 万一、自治体への譲渡も、民間への売却もいずれもが不調に終わったときには、住宅を廃止し、解体し、更地にして売却ということが3年後から5年後に計画されています。こうなった場合の対応、住宅からの立ち退きをせまられる退去者にどう手立てをとるのかが大問題となります。国交省と厚労省からそれぞれ、雇用促進住宅が廃止された場合の退去者で住宅に困窮する方には、公営住宅や公的住宅に優先的な入居ができるよう配慮を求める通知が出されています。この趣旨を徹底するとともに、有効な手立てがとれるよう国や市町村と連携・協議をすすめるべきではないか。この点についての県土整備部長の答弁を求めます。

《答弁》 県土整備部長
 国土交通省からの「雇用促進住宅の廃止に伴う公営住宅への優先入居について」に係る、平成18年9月26日付け及び平成27年6月10日付けの通知については、既に各市町村に対して周知しているところでございます。
 県ではこの通知を受け、今後県内においても雇用促進住宅の廃止の可能性が出てくることが考えられるため、平成28年度から廃止に伴う退去者について、県営住宅への優先入居の対象となるよう手続きを進めているところでございます。
 あわせて、廃止に伴う退去者の円滑な住み替えが可能となるよう国や市町村と連携を進めてまいります。

《要望》松坂英樹 県議
 部長からは通知の周知徹底とともに、県営住宅としてはすでに動き始めているという答弁もいただきました。最後に、要望といたしまして、この雇用促進住宅の入居者の一人ひとりが県民なんだ、市町村の住民なんだという立場で、市町村とは住宅部門・福祉部門など様々なチャンネルで連携を深めて対応を協議していただきたいと要望するものです。
 そして、これはそもそも国が住宅廃止を決めてすすめてきた問題であり、それによって引きおこる問題、対応を迫られる問題が、自治体にかぶさってきているわけですから、自治体が買い取る際の交付金等による財政支援などを、国に対してしっかりと求めていただきたいと重ねて要望をさせていただき、この問題での質問を終わります。

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2.農地転用をめぐる混乱について
(1)農地法や農振法の制定・改正の経過と対応
《質問》松坂英樹 県議
 ひきつづき、2本目の柱である、農地転用をめぐる混乱についての質問に移らせていただきます。
 この農地転用に関しては、昨年の12月議会、そして今議会と多くの議員からも質問がされていますが、私はこの農地転用をめぐり、県民の間や県と市町村の間で混乱が続いていることをたいへん憂慮しています。いつまでこの混乱が続くのかとの悲鳴も上がっています。しっかりとした議論の積み上げの上に立って、合意形成のための努力をすべきだという立場で質問をさせていただくものです。
 私ども日本共産党はこれまでも、「農地は耕作者のもの」という立場で農地を守ることを主張するとともに、国と自治体の政策としては必要な農地転用の規制による適切な保全、乱開発・違法転用の防止、遊休農地対策をすすめつつも、農地の有効利用は農家経営が成り立ってこそだと、農業で食べてゆけるようにすることこそが大事だと、日本農業を基幹的生産部門として位置づけ発展させることを求めてまいりました。
 今回、県が打ち出した「農地転用を厳格化」という方針は、中心市街地活性化と市街地の拡大防止、行政コストの縮減等をそもそもの動機としたものです。農業を守る、農地を守るというところから出発していないということが、スタート地点の立ち位置の違いとなって問題が始まっていると考えます。
 そこで、まず農業・農地を守るということは「農地法」「農振法」でどう議論されてきたのか、その制定の趣旨についてお示しください。また、農地転用の規制が強化された7年前の農地法改正の経過について、そしてその改正に対しては県と市町村はよく協議をしながら、県内農業や農村の実態、地形的要因などを考慮して運用に努めてきたと考えていますが、県と市町村の対応はどうであったか。以上の点について、まず農林水産部長の答弁を求めます。

《答弁》 農林水産部長
 農地法は、農業生産の基盤である農地が国民の限られた貴重な資源であることを鑑み、農地を農地以外のものにすることへの規制や、農地の利用関係を調整することなどを目的として、昭和27年に制定されました。
 また、農業振興地域の整備に関する法律は、農業振興を図ることが必要な地域について、必要な施策を計画的にするための措置を講じて、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的として、昭和44年に制定されております。
 両法とも、平成21年に、世界の食糧需給が逼迫基調で推移すると見込まれる中、国内の食糧自給力の強化が喫緊の課題であるとして、農地の確保を図る観点から改正が行われました。農地法では、第1種農地の集団性基準が20ヘクタールから10ヘクタールへの変更、第3種農地の判断基準の厳格化、農振法においては、農振農用地の除外要件の追加などの規制強化が行われております。
 以上のように農地転用制度が強化されてきた中、県では市町村と連携を密にして農地転用許可事務を行ってきましたが、地域によっては、土地需要の実情に応じた柔軟な運用の結果、郊外部の宅地開発が進んで農地が蚕食されているところも多々見受けられるようになりました。この現状が続くと、「経営感覚がすぐれた農家の育成や、意欲的な農家への農地の集約」といった、本県が進めようとする、たくましい農業の実現に支障が出てくると考えられます。
 こういうことを踏まえ、昨年2月に公表した「新政策」の中に優良農地保全の基本的な考え方を示させていただきました。
 それに基づき、今年度当初から具体的な取組内容の検討を行い、法令の範囲内で運用を厳格化することとし、市町村への説明や、知事記者発表により、考え方を周知させていただいたところでございます。

《意見》松坂英樹 県議
 ご答弁いただきました。もともと農地を守るのは、身勝手な大規模開発から農地を守ることであって、農家の子どもたちが農地を転用して家を建てるのを阻止しようとしているのではありません。
 県の「農地転用の基準を甘くしていたのを基準通りの元に戻すだけです」という説明をしていますが、その変な説明が、県民・市町村との間で混乱を招いていると思います。県がいう国の2009年「改正」による「厳格化」への対応は、県と市町村が十分に相談しながら、法の趣旨に沿って具体化・運用してきたわけです。法基準の解釈運用の部分と、その一部の修正してゆくべき部分をごっちゃまぜにして、全部ひっくり返すような議論がされているのが問題だと考えています。
 どうすれば農業のかかえる今日的課題にこたえられるのか、和歌山の実情にあう運用はどうしてゆけばいいのか、市町村とともに更なる落ち着いた議論を求めるものです。

(2)市町村のまちづくりの計画について
《質問》松坂英樹 県議
 次に、市町村のまちづくりの計画についてお伺いします。
 県は、この農地転用の問題を説明する際に、市街地拡大防止と中心市街地再開発のために、誘導と規制を組み合わせてゆくのだと言ってきました。農地転用をめぐる疑問や意見に対しては、“ゾーニング”をしてゆけば解決すると答弁してこられました。
 言うまでもなく、将来像をもった計画的なまちづくりを住民合意ですすめてゆくことはたいへん重要です。県としては、広域的なまちづくりのマスタープランを示しながら、市町村とともにこれをすすめてきたわけですが、市町村における計画策定や地域指定などの経過と状況はいかがでしょうか。県土整備部長より答弁を願います。

《答弁》 県土整備部長
 都市計画分野においては、県は、県土全体の発展を見据え広域的あるいは先導的な視点でまちづくりを展開する役割を、市町村は、基礎自治体として地域の実情に合ったまちづくりを主体的に進める役割を、それぞれ担っております。
 こうした基本的な役割分担の下、これまで、県は、各地域の実情、課題、まちづくりの方向性等について意見を聞きながら、県全体の都市の将来像や実現に向けた基本的な方向性を示した『都市計画区域マスタープラン』を策定してまいりました。また、市町村は、県が策定したマスタープランに即した『市町村マスタープラン』を策定のうえ、より地域に密着した見地から、まちづくりを進めてまいりました。
 都市計画を策定する際には、住民意見の反映はもちろんのこと、県と市町村が協議・調整し、必要な場合には、県が技術的な助言を行うなど、市町村が目指すまちづくりが的確に進められるよう努めてきたところでございます。
 現在、県内では、23市町が都市計画区域を指定しており、その内15市町においてマスタープランを策定しております。また、和歌山市において市街化区域と市街化調整区域を指定しており、和歌山市を含む9市町が用途地域の指定をしているところでございます。

《意見》松坂英樹 県議
 ご答弁いただきましたが、逆に言えばやれていない市町村が多いという数字でもあります。23の市町が都市計画区域を指定しているということは、あとの7つの市町村はそれを定めてゆく、人口とか市街地の集積とかの要件がはまらない町村だということです。
 いわゆるゾーニング、用途地域の指定は9市町ということは7市と2町だけということであり、他の21町村は用途地域の指定はしていないのが現状です。
 ついでに言えば、都市計画税の徴収は7市と4町であり、残り19町村は徴収していませんが、これからどうなるのかも別の話として存在します。
 一方で、用途指定のために農振地域指定をはずすということになれば、農業支援の施策が入らなくなるということになり、農業を続けていくうえで大きな影響が出ます。
 このように、都市整備の視点からの計画、農業振興の視点からの計画、その他防災の計画など、それぞれ様々な計画をコントロールすることが求められます。
 「ゾーニングすれば、そこは農地転用できる」ということに間違いはないけれども、それだけではいかんという、各自治体の課題と経緯、実情をリアルに見る必要があると考えます。

(3)「市町村と相談しながらすすめる」となっているのか
《質問》松坂英樹 県議
 最後に、これまでの質問もふまえ、知事に質問させていただきます。
 この間、知事は、議会での答弁であったように、市町村に対して「よく相談しながらすすめたい」と、政策への理解を求める説明とゾーニングの提案に回られています。
 しかし、昨日の一般質問でも、市町村長さんらの生の声が数多く紹介されておりましたが、私も機会あるごとに、首長さん、議員さん、職員の皆さんからご意見を伺ってまいりましたが、まさに同様のご意見が寄せられています。
 知事は、行政報告会の際に、参加者から「農地転用ができなくなったら、農村部の私たちの地域に家が建てられなくなり、若い子らのための家が建てられない。結果として町から若者が流出することになって困ります」というご意見に対して、「それはゾーニングをして、転用できる地域を指定すれば解決できます」と、あっさりと答えていらっしゃいましたが、こうした計画策定と地域指定は、行政と住民の十分な議論を経てすすめるべきものであり、そんな簡単にすすむと考えているのでしょうか。
 また、中山間地を多くかかえる本県の地域環境は、農地と住宅が混在しながら利用がすすんできたという部分があります。広大な平野部に広がる水田地帯とは条件がちがうのです。農家は、自分の家は少し条件がわるいところに建ててでも、日当りのいい条件の良い土地を畑や田んぼとして大事に引き継いできたわけです。そうした地域の実態に即して、法の運用において農業振興と土地利用の折り合いをつけながら、行政をすすめてきた経過があると考えます。
 今の知事のすすめ方は、「農地を守る」と言いながらも、地域の実情に合わない都市から見た論理、「理屈」の押し付けになっているのではないでしょうか。以上、「市町村と相談しながらすすめる」となっているのかという点について、仁坂知事の答弁を求めます。

《答弁》 仁坂知事
 ただいまのご質問にお答えいたしますと、まず簡単に済むはずがありません。市町村もいろんなことを考えて、住民の意見も聞きながら都市計画法の権限を行使していかなければなりません。
 また、これはマスタープランの作成の時も同じでございまして、大変な調整をしてマスタープランを作っていらっしゃるはずでございます。
 ただし、そうだからこそ、そのマスタープランを実施するために、必要があればということなんですが、実行措置も取らなければならないケースもあると思います。
 それが都市計画法上のゾーニングであったり、農振農用地の指定であったり、あるいはその解除であったりですね、具体的な農地の転用の許可であったりするのだと考えております。
 まちを拡大させたいとか、あるいは津波の代替地を確保したいとか、極めて正しい、そういう要請もあるわけでありまして、そういう個別の事情を抱えている地域の存在は私もよく認識しております。
 そういう意味でですね、それがふさわしければ、用途地域を指定した場合は当該地域内の農地は3種農地というふうにみなされるので、そうすると市町村の判断によって柔軟な農地転用が可能であるというようなことを説明はしています。
 それからその際に、そんなことができるかと、具体的に言うばかりで無責任だと思われても困るので、マスタープランに沿って、あるいはマスタープランもちょっと古くなっている、津波なんかが入っていない可能性がありますので、最近の言われているニーズに応じて、例えば、こういう形でやればできますよねというようなことを一例として、お示ししたりもしています。
 ただ、これはあくまでも、市町村がおやりにならなければならないことなんで、必要があればそういう考え方もありますねということを言ってる訳でございます。
 また、同時にそれぞれの権限があって、全部県の考え方を押し付けられる訳ではありません。
 ただし、県、市町村共、主としてそれぞれの権限に従って、あるいは、時には、権限がなくてもよかれと思って、お互いの意見を言ったり、お願いをしたりするということは、否定してしまっては、これは建設的ではないと思います。
 また、いずれの政策でもつらい人がでてきたり、不利益を被る人も出てくるし、なかなか大変な地域も出てまいります。
 ただし、理屈の押し付けとおっしゃる訳ですが、理屈の中身が間違っていれば論外ですが、間違ってなければ、必ず人々の不利益、あるいは地域の不利益がいずれ出てくる訳でございます。これをどうするのか、あるいは、そんなことは大したことないんじゃないのか、というような評価をするか、こういうことが、やっぱり大事でありまして、別の解を示さないと十分な政治行政ではない。
 これは国政の場でよく見られて、それでは対案はあるのかなんていう話がありますが、それと同じようなことがあるんじゃないかなということで、これからも市町村とよく話をし、かつ県議会のご意見もよく聞いてですね、やっていきたいと思っております。

《再質問》松坂英樹 県議
 知事から答弁をいただきましたが、これまでの論理の繰り返しであったかと思います。個別の事情はわかるが、問題があっても必要な施策だという部分はかわらず硬直した姿勢だという印象を受けます。知事に何を言ってもそういう答えを繰り返しているから、総論では理解を得る部分があっても、「知事は地域の実情をわかってくれない」、「理屈をおしつけてきて、一歩もひく気はない」、「言うても聞かん」、こんなふうに受け止められているのが実態であり、私は、いまだに県政に混乱が続いていることを重大に受け止めるべきだと思います。
 12月議会以降、知事自らも説明して回っておられるものの、市町村長をはじめ県民各方面との双方向での理解は深まっていると思っていますか。相談しながらといいながら、知恵を出し合うという姿勢になっていないのではないですか。再度、知事の答弁を求めます。

《再答弁》 仁坂知事
 その中にはたくさんのケースがあると思います。かなり多くのケースは、実はもともと駄目だったのが、「やっぱり駄目か、それは今回の政策の変更のせいだ」と言って、思い込んでおられるところがあります。
 それから、どうも仁坂知事は頑固だから、農地転用が全て駄目に、一切できなくなるのかと思っておられるところもあります。
 そういうところは、誤解を解いていけばいずれわかってくださるのではないかと思っております。
 ただ、それでも政策変更によって影響が出る方もいらっしゃるわけです。その影響について、どういうふうに評価をして、それでは別の問題はどうでもいいのかというようなことも評価をして、全体として議論をしていかないといけないんじゃないかと私は思っております。

《要望》松坂英樹 県議
 知事に対してご意見も申し上げ、お答えもいただいたわけですが、県はまちがっていない、あとは市町村が判断してゾーニングしたらよいという、片側通行の話になっていると感じました。
 私は、今回の問題は、知事の自説を押し通そうとするそのかたくなな姿勢が、自分の論理が正しいんだと、わからんほうが間違っているんだとでもいうような、上から目線の姿勢になっていると率直に苦言を申し上げなければなりません。県議会や市町村、関係者、県民の声に対し、広く聞く耳をもって、力合わせて方向性をさぐってゆけるよう知事に強く求めるとともに、今後もこの問題を注視してゆくことを表明いたしまして、今回の質問を終わります。


 
                                                  仁坂知事の答弁を聞く、松坂英樹和歌山県議(右)
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