2017年2月県議会 建設委員会 松坂英樹副委員長の質問概要記録

2月23日 補正予算等審査

《質問》松坂英樹 副委員長
 白浜空港の民営化について聞きたい。
 部長説明にもあったように、議案第60号は、白浜空港条例の一部を改正する条例案であり、白浜空港の民営化に道を開くものである。
 また、議案第17号の一般会計補正予算案では、債務負担行為として、コンセッション方式の公募に向けたコンサルへの調査業務委託費が計上されている。
 国は、2013年施行の民活空港運営法に基づき、滑走路などの所有権を国に残したまま、運営権を民間会社に与えるコンセッション方式を各地で進めている。
 県は、今年度、白浜空港にもコンセッション方式を導入すべく検討し、新年度の公募に向けて、今回の条例改正案が提案された。
 もともと、国の空港民営化の動機は、国が行ってきた赤字の空港運営と黒字の民間の空港ビル運営を一括して民間が運営を行えば、赤字でなくなる、着陸料を安くすることなどにより空港活用が進むことがねらいだと思っているが、知事は運営権譲渡は必ずやるとずいぶん前のめりのようである。
 しかし、年間何百万人もの利用者がある空港ならともかく、利用者が少なくて赤字の地方空港はそんな単純なものではないと考える。
 まず初めに、県がコンセッション方式による空港民営化を目指す理由、期待するメリットについて説明願いたい。

《答弁》 港湾空港振興課長
 空港の民営化については、国が先行して事業が進められており、地方空港についても追随するよう法律にも明記されている。
 他の空港でいうと、空港の規模は違うが、神戸空港が、地方空港でコンセッションが検討されている。
 メリットについては、空港ビルと空港基本施設の赤字を埋めて効率的な運営ができることは当たり前のことであるが、航空ネットワーク、いわゆる就航路線の拡充についても、今回あわせて民間にお願いしたいと考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 空港運営の面と路線拡充でメリットがあるということで、まず運営の関係であるが、白浜空港は、国がそろばんをはじいているような、滑走路と空港ビルを足して2で割れば黒字になるというような空港ではなく、足して2で割っても赤字となることは明らかだと思う。この赤字分、これまで空港運営費として県が出していた分はどうなるのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 現在、空港の運営経費については、県の一般財源から支出をお願いしている。
 民営化後の独立採算というのはなかなか難しいと思っており、これまでと同様に運営経費を支出する形を考えているが、金額については事業者からの提案で決めていきたい。

《質問》松坂英樹 副委員長
 記者会見などでは、空港運営費についても、現在の3億円の支出額が少なくなると赤字削減の効果を期待しているようであるが、どの程度の効果を見込んでいるのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 削減額については、詳細に計算しているわけではないが、おおむね人件費は削減できると考えている。他の空港の事例としては、兵庫県の但馬空港において、5年間で4200万円の削減があると公表されている。

《質問》 松坂英樹 副委員長
 全体で黒字になることがコンセッションの動機だと思うが、赤字分を県が出しながら、民間に運営を任せるというようなコンセッション方式を考えている地方空港が他にあるのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 赤字を埋めるような空港については、経費の支出方法が異なるが、事例として但馬空港がある。東北地方や山陰地方の空港からも問い合わせがある。本県の事例は、日本初であると考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 これまで、県営空港として、和歌山県が先頭に立ち県民や利用者の利便性向上のために努力してきた白浜空港である。民営化することで考えられるデメリットにはどのようなものがあるのか、またそのデメリットをどう克服しようとしているのか示してほしい。

《答弁》 港湾空港振興課長
 民間運営に関しての最大のデメリットは、企業が破綻した時だと考えている。
 あくまで不測の範疇(はんちゅう)となるため、できるだけ公募や契約の内容で破綻リスクを回避できるような形を検討をしている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 空港は、何より安全性を担保することが最重要課題だと思っている。民営化された場合に安全性をどう担保するつもりなのか、運営会杜に対しての指導監督の権限、コントロール権はどういうふうに担保されるのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 まず、安全性については、白浜空港に関するいろいろな条例、諸規程があり、その中で運営を行っている。公募に当たっては、これらの条例、規程等を継続する形で実施していくため、安全性については問題ないものと考えている。
 新しい会社に対するコントロールについては、法律に基づくモニタリング制度があり、県が事業者をチェックする機能がある。
 併せて、白浜空港は、地域とともに運営をしているので、事業者を含めて、県や関係市町村も加わった協議会等のようなものができればと考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 モニタリングし、チェックをするという説明であったが、それに基づいてどう口を挟めるのかが少しも見えてこない。また、協議会という話であるが、どれだけ指導監督できるかというのが鍵になるのではないかと思っている。
 次に、一番肝心な利用促進だが、県としても、航空会社に対して、運賃の引き下げや1日3便の運航、機材の大型化など、ずっと粘り強く働きかけてきた結果、厳しい環境の中であったが少しずつ前に進んできたと考えている。このような県を挙げた姿勢や取り組みを民間にまかせて、結果として後退してしまうようなおそれはないのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 撤退等は考えられるが、県は、運営経費を支払うということもあるので、運営権者とともに県も一緒になって、就航路線の維持等について尽力したいと考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 それでは、応募してくれるであろう民間会社だが、利用客が少ない赤字の地方空港のコンセッション方式に応募してくる、そんな民間会社が果たしてあるのかと素朴に思うのだが、どう考えているか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 国の制度に事業者への事前ヒアリング等の制度があり、県もこれまで検討する中で関係者の意見を伺ってきたが、その中で応募してもらえる事業者があると考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 今後の見通しだが、国の方針で空港の民営化が大きな空港、採算性の高い空港から進んでいけば、着陸料を下げあって誘客合戦が激化し、空港間の競争が促されるということになると思う。それによって、地方空港などの経営悪化が進む面も一方で出てくる。民間企業が入って活性化する空港は、97ある空港のうち規模の大きな1割程度ではないか、こんな論評もされているようである。そのような状況のなか、県が運営から手を引いてしまって民間にまかせることが将来に対して本当にいいことなのかどうか、どう考えているのか。

《答弁》 港湾空港振興課長
 空港自体の運営権を民間事業者に渡すことになるが、県は手を放すつもりは一切なく、紀南地域にある貴重な財産である世界遺産等も踏まえ、特に首都圏、海外からの誘客促進について、事業者とともに県も一緒に頑張っていきたいと考えている。

《質問》松坂英樹 副委員長
 手を放すつもりはないという話だが、設置者でもなくなるので、やはり大きく変わると思う。
 運営権を購入するという民間会社が現れたとしても、今後の、今よりも更なる競争激化の末に、やはり白浜空港は採算に合わないから撤退するという企業判断をすることもあり得る話だし、先ほどデメリットの懸念は破綻だと説明があったが、指定管理であってもそういう話はまれではない。それを一歩進めたコンセッション方式ともなると、先ほども話したように、県は、運営権そのものを手放して、空港設置者でもなくなってしまうということなので、万一撤退という事態になった時には、また県に戻ってくるということになるらしいが、いったん手放せば、これまで県の職員が空港運営で継承してきた技術や経験が組織として途切れてしまうことになる。これはなかなか簡単なことではない。
 そのような指定管理、コンセッションにおける撤退を想定したリスクについてどのように考えるのか、もう少し詳しくお願いしたい。

《答弁》 港湾空港振興課長
 指摘のとおり、リスクは非常に高いかもしれない。県としては、そのリスクをいかに減らすかということで、募集要項や契約書等で何とか縛りをかけたいと考えている。
 何よりも、そうならないように頑張り、就航路線が少なくならず、利用者が伸びるように、今後尽力していきたいと考えている。

《意見》松坂英樹 副委員長
 最後に意見を申し上げたい。
 協議をしていく、内容を詰めていく、縛りをかけたいという全体としての話であったが、今後、国が空港民営化への取り組みを進めれば進めるほど、全国の地方空港にはさらに厳しい状況が待ち受けていると考えている。
 空港を民営化、民間委託・経営委託をすれば自動的に中身がよくなる、地方創生につながるという単純なものではないと思っている。知事は、国の民営化方針にならって、白浜空港にもコンセッション方式を導入することに前のめりになっている。民間の力による効果を非常に期待しているようだが、指定管理の導入にしても、それより一歩進めたコンセッション方式にしても、安全性の担保や利便性の向上、利用促進、財政負担軽減など、どの運営課題においても、公募に応じた民間会社と協議して決めていくという内容であったので、メリットは確かなものだとは言えず、デメリットへの対応も不確実である。
 議会としてチェックをすべき現段階では、確かな検証ができないと言わざるを得ない。
 白浜空港民営化は、国の空港民営化路線にいち早く手を挙げるというプレイであって、コンセッション方式の導入により、白浜空港の利便性向上、経費削減などの課題が解決されるとは言えず、一方で、安全性、継続性などの不安がぬぐえない空港民営化には同意できないということを意見として申し上げておきたい。

………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 議案に対する採決
議案第17号 平成28年度和歌山県一般会計補正予算
議案第60号 南紀白浜空港条例の一部を改正する条例
議案第72号 平成28年度建設事業施行に伴う市町村負担金について
は賛成多数により原案可決
日本共産党 松坂英樹副委員長は反対 → 奥村規子県議の補正予算関連議案に対する反対討論
中継録画
(15:30~)

議案第23号 平成28年度和歌山県営港湾施設管理特別会計補正予算
議案第24号 平成28年度和歌山県流域下水道事業特別会計補正予算
議案第27号 平成28年度和歌山県用地取得事業特別会計補正予算
は全会一致により原案可決


2017年2月県議会   松坂英樹プロフィール、質問一覧
松坂英樹ブログ
  松坂英樹facebook
日本共産党和歌山県議団HOME