2016年2月県議会 雑賀光夫 予算特別委員会質問 概要記録
     2016310

1.2016年度予算の性格について

2.教育問題
(1)不登校問題での新しい施策は?
(2)民間の取り組みをどう評価し、どう支援するか
(3)不登校問題の背景としての今日の教育問題
(4)教職員定数をめぐる課題
  ・教職員定数の確保
  ・小学校2年生から3年生への学級統合の実態
  ・上記学級統合をしないだけの定数配置を
  ・定数内講師の人数
  ・定数内講師の解消を

3.子どもの貧困の問題
(1)「子ども食堂支援事業」について
(2)給付型奨学金について
  ・給付条件は?
  ・対象となる学生数は?
  ・せっかくの制度・拡充運用を

4.労働問題について
(1)県内の労働実態の問題把握
(2)労働実態の問題にどう取り組むか
(3)労働基準法とともに労働組合法の周知


1.2016年度予算の性格について
《質問》雑賀光夫 県議
 委員長のお許しを得ましたのでいくつか質問を申し上げます。
 予算特別委員会ですので、最初に予算の概要のようなところで感想を申し上げ、知事のご所見をお伺いしたいと思います。
 福祉の分野では、今年度予算の目玉になっている第3子以降の保育料無料をひろげること、大学生への進学給付金制度など、前向きのものもあります。
 しかし、ひとり親家庭、老人医療、重度心身障害児()医療、乳幼児医療は、市町村が独自に拡大対象にしているものもあるのに、この4制度合計で前年度比、1億2000万円の減額です。
 一方、道路建設も大事なことですが、京奈和自動車道和歌山ジャンクションの大規模工事の負担金58億円が見込まれています。このジャンクションは、紀淡連絡道路に接続することを見越しているのではないかという質問を、松坂県議が、建設委員会で申し上げたことがあります。これだけ大きなものがどうしても必要なのだろうか。
 予算では、「紀淡連絡道フリーゲイジトレイン整備促進」の広報活動費が計上されています。いまは広報費でわずかな額ですが、本当にこんな公共事業がすすめられるなら、国直轄負担金が県財政を圧迫することになります。
 大型道路をつくることをまるまる否定するものではありませんが、何よりも「暮らしと福祉」などを応援すべきではないかと思います。
 知事の所見をお伺いします。

《答弁》 仁坂知事
 平成28年度当初予算については、昨年6月に策定した「和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略」の実現に向けて、次の和歌山を創生していくためのステップアップ施策である。
 特に一丁目1番地というべき政策は、子どもの数を多くして、たくさん育ててもらうようにしようという政策である。これは未来への投資と考えており、不妊治療の助成拡大、第3子以降の幼児教育、保育の完全無料化、待機児童解消対策の充実や低所得者に対する給付型奨学金の創設など、未来を支える子どもを安心して生み育てる環境をつくりたいと思っている。
 また、安全・安心な暮らしを実現するため、防災面はもちろん、在宅医療提供体制の構築、がん対策、健康づくりの推進、介護施設の充実や担い手確保など、質の高い医療と福祉の充実について取り組んでいく。
 平成28年度の予算総額は対前年度2%の減額となっているが、社会保障関係経費については、2%の増額となる589億円を確保しており、県民の福祉の向上に資する施策に重点的に配分した予算であると考えている。

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2.教育問題
(1)不登校問題での新しい施策は?
《質問》雑賀光夫 県議
 では、教育の問題で、詳しく見ていきましょう。
 一昨年は、学力問題が大きな問題になりました。私はこういう取り上げ方には批判的なのですが、県教育委員会は、「危機的だ」という言葉を使われた。昨年は、不登校が全国で「ワースト1」だというので、大論議になり、「有識者会議」をおくことになり、その流れの中で知事は「教育総合会議」の席上、「和歌山県は不登校が大問題だと、大々問題だと。成績なんか少し位悪くたってよし。」とまで言われました。少し極論だと思いますが、私は、この問題では、多少極論をされてもかまわないと思っています。
 といいますのは、子どもの「荒れ」や「学力低下」の問題というのは、「授業がなりたたない」という形で、学校や教員に跳ね返ってきますが、不登校で子どもが苦しみ学校に来られなくなっても、学級での授業は何の支障もなく進むからです。
 一人の子どもが学校に行けなくなる。そのバックには、いじめの問題があるかもしれません。息詰まるような競争の教育にあえいでいるのかもしれません。不登校の子どもは、さまざまな教育問題を提起している。この問題を最重視したいと知事は言われた。
 ところで、その言明にふさわしい施策が提案されているのかと楽しみにしたのですが、どうも見当たらない。
 教育長は、当初予算でどういう施策をお考えでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 不登校対策については、児童生徒の状況把握を丁寧に進め、未然防止はもとより、欠席傾向を示し始めた児童生徒への早期支援と、不登校状態にある児童生徒の復帰への支援の取組について一層の強化を図ることとしている。
 不登校の要因や背景は複雑化・多様化しており、さまざまな角度から児童生徒を理解し、働きかけていくためには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用が重要である。
 具体的な取組としては、スクールカウンセラーについては、小学校段階からの早期対応や小中学校を通じた取組が有効であることから、小学校への配置を拡充するとともに、教職員と適切に情報共有し、協働体制を構築することなどを目的とした研修を実施する予定である。
 また、不登校になった児童生徒の早期復帰に向け、市町村が設置し、不登校児童生徒の学習保障や登校を支援する適応指導教室の機能充実のための人的支援等を行うこととしている。
 これまでの取組に加え、今後の対策のあり方について、現在、不登校対策に係る有識者会議において、協議を重ねており、意見がまとまり次第、実効性のある対策を実施できるものから着手する。

《意見》雑賀光夫 県議
 スクールカウンセラーの役割は大切です。しかし、お答えは、どうもスクールカウンセラーの予算を増やしてしていただけるということではなさそうです。ここから先は、文教委員会で論議したいとおもいます。

(2)民間の取り組みをどう評価し、どう支援するか
《質問》雑賀光夫 県議
 「不登校」や「引きこもり」に特化していえば、「エルシティオ」「レインボーハウス」といった自主的な施設が大きな役割をはたしています。また、こうした施設をどう評価し、支援をしておられる施策はあるのでしょうか。
 福祉保健部長からお答えください。

《答弁》 福祉保健部長
 福祉保健部では、ひきこもり者や家族への支援に取り組んでいる。
 ひきこもりは、本人や家族だけでは解決が難しく、長期化が深刻な社会問題となっており、総合的な支援を行うことにより、社会参加を促進することが重要と考えている。
 そのため、県では「エルシティオ」を初め、ひきこもり者の支援を行う県内3ヵ所のNPO法人等を「ひきこもり者社会参加支援センター」として指定し、ひきこもり状態にある15歳以上の青年や家族を対象に、相談や居場所の提供、家族支援などを行い、社会参加の促進につなげている。
 なお、同センターの運営費に対しては、県と市町村がそれぞれ2分の1ずつの補助を行っている。

《指摘》雑賀光夫 県議
 ただいまの答弁には、「レインボーハウス」というのは出てきません。実は、レインボーハウスというのは、不登校の子どもを支援している民間団体です。その代表者の方が、このたび有識者会議に入っていただいている。その活動を評価して、有識者会議で力を借りるということはいいことです。ここには、学齢時の不登校の子供を支援する施設に対して福祉行政からの支援がない。教育委員会からの支援もない。行政の谷間になっている。そういう問題を指摘して、次に行きます。

(3)不登校問題の背景としての今日の教育問題
《質問》雑賀光夫 県議
 教育問題というものは、いろいろな側面がありますが、私は切りはなしては考えることができないと思います。
 学力問題で教育委員会が、「危機的だ」と言われた後、私は、「若芽を『早く大きくなあれ』といってひっぱるようなことをしてはいけないと申し上げたことがあります。
 国連子どもの権利委員会は、「過度に競争的な教育が子どもに障害を与えている」と繰り返し警告している。子どもは、ストレスをいっぱい抱えている。その憂さ晴らしが「いじめ」であり、そこからにげるのが「不登校」だろう。それらの行き着く先が「自殺」であったり「少年犯罪」であったりする。すこし単純化した図式ですが、大きくは外れていないと思っているのですが、教育長は、どうお考えでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 子どものストレスの要因や背景には、競争のみならず、家庭内の問題や学校での人間関係など、さまざまな要素が複雑に絡み合っている。
 私は、子どもたちが安全・安心な学校生活を送り、確かな学力と健やかな体、思いやりや感謝の心を育むこと、いわゆる「知・徳・体」を基盤とした人間としての総合力を育成することが重要だと常々考えている。
 現在、本県が力を入れている、よくわかる授業や楽しく安心して通える学校・学級づくり、ふるさと和歌山を愛する心を育てる取組等は、子供たちにしっかりと生きる力を身につけさせるために必要なものと考えている。
 今後も引き続き、保護者や地域と連携し、その期待に応えられるよう、学校教育の充実に取り組みたいと考えている。

《意見》雑賀光夫 県議
 最初に、子どものストレスの問題という話をされました。大変大事だと思います。同時に、教育の問題は、ある面だけ引っ張って「早く大きくなあれ、大きくなあれ」と言ってはいけないと申し上げましたが、教育長は、教育の問題は総合的に考えなくてはならないとお答えになったと思います。その点では、私の考えと一致しているのではないかと受けとめました。

(4)教職員定数をめぐる課題
・教職員定数の確保
《質問》雑賀光夫 県議
 教育行政はここで何をしなくてはならないのか。教育条件整備だと思います。最大の教育条件とはなにか。それは教職員定数の確保だと思います。
 来年度予算では、どうですか。

《答弁》 宮下教育長
 これまで、特別支援教育の充実やいじめ、不登校へ対応するために、国に対して定数の増員を要望してきた。その結果、児童生徒数の減少や学校統合により、全体の教職員数は減少しているが、加配定数は例年並みの人数を確保できている。

・小学校2年生から3年生への学級統合の実態
《質問》雑賀光夫 県議
 教育委員会としてもいろいろ要望されたのでしょうが従来からのままで改善はない。その中で「せめてこのくらいはなんとかならないのか」という声がある一つの問題は、小学校2年生まで2学級でやってきた学級が3年生で1学級になってしまう場合があることです。来年度は何学級あるのか。なぜそうなるのか教育長から説明してください。

《答弁》 宮下教育長
 小学校2年生から3年生になるときに、学級統合する学校は16校16学級である。国の施策として、少人数学級の拡大が小学校1年生から6年生まで順次すすめられる予定であったが、2年生までとなっているのが現状である。
 しかし、国の基準では、3年生になるときに、35人学教から40人学級になるところを、本県では加配を活用して、独自に38人学級編制にしている。

・上記学級統合をしないだけの定数配置を
《質問》雑賀光夫 県議
 2年生から3年生になる時期というのは、子どもが大きく成長する時期です。成長する時期というのは不安定でもあります。2年生までは、18人のクラスで先生は自分に眼を向けていると感じていた。ところが3年生になると36人の学級になって、先生が自分に目を向けてくれないように感じる。先生が目を向けるかどうかでなく、子どもにとってそう感じることはありうることです。そこから学級崩壊がおこることもないとはいえません。
 教員を10数人ふやせば解決する。学年進行で今後4年間で6年生まで改善するとしても、60人ぐらいでしょう。国がやる気がないのなら、このくらいは県で改善をする気はありませんか。知事、いかがでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 国がやるからこうしなければいけないとか、そういうふうに、余り考えないで従うのは好きではない。しかし、もともとの持論だが、1学級当たりの人数を必ずしも少なくしなければいけないとは、余り思っていない。御指摘の点については、これぐらいという話もあるが、例えば自分も考えてみたら、少し多かったなと思うし、少し大勢の中に入って、その中でどういう使命感を持ちながら、生きるすべを勉強していくかということも、また大事なことではないかと思う。
 教育環境の整備については、繰り返しになるが、学級編制にもまして、個々の児童への対応が大切だと考えている。児童の実情に応じて教員が、個別指導とか、補充学習を行うことによって、きめ細かい対応をしていくことのほうが大事ではないかと思っている。

《再質問》雑賀光夫 県議
 (学級統合をしないだけの定数配置を、知事に再度要求)

《再答弁》 仁坂知事
 子どもが、クラス替えされると嫌だとか、あの先生とずっと一緒にいたいとか、面倒見てくれたらいいのにとか、寂しい思いをするということを、それは間違っているとか、委員の勘違いだとか、そんなことを言うつもりはない。それはそうだろうなというふうに理解する。
 だけど一方、逆に長い間の人生の教育ということを考えると、38人くらいの中で、どうやって先生とコミュニケーションをとるか、だんだんと覚えていかないと社会の中で生きていけないところもあると思って、そんなに重視しなくてもいいのではないかと思ったわけである。重視すべきは、その中でとてもかわいそうな子どもがいたら、その人を見捨てることなく助けるということのほうが大事ではないかと先ほど申し上げた。

・定数内講師の人数
《質問》雑賀光夫 県議
 この県議会で認められた定数条例を満たす教員を確保する責任は、教育委員会にあると思います。ところが実際は、教員採用試験に合格していない教員が、定数内講師として配置され、学級担任もしている。
 そういう教員は、小中学校、県立学校をふくめて何人いますか。教育長、お答えください。

《答弁》 宮下教育長
 いわゆる定数内講師については、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、合わせて528名である。

・定数内講師の解消を
《質問》雑賀光夫 県議
 この問答を聞いていると、保護者のみなさんは、偽医師のような無資格の先生に教えられているのかという誤解をしかねない。しかしそうではない。県教育委員会が、教員採用試験で必要な人数の合格者を出していないだけのはなしです。
 528人の定数内講師でがんばっているみなさんは、教員採用試験で合格させられないほど程度がひくいのか。私はそうは思いません。むしろ、子どもと向き合って一生懸命やっている先生が、ペーパーテストの試験準備ができない場合がある。
 定数内講師は、なくすべきだと思いますが教育長は、どうお考えでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 教員の採用人数の決定については、各学級ごとの児童生徒数や退職者数、それから再任用者数が関係しており、これらは年度末に決まることから、その数を的確に予想することは困難な状況である。
 また、今後、児童生徒数が減少することに伴って、教員定数の削減が見込まれることから、数年後に必要数以上の教員が存在することは避けなければならない。
 これらのことから、定数内講師については一定数必要とせざるを得ない現状であるが、今後も、一定規模の採用を続けるなどにより、少しでも減らせるよう努めていく。

《要望》雑賀光夫 県議
 定数内講師の方は、正規採用教員のように給与はあがりません。お伺いしますと一般教員より12万6,200円も平均給与は低い。3分の2の給与で働いている。地方交付税・国庫負担金など財政的措置がなされているわけだから、170人分の賃金が浮くことになります。これだけ浮かしているのだから、60人ぐらいふやしたらどうかと思います。要望しておきます。

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3.子どもの貧困の問題
《質問》雑賀光夫 県議
 2月18日の「毎日新聞」に「子どもの貧困」についての山形大学・戸室健作準教授の研究が紹介されていました。和歌山の子どもの貧困率は、近畿では大阪の21.8%についで高い17.5%。全国平均は13.8%となっています。一般に子どもの貧困率が16.3% といわれるものよりも低いのは、計算方法の違いのようです。准教授の研究では1992年と比べると全国では、5.2ポイント、和歌山では7ポイント悪化していることが読みとれます。
 こうした中で、子どもの貧困対策を急いで大きく進めなくてはなりません。

(1)「子ども食堂支援事業」について
 最近、この問題を国会でも取り上げている田村智子参議院議員を招いて「子どもの声が聞こえますか」というシンポジウムが開かれ、近所の子どもに食事を提供している「こ・はうす」という取り組みも紹介されました。
 当初予算で「子ども食堂支援事業」200万円が提案されたことは小さい施策ですが、第一歩として歓迎いたします。
 こうした取り組みが全国で広がっている背景としての子どもの現状と県内の民間での取り組みをどう把握しておられるでしょうか。

《答弁》 福祉保健部長
 さまざまな家庭の事情により家族と温かい食卓を囲むことが難しい子供がいることを認識している。
 県では、子ども・子育て支援事業により市町村とともにニーズに応じたさまざまな施策を行っているが、「こども食堂」は、民間団体のよさを生かしたすばらしい取組と捉えている。
 県内で「こども食堂」に取り組む団体はまだ少ないが、新たな支援事業により取り組みを広げたいと考えている。

《要望》雑賀光夫 県議
 立ち上がりの資金20万円一回だけですが、補助されることは歓迎します。日常の経費についても少しでも補助できるように検討をお願いしておきたいと思います。

(2)給付型奨学金について
・給付条件は?
《質問》雑賀光夫 県議
 また、給付型奨学金、年間60万円が提案されたことも、評価できます。
 その給付条件など説明をお願いいたします。

《答弁》 宮下教育長
 給付の支給要件については、保護者が県内居住で、非課税世帯の大学進学希望の生徒が日本学生支援機構第1種奨学金の採用候補者に決定され、県内にいわゆるUターンを志望する者である。原則、卒業後は、県内居住し、就業することが条件となる。

・対象となる学生数は?
《質問》雑賀光夫 県議
 40人の枠で大丈夫なのだろうか。市町村民税非課税世帯で高校3年生、大学進学者の人数はどのくらいになりますか。
 成績が3.5以上とされています。新しい奨学金を受給できる資格を持つ学生は、何人ぐらいになるのでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 予測ではあるが、非課税世帯の高校3年生と大学進学者及び給付金の有資格者については、来年度の非課税世帯の高校3年生は約1,700人余り、そのうち、経済的に困窮していると思われる世帯の大学進学率が約22%であるということから、進学者は380人程度と見込んでいる。さらに、その中で第1種奨学金採用候補者となり要件を満たす有資格者は、予測として130人程度と見込んでいる。

・せっかくの制度・拡充運用を
《質問》雑賀光夫 県議
 新しい奨学金を受ける有資格者が130人程度と推計されました。その計算の基礎には、経済困窮家庭の大学進学率が約22%とされていました。あらためて生活困窮家庭の低い進学率が示されました。これを引き上げなくてはならない。40人というのは、あまりにも少ないように思います。
 オーバーした場合には、拡大できるようにしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。

《答弁》 宮下教育長
 給付者の決定については、申請のあった生徒のうち、有資格者に対して、高校の評点及び選考検査の結果により、来年度は40人を決定することとしている。
 今後、県内全ての学校に対し、本制度の趣旨等について周知徹底を進め、円滑な実施に努める。

《要望》雑賀光夫 県議
 少ないですが、この新しい制度ができたことは大したことだと思います。今後、おそらく志望者があふれて選考が大変だと思いますので、拡充していくように要望します。

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4.労働問題について
《質問》雑賀光夫 県議
 日経連(日本経営者連盟)による「新時代の日本的経営」がだされたのは、1995年のことです。終身雇用を基本にしていた日本の雇用形態をあらため、中核になる少数は、長期雇用を残しながら、専門職は派遣労働者に、多数の労働者は「雇用柔軟型」というパート労働者に置き換えるという方針をみたとき「まさかそんなことが簡単にできるはずがない」と腹のそこでは思っておりました。
 しかし、労働法制のたびかさなる改悪で、若い人たちの仕事が、派遣労働者・非正規労働者になり、リーマンショックのとき、年越しできない人たちを労働組合などが救済する「年越し派遣村」という実態を見たとき、自分の認識が甘かったと思わずにはいられませんでした。さらに人間を使い捨てにする「ブラック企業」ということばが流行語になるような事態になっています。政府・財界によって意図的につくられた状態です。
 しかし、同時に人間使い捨てに対するたたかいが始まっています。
 一昨年7月の参院選では、日本共産党の「働く人を使い捨てにする政治を許さない」という若者の雇用対策の訴えが大きな反響を呼び、改選3議席から8議席へと躍進しました。「ブラック企業規制法案」を提出しました。
 厚生労働省も世論に押され、「若者の使い捨てが疑われる事業所」いわゆるブラック企業に対して重点監督を実施するようになりました。
 また、昨年12月8日には、ワタミ過労自殺事件で、ワタミ渡辺社長が、非を認め、遺族に謝罪するということもありました。こうしたたたかいを後押しし、ブラック企業をなくさなくてはなりません。
 私たちは、最近、県地評の労働相談担当のかたと懇談して、実情をお聞きしてきました。
 一例をあげましょう。
 販売店に勤務する労働者。店長からのいやがらせに困っている。「声が小さい」「時間外手当を請求するな」など言われた。午後8時の営業終了後、8時30分ごろから10時まで職場会議が、サービス残業でおこなわれる。参加しないとしつこく理由を聞かれる。この方は「適応障害」と診断をうけて休職中だそうです。
 別の例です。電話相談です。
 「給与明細が正社員は手渡しだが、パートはロッカーに張られる」誰にも見られるというのです。信じられない話で、名乗り出てくれれば、乗り込んだら解決するのですが、電話相談で名乗ってくれなかったそうです。「休憩室にビデオカメラが設置された。着替えもするのでこまる」とも言われたそうです。
 こうした実態をだれかに聞いてもらいたいが、名乗り出てたたかう勇気がない、こんな労働者が大勢いるといいます。
 そこで質問します。

(1)県内の労働実態の問題把握
 県は、労働相談窓口をもっています。県労働委員会にも相談がよせられるでしょう。また国の出先である和歌山労働局は、その後も立ち入り調査をしていると思いますが、それも踏まえて、県内の労働実態を、県の担当課としてどう把握しておられるのか、商工観光労働部長からお答え下さい。

《答弁》 商工観光労働部長
 県では、和歌山県労働センターに労働相談室を設置し、火曜から金曜は16時から20時、土曜・日曜は10時から16時の間、労働相談員が相談に応じている。
 平成27年4月から平成28年2月までの相談件数は186件である。相談内容については、賃金や労働時間、休暇などの労働条件に関するものが97件と最も多く、次いで職場の人間関係に関するものが28件である。
 また、平成26年に労働基準監督署が実施した立入調査の結果では、県内1,605事業場のうち63.9%に当たる1,025事業場で労働関係法令違反が確認され、是正指導は、安全基準に関するものが313件と最も多く、次いで労働時間に関するものが241件である。
 こうしたことから、賃金や労働時間などの労働条件や、機械等への安全装置の設置、作業場の換気など労働者の生命、健康保持に必要な安全措置に関する課題が多いと認識している。

(2)労働実態の問題にどう取り組むか
《答弁》雑賀光夫 県議
 お答えになった調査をどう見るのか、どうするのかが問題です。
 お答えになった平成26年の労働局の「定期監督」では、63.9%の事業所で違反があった。前の年の「定期監督」では61.0%で違反があったとされている。
  近頃やられるようになったブラック企業に焦点を当てた調査では67%、84%という違反率がある。普通は、違反というのは例外的なものでなくてはならないのに、違反のほうが一般的になっていることは、重大だと思います。
 こうした実態を踏まえて、県労働行政としてどういうとりくみをしておられるのか、商工観光労働部長からお答えください。

《答弁》 商工観光労働部長
 県では労働相談の場において、労働相談員が相談者から職場での問題点等を丁寧に聞き取り、その対応策を助言するとともに、労働関係法令の違反が疑われる場合には、相談者の同意を得た上で速やかに和歌山労働局に対して情報提供を行い、適切な指導を行うよう要請している。
 また、事業主や労務管理者等を対象に労働関係法令や労務管理手法をテーマとする労働セミナーを和歌山市、田辺市、新宮市で開催し、事業所に対して労働関係法令の遵守を徹底している。

(3)労働基準法とともに労働組合法の周知
《質問》雑賀光夫 県議
 大変な労働実態があるのに、県としては、一般的な啓発活動しかできない。たいへん歯がゆい思いをします。
 そんななかですが「労働法リーフレット」は、わが党の奥村県議が提案し、関係方面で検討いただいたそうで、感謝しています。
 今一つ要望しますが、このリーフレットにあるのは、労働基準法の解説と、行政の相談窓口です。それは何よりも大事なことですが同時に労働者の権利を守るうえで労働組合が果たす役割は重要です。労働者が経営者と対等の立場に立つために団結する権利が憲法や労働組合法で守られている。こういった内容もいれていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
 商工観光労働部長からお答えください。

《答弁》 商工観光労働部長
 高校生のためのリーフレット「働くときに知っておきたい労働法の基礎知識」については、高校3年生全員に配布し、就業規則や賃金、労働時間などこれから社会に出て働く上で最低限知っておいてほしい基礎知識を学ぶ資料として、内定者セミナーやホームルーム等に活用されている。
 労働基準法は労働条件の最低基準等を定めたもので、違反に対して罰則規定が設けられるなど、労働者の権利を守る基本的な法律であるが、労働組合も労働条件の維持改善など労働者の経済的地位の向上に一定の役割を果たしていると認識している。
 今後、新たにリーフレットを作成する際には、学校現場の意見も取り入れながら、より充実したものにしていく。

《要望》雑賀光夫 県議
 人間を使い捨てにするような労働実態をなくすには、企業を啓発するだけではなく、労働者が労働基本法・労働組合法で保障されている権利をしっかりと自覚してたたかえるようにならなくてはならないと思います。教育の場でもそういう教育ができるように要望しておきたいと思います。


 
                仁坂知事(左、後姿)の答弁を聞く、雑賀光夫県議(右端)

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