2019年9月県議会 文教委員会
  杉山俊雄委員の質問概要記録
     
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《質問》杉山俊雄 委員
 東京オリンピックの聖火到着式の関係で約1000万円を計上しているが、何に使うのか。

《答弁》 プロジェクト推進室長参事
 1044万9,000円を計上している債務負担行為だが、来年4月10日・11日に和歌山県で行われるオリンピックの聖火リレーのうち、その日の終わりに聖火到着式、セレブレーションを行うことになっている。このセレブレーションは、県が主催するもので、設営や警備など今年度中に契約をして来年度執行しなければならない予算を計上している。
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《質問》杉山俊雄 委員
 英語教育の充実ということが書かれていたので、英語教育について何点か質問させていただく。
 1つは、小学校の英語活動についてである。
 2011年から小学校5、6年生に英語活動が導入されて、来年2020年から新学習指導要領の完全実施により3年、4年は英語活動、5年、6年は教科として英語が導入されることになっている。
 和歌山県では、すでに先行実施により、週1時間半から2時間の活動が行われている状況になっている。
 今年度の中学校新入生が自己紹介で、まだ本格的に英語を学習していないにもかかわらず、「嫌いな教科は英語です」と言ったので、担任はびっくりしたと言っていた。我われの時代では、未知の教科の英語を学習するというのは、期待感があったりワクワク感があったと思うが、そうはなっていない。
 中学校現場で英語を教えてきた小学校の校長は、「教えすぎると、中学校で英語嫌いをつくるから単語などを詰め込まないように、1時間楽しく英語に触れるように」と、先生方に話していると言っていた。別の、小学校だけを経験した校長は「英語の研修に力を入れている」と力説している。校長の考え方で、英語教育に対する取組に違いが出てくる。
 外国人講師については、和歌山市ではALTが全校に配置されていると聞いているし、その他の地域では、約55%が配置されているようである。先ほどあったように、24人の国の加配があると聞いているが、30市町村に24人では全ての学校をカバーすることはできない。外国人講師は基本的には市町村の雇用になるし、市町村の財政状況と英語教育への姿勢が、雇用に反映されるというふうになっている。
 ある大学の教授が行った小学校英語活動調査で、7年間取り組んだ英語活動の問題点や課題を、管理職や英語担当者に尋ねている。
 課題としては、1つ、指導方法がわからない。2つ、教師が自信を持てていない。3つ、指導者の力量の差が大きい。4つは、子どもが積極的に関わろうとしないなどを挙げている。
 それから、ALTなどの外国人講師は、課題として、以前より子どもたちの反応が悪くなっている、授業を進める上で、子どもたちは控え目で自信を持てていない。
 そして、一緒に共同して授業を行う担任との関係では、やる気のなさ、非協力的態度、英語の知識技能や指導方法の理解不足等を挙げている。
 現場では大変ありがたい日本人英語指導員が感じている問題は、指導者の力量の差が大きいということ、支援員の役割が明確でない、担任によって授業の中心になったり補助になったりということである。また、日本人英語指導員は、非常に配慮が必要だと言っているし、外国人講師が感じている改善点は、英語のできる教員が欲しいということ。カリキュラムの見直し、優れた教材、外国人講師の研修ということを挙げている。
 支援員の感じている改善点は、当然であるが、雇用形態の安定や、専科教員の配置を要望している。
 外国語は、言葉で日常的には使っていない。使用しなければ、一度覚えた単語でも忘れてしまう。英語教師は、読んだり、書いたり、聞いたり、話したりしなれば、英語力は落ちる。この点が、他の教科と違うと思う。担任が週1回や2回の授業のために、英語教師のようなことを行うのは大変であるし、他の教科の準備もあって、大きな負担になる。現場は、専科教員の英語力のある教員を求めている。
 英検では、中学校3年生全員に受検をさせている、全国では珍しい和歌山県であるので、英語力、英語教育に力を入れている和歌山県だからこそ、英語専任教員を全ての学校に配置して、すべてのクラスをカバーできるようにしていただきたいと思うが、このことについて教育委員会の考えを聞かせてほしい。

《答弁》 義務教育課長
 来年度から新しい学習指導要領が完全実施され、小学校3年生、4年生から外国語活動が、週に1時間行われる。それから、小学校5年生、6年生については、週2時間で外国語科の授業を行うことになる。英語嫌いをなくすということで、まず外国語活動では、聞くこと・話すことを中心に、外国語に慣れ親しませて学習への動機づけを図ることが大事だと考えている。また、5年生、6年生になると、聞くこと・話すことに加え、読むこと・書くことが加わってくる。これらのことを、中学校の英語も意識し、系統性を持たせて指導を行う教科として、取り組んでいきたい。現在、英語の専科教員については、国の加配で24名を配置している。この英語専科については、いくつかの学校をかけ持ちしながら指導している状況であり、24名が73校に行って、英語を教えている現状である。
 県としても、できるだけ英語専科を多く国からいただいて、取り組みたいと思っている。国の概算要求では、来年度さらに1,000人の英語専科の加配が増えると情報を得ているので、できるだけたくさんの英語専科をいただいて充実していきたいと思っている。
 それと並行して、担任が行う学級もあるので、英語の研修について、これまで平成27年度から4年間を通じて、各小学校の代表が参加する「英語指導力向上研修」を行ってきた。平成27年度から平成30年度までで一旦終わったが、今年度についても、来年度の実施に向けて、県内の7地方で同様の研修を行っている。

《要望》杉山俊雄 委員
 中学1年生が「英語が嫌いだ」と言っている状況にあるのに、教員に研修、研修で追い込んだら大変なことになるのではないか。中学校現場で英語を教えてきた小学校の校長が、「あんまり教えすぎるな、詰め込んだら大変なことになりますよ、英語嫌いをつくりますよ」と言っている。その点をきちんとやってほしい。
 自信のない教師が英語を教えるのは、間違っていると私は思う。やはり、きちんと免許を持った者が教える。そのために、きちんと専門的な教員を配置することが必要ではないか。
 来年1,000人プラスすると言っても、100で割れば、和歌山県は10人ぐらいである。それですべてカバーできるということはないので、もっともっと、いろんな方法を検討してほしい。
 英検は中学3年生全員に受検させる。嫌でもやらせる。そうではなく、もっと違う方向に力を入れてほしいと思う。
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《質問》杉山俊雄 委員
 全国学力テストの英会話について質問する。
 3年に1回、スピーキングテストは15分で3クラスだと45分。素早く入れ替われば1コマで終わる。
 ヘッドホンをつけて、パソコン画面の質問動画を見て、マイクに向かって英語で答える方式であり、準備に大変時間がかかる。分厚いマニュアルを見ながら専用のソフトをダウンロードするのが大変で、3ヵ月前から準備して、何段階かの操作が必要であると言っていた。パソコンがうまく機能するのかを確認する問題が送られてきて、パソコン30数台を確認する。その学校のパソコンは4~5年前に入れたもので、2~3台で不具合が出た。指導主事が何回やってもだめだった。それで問い合わせたら、文科省のコピーで新しいのが来た。不正が行われないように、テスト前日しかパスワードが来ないため、テスト前日にソフトを使用して、すべてのパソコンの点検をする。那賀地方の場合は、前日が教科別研修会だったので、その後学校に戻ってやるはずだったが、パソコンに堪能な非常勤がボランティアでやってくれて助かった。
 スピーキングテスト時に、問題が漏れないように、生徒が入れ替わるときに出会わないようにするための説明をしなければならない。しかし、ヘッドホンをしていても、隣の生徒が答えたら、その答えが聞こえるそうだ。答えるまで数秒あるので、隣の人の答えを聞いて答えられる。カンニングができる状況にある。クラスが多い学校では、1コマでできないので、4時間目・5時間目で実施すると、昼休みに生徒が話をして、いろんな情報を聞くことができる。
 テストが終了すれば、パソコンに入力しているUSBにコピーする。1台のPCに3人分の音声が入っている。英語USBでコピーする、取り出す、30数台分取り出す。非常に手間だということだった。
 英語のスピーキング力は今後、非常に大切だという先生ですら、大変なお金をかけている割にはちゃちなテストだというふうに言っていた。県教委に、事前に現場から問題点はありませんかと聞いたが、「昨年予備調査をしているし、パソコン設定は業者委託しているので大きな問題はない」との回答だったが、しかし今話したように、事前、前日に専門家でも苦労するようなことをしなければならない。授業も大変だ。英語の教員にとっては、大変な負担がかかる。カンニングしやすい状況にある。だから、正確な調査や結果が、本当にテストに反映するのか疑問だということだ。
 このテストは中止すべきが一番だと私は思うが、このことを含めて改善の必要はないのか。県教育委員会の考えを聞きたい。

《答弁》 教育センター学びの丘所長
 委員のご指摘のとおり、今年度初めて、英語の調査というものが全国学力・学習状況調査で実施された。この英語については、今までになかったパソコンの環境設定等が必要であり、各市町村教育委員会から当日の状況等について、意見を聞いているところである。
 一部、パソコンの環境設定に配慮が必要だった、調査時に隣りの声が聞こえる等の意見があったことは把握している。実施に際しては、市町村教委担当の方々、現場の先生方の御尽力により、特に大きな問題や混乱はなかったととらえている。

《意見》杉山俊雄 委員
 現場から、私が聞いたような声は、多分そちらには届いていないのではないかと思う。
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《質問》杉山俊雄 委員
 6月県議会で「令和3年度大学入学共通テストにおける英語民間資格・検定試験の活用に係る意見書」を、全会派一致で国に提出した。
 また、9月10日に全国高等学校長協会が、「英語4技能検定の延期及び制度の見直しを求める要望書」を文部科学省に提出している。この協会が行ったアンケートでは、民間英語試験が利用されることについて、8割の校長が「大いに不安がある」、7割が「延期すべきである」と回答している。課題として、74.5%が「経済格差」、74.3%が「試験の公平性・公正性の確保」、70%が「地域格差」、60%が「制度設計そのもの」と答えている。
 導入は2020年度からの予定で、今の高校2年生からの実施である。2020から2023年度の受験生が、大学入試センターの共通テストと民間英語試験の両方を受けなければならない。大学側に、民間英語試験利用の公正性・公平性に不安があるからで、このように高校生を実験台にするような制度をなぜ許すのか疑問に思う。
 2024年度からは共通テストを廃止し、民間英語試験一本で実施する方向と聞いている。民間英語試験は、内容が多様で、難易度も異なり、公平性が担保されない。7種の民間英語試験の点数を比べるための対照表はあるが、科学的な検証は受けていない。ある教授は、「50メートル走とマラソンのタイムを比べ、走力の優劣を決めるようなもの」とコメントしている。
 高校2年生は、この時期に志望校をある程度絞り、民間英語試験を受けるか否か、どの民間英語試験を受けるのかを決定しなければならず、3年生の4月から12月までに民間英語試験のいずれかを最大2回まで受験する。受検費用は、1回5,800円から2万5,000円までで、経済的負担が大きく、受験会場も都市に偏るなど、受験機会の公平性が担保されていない。高い学費、不十分な奨学金制度で、学びたくても学べない生徒が多い中、輪をかける制度になっている。
 英検の申込みが9月18日から開始されたが、受検会場は確定していないし、予約金の3,000円はキャンセルしても返金されない。このような制度を国が作っていいのか、大変疑問に思う。
 また、大学の活用方法も、低いレベルで出願資格にしている大学や、高いレベルに加点する大学など、様々である。地域や経済格差によって受験機会が左右されるなどの課題が残るため、東京大学は、一定レベルにあると評価した高校からの調査書でも可としている。公正性などの様々な問題が解決する見通しが立っていないという理由で、初年度は活用しない国立大学もあり、この制度のずさんさを表している。
 このような状況に、文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室長補佐は、民間英語試験や記述試験を活用するか否かは大学側の判断であり、文部科学省としては、導入することに意義があると思っていると述べている。導入ありきの姿勢がよくわかる。英語教育をよくするという教育的観点は一切ない。民間英語試験を活用した大学入試制度は、中止する以外にないと私は考えている。
 大学入試への民間英語試験導入について、現在わかっている情報を聞きたい。また、これだけ問題が多い民間英語試験の導入に向けた、県教委育委員会の考えを聞きたい。

《答弁》 県立学校教育課長
 委員から説明があったこと、報道等で報じられていることについては、承知している。制度が決定するまでは、受験場所、受験の機会均等、経済的負担等について、全国都道府県教育委員会連合会等を通じて、国にも要望してきた。今はその制度が決まり、令和3年度の大学入学共通テストから実施するということである。県教育委員会としては、英語の4技能「読む・書く・話す・聞く」が重要であることから、以前から国際人育成プロジェクトを実施し、学校とともに準備を進めてきた。文部科学省のホームページにも、英語ポータルサイトが立ち上がったので、日頃からよく確認し、新しい情報をつかみ、学校へ伝えていく。こうしたことを丁寧に行い、生徒が困らないよう、しっかり支援していきたい。

《要望》杉山俊雄 委員
 民間の業者が教育に参入してくるとどうなるのか、民間英語試験のために今後の英語教育が変わっていくと心配しているので、注視していただきたい。

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議案に対する採決
議案第134号 令和元年度和歌山県一般会計補正予算
議案第150号 教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
議案第151号 市町村立学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
は全会一致で原案可決


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