借金は県民1人118万円
2月県議会では2020年度当初予算が提案されました。
一般会計は前年度比374億円(6.8%)増の5905億円。「2015わかやま国体・大会」に向け予算が膨らみ、開催後は4年連続下がり続けてきましたが、20年度は過去3番目、ここ10年間で最も高い予算規模です。
歳入では、消費税増税により地方消費税が前年度比28億円(14.8%)増を見込む一方、個人県民税は5億円(1.7%)減、法人二税は11億円(4.9%)減となる見込みです。
幼児教育・保育の無償化や地方法人課税の偏在是正措置等の影響として、地方交付税は前年度比41億円(2.5%)増、地方交付税の不足分を補う臨時財政対策債は30億円(15%)減の見込みです。
県の借入金である県債は219億円(40.8%)増の756億円。臨時財政対策債を含めた県債残高は過去最高を更新し続け1兆906億円、県民1人あたり118万円の借金を背負うことになります。借金返済のための公債費は4億円(0.6%)増加しました。
小型ロケット射場建設支援や企業立地奨励金等のために産業開発基金から前年度比5億円増の41億円を繰り入れます。また福祉対策等基金からは、医大薬学部設置等に26億円増の30億円を繰入れます。
県の貯金である財政調整基金残高は32億円、借金返済に備えた県債管理基金残高は178億円(いずれも前年度同額)。2017年度から5年間の「中期行財政経営プラン」の想定より33億円も多い、210億円をため込んでいます。
前年度上回る正規教員減、非正規教員でまかなう
人件費は、職員数の減少などにより13億円(1%)減少、特に教員は19年度の38人を上回る46人を減らします。
正規教員を減らす一方、「定数内講師」は毎年400人前後を保持し、「非常勤講師」は増員。教育を安上がりの非正規教員でまかなっています。
過労死ラインを超える教員の長時間労働を是正するためにも、豊かな教育の実現に必要な少人数学級の推進のためにも、県独自で正規教員を増やすことが不可欠です。
逮捕者出てもカジノにまい進
賭博であるカジノを中核とする統合型施設IR誘致予算を7700万円計上します。19年度には2億3千万円を計上し、金融・財務・法務等の専門的助言を受けるアドバイザリー契約の締結に2億円を費やしました。20年度はそれを活用し、事業者の募集や信用調査、事業性の分析、契約交渉など業務を具体化します。
また、新たに設置した事業者選定委員会を3回程度開催して審査・選定し、県民向けのシンポジウムや説明会、出前講座も引き続き実施します。
ギャンブルなど総合的な依存症対策として1400万円を計上。リーフレットを作成し、生徒や保護者に配布するとしています。仁坂知事や宮崎教育長は12月議会で、予防や対策をすればギャンブルの弊害を防げると答弁していました。
さらに12月議会では、計画地和歌山マリーナシティの民有地約21haを約77億円で購入する債務負担行為が議決されました。全国3カ所の区域に認定された時点で土地を購入するとしています。
カジノの日本参入をめぐっては、自民党や日本維新の会の国会議員が事業者から現金を受け取る「カジノ汚職」で逮捕者が出るなど疑惑が広がり、政府は1月に予定していた基本方針の決定を先送りしました。仁坂知事は「公共事業で汚職があっても事業を止めることはない」、「基本方針が遅れても作業を変える必要は無い」と発言。逮捕者が出てもカジノ誘致にまい進する構えです。
県民の税金でムダな港湾整備すすめ、大企業には優遇
和歌山北港沖の関西電力LNG発電所計画のための南防波堤建設が2000年度から始められました。総事業費は300億円で国が100億円、県が50億円負担します。全長1,000mのうち640mが建設済みで、これまで県は35億円負担しました。18年の台風被害により県の負担が7億円余り増え、現在は災害復旧に取り組んでいます。しかし、発電所着工のめどは立っておらず、防波堤建設だけが進められています。
関西空港の埋め立てに土砂を売った跡地である「コスモパーク加太」は、借金を440億円残しました。県はその土地のうち101haを、県土地開発公社(県設立の財団法人)から年580円/㎡で借りています。
その一部を20億円かけて用地造成し、カゴメ加太菜園に100円/㎡という破格の安値で貸していました。県が造成したものの、加太菜園は事業計画の縮小を繰り返し、賃料支払いが部分的に中断され減収。2018年9月の台風被害を受け操業を停止し、親会社カゴメが撤去作業を完了した19年11月をもって賃料支払いは県との合意で終了しました。操業開始からの賃料総額は3億4300万円しか入っていません。県民の税金を使った大企業への優遇措置です。
上がり続ける国保料(税)
国民健康保険の財政運営が県単位化されて3年目を迎えます。所得250万円40代夫婦4人家族世帯の県平均保険料(税)は18年度43万620円から、19年度は43万5520円に上がりました。20年度は、県が市町村に示す標準保険料率が所得割も均等割も県平均で上がっており、多くの市町村で値上げが予想されます。
県国保運営方針では、保険料(税)を抑えるための一般会計繰入をなくして統一保険料にしていくことが示され、6市町村が17~18年度にかけて繰り入れをやめ、3市町村で保険料(税)が上がりました。今後のさらなる値上がりが予想されます。
病床削減すすめる地域医療構想
厚生労働省は19年9月、再編・統合の対象として全国424病院を公表、県内では5病院が公表されました。仁坂知事は「病院の維持を考えるのは設置者。厚労省が決めることではない」と抗議しました。
しかし問題の背景は、「地域医療構想」による医療費抑制にあります。安倍政権は都道府県に地域医療構想を策定させ、病床再編・削減を押し付けてきました。和歌山県は14年、国の方針のままに25年までに2割以上の約2,600病床を削減する計画を策定。削減含む再編を進める医療機関への補助を毎年6億円予算化し、20年度も計上します。しかし、現場では計画通りには進んでいません。今回の厚労省による突然の病院名公表は、思い通りに進まないことへのいら立ちであり、和歌山県も同じ方向で進めてきたことに変わりありません。
厚労省の県内公表病院
済生会和歌山病院
海南医療センター
国保野上厚生総合病院
国保すさみ病院
那智勝浦町立温泉病院
保育おかず・おやつ 全園児への無料化を
国で保育料無料化が始められましたが、保育料に含まれていた副食費(おかず・おやつ)が保護者の実費負担となりました。県は、これまで独自で市町村とともに保育料を無料にしてきた第2子(所得制限あり)と第3子以降の子どもの副食費は無料化を支援します。
しかし市町村に半額負担を求めているため、一部の施設で副食費が有料になる市町村もあります。県独自で保育料無料化を支援してきた財源を活用し市町村負担をなくすことで、全ての子どもの副食費を無料にすることができます。
ひきこもり者への支援拡充を
和歌山はNPO法人などの長年の取り組みにより、ひきこもり者への支援については先進県です。県もこれまで相談や居場所等に支援してきました。
しかし、19年度から国制度に移行しこれまでの支援が受けられず、現場では混乱が生じています。県として国制度に上乗せし、支援を拡充することが求められています。
◇ 議案第2号 令和2年度和歌山県農林水産振興資金特別会計予算
予算額 2億7797万4000円
(前年度 3億6393万3000円)
◇ 議案第3号 令和2年度和歌山県中小企業振興資金特別会計予算
予算額 5億4713万1000円
(前年度 8億9322万9000円)
◇ 議案第4号 令和2年度和歌山県母子父子寡婦福祉資金特別会計予算
予算額 2億0119万5000円
(前年度 2億0061万2000円)
◇ 議案第5号 令和2年度和歌山県修学奨励金特別会計予算
予算額 2億4484万6000円
(前年度 2億1982万3000円)
◇ 議案第6号 令和2年度和歌山県職員住宅特別会計予算
予算額 1億9048万9000円
(前年度 2億0272万円)
◇ 議案第7号 令和2年度和歌山県国民健康保険特別会計予算
予算額 1020億6327万8000円
(前年度 1004億3556万8000円)
◇ 議案第8号 令和2年度和歌山県営競輪事業特別会計予算
予算額 175億7365万8000円
(前年度 128億9233万3000円)
◇ 議案第9号 令和2年度和歌山県営港湾施設管理特別会計予算
予算額 9億6772万5000円
(前年度 6億4775万6000円)
◇ 議案第10号 令和2年度和歌山県市町村振興資金特別会計予算
予算額 8億5141万8000円
(前年度 10億5337万1000円)
◇ 議案第11号 令和2年度和歌山県自動車税等証紙特別会計予算
予算額 12億7200万円
(前年度 15億5300万円)
◇ 議案第12号 令和2年度和歌山県用地取得事業特別会計予算
予算額 40億1722万5000円
(前年度 41億4302万1000円)
◇ 議案第13号 令和2年度和歌山県公債管理特別会計予算
予算額 1147億7129万6000円
(前年度 1236億1951万1000円)
◇ 議案第14号 令和2年度和歌山県立こころの医療センター事業会計予算
予算額 24億5917万7000円
(前年度 25億6774万1000円)
◇ 議案第15号 令和2年度和歌山県工業用水道事業会計予算
予算額 14億3731万2000円
(前年度 16億6121万円)
◇ 議案第16号 令和2年度和歌山県土地造成事業会計予算
予算額 6億4836万9000円
(前年度 8億4399万9000円)
◇ 議案第17号 令和2年度和歌山県流域下水道事業会計予算
予算額 41億6746万7000円
(前年度 39億7465万8000円