2019年9月県議会 高田由一 一般質問 概要記録
  中継録画


1.被災者生活再建支援制度の充実
(1)和歌山県の災害見舞金制度について
(2)県独自の被災者生活再建支援制度が必要では

2.河川整備について
(1)周参見川水系の河川整備計画策定を
(2)富田川のうち白浜町内の築堤事業早期着手を

3.洪水浸水想定区域図公表の見直し

4.県営ダムについて
(1)七川ダムの運用検証とダム再生事業の検討

5.核関連施設について
(1)事業者との対話と施設を受け入れない条例の制定
2019917


1.被災者生活再建支援制度の充実
《質問》高田由一 県議
 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。
 質問に入ります前に、この度の台風15号により、千葉県内を中心に甚大な被害が出ておりますが、いまだ終息していません。心から、お見舞い申し上げます。ちょうどこの度の私の質問は、被害にあわれたみなさんへの支援をどうやっていくかという点で質問をさせていただきます
 最初に、被災者生活再建支援制度についてうかがいます。この制度は、阪神淡路大震災をきっかけに生まれましたが、当初は、住宅の被害については私有財産への公費の投入に抵抗があり、当時の村山富市首相は「自然災害により個人が被害を受けた場合には、自助努力による回復が原則」であると発言していました。
 その後、大きな運動のなかでこの制度が1998年に成立し、自然災害により住民が生活基盤に著しい被害を受けた場合、都道府県が拠出した基金を活用して、その生活の再建を支援することになりました。その後、2004年、2007年に大幅な法改正があり、現行制度に至っています。
 当初は最大100万円で対象経費は家財道具や引っ越し代だけでしたが、2004年改正で住宅の解体撤去費用などにも適用、07年改正では全壊、大規模半壊など被害の程度により使途を定めず、定額を渡し切る方式になりました。これにより全壊したものを新たに建設する場合は最大300万円が支給されるようになりました。また、当初はあった収入要件も撤廃されてきました。
 この間、大規模な災害が多発してきました。2011年には東日本大震災、紀伊半島大水害、2015年には関東東北豪雨、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、西日本豪雨などです。
 和歌山県内においても、紀伊半島大水害の時にはこの制度により被災者の生活再建への支援が行われ、多くの県民が助けられました。また、県も国の支援金に当時としては最高レベルの上乗せ補助をして対応していただきました。この決断はすばやく、知事の英断だったと考えます。
 ただ、時間の経過のなかで国の制度にも不十分さがあることも浮かび上がってきました。まず、制度の対象となるのは、基本的に10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村、あるいは100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県となっていてきわめて大きな災害でないと適用にならないことです。
 このような要件があるため、たとえば2011年の紀伊半島大水害では、和歌山県は県内全域で制度が適用されましたが、三重県では熊野市、紀宝町が適用となったものの、全壊した住家のあった津市、大台町が適用外となりました。このように、同一の災害にもかかわらず、災害規模の要件のため、適用されない場合があります。同じ程度の被害を受けても住んでいる県、市町村によって適用がされない場合があり、不公平だとの声がでるのも当然です。
 また、住宅被害については基本的に大規模半壊以上の判定がないと、支援金を受けられず、紀伊半島大水害では半壊以上の被害をうけた住家数全体の3分の1から、4分の1以下しか支給対象とならなかったのではといわれています。
 こうした問題点があることはこの間、全国知事会でも議論になっており、「一部地域が適用対象となるような自然災害が発生した場合には、全ての被災区域を支援の対象とする」、ことや「住宅の半壊についても支援対象とする」ことなどが検討され、昨年11月に知事会の提言としてまとめられています。
 このようななかで和歌山県では県単独の被災者支援制度としては、災害見舞金制度があります。私は、この県単の制度を充実させることを求める立場から以下、質問いたします。
(1)和歌山県の災害見舞金制度について
 まず、和歌山県の災害見舞金制度についてうかがいます。
 現行の災害見舞金制度はいつからできて、どのような被害に対して、いくらの見舞金がでるのでしょうか。また、今後、見舞金を充実させる考えはあるでしょうか。福祉保健部長のご答弁をお願いいたします。

《答弁》 福祉保健部長
 災害見舞金制度は、昭和42年に創設し、その後4回の見直しを経て、現行の見舞金の額については、被害の程度に応じて、住家の被害に対して、全壊が1万円、半壊と床上浸水が5千円、人的被害に対して、死亡と行方不明者が5万円、重傷が5千円となっております。
 こうした中、災害で被災された方への支援については、平成10年に、大規模な災害を受けた地域の復興を速やかに進める観点から、都道府県が拠出し合って造成した基金と、国庫補助金を財源にして、全壊の場合は最大300万円、大規模半壊の場合は最大250万円を支給するなど、生活基盤に著しい被害を受けた個人に対して支援する被災者生活再建支援制度が設けられたところです。
 本県の災害見舞金制度は、被災された方を慰労、激励するため、被害の程度も半壊、床上浸水以上を対象とするなど、対象を幅広くしており、今後も引き続き、現行の制度の中で実施してまいります。

《再質問》高田由一 県議
 答弁をいただきました。いまの県の見舞金制度は、現行のようになったのが平成元年、つまり1989年からと聞いております。さきほども申し上げたとおり、95年には阪神淡路の震災、その後の被災者生活再建支援法の制定など、被災者への支援は大きく充実されてきました。しかし、この間、見舞金ということでは和歌山県では充実がない。たとえば床上浸水の見舞金は5千円ですが、市町村もがんばってくれています。私の地元の白浜町では床上浸水で2万円、田辺市でも2万円、和歌山市と海南市では3万円となっています。他の市町村でも県よりも多くの支援をしています。なぜ、県が5千円なのでしょうか。現行の制度として実施していくということですが、ぜひ県としても金額の面でも充実させていただけないでしょうか。これは再質問とさせていただきます。

《再答弁》 福祉保健部長
 先ほども申し上げましたとおり、災害復旧についての制度というのは被災者生活再建支援制度をもっておりまして、これは市町村とともに、被災者の方を激励するための制度でありますから、現行の制度で対応していくことと考えております。

《要望》高田由一 県議
 被災者再建支援制度とあわせてというご答弁もありましたが、私は見舞金自身をぜひ充実いさせていただきたいと強く要望させていただきます。

(2)県独自の被災者生活再建支援制度が必要では
《質問》高田由一 県議
 和歌山県でも住宅の半壊や一部損壊、床上浸水も対象とした県独自の被災者生活支援制度をつくるようにしてはどうでしょうか。ということです。お配りした資料は、島根県の県単制度ですが、これは昨年の島根県西部地震を受けてそれまであった制度を充実させたものです。島根県西部地震ではおおかたの被害が一部損壊で1500棟近くの被害がでました。それにこたえるように資料で御覧のように小規模災害でも半壊で100万円、一部損壊で40万円まで支援をするという内容です。つい最近、県単制度をつくった長野県でも国の支援法が適用されない災害でも住宅半壊に50万円がでるようになりました。
 内閣府の資料によりますと、都道府県で災害規模や要件にかかわらず、住宅の半壊や一部損壊、床上浸水などに支援金を出している府県がかなりあります。ぜひ和歌山県でも制度を作っていただきたいと思いますが答弁をお願いします。

《答弁》 福祉保健部長
 本来、個人の財産である住宅の被害の復旧については、個人の責任で行うことが基本ですが、自然災害により広範囲で大きな被害を受けた場合などには、地域が本来持つ再生しようとする力が失われないよう、公的支援を行い、短期間で復興を成し遂げる必要があると考えます。
 こうした被災住宅の復旧支援に当たっては、被害が広域にわたると、単独の自治体で対応するには負担が大きくなりすぎることから、平成10年に、都道府県が相互扶助の観点から拠出して造成した基金と国庫補助金を財源として、一定の条件のもと、生活基盤に著しい被害を受けた個人に対して支援する被災者生活再建支援制度が設けられたことは、先程申し上げたとおりです。
 しかしながら、平成23年の紀伊半島大水害では、想像をはるかに超える住家被害が発生し、被災者生活再建支援制度による支援のみでは、生活の拠点である住宅の再建が困難な世帯も多数にのぼると考えられたことから、最大150万円の県単独の上乗せ補助制度を創設し、被災者の住宅再建を支援したところです。
 今後も、それぞれの災害の状況を踏まえ、県単独の上乗せ補助や制度の適用対象区域の拡大など、必要に応じて柔軟に対応してまいります。
 加えて、昨今、全国各地で発生している災害を見ると、現行の制度では対象とならない半壊の住宅が極めて多数にのぼる災害や、従来の概念を覆すような広域にわたる災害が発生していることから、被災者生活再建支援制度がより地域の復興に寄与するよう、対象となる被害の程度や地域の拡大について、引き続き、全国知事会を通じて、国に対して要望してまいります。

《再質問》高田由一 県議
 たとえば、福井県のように制度の枠組みだけ作っておいて、半壊で200万円、床上で50万円の支援を市町村と協力して行うことにして、実際に適用するかどうかは災害の都度、必要に応じて検討するという、柔軟な制度をつくっているところもあるようです。
 昨年は8月23日の台風20号、つづいて9月3日の台風21号、さらに9月30日の台風24号と連続する被害が私どもの地方ではありました。地域によっては2回、連続でやられているところがあります。こうした災害が多発している状況からみて県制度はどうしても必要だと考えます。8年前の紀伊半島の水害と昨年の台風による水害で、どちらも床上浸水した白浜町内などの地域も実際あります。8年前には、激甚災害で、全国から義援金がよせられ、床上浸水で義援金から13万円、半壊で25万円が当時、配分されています。大変ありがたかったという声を聞いております。でも一方で、昨年の台風被害では、同じ床上浸水でも県と市町村の見舞金だけというところもあります。
 とくに西牟婁郡では過疎化、高齢化が進み、集落によってはいったん被災すると修繕の費用もだせない、年金しか主な収入がない高齢者世帯が多い現実があります。ぜひ県制度を考えていただきたいと思いますが、部長もう一度、前向きな答弁をいただけないでしょうか。お願いします。

《再答弁》 福祉保健部長
 確かに議員の言われるとおり、制度を先に作っておくという考え方も1つにはあるかと思います。
 しかしながら、現行の災害の形態を見ますと、その制度そのものを覆すような形態が過去多数起こっています。
 ですから、被害の状況にその場で対応して考えていくというのが本県の求められる対応だと考えます。

《再々質問》高田由一 県議
 災害に応じて制度を考えていただく、これは本当にその通りだと思います。ただ、紀伊半島の水害のときにも、半壊や一部損壊というものには義援金の対象にはなりましたが、この制度の対象にはならないということで、今回お話ししたような昨今の台風できわめて小さな規模で被害がおきますと大変矛盾が出てくると思います。
 部長もいわれましたが、全国知事会で検討中ということもございますし、知事にこの県単の制度についてぜひ拡充をしていただきたいと思いますが、知事のお考えについて再度質問させていただきたいと思います。

《再々答弁》 仁坂知事
 部長からご答弁申し上げましたように、災害というのはいろいろな形を取ってまいりますので、状況を見て、必要な手を果敢に打っていくということが大事なのではないか。
 初めからあのような表を作るというのは、少し違うのではないかという気がするのですが、引き続きよく考え続けていきたいと思います。

《要望》高田由一 県議
 答弁をいただきました。私は、いま制度の対象になっていない半壊、床上浸水、一部損壊などにきめ細かく対応していただける県制度を要望したいと思います。
 特にこの問題では、内閣府発表の資料もございますが、再建支援法の適用条件に満たない規模の災害について、県や市町が支援を講ずるときには裏打ちの財政措置も半分特別交付税でしますということも書かれています。ぜひ前向きにご検討いただくよう要望します。


2.河川整備について
(1)周参見川水系の河川整備計画策定を
《質問》高田由一 県議
 私は、2011年、紀伊半島大水害直後の9月県議会で河川整備計画の策定が遅れている問題を取り上げ、当時の県土整備部長から「河川整備計画の早期策定に努めてまいります」との答弁をいただきました。当時は県が管理責任をもつ1級水系で2圏域、2級水系のうち6水系で河川整備計画が策定されているのみでありました。その後の取り組みで、昨年度末には1級水系で全県で5つの圏域のうち4圏域で、また2級水系では全県85水系のうち15水系まで前進してきました。ここまできて流域面積の点からみればかなりの部分をカバーすることができていますが、ペースをみるとせいぜい1年で1河川、これでは85水系すべての策定が終わるはいつになることかと思います。そこでうかがいます。
 今後の河川整備計画策定の推進についてどのようなお考えなのか答弁をお願いします。
 なかでも周参見川については、いまのところまったく手がついていないと思いますが、策定が残っている2級水系のなかでも、防災上、重要な位置をしめると私は考えています。周参見川水系の河川整備計画の策定にむけ早急に動き出す必要があるのではないでしょうか。県土整備部長の答弁をお願いします。

《答弁》 県土整備部長
 河川整備計画は、長期的な整備の基本的な方向性や考え方を示しました河川整備基本方針に基づきまして、向こう20年から30年の具体的な整備内容について策定するものとしております。
 この河川整備計画につきましては、現在までに19の計画を策定しております。これは県管理河川の流域面積全体の約8割程度にあたります。
 残る河川の河川整備計画につきましても着実に進めていく所存でございます。
 高田議員からご指摘のございました周参見川につきましては、すさみ町の中心部を流れる河川でありますことから、昨年度から河川整備基本方針の策定に向けた基礎調査に取り組んでいるところでございます。

《要望》高田由一 県議
 周参見川の整備計画については、基礎調査に取り組んでいただいているというところです。早急に整備計画が策定できるよう要望させていただきます。

(2)富田川のうち白浜町内の築堤事業早期着手を
《質問》高田由一 県議
 つぎに富田川についてうかがいます。富田川については国の交付金も活用して河床掘削や流下を阻害する樹木の伐採等取り組んでいただいております。かなり河川が流れやすくなったというのが地元の方の感想です。ひきつづきよろしくお願いします。
 とくに今回取り上げるのは、国道42号の通行にも関係する白浜町内の築堤を予定している区間についてです。ここは県の緊急輸送道路であり、同時に今年4月に重要物流道路に指定されました。これは平常時・災害時を問わない安定的な輸送を確保するため、国土交通大臣が物流上重要な道路輸送網を指定するもので、機能強化や重点支援を実施するとされています。
 ところがこの国道42号の白浜町内の区間は富田川と並行して走っており、洪水時には堤防がわりになっている42号を乗り越え、水があふれ、富田川流域のなかでも、住宅が多い地域にもかかわらずたびたび浸水被害がでている状況です。重要物流という点でも住宅被害が多発しているという点でも、早急に築堤が必要ではないかと思いますが県土整備部長の考えをお示しください。

《答弁》 県土整備部長
 河川工事は、上流から行うと下流の未改修区間との間に狭さく部が発生いたしまして、そこから越水などの被害が生じる恐れがあることから、下流から上流に向って整備を行っていくということが基本とされてございます。
 また、富田川におきましては、治水効果が背後地に限定される築堤と比べ、河道掘削は工事区間のみならず、その上流、あるいは支川に対しても水位が低下するという効果が発揮されますことから、まずは河道掘削を先行する必要があると、このように考えております。このため、富田川では下流から河道掘削を進めているところでございます。
 この富田川の河川整備につきましては、県議会の皆様、県選出の国会議員の皆様をはじめ、関係の方々のご尽力により成立いたしました「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」の予算を最大限に活用するなどしまして、引き続き河川の事業の進捗に努めて参りたいというふうに考えております。

《要望》高田由一 県議
 河道掘削を先行させて実施していくというお話でした。私は河道掘削は本当に効果があると感じています。それを否定するつもりはまったくありません。しかし一方で、堤防があと少しでも高さがあれば、水が入ってきてなかったのにという、床上浸水などを繰り返している地元の声も大切です。
 今後、国道42号線を管理する国交省とも連携して取り組んでいただきたいと要望します。どうぞよろしくお願いします。


3.洪水浸水想定区域図公表の見直し
《質問》高田由一 県議
 私は2013年12月議会で洪水ハザードマップの見直しについて質問しました。これまでの洪水ハザードマップは、河川整備の基本方針で目標とする規模の洪水が起こったときに、これだけ川から水があふれますというものです。しかし、それでは想定外の洪水から逃げられなくなるということを問題提起させていただきました。そのときの県の答弁は、「紀伊半島大水害を受けて、計画規模を超える洪水に対する浸水想定区域の洪水レベルの考え方やその活用の方策などについて検討を行っているところです」というものでした。
 その後、2015年に水防法が改正され、想定される最大規模降雨による洪水浸水想定区域図を作成、公表することとなりました。これは市町村が洪水ハザードマップをつくる元になるものであり、公表が急がれます。
 県土整備部では本年2月現在、和歌山県が管理する洪水予報河川、水位周知河川の20河川のうち、7河川で洪水浸水想定区域図を公表済みであり、残る13河川についても、引き続き作成を進め、順次公表してまいります。と言っていますが今後の公表予定はどうなっているでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 県土整備部長
 想定最大規模降雨によります洪水浸水想定区域図につきましては、和歌山県が管理いたします洪水予報河川と水位周知河川を合わせた20の河川のうち、有田川などの7河川について本年2月の知事記者会見におきまして公表を行ったところでございます。
 残る13河川につきましては、その記者会見時に「来年度、できれば全部完成させて発表したい」と知事から申し上げたとおりでございまして、今年度内の公表を目指して、現在、作業を進めておるという状況でございます。


4.県営ダムについて
《質問》高田由一 県議
 昨年、8月23日に襲来した台風20号では、古座川町でも5軒の床上浸水被害がでました。また七川ダムでは、異常洪水時防災操作といってダムに流入した分をそのまま放流する操作に入る寸前のところで回避したといいます。
 この七川ダム問題、私は2011年の9月県議会の一般質問でも取り上げてまいりました。七川ダムは、昭和31年に完成したもので設計や洪水についての考え方自体がいまでは古すぎるものになっているということを指摘しました。
 例えば8年前の12号台風の洪水でもダムへの最大の流入量は計画を下回っているのに、放流量はなんと計画の4倍も放っているんです。これは雨が長時間継続して降ったために起きたことです。
 ところが、昨年の台風20号の時のように、七川ダムがもっとも得意のはずの、ざっと雨が降って、すっと止んでいくという降雨パターンでも、但し書き操作寸前になった。このときダム近くの西川のアメダスでは午後4時ころから雨脚が強まり始め。その後、夜の10時で80ミリちかく降り、夜中の12時ころダムに流入する量が最大になったといいます。よく降ったといっても8時間程度の強雨の継続で、あっぷあっぷの状態になってしまったということなんです。
 これはたいへんだということで、知事も災害対策本部の会合で「運用についてじっくり検証してみる必要がある。あんな短期間ですごい雨がふり、ダムがあっと言う間に危なくなったのはショックだ。改善する余地はないか考えていきたい」と話されたようです。
 古座川では、計画規模の洪水がおきた場合、その7割以上の水量を七川ダムで受け止めて、下流には3割程度を流下させるだけという、いわばダムに頼りきった治水計画となっているという大きな弱点があると私は考えています。県が想定する雨がそのとおりに降れば、このダムは治水機能を発揮するでしょうが、自然相手にそのような甘い想定は通用しません。まさに絵に描いたモチになっているのです。そこでおたずねします。
(1)七川ダムの運用検証とダム再生事業の検討
 ダムの運用検証を行ったようですが、その結果、「改善の余地」はあるということになったのでしょうか。
 また私は、ダム自体の改良が必要ではないかと考えますが、二川ダムや椿山ダムなどほかの県営ダムも含めて、ダムを改良するためのダム再生事業という国の補助事業があります。その実施ができないか検討を始めてはどうでしょうか。答弁をお願いします。

《答弁》 県土整備部長
 七川ダムでは、平成24年6月から事前放流の運用を行っていますが、物理的に低下可能な水位を目標水位としておりますのでこれ以上容量を確保する余地はございません。
 また、七川ダムの水位が低下した状態においての放流につきましては、ダムの下の方にございますコンジットゲートというところから行っておりますけれども、この放流量の大小というのは水圧の大小によって決まるという状況でございます。そのため、ダムへの流入量が多くなると、流入量と同量以上の放流を行うことができなくなりまして、下げた水位の維持ができず、水位が上昇するということがございます。
 これらのことから、事前放流により確保できる理論上の最大容量すべてを有効に活用することは不可能でございまして、その意味での改善の余地はないというふうに考えております。
 また、ご指摘のございましたダムの再生事業についてでございますけれども、一般的に数十億円から数百億円の多額の整備費用が必要でございまして、県管理ダム下流域における浸水被害の軽減から得られる便益等を考えますと、実施することは大変困難ではないかというふうに考えております。
 一方で、下流の河川の整備が完了しておらずダムからの放流量に制約があるという場合におきましては、下流の河川の河道掘削や堤防の整備により流下能力を向上させれば、ダムの放流量を増加することが可能になるという状況でございます。放流量の増加につきましては出水時のダムの容量を温存させることにつながりまして、その結果、洪水調節機能の向上を図るということができるというふうになります。古座川につきましては、この場合に該当しますので、現在進めております河川整備計画に基づいて、ダム下流の河川整備の進捗を図ってまいりたいというふうに考えております。

《要望》高田由一 県議
 ダム下流の河川整備をしっかりして、ダムからたくさん水が出されても安全に流せるようにするというご趣旨だったと思います。そのこと自体は非常に大事だと思います。ただそれにしても、ダムの機能が部長の答弁にあるように十分、河川整備に見合って放流ができるのかどうかというのは、一つの今後の論点になってくると思います。
 今、河川整備計画が古座川で策定されつつあると伺っておりますが、将来的にはダムの堤体あるいは放流のシステムの改良自体が必要になってくると考えております。その点も含めて今後、ご検討いただけますようお願いしたいと要望します。


5.核関連施設について
《質問》高田由一 県議
 安倍内閣が2018年7月に閣議決定した「エネルギー基本計画」は、原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度に電力の20~22パーセントを原発で賄うことなどを明記しました。現在、関西電力管内の4つの原発を含め、9つの原発が再稼働されています。それでも発電量に占める原発の割合は約3パーセントです。これを政府の言うように20パーセントにあげようとすれば廃炉が決定されたものを除き、既存の原発だけでは足りません。建設が進んでいる島根3号機や大間原発、さらに、今後本格的な建設が予定されている東通原発も含めて新増設をしなければこの政府目標には到達することができません。原発依存社会への逆戻りではないでしょうか。
 このたびの参議院選挙では、市民連合と野党5党が合意した13項目の共通政策のなかで、憲法第9条「改定」に反対することなどと同時に、「地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと」が盛り込まれましたが、これが野党の共通政策になったのは、どの世論調査をみても原発再稼働に反対する声や原発ゼロを求める声が多数だからであります。
 また、関西電力管内で動いている4つの原発では、いま公表されている資料でもほぼ9割がた、使用済み核燃料を貯蔵するプールが満杯になってきています。その使用済み核燃料を貯蔵しておく施設もいまだ建設の見通しがなく、さらに使用済み核燃料の再処理のあとできる高レベル放射性廃棄物の処分にいたっては何の目途もたっていません。自分が出すゴミの処分方法もちゃんと決まってないのに、さらに再稼働をすすめるというのでしょうか。
 こうした状況と国民の声に応えるなら私はこれ以上の再稼働は許されるべきではないと考えます。
 こうした基本的立場を表明したうえで、今回は使用済み核燃料の中間貯蔵施設にかかわって、質問します。
 私のすむ白浜町では住民団体を中心に、この使用済み核燃料の貯蔵施設が白浜町の旧日置川地域にある関西電力の土地などに持ってこられるのではないかと心配の声があがっています。それは2017年11月23日、大飯原発3,4号炉の再稼働に当時の福井県知事が同意した際、知事と面会した関電・岩根社長が福井県外において「2018年に具体的な計画地点を示す」と明言したからであります。その後、昨年末に関電が2018年中の計画地点を提示することを断念したことでいまだに白浜町内では心配の声が続いているのです。
 知事は今年2月の県議会で谷口議員の質問に対し、和歌山県の地理的条件や巨大地震の心配などもあり、「最終処分場はもとより、中間貯蔵地としてももっともふさわしくないところであることは、理論的に明らかで、本県においてこういう調査を受け入れる考えはございません」と明確に答弁されています。
 実はかつて、京都府でも同じ議論がされておりました。京都府の山田前知事は、2015年6月の府議会でつぎのように答弁しています。
 「舞鶴市長が市議会において中間貯蔵施設の建設は認められない旨を表明しましたし、宮津市では議員提案の「ふるさと宮津を守り育てる条例」が全会一致で可決されまして、事実上反対の姿勢を明確に宣言された。京都府も、両市の姿勢を踏まえ、同一歩調をとってまいりたい」。このように述べられた訳です。その後、新聞報道などによりますと2015年の12月、山田前知事は関電八木社長と会談して「候補地になる考えはない」と表明し、これに対して八木社長は「地元同意なく進めることはない。舞鶴市や宮津市では考えていない。」と明言したそうです。関西電力の社長が反対の姿勢が明確な市町村には作らないと約束した意味は大きいと思います。
(1)事業者との対話と施設を受け入れない条例の制定
 そこで知事にうかがいます。これまで記者会見や県議会などで知事の立場を表明してこられたわけですが、関西電力とあって、和歌山県では受け入れませんと直接、伝えることも必要かと考えますが、いかがでしょうか。
 そのうえで、この間の知事の発言を見てまいりましたが、原発にしても、高レベル放射性廃棄物や使用済み核燃料の中間貯蔵施設にしても、和歌山県はその設置場所としてふさわしくないということを言われておりますので、この際、北海道で制定された「北海道における特定放射性廃棄物に関する条例」のように、県として核関連の施設を受け入れないことを条例化して県内外に発信するということにしてはどうでしょうか。

《答弁》 仁坂知事
 高レベル放射性廃棄物の最終処分地については、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」において、国は、その調査、選定に際し、「所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならない」と規定されており、地元自治体が反対の場合には次の段階に進まないことになっております。
 中間貯蔵施設の設置についても、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」において、貯蔵設備を設置して事業を行おうとする場合は、原子力規制委員会の許可を受ける必要があり、安全性を確保するための厳格な措置が義務付けられております。
 最終処分地であれ、中間貯蔵施設であれ、和歌山の地理的状況や、あるいは理論的にも和歌山へこれを持ってくることは合理性を欠きますので、受け入れるつもりはありません。この考え方は、答弁には書いておりますが、先程おっしゃっていただきましたので、谷口和樹議員に対して申し上げたとおりであります。
 県としてこのような立場をとっていることは、すでにもちろん関西電力に伝えております。このことについては、平成28年1月19日の記者会見で、「関西電力から中間貯蔵施設の打診をされているのか」という質問に対して、「『打診をすることも許さん、打診なんかするなよ』『そんなことありえないでしょ』とすでに関西電力に言ってあります」とお答えしております。
 また、条例は、法律と一緒で、基本的には義務を課したり権利を制限したりするために制定するものでございますが、最終処分地や中間貯蔵施設の建設を受け入れないという意思を表明することは、この性質になじむものとは思えません。

《再質問》高田由一 県議
 すでに知事の方から関西戦力に明確にご意思を伝えられているというお話でした。実は、その記者会見のテキストは私も以前、読ませていただきました。平成28年1月19日の会見なんですが、このテキストだけですと、知事が「『打診なんかするなよ』と言ってありますが」というふうに書いていますが、関西電力に伝えたというふうには読みとれなかったもので、それで今のような質問をさせていただきました。
 ただもう一点、知事に伺いたいのは、私の質問項目にもあるように、事業者と対話をされてはどうかという項目だてになっております。関電に知事が「打診なんかするなよ」と言ったときに、向こうさんの方はどういう反応をされたんでしょうか。答弁お願いします。

《再答弁》 仁坂知事
 本件について、対話などするつもりは全くありません。従って、「打診なんかはしてはいけないよ」と言いましたら、「打診するぞ」と言ったわけではないので、分かったんじゃないかと思っております。

《要望》高田由一 県議
 今の知事のご答弁でそのときのやり取りが分かったような気がします。
 ただ、この間からの地元白浜町の議会の動きなども見ますと、白浜町長も核の中間貯蔵施設の建設を受け入れないという条例化について、早急に検討すると議会答弁でもされたそうです。私は、条例化というのは特に内外に意思を表明するということと、知事の提案で議会もそれに賛同するいうことで、かなりなインパクトがあると考えております。ぜひそれも検討していただけますよう、最後に要望しさせていただき質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。



                                         仁坂知事の答弁を聞く、高田由一県議(右)
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