2020年2月県議会 人権・少子高齢化問題等対策特別委員会
 杉山俊雄委員の質問概要記録
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● 議案第43号「和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例」について
《質問》杉山俊雄 委員
 2019年12月の人権・少子高齢化問題等対策特別委員会で、11月に福岡県に調査に行った感想で、条例は作る必要がないと言ったのは私だけであった。なぜかというと、和歌山県には既に「人権尊重の社会づくり条例」があり、それに基づき「人権施策基本方針」が策定され、人権問題の重要な課題を17に分けて、それぞれの施策できめ細やかな取組が行われている。県は今まで条例がなくても、結婚差別等が発生した場合は対応してきたと聞いているので、あえて条例をつくる必要がないと思う。そこで、予算特別委員会や一般質問と内容が重ならないようにして、条例に関していくつか質問したい。
 1つは、条例案では、インターネットと結婚・就職での身元調査に特化して部落差別の禁止をあげているが、インターネットに関わって、法務省が作成した「人権侵犯事件の受理と処理件数」によると、同和問題は減少傾向にある。インターネットによる侵犯事件のうち、同和問題については増加しているが、総件数が2万件を超えることからいうと、極めて少数である。また、「説示」以上の措置を受けた件数は、同和問題は横ばいであり、インターネット関連では、ゼロである。誰が書き込んだのか分からないようなインターネットの差別表現をもって部落差別が拡大しているとは言えず、深刻化していることの立証事実はないと思う。インターネットに関する条例はいらないと思う。
 一般質問で楠本議員が、インターネットの差別事案について質問したときに、362件と答弁があったが、このことについて、県としてどのような対応をしているのか。

《答弁》 人権政策課長
 県では今年度から、インターネット上の人権侵害対策としてインターネット上の本県に関わる同和問題に関する差別書き込みのモニタリングを実施している。
 具体的な内容としては、学術研究機関と連携しながら、インターネット上の同和問題に関する情報を調査し、差別書き込みの特定を行う。また特定した差別書き込みについては、和歌山地方法務局等と連携しながら、プロバイダ等に削除要請を行っている。令和2年2月末日現在で、先ほど、杉山委員からも話があったように、17万6,000件弱の書き込みを調査した結果、362件の差別書き込みがあった。これに対して和歌山地方法務局等と連携しながらプロバイダ等への削除要請を行ったところ、83件の差別書き込みが削除されている。またこれ以外にも、インターネットを利用した部落差別への対応について、既存の法律では対応が困難であることから、迅速に被害者救済を行うための実効性のある法整備が必要と考えており、国、法務省や総務省に要望を行っているところである。

《質問》杉山俊雄 委員
 今のようなことを聞くと、きちんと法務局と連携もしているし、プロバイダに削除要請をしたり、これを取り締まる法整備についても、国に要請しているということである。それらから考えたら、すごく適正に処理されていると思う。だからインターネットを取り出して、条例化することの必要性はないと思う。また、結婚差別については、一般質問のときに、平成28年度以降、市町からの報告が1件であると答弁があった。
 2つ目の質問であるが、差別がない、あるいはなくなるというのは、どんな状態をいうのか。
 和歌山県人権に関する県民意識調査の中で、「同和問題(部落差別)に関して、現在、どのような問題があると思いますか」の選択肢が14個ある。結婚に反対、就職に不利、公共施設などに差別落書きがある、インターネット上で関係者を誹誘中傷する書き込みがある、身元調査、同和問題の理解不足につけ込んだ高額な図書を売りつける、同和地区住民との付き合いを避ける、生活環境が悪い、進学率が低く学力格差がある、不安定な就労状態の人が多い、同和地区や同じ小学校区域を避ける、その他、特に問題のあるものはない、わからないなど、14項目から選んでいるが、差別がないというのは、それぞれの項目の数値が何%以下というような、数値目標があるのか。
 あるいは、特に問題のあるものはないという項目が100%になる状態を言うのか。どういう状態を言うのか、説明してもらいたい。

《答弁》 人権政策課長
 杉山委員が尋ねている部落差別がない状況とは、当然のことであるが、全ての人、全ての県民が、部落差別について正しい認識を持つようになって、理解が進むことで、部落差別が発生しない、そういった差別のない状況になることが、部落差別がない和歌山県であると考えている。

《質問》杉山俊雄 委員
 部落差別がゼロになるということか。

《答弁》 人権政策課長
 ないということは、部落差別がゼロになるということだと考えている。

《質問》杉山俊雄 委員
 そうであれば、この条例は永久というか、今の状況ではなかなか意識が正しく認蝕されていないとなると、ずっと長いこと条例があるということになり、この条例がずっと必要になってくるということか。

《答弁》 人権政策課長
 私どもとしては、すぐにでも、来年度にでもなくなることを目指して、この条例を提案させてもらった。何年もかけてやるというつもりはない。

《質問》杉山俊雄 委員
 3つ目に、部落差別の定義であるが、条例骨子案のパブリックコメントにおける意見番号52番で、「部落差別の規定がなく、第三者機関や裁判所の判決もない中、県が一方的に部落差別を判断することには大きな問題があると考える」と言っている。
 このことに対して県は、「本条例(案)での部落差別とは、『部落差別の解消の推進に関する法律』における部落差別のことである」と回答している。私は、この意味が分からなかった。県民が分かるように説明してもらいたい。

《答弁》 人権政策課長
 部落差別の解消の推進に関する法律における部落差別というのは、部落差別は定義せずとも社会通念上明確であると法案審議の途中で議論されている。一般的に言うと、特定の地域の出身者であることを理由に、結婚を反対されるなどの不合理な取り扱いを受けることである。

《質問》杉山俊雄 委員
 特定の地域の出身者に対してということになれば、それに対して部落差別だと言うとしたら、特定の地域を指定しなければならなくなってくる。行政が新たに地域を指定する、こんなことになりはしないか。これは、差別をなくしていくことからすれば、逆行することにならないか。

《答弁》 人権政策課長
 本会議で知事が答弁したように、地区を指定するようなことがあれば、当然新たな差別が生まれるので、そういったことはしない。社会通念上明確であるので、それは分かるということで、地区指定等は一切行わない。

《質問》杉山俊雄 委員
 4つ目の質問であるが、条例の第4条に、事業者・関係機関とあるがその定義がない。何を指すのか具体的に説明してもらいたい。

《答弁》 人権政策課長
 本条例案における事業者とは、個人や法人も含め、事業を営むもの。また、本条例案における関係機関とは、本県が100%出資している公益財団法人和歌山県人権啓発センターや、全国の行政機関で構成している全国人権同和行政促進協議会を考えている。

《質問》杉山俊雄 委員
 第4条第2項では「県は事業者、関係機関等との連携を図る」、第9条第2項で、「部落差別に関する相談に的確に応ずるため、必要な施策を講ずるよう努め、相談体制の充実を図る」とある。参議院の附帯決議でも戒められているが、この事業者等に運動団体が該当し、差別を追及するような運動団体が入り、講習会などで講師を依頼するようなことが一番心配されるが、そういうことはないのか。

《答弁》 人権政策課長
 この法案が通ったときに、衆議院と参議院で委員が言うように附帯決議がなされている。私どもとしては、当然、このことを踏まえて部落差別解消のための施策を推進していくということである。

《答弁》杉山俊雄 委員
 先ほど言ったような、心配するような運動団体が入るというようなことはないのか。その担保はあるのか。

《答弁》 人権政策課長
 再度繰り返しになるが、衆議院あるいは参議院の附帯決議を踏まえて我々はやっていくということである。これ以上の答えにはならないと考えている。

《質問》杉山俊雄 委員
 最後であるが、国の法律の範囲を超えた条例を作って規制することはできない、あるいは法がなければ条例を作って規制すればいいということはできないと、弁護士から聞いたことがある。
 今回の国の法律は理念法で、部落差別を規制していない。規制することがかえってマイナスになるから、教育と啓発で問題をなくせると判断した法律だと考えている。県の条例には、勧告等の規制が入っているので、国の法律を超えたものになっていると思う。違法だと考えるが、そのようなことはないのか。

《答弁》 人権政策課長
 国の法律は確かに理念法であり、部落差別を解消していくのは行政の責務となっている。和歌山県においては、公益性の観点等を踏まえ、部落差別の解消のために、説示や促し等を規定したものである。決して法律の趣旨を超えた条例ではないと考えている。

《答弁》 県参事人権局長事務取扱
 委員が言っているのは、法令と県などの地方自治体の条例制定権において、法に定めのないことを条例で定めて問題になった時の高等裁判所の判決を、最高裁判所が破棄自判した内容を指摘していると考えている。法令と地方自治体の条例制定権に関して、その際、最高裁判所は3つの基準を示している。
 1点目は、法令が規制対象としていない事項について条例を制定する場合、法令で定めないことがよいと解される時には、条例で規制することは法令違反になるというのがまず指摘されている。これが委員の指摘していることであると考える。
 2点目に、ある事項で法令で規制し、かつ、条例で規制するという併存関係が起こった場合、条例の規制が法令の規制の目的・効果に影響を及ぼさない場合や、双方の規制する目的が違った場合は、何ら法令と矛盾抵触するものではない。その場合、条例の規定は違反ではないということが指摘されている。
 3点目に、その法令全体から見て、各自治体において、各自治体の実情に応じて、規制するのがよいと解せる場合については、条例で規制することが法令と何ら矛盾抵触するものではなく法令違反にならないという、この3点が指摘されている。
 今回、和歌山県において和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例を提案しているが、当然、最高裁判所が指摘した3つの条件を検討している。さらに、関係法令であるとか、類似法令、委員の方々と一緒に調査させてもらった福岡県の条例、あるいは、その他の府県の条例等を綿密に詳細に検討したところ、この条例は法令に違反するものでないと考えており、また、今回の条例は、本県の部落差別の解消の推進に寄与するものであると考え、提案したところである。

議案に対する採決
議案第43号 和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例
は、賛成多数で原案可決
日本共産党 杉山俊雄委員は反対 → 杉山俊雄の議案に対する反対討論


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